クレーム対応入門,8つのやり方
皆さんこんにちは。現役経営者、公認心理師の川島達史です。私は現在こちらのコミュニケーション講座の講師として活動しています。今回のテーマは「クレーム対応」です。
お客様が怒っていると混乱してしまう、謝罪メールの書き方が分からない、電話でのクレーム対応が苦手、このようなお悩みを抱えている方は多いと思います。そこで、当コラムでは、クレーム対応の技術を、基礎から4回に分けて解説していきます。
①クレーム対応の基本
②直接対応する場合
③メール対応の場合
④電話対応の場合
クレームに苦手意識がある方はぜひ最後までご一読ください。
クレームが起こる原因,影響
まずはクレームとは何か?理解を深めていきましょう。
クレームが起こる原因
澤口ら(2016)[1]は、大学生231名を対象にクレームを言いたくなる場面と理由について調査を行っています。その結果の一部が以下の図です。
もっともクレームを言いたくなるケースは「店員・担当者の対応」でした。次いで、「商品が違う」、「異物混入」という結果になりました。商品自体よりも、接客にクレームが集まることが多いようです。
怒りを増幅させる要因
日本労働組合総連合会(2017)[2]は男女2000人に対して消費者のクレームや迷惑行為について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。
図を見ると、クレームを受けたことがある人は、全体として56.9%であることがわかります。さらに暴言を受けたことがあるのが33.1、威嚇されたことがあるのが28.5%となっています。
ストレスにつながる
山口(2011)[3]は、公立小・中学校教師700名を対象に、クレーム被害体験が、ストレス反応にどのような影響を与えるかを調べています。その結果が以下の図です。
このように、クレーム被害の多さにより、能力欠如意識が高まり、ストレス反応も上がっていることが分かります。クレームを受けると、自信を失う方が多く、ストレスを抱えやすくなってしまうのです。深刻になると適応障害、職場うつにつながる事もあるので注意が必要です。
クレーム対応の8つの基本
ここからはクレーム対応の基本的なやり方を8つ解説していきます。
①たらいまわしにしない
②共感的に傾聴する
③素直に非を認める
④感謝の言葉を述べる
⑤お詫びの品を渡す
⑥限界設定もしておく
⑦感情労働への対策
⑧精神疾患も視野に
参考になりそうなものを中心に組み合わせてご活用ください。
①たらいまわしにしない
日本労働組合総連合会(2017)[4]の調査ではクレームに対する態度と消費者の心理の調査が行われました。その結果が下図となります。
図のように最も怒りを増幅されるのは「たらいまわし」であることがわかります。クレームが発生した際は、なるべく担当を早く決め、その方が最後まで対応することが大事と言えそうです。
②共感的に傾聴が基本
2つ目は、お客様の話を共感的に傾聴することが大事です。特にクレームの序盤は、怒りがピークに達している方が多いです。あなたが何を言っても火に油を注ぐ結果になりやすいです。
そこで、まずは共感的に相手の話を受け止めることが大事になります。例えば以下のように返すと良いでしょう。
日程の変更があるならあらかじめメールでも電話でも伝えてくださいよ!予定が狂ったじゃないですか。大事な用事だったのに…対応に不満があります。
↓
弊社の連絡が届かず、納得がいかない部分をお持ちなのですね。
このように相手の話を要約しつつ、気持ちをしっかり受け止めることが大事になってきます。共感的に傾聴をしていくと、相手の気持ちが落ち着き、建設的に話し合うための土台を固めることができます。
共感的に傾聴するのが苦手…と感じる方は以下のコラムを参照ください。
③素直に非を認める
3つ目は素直に非を認めることです。こちらが悪い時は、素直に認めることが大事です。具体的には以下のように謝罪をしていきます。
弊社の〇〇が△△をしてしまい、大変失礼いたしました。
〇〇という対応はあってはならないことです。大変申し訳ございませんでした。
このように、明らかにこちら側のミスである場合、ごまかさずに素直に謝ることを意識しましょう。ただ謝るだけでなく、上記のように理由を明確にしながら謝罪することも大事です。
④感謝の言葉を述べる
4つ目は、感情の言葉を述べることです。クレームは業務内容の改善に繋がります。社内では気づかなかった欠点が見つかり、お客さんの本音を知ることができます。クレームが業務の改善に役立った場合は以下のように感謝を伝えましょう。
〇〇様のお陰で業務の改善をするきっかけができました。ありがとうございます。
〇〇様のご指摘があったからこそ社員の意識が変わりました。感謝しています。
不満を感じていても、口に出してくれる人はごくわずかです。きちんと伝えてくれる人には、感謝の気持ちを述べましょう。
⑤お詫びの品を渡す
自分の会社に非がある場合は、+αでお詫びの品を渡すことも効果的です。
例えば、私はコミュニケーション講座を運営しているのですが、不備があった場合は、6000円相当の講座を1回分を無料で提供しています。その結果、生徒さんの退会率も少なくなり、むしろ愛着を持ってくれることもあります。
クレームは、愛のムチであることも多いのです。謝罪を具体的な形にする意味で、お詫びの印を示すと、クレームが逆転現象になり、あなたの会社をより好きになるきっかけにもなります。
⑥限界設定もしておく
理不尽なクレーム、脅しに近いクレーム、業務の妨害になるようなクレームの場合は、毅然とした対応も必要です。その場合は、安易に謝罪をするのではなく、事実確認をしっかりしていきましょう。
また社内でルールを決めておいて、どこまで対応できるかをあらかじめ決めておくことをオススメします。これは心理学用語で限界設定と言います。
限界設定をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
⑦感情労働への対策
クレーム処理は精神的に非常に疲れる作業です。プライベートなら言い返すのに、仕事だからと丁寧に対応されている方も多いでしょう。
このように自分の本心をおさえ、役割を大事にして感情を表現することを感情労働と言います。心理学の研究では感情労働は大きなストレスになることが分かっています。
会社ごとにフォローする体制を整えておきましょう。例えば以下のような対策が挙げられます。
クレーム対応があった時は必ず社内で共有する
クレーム対応の後は上司が精神的にフォローする
定期的にストレスチェックをする
人事や経営者の方は、以下のコラムも是非ご一読ください。
⑧精神疾患も視野に
クレームが常習化している方の中には、一部精神疾患を抱えている方もいます。例えば、認知症で感情のコントロールが苦手な方、統合失調症で支離滅裂な主張をされる方、反社会性人格障害があり、だれかれ構わず攻撃性を発揮してしまう方、などクレームと関連する精神疾患は複数あります。
精神疾患の抱えている方は、健常者の方と以下の違いがあります。
主張に筋が通っていない 理不尽である 論理的ではない 支離滅裂である
このような傾向がある方については、会社が対応すべきことではなく、医療機関にお任せする事案となります。会社としては、いたずらに謝罪をすることはなく、共感的に傾聴した上で、限界設定をして断るという対応も大事になってきます。
もしあなたがクレーム対応の部門長などに当たる場合は、以下の動画一覧で精神疾患の基礎を一通りおさえておくことをおススメします。
状況別のクレーム対応
ここからはは状況別のクレーム対応について解説していきます。
直接のクレーム対応
直接クレームに対応する場合は、表情のあり方、アポ取り、謝罪当日の対応、など様々なコツがあります。直接お客様と向き合あってクレーム対応する立場にある方は下記をご覧ください。
メールでのクレーム対応
コラム③ではメールでのクレーム対応について紹介しています。謝罪メールの書き方、頻度、タイミングなどを知りたい方は下記をご覧ください。
電話でのクレーム対応
コラム④では電話での急なクレームに対して、落ち着いて対応するコツ、声のトーン、スピードなどを紹介しています。電話でのクレーム対応を知りたい方は下記をご覧ください。
まとめと講座のお知らせ
まとめ
クレームを受けた時は、まずはしっかり傾聴する、認めるところは認め、理不尽な要求には冷静に対処する。この基本を守れば、クレーム対応の多くはうまく行くと思います。皆さんが、お客様の怒りとうまく向き合い、健康的にお仕事をされることを心から願っています。
ビジネスコミュ力講座のお知らせ
心理学の専門家、現役経営者の元でビジネスコミュニケーション力を磨きたい方は、私たちが開催している講座をオススメしています。講座では
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など一通り学習することができます。筆者も講師をしてます。皆様のご来場をお待ちしています。↓興味がある方は下記のお知らせをクリックして頂けると幸いです♪↓
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連