>
>
>
ネット依存症の原因と診断基準・予防

ネット依存症の原因と診断基準・予防

皆さんこんにちは。公認心理師の川島達史です。
今回のテーマは
「ネット依存」
です

はじめに

今はSNSで世界中の方と、いつでもどこでもつながることができます。情報源もグーグル、ウィキペディア、論文サイトと多様ですから、夢のような世界とも言えます。

一方で夢にも危険性があります。

・ゲームを1日5時間以上している
・目の前に人がいるのにスマフォが気になる
・SNSを絶えず見ている

このような状態が続くとネット依存症の可能性が出てきます。厚生労働省研究班(代表・尾崎米厚鳥取大教授)の調査によると、ネット依存が疑われる中高生は全国で推定93万人に上ることが分かりました。

そこで当コラムでは、ネット依存の正しい理解と対策をしっかりお伝えしていきます。是非最後までご一読ください。

ネット依存の原因と問題

ネット依存症とは何か?

ネット依存の始まり

インターネット依存症の始まりは1990年代です。ネット関連で生じる心の問題について、キンバリーヤング(1998)が「インターネット依存」という言葉を最初に使い、全世界に広がっていきました。

日本では1995年以降にインターネットの普及が急速に進み、パソコンでオンラインゲーム等を楽しむことができるようになりました。

大人はもちろんのこと子どももインターネットを気軽に楽しめるようになり、オンラインゲームに没頭する若者が増えていったのです。

このような背景から、医学の世界でもネット使用、特にインターネットゲームにまつわる症例が増加し、懸念されるようになりました。

様々な統計

ネット依存については関連する様々な統計があります。以下折りたたんで掲載したので興味があるものをクリックしてみてください。

総務省(2019)の「平成30年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」では、特に10代に関してSNSの平均利用時間が増加傾向にありました。10代のSNS平均利用時間比較総務省調べ

SNSの利用では、スマホを使うことが多いため、知らず知らずのうちに依存してしまうのかもしれません。

勉強以外に5時間以上インターネットを利用している中学生・高校生の割合です(厚生労働省,2012年)。

まずは中学生から見ていきましょう。女子生徒の利用率が高く、学校がある平日でもネット依存している傾向がうかがえます。

中学生のインターネット依存傾向続いて高校生です。休日は2割以上の人が、ネットを5時間以上使っていることが分かります。また、高校生も女子の依存傾向が高いことが分かりますね。

高校生のインターネット依存傾向

大嶋ら(2017)は、工業大学の大学生を対象にインターネット依存に関する調査を行いました。調査は、キンバリーヤングの依存度テスト日本語版を使用しています。

調査の結果、以下のグラフの通り、学生の60%以上がインターネット依存の症状があることが分かりました。

インターネット依存度テストの結果

加えて調査では、同じ学生らにスマートフォンの使用について質問しています。1日おおよそ3-5時間くらい使用し、歩きスマホもたまにしてしまうと答えた人が多くいました。

総務省・安心ネットづくり協議会(平成23年)は、携帯電話向けサービスの利用者を対象に、インターネットの依存傾向について調査を行いました。

ネット依存 症状

厳し目の基準で依存
3.8%
緩やかな基準で依存
11.0%
性別でみると男性よりも女性の依存傾向が強い結果となりました。

インターネットは手軽に他人コミュニケーション取るには便利なツールですが、使いすぎると心身ともに疲弊してしまうことが分かっています。

ネット依存症の症例や統計について、気になる方は下記をご参照ください。
・ネット依存の現状
・日本と海外の依存症例

ネット依存の中でも、SNSなどのコミュニケーションに関する依存度が特に高いことが分かっています。

下記はスマートホン保有者のインターネット利用目的の中で、高い依存傾向がある率を示したグラフです。

SNSの利用は、他の利用目的と比較して依存傾向の高い人が多いことが分かります。総務省の調査研究

 

自覚されにくい

依存症はさまざまな問題が表出するにもかかわらず「自覚がない」というのも大きな特徴として示唆しされています。

片山(2016)らは、大学生138名に「インターネット依存傾向と健康度および生活習慣と関連性」の研究を行いました。

この研究では、「インターネット依存の傾向があるにも関わらず、自覚がないケースがあり、依存傾向を自覚していても、ネットを辞められない傾向にある」ことがわかりました。

依存傾向を放置すると、症状を進行させてしまうため注意が必要です。

 

ネット依存症,簡易診断

ここではネット依存症についての診断基準を2つ紹介いたします。もしかしたらネット依存かも…という方は参考にしてみてください。

簡易診断

弊社で作成した簡易診断です。8問でシンプルにチェックできます。

 

DSM-5の診断基準

アメリカ精神医学会の基準です。詳しく把握したい方は参考にしてみてください。

アメリカの精神医学会(APA)が2015年に発行したDSM-5(精神疾患の診断と分類)においても、今後「障害」として認められるべき疾患として「インターネットゲーム障害」を取り上げています。

これらの以下の診断基準案の9つの項目のうち、1年の間で5つ以上あてはまると依存状態とみなされます。

ネット依存の診断基準案

 

心と体への影響

うつ病の増加

ネット上でのコミュニケーションが盛り上がると、やり取りが深夜まで続いてしまい、睡眠時間が大幅に削られてしまいます。

睡眠不足から、身体や精神の不調が強くなり、深刻化すればうつ病を発症する可能性もあります。

ネット依存とうつ病

肥満へつながる

依存症専門外来・久里浜医療センターの中山(2015)は、トルコの中高生を対象にBMI(体格指数)の調査を行いました。

その結果、ネット依存している人は、BMIが25以上(正常値22)の人の割合がとても高いことが示されています。ネット依存症と肥満

視力の低下

河井ら(2011)は、SNS依存による身体的リスクを調査しました。その結果、身体的なリスクで最も悪化したのが「視力の低下」でした。

ネット依存者の半数以上が「視力が低下した」と感じていることから要注意です。

ネット依存と視力低下

勉強時間の減少

ネット依存は、身体的リスクにとどまりません。河井ら(2011)の調査では、SNSによって「どんな時間を犠牲にしたか?」について調べています。そ

の結果「勉強」「趣味」「仕事」など、本来やるべきことへの時間が少なくなっていることが分かりました。

ネット上でのコミュニケーションは「楽しい」ものですが、勉強がうまくいかないといった副作用が現れてしまうのです。

ネット依存症の合併症

ネット依存症の心と体への影響について、気になる方は下記をご参照ください。
・ネット依存の症状と合併症
・社会生活にも影響?!
ネット依存による症状「身体・心理的への影響」

 

ネット依存症の対策・治療

インターネット依存は、インターネットと上手く付き合う方法を知ることで対策ができます。

ネット依存症の予防・治療にもつながりますので、参考にしてください。

対策① プラスとマイナスを整理

まずは自分の状況を分析して「ネットに依存している自分」に気づくことから始めます。

ネットを利用することで「失うもの」「得られるもの」の2つを紙に書き出します。どのくらいの利用頻度なら「バランスが良いか」を考えていく中で、ネット利用のプラスとマイナスが整理できます。

② ルールを決める

ネットに依存していることに気づけたら、利用制限のルールを決めて依存傾向の改善を目指します。

自分にとって無理のない範囲で、ルールを決めネットの利用時間を調節していきます。たとえば、学生の場合なら「夜10時以降は使わない」など、ルールは具体的にすることが大切です。

③ 第三者を介入させる

ネットの利用ルールが決まったら、第三者に介入してもらいルールを守り続けていきましょう。

たとえば、学生の場合なら「夜10時になったら両親にスマフォを預ける」など、第三者に管理してもらうことで、ルールの維持がしやすくなります。

④ ハマれるものを探す

現実世界でのコミュニケーションを増やすことは、ネット依存対策にとても有効です。

学校や職場以外に、趣味のコミュニティになどに所属すれば人間関係を増やすことができます。複数のコミュニティに所属することで心の安定も図れます。

インターネットと上手く付き合う方法を、詳しく知りたい方は下記をご参照ください。
・バランスの決め方
・無理をしないルールとは?
・ネットに頼らない環境づくり
ネット依存症の対策「ネットと上手く付き合う方法」

ネット依存のの側面

最後に補足として、ネットの光の部分をお伝えします。インターネットを使うことは必ずしも悪いとは言えません。実はSNSを使うと「コミュ力UP」の効果が期待できると考えられます。

実際に、河合ら(2011)の研究では、「SNSのメリット、デメリット」について調査が行われています。

日本最大級のSNSである「SNS X」のユーザー約1500万人に対してアンケート調査を行いました。そのうち、71,926ユーザーからの回答があり、以下のようなメリットがあることが分かったのです。 

SNS依存と利用自体の調査

最も大きな利点は「人との交流」です。現実に対面しなくても他人とつながることができるのはインターネットの特徴でしょう。

しかし、意外なのは、SNSを使うことで現実のコミュ力も上がることです。インターネットにはまってる人は、内向的でおとなしいイメージを持たれがちですが、実際には社交性が高まっているのです。

文章はもちろん写真や動画を送ることもできるため、現実の情報交換よりもわかりやすく手軽に素早くやり取りすることができます。

その他、SNSは現実の日常生活では作ることができない人間関係の広がりを作ってくれるため、SNSを含めインターネットは日々の生活になくてはならないコミュ二ケーションツールだといえます。

ネット依存は早めの解決を

まとめ

ネット依存について、ネット依存症の診断基準やネット利用のメリット・デメリットを、心理学の研究や統計を交えながら解説しました、

依存性の改善には時間がかかるかもしれません。しかし、徐々にでもしっかり対処していけば必ず回復できます。

自分に合ったルールを決めてしっかりと対処してネット依存を緩和していきましょう。

講座のお知らせ

もし公認心理師、精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では

・心理療法の基礎
・対人不安の改善
・暖かい人間関係を築くコツ
・無条件の肯定のコツ

など練習していきます。興味がある方はお知らせをクリックして頂けると幸いです。お知らせ失礼いたしました。それではコラム②に進みましょう!

人間関係講座

目次

①ネット依存の原因と診断基準
②簡易診断で依存度チェック
③身体・心理面への症状
④統計・症状の例
⑤ネット依存症の対策

助け合い掲示板

コメントを残す

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


ブログ→
YouTube→
Twitter→

*出典・参考文献
・総務省(2019)平成30年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01iicp01_02000082.html
・片山友子 水野(松本)由子 (2016) 大学生のインターネット依存傾向と健康度および生活習慣との関係性 総合健診 2016年43巻6号,9-15
・河井ら(2011)SNS依存とSNS利用実態 日本社会情報学会全国大会研究発表論文集 26(0), 265-270, 2011
・総務省 平成26年版 情報通信白書 第1部 特集 ICTがもたらす世界規模でのパラダイムシフト, 第3節 安心・安全なインターネット利用環境の構築
・小寺敦之(2013),「『インターネット依存』研究の展開とその問題点」,東洋英和女学院大学『人文・社会科学論集』31.
・Canan F,Yildirim O,Yildirim T, et al:The relationship between internet addiction and body mass index in Turkish adolescents.CyberPsychol Behav Soc Netw,17,40-45,2014.

・大里貴子・松本さゆり・五味愼太郎,他「大学生におけるインターネット依存と学年ならびに日常生活状況の関連性に関する調査」,Campus Health,51,195-197,2014.
・中山秀紀(2015),「特集:現代の若者のメンタルヘルス 若者のインターネット依存」,日本心身医学会,55:1343-1352.
・三原聡子・前園真毅・橋本琢磨,他「わが国成人におけるインターネット嗜癖者数の5年間の変化.日本アルコール・薬物医学会抄録集,p210,2014.