仕事が辛い時に利用できる法律,公的機関とは
仕事が辛いコラム①では基礎的な対策について概観していきました。
現在では2015年や2016年の電通自殺事件を契機として、社会全体として働く人のメンタルヘルスに取り組む姿勢ができてきています。みなさんの会社でも仕事が辛い・・・と感じる際に利用できる制度があります。
本コラムでは基本的なものとして、
・ストレスチェック制度
・EAP(従業員支援プログラム)
・労働基準監督署
・労働組合
の4点について紹介します。
ストレスチェックとは?
経営者に職場改善を促す
ストレスチェック制度は、労働者のストレスの状況について定期的に検査を行い、労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防止することを主な目的としたものです(厚生労働省)。
ストレスチェックの結果は本人に通知がされます。また個人のデータが上司や社長に漏れることはありません。
ただし全体のデータとしては通知されることが多いので、経営者に職場環境の改善を促すことができます。
人事の査定などには影響がないので、経営陣に改善を促すため、率直に質問項目に答えることで仕事が辛いと感じる環境が改善に向かう可能性もあります。
50人以上の会社は義務
法律上は50人以上の会社は義務づけられています。しかし、目立った罰則がないためにストレスチェックをしない会社もあります。
もしあなたの会社が50人以上でストレスチェックをしていない場合は、社員のメンタルヘルスに相当鈍感である可能性があるため、人事の方などに提案するのもいいでしょう。
仕事が辛いと感じたり、ストレスチェックの結果が悪かった場合は、産業医にぜひ相談してみてください。
産業医とは常時雇用する従業員数が50名を超える場合、月に1回以上訪問をするお医者様です。ビジネスの現場のメンタルヘルスに詳しい方が多いので重要な支援の1つです。
EAPとは
EAP(Employee Assistance Program)とは心理面から社員を支援するプログラムです。大手の会社では自社にEAPチームを結成し、カウンセリングルームで悩みの相談などをしている会社があります。
また中小企業では、外部団体と契約して心の健康をサポートすることもあります。
こちらも原則として守秘義務があり、さらに、代金は会社負担であることが多いため、仕事が辛い状況が続いた場合は相談に行くと良いでしょう。
手厚い会社では、24時間の電話受付精度を採用している会社もあります。相談員は臨床心理士や産業カウンセラーが担当することが多いでしょう。会社にEAPの制度がないか確認してみてください。
労働基準監督署
仕事が辛い時や制度がおかしな時は、労働基準監督所に相談しましょう。労働基準監督署は、労働者保護法規に基づいて、労働者が健康的に働けるように支援をする厚生労働省の出先機関です。
労働基準監督署のメリットはなんと言っても、国の機関からの指導が入るため、職場環境改善の力が強いという点が挙げられます。例えば下記のような状態は積極的に活用したほうがいいでしょう。
・会社が残業代を払わない
・有休の消化を認めない
・会社のマイルールで有休が発生しない
・解雇予告期間と解雇予告手当などが不適当
・産前産後の就労の基準が法律違反
労働基準監督署は「法律」への対処はかなりしっかり動いてくれます。証拠を集めて相談すると良いでしょう。
ただ、仕事が辛いといってもパワハラセクハラなどのややグレーな問題は動いてくれないことも多いので、その点は注意が必要です。
組合の利用
労働組合とは
労働組合は、所属する会社の労働者が団結し、賃金や労働条件の改善を図るための団体です。毎年春頃から、会社と労働組合が交渉している様子やストライキ等で団体行動を起こしている場面をニュースなどで見かけると思います。
これらの団体行動での主張は、法律で保証された基本的な権利ですから、身心共に限界になってしまう前に相談をして利用したいですね。
労働組合への加入は、正社員はもちろん、派遣・契約社員、アルバイトやパートなど非正規雇用の方もできます。仕事が辛い状況に備えて加入しておくと安心です。
中小零細企業の方は個人加入の組合を
頼りになる労働組合ですが、日本の企業全体の約7割を占める中小零細企業で労働組合がある企業は3%以下とたいへん少ない状況です。そのため、労働組合がある会社に属している人の方が、珍しいかもしれませんね。
社内に労働組合がない場合は、ユニオン(合同労働組合・合同労組)に加入することで会社と団体交渉する事ができます。
ユニオンは、主に労働組合が無い中小零細企業の労働者が個人単位で加入する組織です。加入することで、労働組合法や憲法に基づく権利について保護を受ける事ができます。
ユニオンへの加入は、個人単位のため一人で加入する事ができます。また、パートやバイト、派遣労働者など非正規雇用者も加入できるユニオンもあるので条件にあう団体を探して加入して利用したいですね。仕事が辛い時の強い味方になってくれるでしょう。
仕事が辛いなら、まずは相談
仕事が辛い!と思った時は、気持ちを一人で溜め込まず周囲の人に相談したり、専門機関を利用することが大切です。職場でメンタルヘルス対策を行っているかをまずは確認して、状況に応じて利用してみましょう。
最後に、これまで「仕事が辛い」コラムを読んでいただきありがとうございました。コラムだけではなく専門家から直接学びたい!という方は良かったら私たち臨床心理士・精神保健福祉士が開催している、コミュニケーション講座への参加をおススメしています。
コラムだけでは伝えきれない知識や実践的なワークを進めています。みなさんのコミュニケーション能力が向上するよう、講師も一緒に頑張ります。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
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*出典
「離職を考える新入社員を調査したアンケート」労働政策研究・研修機構 厚生労働白書
職場のメンタルヘルスに関する最 近の動向とストレス対処に注目し た職場ストレス対策の実際 大塚 泰正 (労働安全衛生総合研究所研究員) 鈴木 綾子 ((財)鉄道総合技術研究所研究員) 高田 未里 (北里大学リサーチレジデント)
職場のメンタルヘルスに関する最近の動向とストレス対処に注目し た職場ストレス対策の実際 大塚 泰正 (労働安全衛生総合研究所研究員) 鈴木 綾子 ((財)鉄道総合技術研究所研究員) 高田 未里 (北里大学リサーチレジデント)
労働組合 厚生労働省WEBサイトより