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リーダーシップ入門,心理学

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リーダーシップ入門,心理学

当コラムでは、リーダーシップについて解説をしています。コラム全体の目次は以下の通りです。

①経営学から派生した方法論
②心理学から派生した方法論
③コミュ力とリーダーシップ

今回はリーダシップがおさえる心理学ついて解説をしていきます。目次は以下の通りです。

①ストローク力をつける
②ピグマリオン効果
③マズローの欲求の5段階
④フロー状態を意識する
⑤X理論とY理論+Z理論
⑥交互作用でチーム力をつける

リーダシップが抑えるべき基本的な知識や技法を選定しました。ぜひ最後までご一読ください。

①ストローク力をつける

ストロークとは何か

リーダーシップを執る上では、人を承認したり、認めたり、褒める力が大事です。これは「ストローク力」と言います。ストロークはエリック・バーン(1957)[1]によって提唱されました。

条件付き肯定的ストローク
無条件の肯定的ストローク

の2つに分けられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。

条件付きストローク

条件付きの肯定的ストロークとは、〇〇をしたからという条件付きの承認、褒める行為になります。具体的には

皆勤賞だから褒める
営業成績が上がったから認める
ミスが少ないから目をかける

これらはすべて条件付きストロークです。たとえ、条件付きであっても肯定的ストロークをもらえるのは喜ばしいものです。

ただし、条件付きには弱点があります。それは成果を出さないと褒められないため、慢性的に焦る状態になるということです。仕事は結果を出すことが大事ですが、行き過ぎると非人間的な空気になり、ストレスフルな職場になるので注意が必要です。

無条件の肯定的ストローク

一方で無条件の肯定的ストロークとは、条件なく承認をしたり褒める行為になります。具体的には、

結果のいかんを問わず応援を伝える
どんな部下でもえり好みせず温かく接する
稚拙なアイデアでもまずは傾聴する

などのコミュ二ケーションは無条件の肯定的ストロークに当たります。ポイントは「どんな時でもあなたと私は肯定されている」という感覚を部下に伝えることです。

〇〇だから・・△△だから・・・という理由はいらず、その人の存在自体を肯定するようにすると、人間関係はかなり安定します。結果的に職場のメンタルヘルスが向上し、健康的なチームが出来上がるのです。

ストロークの使い分けについてか以下のコラムで解説しています。是非参考にしてみてください。

ストローク理論の意味と活かし方

②ピグマリオン効果

ピグマリオン効果とは

ピグマリオン効果とは、1968年に米国の教育心理学者ロバート・ローゼンタールによって提唱された理論です[2]。ローゼンタールの実験は以下のような手順で行われました。

①テストの実施
子供たちに「ハーバード式突発性学習能力予測テスト」を行なう。

②成績が伸びる群、伸びない群
検査の結果と関係なく無作為に選ばれた児童の名簿を学級担任に見せて、この名簿に記載されている児童が、今後数ヶ月の間に成績が伸びる子供達だと伝えた。

③8か月後に再調査
8か月後成績を計ると、成績が伸びると言われた群は実際に成績が伸びた。

このように「人間は期待された通りの成果を出す傾向がある」ことを「ピグマリオン効果と言います。

部下に期待することが大切

リーダーシップをとるうえでは

この人ならできる!
きっと乗り越えられる
丁寧に教えれば一人前になる

と期待をすることがとても重要です。このように考えると、部下をいかに成長させるか?と工夫するモチベーションが高くなり、実際に成長しやすくなるのです。理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。

ピグマリオン効果とは何か

③マズローの欲求5段階説

マズローの欲求5段解説とは

マズローの欲求5段階説は、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した理論で[3]、人間の欲求を5つの階層で段階的に表したものです。

人の欲求は、自己実現を達成するまでに段階的に満たされていくものであり、

生理的欲求
安全欲求
社会的欲求
承認欲求
自己実現欲求

の5段階で構成されると考えられました。そして、マズローは、

5つの欲求はピラミッドのように構成されており、低階層の欲求が充たされると、より高次の階層の欲求を欲する

図にすると次のようになります。

マズローの欲求5段階説とは

マズローの考えの根底には、人間は自己実現のために絶えず成長する生き物だというものがあります。そして「人の欲求は皆同じものではなく、それぞれの価値観や置かれた環境によって変化する」という点がポイントとなります。

リーダーシップに活かすには?

仕事においても、入社したての新入社員と、数年間の実績を踏んだ中堅社員、管理職として業務に携わる人材とでは、モチベーションが向上する動機やインセンティブは異なってきます。

また、ライフスタイルによっても、できるだけ多くの賃金を求める人、休暇を大切にする人、立場や昇格に重きを置く人、様々タイプの人材がいて当然です。例えば、

安定志向が強く、一緒に飲んでいる時に「貯金が欲しい」ともらしていた
→残業があるときは、一声かける

自己実現欲求が強く早く出世がしたい部下
→難易度の高い仕事を与える

このように、リーダーシップを発揮するには、部下がどのステージにいるかを把握してその階層にあった対応が大切です。リーダーが、部下のやる気を引き出すためには、それぞれの環境や経歴、立場などを考えし、満たすべき欲求を見極めることが重要です。

マズローの欲求5段階説をより深く知りたい方は下記をご覧ください。

マズローの欲求5段階説の意味とは

④フロー状態を意識する

フロー状態とは

フロー状態は20世紀を代表する心理学者の1人であるミハエル・チクセントミハイが1975年に提唱した概念です[4]。フロー状態には以下の意味があります。

完全にのめり込んでいる状態
時間感覚がないくらい充実している

心理学の研究では、フロー状態にある人は、充実感がある、集中力が高い、モチベーションが高いことがわかっています。

難易度とスキルの3つの領域

フロー状態になるには

・課題の難易度
・自分の能力

のバランスがちょうどいいことがとても大切です。以下の図をご覧ください。

フロー図でリーダーシップを解説

それぞれの領域を解説していきます。

1.ゾーンA
自分の能力が低く、難しい課題に取り組んでいる状態です。例えば、

新入社員が複雑なプログラミンを書かされる
充分な研修がないのにいきなり営業に活かされる

このゾーンでは、失敗が続き挫折感が多く経験します。そのため、自信を失ったり行動が消極的になります。

2.ゾーンB
自分の能力は高いのに、簡単な課題に取り組んでいる状態です。例えば、

世界に通じるプログラミング力があるのに個人商店のシステムを作っている
営業力がものすごくあるのに単純作業で1日が終わる

このゾーンは簡単すぎるため、飽きてしまったりやる気を維持できません。

3.ゾーンC
能力と課題がどちらも高く、課題がやや難しいぐらいの状態です。例えば

世界に通じるプログラミングスキルがあり、基幹部分の制作をする
営業力が充分あり、重要な得意先を任された

このゾーンが、フロー状態に入りやすいです。成果が適度に出せるため自信が付きやすくなります。また、失敗しても成功も経験できるので、モチベーションが維持がしやすく集中力も高くなります。

フロー状態は、スポーツの世界でよく耳にする言葉ですが、ビジネスや教育の場面においても非常に有効な概念です。フロー状態をより深く知りたい方は下記をご覧ください。

フロー心理学の意味とは?

⑤X理論・Y理論とZ理論

1960年に経営学者でのダグレス・マグレガー氏は、人間観・動機づけについて、X理論、Y理論を提唱しました[5]。その後、1978年に経営学者のウィリアム・オオウチ氏がZ理論を追加しました[6]。それぞれの意味やメリットを比較してみましょう。

X理論(性悪説)

X理論には以下の意味があります。

人間は本来なまけたがる生き物で、責任をとりたがらず、放っておくと仕事をしないという性悪説的な考え方を前提とする理論

X理論の人間観を前提とすると、リーダーシップは一定の報酬を約束する代わりに、命令や強制で管理し、管理・懲罰・給料といった「アメとムチ」によりマネジメントすることになります。

メリット
マズローの欲求段階説の「生理的欲求」や「安全や安定の欲求」など低次欲求によって働く人に有効とされています。適切な仕事環境を与え、魅力ある目標や責任などの「機会」を与えることでモチベーションの向上が期待できる。

デメリット
指示や命令が強くればなるほど、部下は指示待ちになりやすい。上司の指示・命令がおよぶ範囲でしか業績が上げられないという悪循環に陥りやすい

Y理論(性善説)

Y理論には以下の意味があります。

人間は本来進んで働きたがる生き物で、自己実現のために自ら行動し、進んで問題解決をするという性善説的な考え方を前提とする理論

Y理論の人間観を前提に、高次欲求(自己実現の欲求・自尊欲求)が高い人に効果が期待できるネジメント手法です。個人の自己実現と組織の利益が合致するような目標設定を行うため、リーダーの見極め力が必要となります。

メリット
マズローの欲求段階説の「自己実現欲求」「自尊欲求」など高次欲求によって働く人に有効とされています。目に見えるカタチでのご褒美や厳罰を与えることで、モチベーションを維持が期待できる。

デメリット
低次欲求が満たされない労働環境や高次欲求を持ちにくいルーティンワーク等の場合、効果が得られない場合がある。

Z理論(性善・性悪説)

Z理論には以下の意味があります。

人間は本来進んで働きたがる生き物だが、同時に怠けたがる生き物。バランスを取るためにコミュニケーションを大切にする日本企業とアメリカ企業を比較対照しながら展開した理論

Z理論は、人間は状況に応じて、性悪的にも性善的にもなりうるとして、状況に応じて対応を使い分けるとする理論です。

メリット
状況に応じて、管理的にしたり、自由度を増やしたりすることによって、環境に応じたマネジメントが可能となる。

デメリット
リーダーによる高度な見極めが必要 

Z理論は、X理論・Y理論の良いところを集めた考え方で、人材を生かしたリーダーシップを行うには、一番理想とする理論かもしれません。ただし、Z理論を使いこなすには、リーダーに高度な戦略眼が必要になります。

部下のステージの応じた声掛けがリーダーシップのカギ

⑥交互作用でチーム力⇧

交互作用とは?

最後に、リーダーシップを取るうえで忘れてはいけない「交互作用」についてお伝えします。交互作用とは、

2つの異なる要素が組み合わさることで現れる相乗効果

のことです。例えば、会社では、一人ではパットせず、むしろマイナスの働きになっているような人でも、チームのメンバーとの相性で大きなパワーや魅力を発揮することがあります。これが交互作用です。

ネギだけ食べて美味しい?

交互作用はわかりにくいので、「ラーメン」で例えてみます。ラーメンには以下の具材が入っています。

醤油スープ 麺 焼豚 煮卵 ネギ

もしこれらがバラバラのお皿に入っていて、それぞれ別々に食べていたらおいしいでしょうか。全然おいしくないですね。一方でこれらを1つの丼に入れて、混ぜながら食べるとすごくおいしいです。これが交互作用です。

料理は同じ具材ばかりでは、まったくおいしくないのと同じように。組織も多様な人がいてこそ、大きな力を発揮します。

それぞれが異なったの力があり、それをうまく組み合わせて、交互作用を引き出すのがリーダーの資質になります。どんな社員にも丼に入って輝く手法があるはずです。是非交互作用を意識していきましょう。

交互作用を取り入れてリーダーシップを発揮する

お知らせ・発展編

もっと学びたい方へ

当コラムの内容をしっかり身につけたい方は、現役経営者、公認心理師による講座をおすすめします。内容は以下のとおりです。

・初級リーダーシップ入門
・コーチングの基礎,トレーニング
・やる気を引き出す,フロー心理学
・ビジネスコミュ力,トレーニング

体験受講に興味がある方は下記のリンクからお待ちしています。筆者も講師をしています(^^) 

コミュニケーション講座を体験してみる

コミュニケーション講座,初心者

リーダーシップ論の発展

リーダーシップ論シリーズは全部で3つあります。

①経営学から派生した方法論
②心理学から派生した方法論
③コミュ力とリーダーシップ

まだ読んでいないコラムがある場合はぜひ参考にしてみてください。

 

 

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1]Berne, E.(1957).A Layman’s Guide to Psychiatry and Psychoanalysis. Simon and Schuster
 
[2]Rosenthal,R. & Jacobson,L.(1968).pygmalion in the classroom. Urban Rev 3, 16–20
 
[3]Maslow, A. H. (1943). A theory of human motivation. Psychological Review, 50(4), 370–396.
 
[4]Csikszentmihalyi, M.(1975). Beyond boredom and anxiety: Experiencing flow in work and play. Hoboken, NJ: Jossey-Bass Publishers.
 
[5]McGregor, D. M., (1960).The Human Side of Enterprise, McGraw-Hill Book Co.
 
[6]Ouchi, W. G., & Johnson, J. B. (1978). Types of organizational control and their relationship to emotional well being. Administrative Science Quarterly, 23(2), 293-317.