仕事いきたくない原因「ストレス」に上手く対処しよう②
ストレスへの対処法を習得しよう
コラム①では、仕事いきたくない気持ちの3つの対処法についてご紹介しました。具体的には「①ストレスコーピングを習得する」「②プラスのストロークを心がける」「③サポーターを見つける」でしたね。
今回は、仕事が辛い時の対処法「ストレスコーピング力をつける」についてご説明します。
仕事にはストレスは付きもの
仕事はストレスが発生しやすいです。締め切り、上下関係、営業ノルマ、礼儀作法・・・など神経をすり減らしますね。特にストレス社会の現代では、ストレスへの対処する能力が重要となります。
ストレスの「4フェーズ」
ストレス理論では以下の4つのフェーズを意識しながらストレスへ対処してきます。
①ストレッサー
ストレッサーとは、ストレスの原因や元となる出来事を意味します。まずはストレスの元は何か?を具体的にしていきます。
②認知評価
ストレッサーがどれほどのストレスを生み出しているのか?評価していきます。ストレッサーを小さな問題だ感じれば、ストレス度合いは小さくなりますし、大問題だ!と感じれば大きなストレスを与えていることになります。
③ストレスコーピング
ストレッサーに対して、うまく対処できているか?をチェックしていきます。ストレスコーピングが苦手な方は日々のストレスをため込みがちです。コーピングが上手く行えている方は、大きなストレスでも柔軟に最小限の負担に留めることができます。
④ストレス反応
最終的な心と身体の反応を振り返っていきます。
仕事いきたくない・・・と悩むAさんの実例
上記の例は若干わかりづらい部分があると思います。そこで、私が実際にカウンセリングをしたAさんの実例でご紹介します(個人情報に配慮して改変しています)。Aさんと初めてお会いした時に感じたのは、ストレスへの対処が苦手だということです。
①ストレッサー
Aさんは、IT企業3年目のエンジニア社員です。3日前にも1か月かけて制作したシステムにミスが見つかり作り直しとなってしまいました。社長から直々に最初にしっかり打ち合わせしておけよ!と怒られました。
②認知的評価
「僕はなんて無能なんだ」
「自分が原因なんだから全て自分で解決しないと」
とAさんは自分で責任を抱えこんでいました。
③ストレスコーピング
まじめな性格のAさんは、作り直し作業をすべて自分で抱えて残業の毎日です。誰にも相談せずに一人で対処しようとしました。ストレスは日々を溜まっていく一方です。
④ストレス反応
ついに、Aさん「仕事いきたくない」という毎朝感じるようになり、もう仕事を辞めようかな・・・という気持ちまで浮かんできました。最近は社長の顔を見るたびに胃が痛くなってしまいます。
Aさんはこのように自分一人で仕事を処理しようとするあまり、ストレスフルで精神的に不安定な状態になっていました。最初に相談にいらした時は、元気が感じられず声にハリもなく疲れ切っていました。
ストレスコーピングの2つ種類
このように「仕事いきたくない」と感じてしまったら、とめどなくストレスが溜まってしまいますので、対策が必要になります。ここで重要なのは、ストレスコーピングのうまさです。ストレスコーピングには2種類があります。
①問題焦点型コーピング
ストレッサーとなる出来事や問題を、積極的に解決するための行動です。例えば、山積みの仕事に対して、上司に減らしてほしいと頼んだり、同僚に手伝ってもらうなどストレスの要因自体を解消コーピングのことです。これを専門的な用語で「問題焦点型コーピング」と呼びます。
②情動焦点型コーピング
ストレッサーとなる問題について、自分の認識や捉え方を変えようとする行動です。例えば、山積みの仕事を前に、「僕はなんて無能なんだ」「自分のミスだから全部自分で対処しなきゃ」と考えると不安や緊張を感じてしまいます。
「今の仕事量をこなすのは誰でも難しい、客観的にも自分の能力が低いわけではない」
「自分も同僚がミスをした時に手伝ってあげたのだから、自分一人ですべて対処する必要はない」
など前向きな考え方をして、バランスよくをストレスに対処していくのです。その結果、不安や緊張が和らいいきます。また誰かに相談することも大事です。これを専門的な用語で「情動焦点型コーピング」といいます。
ストレスコーピングの練習をしよう
ストレスコーピングは問題焦点型、情動焦点型の2つをバランスよく行うことが望ましいと考えられています。それではここで問題です。先ほどのAさんの場面に対してどのようなストレスコーピングが望ましいでしょうか?
適切な問題焦点型コーピング
→
適切な情動焦点型コーピング
→
解答例(Aさんが実際に取り組んだこと)
問題焦点型コーピング
→率直に仕事の量が多いと伝え、量を調節してもらう。
→同僚や上司などに協力してもらう。
→自分に対応できることできないことを明確にする
→打ち合わせでしっかりと情報共有を行う
→サポートを充実させるために予算をもらう
情動焦点型コーピング
→プライベートで適度に愚痴をこぼす
→社長に仕事が苦痛になっている旨を伝える
→会社が協力してくれない場合は転職をする
→外部のカウンセラーに相談する
今回は、Aさんの事例をもとに、適切なストレスコーピングについてご紹介しました。いかがでしたか?実はAさんはもともと「仕事いきたくない」という状況でも自分でも一人で抱え込みやすく、すべてを自分だけで解決しようとしていました。カウンセリングを通して、人の頼ることは恥ずかしいことではないと気づき、周りの人と協力して仕事を進めていきました。
結果的に社長との関係はあまり変わらなかったのですが、得意先からの信頼度は上がったしたようです。笑顔も出てきたのが印象に残っています。
Aさん当初は適切なストレスコーピングができませんでした。そんな時は先ほどの練習問題のように、認知的評価やストレスコーピングを紙に書き出してみましょう。自分の考え方やどのようなコーピングをしているかが分析できます。少しずつ練習していきましょう。
自分に当てはめて考えてみよう
それでは最後に自分自身の問題で練習をしてみましょう。
①ストレッサー
ストレスの元となる出来事はどんなことですか?
②認知的評価
そのときどのような考えが頭をよぎりましたか?
③ストレスコーピング
問題解決型コーピング
情動解決型コーピング
それぞれ考えてみましょう。バランスが大切です。
④ストレス反応
まだストレス反応が出ていますか?まだストレスを感じている場合は③のストレスコーピングをもう一度考えてみましょう。
いかがでしょうか?普段やらないことなので、なかなか難しかったと思います。ただ続けて失敗を繰り返すうちに少しずつとコーピング力がついていきます。
仕事いきたくないと感じる場合には、自分の問題やストレスを分析し、「問題解決・情動解決」を意識するように心がけてみてください。
次回は、「プラスのストロークを心がける」についての詳しいご説明をします。
次のコラムへ進むボタンはもう少し下にあります。コラムだけでなく心理の専門家の講義を受けてみたい!という方は下のお知らせをクリックして頂けると幸いです。私たちが講義をしている講座となります。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
- 社会心理学会会員
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
YouTube→
*出典
認知行動療法 坂野雄二著 日本評論社