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メタ認知能力の意味や療法、鍛える方法を解説

メタ認知能力とは?意味や鍛える方法①

はじめまして!臨床心理士の加賀、精神保健福祉士の川島です。私たちは現在、こちらの初学者向けコミュニケーション講座の講師をしています。コラムを読んで興味を持っていただいたら、是非お待ちしています。

今回は「メタ認知」についてお話していきます。目次は以下の通りです。

  • メタ認知とは?意味や特徴
  • ASDの子どもは苦手?
  • コミュニケーションとの関係
  • メンタライゼーションとは
  • マインドフルネス療法
  • 認知療法でイライラ改善!

メタ認知とは?意味・特徴

メタ認知の『メタ』とは、
・高次な
・含めた
・超
という意味で1つの物事や能力ではなく、総合的、多面的であることを意味します。

そして、心理学辞典(1999)によると、メタ認知とは、

「認知過程に関する知識,自己の認知状態やその過程の評価,認知過程や方略の実行制御,認知活動に関連した感情的評価といった広範囲な心的事象を包摂する」

とされています。

漢字が多すぎて難解ですね。。簡単に解釈すると、

・自分自身の考え方を把握する能力
・自分の感情発生プロセスを把握する能力

・おかれている状況を客観視する能力
と考えてよいでしょう。

日常生活に必須の能力!

メタ認知能力が高い人は、自分の状況や感情発生のプロセスを客観視することが得意です。例えば、友人が待ち合わせ時間に2時間遅刻して、悪びれる様子もなかったとします。この時、メタ認知が高い人と低い人では以下のような違いが起こります。

・メタ認知が低い人

メタ認知 低い

メタ認知が低い人は自分の感情に流されてしまう傾向があります。怒りによって狭められた視点で、判断することになり、結果的に取り返しのつかない状況に陥りやすいです。

・メタ認知が高い人

一方で、メタ認知が高い人は自分の感情の背後にある考えを理解しようと励みます。自分の考えを客観的に見つめることで、お互いとって意味のある行動を起こしていくのです。

メタ認知と脳の仕組み

成人を対象にした脳画像研究によると、メタ認知課題を行っているときに脳では、両側背外側前頭前皮質や左側腹側前頭前皮質が活性することが報告されています(Owen, Evans, & Petrides, 1996; Smith & Jonides,1997)。

*画像出典ウィキペデイア(前頭前皮質)

つまり、脳の前頭前野が主に司る領域であることが示されています。脳の前頭前野は人間が必要な物事に注意を向ける、計画する、いくつかの物事を統合するなど非常に高次な機能担っている部分です。

前頭葉の完成は25年

高次機能であるメタ認知はすぐには成熟しませんが、メタ認知を含め前頭前野は児童期から青年期にかけて発達し続けることが示されています。具体的にはおおよそ25年かかると考えられおり、他の脳部位よりも成熟に時間がかかるとされています(Croneら, 2006)。

子どもよりも大人の方が自分自身を客観視することや、先を見通し答えを出すことができたりするのは脳の発達によるものだと関連づけられています。そして、この能力の得意・不得意が見えてくるのは、中学生ごろからだと言われています。

その理由は、中学生になると、

・学校生活が複雑になる
・学業の難易度が上がる
・本人の自立性が求められる

ようになるためです。(飯田・石隈, 2002)。例えば、数学の方程式を習ったり、部活などで上下関係を学んだり、進路を真剣に考えるなどの変化があります。この時期から、徐々にメタ認知が機能しているかが鮮明になってくるのです。(Best, Miller, & Naglieri, 2011)。

メタ認知研究の実際

ここまでは、学業や仕事、プライベートにも重要なメタ認知をご紹介しました。次はメタ認知がどのような影響を与えるかを報告した研究を4つご紹介していきます。

①ASDとメタ認知研究

これまで社会性の障害、限定された興味関心やこだわり行動などの特徴を持つ自閉スペクトラム症(ASD)の子どもは、メタ認知の苦手さがあることが海外の研究報告では多くありました(F.Happéら ,2006)(Penningtonら, 1996)。

ASDの子どもでは、脳の前頭前野の成熟が遅れることが報告されており(Lunaら, 2007)、そのせいでメタ認知の苦手さがあると考えられています。

メタ認知に関する脳領域の解説

また、桃田ら(2017)は、日本人の中学生約2,000名とASDの中学生約100名を対象に、日常生活で起こるメタ認知の問題を調査しました。ここで使用された質問紙は、日常生活の行動からメタ認知が問われるような項目が使用されています。

たとえば、
・学校の宿題を提出すること
・テスト勉強などを効率的にこなすこと
などです。

その結果を以下に表・図で示します。

メタ認知とは

この調査報告では、一般群の中学生と比較してASD群の中学生は平均して約30点分メタ認知の問題が日常生活で多いということが証明されています。つまり、問題得点が高いということは、学校や家でメタ認知に関わる問題で困ることが多いことを表します。たとえば、いろいろな教科から出される宿題を計画的に実施できないことなどが挙げられます。

②メタ認知能力は社会適応に影響

メタ認知の問題はコミュニケーションにもつながりが深いようです。大江・亀田(2015)は、犯罪者や非行少年の自己統制力不足や自他に対する認知の誤りに注目しました。この研究では、再犯防止を目的としてメタ認知と自己統制力、自己認識力、社会適応との関連について文献研究を行いました。

その結果、

メタ認知の問題について

メタ認知能力が低いと他者とのコミュニケーションや思考、行動等意思決定に影響を及ぼすことがわかりました。これらの結果から、大江・亀田 (2015)は、犯罪者や非行少年が持つ自己統制力不足や自他に対する認知の誤りなどの背景には、
・情報の理解の仕方
・思考や行動のコントロールの問題
に関連するメタ認知能力の低さが一因ではないかと結論づけています。

④先延ばし傾向

メタ認知は、優先順位を立て物事を実行していくために重要な能力でもあります。藤田(2010)は大学生161名を対象に、「課題先延ばし」と以下の2つのメタ認知の関連を調査しました。

①努力・モニタリング方略
課題達成のために進捗など自分で客観視しながら努力して取り組む方法

②プランニング方略

課題達成のために計画を立て進めていく方法

それぞれに結果を見ていきましょう。まずは、努力・モニタリング方略についてです。

課題を先延ばしにする傾向が多いほど、努力・モニタリングが少ないという相関関係が見られます。つまり、自分の進捗を客観的に見ることが少ない人は、課題を先延ばしにしてしまうと考えられます。(※相関関係をより深く知りたい方はコチラをご覧ください)

続いて、プラニング方略はどうでしょうか。

 

こちらも同様に、課題を先延ばしにすることが多いほど、プラニングも少ないという結果になりました。やはり、計画を立てないとやるべきことを先延ばしにしやすくなってしまうのですね。

これらの結果から藤田(2010)では、課題先延ばし行動をしないためには、メタ認知を使った学習を通して課題に取り組むことが重要であると結論づけています。

つまり、
・自分を客観視しながら課題に取り組む
・計画を立てて学習に取り組む
以上のことが重要だと考えられています。

ここまでは、メタ認知とは何か?問題や能力が低いと仕事、学業、プライベートに影響することやコミュニケーションの問題、行動の先延ばしなどが挙げられることをご紹介しました。次からは、メタ認知の問題の解決法についてご紹介します。 

メタ認知と学習好感い関しての研究

以上のことから、メタ認知的活動を促すワークシートを活用することは、学習者のメタ認知活動を高め学習の内容理解に効果が示されました。

メタ認知を鍛える方法3つ

それでは、メタ認知を鍛える方法を見ていきます。メタ認知をトレーニングする方法は大きく分けて3つあります。自分にも当てはまるな・・・と感じる項目についてリンク先をチェックしてみてくださいね♪

①メンタライゼーション

メタ認知が低く、「自分がどう考えているか、どう感じているか」という点を今まで意識してこなかった方という方は、メンタライゼーションが有効です。

メンタライゼーションとは、1990年代にイギリスの精神分析家であるフォーナギーが提唱した概念で、簡単に言えば以下のような意味があります。

① 身の周りに起こった出来事に対して
②心理的な背景を読み取る能力である

とされています。「自分は何がしたいのだろう・・・」「自分の適職は何だろう・・・」「どんな時に自分は充実感があるのだろう・・・」と自分の感情や価値観を考えることがメンタライゼーションの基本となります。少しわかりにくい概念ですが、メタ認知を鍛える上で非常に重要な概念です。

自分のことを振り返ることが少ない…という方は、メンタライゼーションを学ぶをことで自分の新しい側面をより多く見つけることができます。

メンタライゼーションをより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・何気ない毎日の中に発見がある!?
・行動や振る舞い方を振り返ってみる
・自分はどのように生きたいか
メタ認知能力を鍛える「メンタライゼーション」②

メタ認知を鍛えるワークシート

②マインドフルネス療法

マインドフルネスとは、今ここで起きている事柄に対して、「好き/嫌い」などの判断をせずに、観察して放っておくことという意味で捉えられます。

マインドフルネスは言葉で伝えるよりも、何かに例えたり、隠喩を使って表現した方が分かりやすい性質があります。そこで、エクササイズやワークを用いて体験的に伝えることが多いです。

その中でも、特に有名なのが、「流れに漂う葉っぱのエクササイズ」です。これは、自分の思考が浮かんでは消えることを観察することが主な目的です。自分にどのような考えが浮かんでいるかに意識を向け、それが流れて消えていくのを感じることで、メタ認知も活性化していきます。

感情や思考が頭から離れない…という方は、流れに漂う葉っぱのエクササイズを行うことで冷静さを保つことができます。

葉っぱのエクササイズをより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・川の流れをイメージする
・葉っぱに思考や絵を載せる
・流れをイメージし続ける
メタ認知能力トレーニング!「マインドフルネス療法」③

③認知療法でメタ認知UP!

メタ認知ができずにイライラしてしまう方は、全て他人が悪いと考え方がちです。何かうまく進まないことがあった時には、原因を他人に求めてしまうのです。こうした「他責思考」は自覚しにくいですが、メタ認知を鍛えることで改善することができます。そして、極端な思考を柔軟にする時に活用できるのが「認知療法」です。

認知療法とは、ベックやエリスという心理療法家が提唱した理論です。認知療法は“自分の受け止め方のクセ”や信念に焦点を当て、それらを変えることで問題への対処能力をあげていきます。

つい他人の責任を考えてしまう…という方は、認知療法を学ぶことでメタ認知をトレーニングすることができます。

認知療法をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・認知療法の考え方
・柔軟思考とは
・練習問題で習得!
メタ認知能力でイライラを改善!「認知療法への応用」④

メタ認知を鍛えよう

今回は、メタ認知とは何か?問題や解消法などを解説してきました。メタ認知の苦手さに目を向けて行動を修正してみることでこれまでよりも効率的に物事を進めることが出来ると考えられます。ぜひ、これからご紹介するコラムでトレーニングしていきましょう。

次回は、メタ認知を鍛える方法の1つ目「ワークシート練習」をご紹介していきます。お楽しみに!

★メタ認知が高まれば、人間関係も仕事もうまくいく!
心理学講座

目次

①メタ認知能力-概観
②メンタライゼーション
③マインドフルネス療法
④「認知療法への応用」

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・引用文献
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