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メタ認知能力の意味や療法、鍛える方法を解説

メタ認知能力とは?意味や鍛える方法

はじめまして!臨床心理士の加賀、精神保健福祉士の川島です。私たちは現在、こちらの初学者向けコミュニケーション講座の講師をしています。コラムを読んで興味を持っていただいたら、是非お待ちしています。

今回は「メタ認知」についてお話していきます。目次は以下の通りです。

  • メタ認知とは?意味や特徴
  • ASDの子どもは苦手?
  • コミュニケーションとの関係
  • メタ認知能力の特徴
  • 学習に効果がある鍛え方
  • まとめ

メタ認知とは?意味・特徴

まずメタ認知の『メタ』とは、
・高次な
・含めた
・超
という意味で1つの物事や能力ではなく、総合的、多面的であることを意味します。そのため『メタ認知』とは、
・自分自身の認知や行動を把握することができる能力
・自分のおかれている状況を客観視する能力
と言えます。

日常生活に必須の能力!

メタ認知能力が強い人は、物事全体を見通し、優先順位を立て、計画を実行することが得意だと言われています。そのため、この能力は、仕事やプライベートでも非常に重要な能力であると言えます。

たとえば、平日には仕事をして、週末は思いっきり遊びたいのであれば、平日に残業しておこう、これを終わらせておこうなど計画する過程と同様です。そのプロセスは、

メタ認知と日常のプロセスなど未来の目的を意識し、計画を立て、整理し、行動に移しています。

つまり、メタ認知能力が高ければ、日常のやるべき事をスムーズに進めることが出来るため、必須の能力なのです。

メタ認知に関連する脳領域

成人を対象にした脳画像研究によると、メタ認知課題を行っているときに脳では、両側背外側前頭前皮質や左側腹側前頭前皮質が活性することが報告されています(Owen, Evans, & Petrides, 1996; Smith & Jonides,1997)。

つまり、脳の前頭前野が主に司る領域であることが示されています。脳の前頭前野は人間が必要な物事に注意を向ける、計画する、いくつかの物事を統合するなど非常に高次な機能担っている部分です。

そのため、高次機能であるメタ認知はすぐには成熟しませんが、メタ認知を含め前頭前野は児童期から青年期にかけて発達し続けることが示されています。

完成には長い時間が必要!

これらの前頭葉機能の発達には、おおよそ25年かかると考えられおり、他の脳部位よりも成熟に時間がかかるとされています(Crone, Wendelken, Donohue, van Leijenhorst, & Bunge, 2006)。

子どもよりも大人の方が自分自身を客観視することや、先を見通し答えを出すことができたりするのは脳の発達によるものだと関連づけられています。そして、この能力の得意・不得意が見えてくるのは、中学生ごろからだと言われています。

理由は、中学生になると小学生とは異なり、
・学業、交友関係、進路決定など環境や課題が複雑になる
・本人の自立性が求められる
ようになるためです(飯田・石隈, 2002)。そのため、この時期からメタ認知の役割が非常に重要になってきます(Best, Miller, & Naglieri, 2011)。

メタ認知の問題とは?-心理学の研究

ここまでは、学業や仕事、プライベートにも重要なメタ認知をご紹介しました。次はメタ認知の苦手さがどのような問題につながるかを報告した研究についていくつかご紹介していきます。

 

ASDの子どもはメタ認知が苦手?

これまで社会性の障害、限定された興味関心やこだわり行動などの特徴を持つ自閉スペクトラム症(ASD)の子どもは、メタ認知の苦手さがあることが海外の研究報告では多くありました(Happé, Booth, Charlton, & Hughes, 2006; Pennington & Ozonoff, 1996)。

ASDの子どもでは、脳の前頭前野の成熟が遅れることが報告されており(Luna, Doll, Hegedus, Minshew, & Sweeney, 2007)、そのせいでメタ認知の苦手さがあると考えられています。

メタ認知に関する脳領域の解説

日本人のASDの子どもにおいてもメタ認知の苦手さが確認されている研究があります。桃田ら(2018)の研究報告では、日本人の中学生約2,000名とASDの中学生約100名を対象にして日常生活で起こるメタ認知の問題を質問紙で調査した研究があります。

ここで使用された質問紙は、日常生活の行動からメタ認知が反映されるような項目が使用されています。

たとえば、
・学校の宿題を提出すること
・テスト勉強などを効率的にこなすこと
などです。その結果を以下に表・図で示します。

メタ認知とは

メタ認知に関する研究

この調査報告では、一般群の中学生と比較してASD群の中学生は平均して約30点分メタ認知の問題が日常生活で多いということが証明されています。

つまり、この問題得点が高いということは、学校や家でメタ認知に関わる問題で困ることが多いことを表します。たとえば、いろいろな教科から出される宿題を提出期限を見て計画的に実施できないことなどが挙げられます。

この研究報告から日本人ASDの中学生においても、一般の中学生よりもメタ認知の問題が統計学的に多いことが示されました。

メタ認知の重要性は様々な分野で注目されています。そのため、ASDの子どもでメタ認知の問題が多いということなどにも近年は注目が集まり、解決法も考案されてきています。

コミュニケーションに影響する!

メタ認知の問題はコミュニケーションにもつながりが深いようです。大江・亀田(2015)は、犯罪者や非行少年の自己統制力不足や自他に対する認知の誤りに注目しました。

この研究では、再犯防止を目的としてメタ認知と自己統制力、自己認識力、社会適応との関連について文献研究を行いました。

その結果、

メタ認知の問題について

メタ認知能力が低いと他者とのコミュニケーションや思考、行動等意思決定に影響を及ぼすことがわかりました。

これらの結果から、大江・亀田 (2015)は、犯罪者や非行少年が持つ自己統制力不足や自他に対する認知の誤りなどの背景には、
・情報の理解の仕方
・思考や行動のコントロールの問題
に関連するメタ認知能力の低さが一因ではないかと結論づけています。

このようなメタ認知能力の低さや苦手さがコミュニケーションや思考、行動に影響を及ぼすことは誰の日常生活にも考えられるでしょう。

能力が低いと先延ばし行動が多い!

上記にメタ認知は、優先順位を立て物事を実行していくために重要な能力であることをお伝えしました。やるべきことを適切なタイミングで行うことはどの分野においても必須ですよね?

藤田(2010)は大学生161名を対象に、「先延ばし行動」と「メタ認知を使った学習」に関する研究をしています。

「先延ばし行動」とは、やらなければならない課題や仕事を後回しにしたり、やることを避ける傾向のことを言います。一方、「メタ認知を使った学習」には大きく2つの要因に分けられます。

「メタ認知を使った学習」
①努力・モニタリング方略
課題達成のために進捗など自分で客観視しながら努力して取り組む方法
②プランニング方略
課題達成のために計画を立て進めていく方法

が含まれています。この2つの要素と先延ばし行動の関連について見ていきましょう。

まず、先延ばし行動と統計学的に有意に関連があったものを図示しました。

先延ばし行動と統計学的な調査

図3、先延ばし行動とメタ認知を使った学習との関連(藤田2010一部改変)

結果は、全ての項目において有意に負の相関が認められました。メタ認知を使った学習が低いと課題の先延ばしが多いことが確認されています。

これらの結果から藤田(2010)では、課題先延ばし行動をしないためには、メタ認知を使った学習を通して課題に取り組むことが重要であると結論づけています。

つまり、
・自分を客観視しながら課題に取り組む
・計画を立てて学習に取り組む
以上のことが重要だと考えられています。

ここまでは、メタ認知とは何か?問題や能力が低いと仕事、学業、プライベートに影響することやコミュニケーションの問題、行動の先延ばしなどが挙げられることをご紹介しました。次からは、メタ認知の問題の解決法についてご紹介します。 

メタ認知で学習効果がアップ!

メタ認知に関する心理学の研究に、メタ認知を使って学習活動をすることで使わないときよりも学習に効果が見られたという報告があります。

小川ら(2017)の研究では、中学生が学習する理科の内容においてメタ認知的活動を実践した場合とそうでない場合の効果報告を行っています。具体的には、学習内容を理解することを目的としたメタ認知ワークシートを活用します。効果研究として生徒を、以下の2群に分けて学習内容の理解について比較を行いました。

実験群:ワークシートを活用する群
統制群:ワークシートを活用しない群

その結果がこちらです。
①実験群の生徒は、
統制群の生徒より学習内容を理解した生徒が多い。

⇒メタ認知ワークシートは効果的な学習を促進する効果がある

②実験群の生徒は、
メタ認知的活動を多く行っている。

⇒ワークシートはメタ認知活動を促進する資料として有効な働きをする

メタ認知と学習好感い関しての研究

以上のことから、メタ認知的活動を促すワークシートを活用することは、学習者のメタ認知活動を高め学習の内容理解に効果が示されました。

この研究で用いたメタ認知ワークシートとは、活動前、活動中、活動後に11の質問に答えながら実践していく方法です。今回はこのメタ認知ワークシートを、メタ認知を鍛えるトレーニングとして取り組くんでいきましょう。

メタ認知を鍛えるトレーニング

まずは、花子さんの例を見ていきましょう。

<例題>
会社員の花子さんは、企画を立てることが苦手だと感じています。理由は、
①内容が一貫していないと評価を受ける
②スケジュール通りに進まない
など仕事内容や方法に問題意識を感じています。そこで、今回は方法を変えてメタ認知ワークシートを使用して仕事を進めることにしました。まずは、目標を立ててスタートします。

花子さんの目標
Aという新商品の企画を立てる

<メタ認知ワークシート>

メタ認知を鍛える11の質問
実施前
1:これから何を調べるのか
→花子さんの回答:Aの必要性やコスト

2:他の人の意見で参考になるところは?
→花子さんの回答:Aには既に似ているB商品がある。BがあるのにAを作るメリットは?

3:考え直すポイントは?
→花子さんの回答:競合商品と比較しつつ企画を作成する。

実施中
4:計画通りに進んでいるか?
→花子さんの回答:進捗が遅れ気味、自分の中だけで考えていると焦りも出てくる。

5:計画通りに進行するため大事なことは何か?
→花子さんの回答:他人に進捗を報告したり、意見を出し合ってよりA商品のアイディアを明確にすること。

6:実際に行動し始めてはっきりしてきたことは?
→花子さんの回答:AとBの比較をしながら進めることでAの弱点も見えてきた。

7:他の人と話をしているうちに、はっきりしてきたことは?
→花子さんの回答:他の人の目に触れることでよりアイディアがクリアになり、プレゼンテーション前の練習にもなる。

花子さんは、A商品の企画を会議の場でプレゼンしました。

実施後 
8:計画通りにできたかどうか?
→花子さんの回答:途中遅れ気味になったが、最終的には計画通りにできた。

9:自分は何をやったのか?
→花子さんの回答:B商品の企画を立てるために競合Cと比較しながらプレゼンした。内容が他のところに散らばることなく、メリットやデメリットが分かりやすくまとまった。

10:他人の意見で参考になったことは?
→花子さんの回答:現在の計画では、コストがかかりすぎる、ユーザーの事はよく考えられているが、精算側のことをもう少し考えた方が良い。

11:新しく考えたことは?
→花子さんの回答:指摘されたことは最もな意見だった。その点をもう少し調査してさらに企画を詰めていく。

花子さんは、いつも企画の方向性にまとまりが欠けていたり、期限内に終わらないという問題を抱えていましたが、メタ認知ワークシートを使用しながら進めたことで自分のやるべき事や方向性が明確になりました。また、他人の意見を参考にしながらバランスのよいものにすることができました。

メタ認知を鍛えるワークシート

メタ認知ワークシートを作っていくときのコツは、
いろいろなアイディアを出してみること
・気づきをたくさん書いてみること
です。このシートにはじめから正解はありませんので、とにかくやってみて気づきを振り返りましょう。自分に眺めるよりも使っていくことが大切です!

それではここからはメタ認知を鍛えるトレーニング「メタ認知ワークシート」を実際に使って、目標達成を目指しましょう!

<ワーク>
あなたが達成したい目標を書き出してください。
あなたの今回の目標
            

メタ認知ワークシートで実践してみよう!

実施前
1:これから何をすべきか?

2:他の人の意見で参考になるところ

3:考え直すポイントは?

実施中
4:計画通りに進んでいるかどうか?

5:計画通りに進行するため大事なことは何か?

6:実際に行動し始めてはっきりしてきたことは?

7:他の人と話をしているうちに、はっきりしてきたこと。

実施後 
8:計画通りにできたかどうか?

9:自分は何をやったのか?

10:他人の意見で参考になったこと。

11:新しく考えたこと。

メタ認知のトレーニング例題

ワークはどうでしたか?実際にやってみることで意外と出来ていなかったことなどに気づくことが出来ます。また、文字で書いてみる、打ち出してみることで視覚化できより客観的に理解できるようになります。

また、日記やブログ発信もおすすめです。このときにメタ認知を意識するのであれば、書いたものを読み返し、振り返って

・どうしてこのようにかんじたのか?
・次にどうやればよいのか?

など少し深く掘ることがメタ認知を鍛える方法になります。

メタ認知を使って効率性をアップ!

メタ認知コラムでは、メタ認知とは何か?問題や解消法などを解説してきました。解決法で挙げたワークではメタ認知ワークシートを使って自分が立てた目標を自分の考えや行動を俯瞰しながら進め、振り返る方法を提案しました。

メタ認知の苦手さに目を向けて行動を修正してみることでこれまでよりも効率的に物事を進めることが出来ると考えられます。

コラムを読み終えて「明日からやってみよう」と思って頂けると嬉しいです。また、ご紹介した解決方法を実践する中で、あなたが悩んでいた問題にメタ認知の苦手さが関わっていたんだ!という発見やそのメタ問題が少しずつ解消されることを実感して頂けたら幸いです。

メタ認知のトレーニングを実践

最後に、これまで「メタ認知」コラムにお付き合いして頂き、ありがとうございました。新しいことを生活に取り入れ、これまでの習慣を変えるのはなかなか大変なことです。焦らず、できそうなことから根気強く取り組んでみて下さい。

まずは、ご紹介したワークを使って実践してみてください。そして、もう少し深く学びたい!という方は、弊社のコミュニケーション講座への参加してみませんか。弊社では年間500人が参加されるコミュニケーション講座を開催しています。気軽な気持ちで足を運んでみてくださいね、お待ちしております。     

心理学講座

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・引用文献
Best, J. R., Miller, P. H., & Naglieri, J. A. (2011). Relations between executive function and academic achievement from ages 5 to 17 in a large, representative national sample. Learning and individual differences, 21(4), 327-336.
Crone, E. A., Wendelken, C., Donohue, S., van Leijenhorst, L., & Bunge, S. A. (2006). Neurocognitive development of the ability to manipulate information in working memory. Proceedings of the National Academy of Sciences, 103(24), 9315-9320.
藤田, & フジタ,タダシ. (2010). メタ認知的方略と学習課題先延ばし行動の関係.
飯田順子, & 石隈利紀. (2002). 中学生の学校生活スキルに関する研究. 教育心理学研究, 50(2), 225-236.
西村多久磨, 河村茂雄, & 櫻井茂男. (2011). 自律的な学習動機づけとメタ認知的方略が学業成績を予測するプロセス. 教育心理学研究, 59(1), 77-87.
Happé, F., Booth, R., Charlton, R., & Hughes, C. (2006). Executive function deficits in autism spectrum disorders and attention-deficit/hyperactivity disorder: examining profiles across domains and ages. Brain and cognition, 61(1), 25-39.
Owen, A. M., Evans, A. C., & Petrides, M. (1996). Evidence for a two-stage model of spatial working memory processing within the lateral frontal cortex: a positron emission tomography study. Cerebral Cortex, 6(1), 31-38.
大江由香, & 亀田公子. (2015). 犯罪者・非行少年の処遇におけるメタ認知の重要性. 教育心理学研究, 63(4), 467-478.
小川恵里佳, 高垣マユミ, & 清水誠. (2017). メタ認知的活動を促すことが科学概念形成に及ぼす効果: 中学校第 1 学年 「物質の状態変化」 の学習を事例にして< 教育科学. 埼玉大学紀要. 教育学部, 66(1), 13-26.
桃田茉子, 浅野良輔, 永谷文代, 宮川広実, 中西真理子, 安田由華, … & 谷池雅子. (2017). 中学生対象日本語版 BRIEF 構成概念妥当性の検証と標準化. 心理学研究, 88(4), 348-357.
Luna, B., Doll, S. K., Hegedus, S. J., Minshew, N. J., & Sweeney, J. A. (2007). Maturation of executive function in autism. Biological psychiatry, 61(4), 474-481.
Smith, E. E., & Jonides, J. (1997). Working memory: A view from neuroimaging. Cognitive psychology, 33(1), 5-42.
Pennington, B. F., & Ozonoff, S. (1996). Executive functions and developmental psychopathology. Journal of child psychology and psychiatry, 37(1), 51-87.