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愛着障害とは何か?愛着形成の基礎心理②

愛着障害とは何か?生涯影響する心理②

コラム①では、愛着障害について概観していきました。重要な要素としては、「①愛着形成」「②精神医学上の診断」「③子どもの保育・治療」「④大人の愛着障害」の4つでしたね。

今回は、「①愛着形成」について解説していきます。

愛着とは何か?意味と定義

心理学辞典(1990)では、「愛着」について以下のように定義されています。

「多くの赤ん坊は生後6.7か月になると、ほかの人が部屋を出ていっても平気なのに、母親が部屋に出ていくと泣きさけんだり、泣いているにほかの人がいくらあやしても泣きやまないのに、母親が受け取るとぴたりと泣きやむ、というような行動を示すようになる。

これは赤ん坊が母親という特定の対象に対して特別の感情を抱くようになったからにほかならず、このような特定の情緒的な結びつき(affectional tie)をボウルヴィ(Bowlby, J.1969)はアタッチメント(attachment)と名付けた。日本語訳としては愛着という用語が定着している。」

母性的な養育の体験が欠けていると、子どもは気持ちをコントロールすることや適切に表現することが難しいといった情緒面の問題を現す傾向があります。成長の遅さや体調不良などの問題も見られることもあります。

古典的愛着研究の歴史

ここで愛着理論と主要な実験の歴史をお伝えします。

・Harlowの愛着形成‐動物実験

古典的に有名なHarlowの動物実験を紹介しましょう。Harlowはサルを対象に心理的な実験を行いました。

赤ん坊と母親を引き離す
まず、アカゲザルの赤ん坊を母親と生活させないようにして育成を始めます。昔こういったひどい実験が結構行われていました(^^;そして、布の母ワイヤー母を2体用意し、ミルクを入れた哺乳瓶を取り付けます。

愛着障害 原因
ワイヤー母に育てられたサル
ワイヤー母によって育てられたサルは、布の母に比べて、好奇心が育たず、
生き残ることが困難でした。

布の母に育てられたサル
布の母に育てられたサルは、好奇心が豊かに育ったと言われています。ただし、大人になってから愛着障害に近い症状が見られました。その後、布の母だけでなく、仲間との交流をする機会を増やしたところ、かなり社会性が改善されました。

このように、霊長類のように社会を創る動物は生まれた時から外界との心地よい接触を求め、それが生育上重要な役割を果たすということが示唆されます。

幼いころにしっかり「抱っこをする」「暖かい声をかける」「スキンシップをしっかりする」「友達同士で遊ぶ」このような習慣をしっかりする必要があるのです。

幼少期の体験が重要

・ボウルビィの愛着理論

「愛着理論」は、元々はボウルビィという精神科医・精神分析家が提唱しました。ボウルビィは、戦争で被災した孤児と関わる中で、「泣いたときにあやしてもらう」「適切なタイミングでミルクをあげる」といったような母性的な養育と心身の健康的な発達が関係していることに気づきました。

ボウルビィは、幼児期における養育者との愛着形成に失敗すると、過剰に相手に依存をしたり、逆にすべてを自分で抱え込み、一切他人を信用しないなど、生涯影響すると主張しました。

・幼少期4つの愛着タイプ

エインスワースは、ボウルビィの研究を発展させて愛着タイプを3つに分類しました。その後、メインとソロモンによって、新しい愛着タイプが1つ追加されました。具体的な内容は下記になります。

・回避型
親を避ける 親の顔を見ても喜ばない
・安定型
親が離れると泣く、親の顔を見ると喜ぶ
・葛藤型
親が離れると、泣く、親の顔を見ると癇癪を起す
・無秩序型
泣いたり、喜んだり、一貫性がない

古典的研究の問題点

古典的愛着理論では、生涯発達の観点が用いられています。例えば、子どもの頃に回避型の愛着パターンを持っていた場合、大人になったときに「関係構築回避型」や「引きこもり型」の愛着スタイルを持ちやすいとされてきました。

ただ、乳児期の愛着パターンが大人の愛着スタイルに必ず引き継がれるかについては、議論が分かれていました。遠藤(2010)は、児童期の愛着研究が空白となっていること、子どもの愛着関係が主に母親に限定されていることの2点を考慮する必要があると述べています。

現代の愛着研究‐内的作業モデルとは?

内的作業モデルとは

近年、愛着は内的作業モデルの観点から多くの研究がなされています。内的作業モデルとは、他者との関係の取り方として機能するモデルのことです。他人に対して抱いている根本的な考え方ともされています。

安定型
・私たちは根本的な部分では愛情がある
・困ったときに他人は助けてくれる
・私たちは建設的に問題を乗り越えていける
・多くの人達と親しくなれる

このように考える方は、安定した愛着形成が可能です。私達は、内的作業モデルを通じて多くの人間関係を形成しています。内的作業モデルが安定していると、周囲の人達と適切な関係を築ける可能性が高くなります。また、円滑な社会適応が進みます。

不安定型

一方、不安定な内的作業モデルを有している人達は、対人関係が不安定になって社会不適応に陥る傾向があります。

・私は根本的な部分で愛されていない
・困ったときに他人は助けてくれない
・問題を乗り越えていけない
・多くの人達と疎遠になる

「疑り深い」「見捨てられ不安」といった幾つかの性格の形成には、不安定な内的作業モデルが関わっています。内的作業がにゆがみがあると、社会不適応へ影響する一因にもなり得るのです。

愛着障害

内的作業モデルの具体例

以下に、それぞれの具体的な内容を示します。

・内的作業モデルが安定しているAさん
Aさんは、友達が多くて周囲の人達から「明るい人」と思われています。他人と喧嘩をすることもありますが、自分の悪いところを見つめ直して2~3日で仲直りします。人の好き嫌いが少なくて、色んなタイプの人達と話すことができます。

・内的作業モデルが不安定であるBさん
Bさんは、威圧的な態度で周囲の人達に接しています。友達はいますが、喧嘩になってしまうと相手を責めることが多いので、関係が長続きしません。疑り深い性格で人を信用していないところがあります。

内的作業の違いはなぜ起こるのか?

内的作業の安定の基礎は乳児期の両親との愛着関係にあります。しかし、内的作業モデルを形成する要素は、親・養育者との関係以外にも多岐に渡ります。両親との関係が悪くても、内的作業が安定している人はたくさんいます。

例えば、
・祖父母との関係
・保育場面における保育士などとの関係
・小学校低学年から中学年における教師との関係
・友人との屈託のない友情関係

なども重要です。自己肯定感研究の1つには、両親の関係と匹敵するぐらい教師や友人関係が重要とする研究もあります。教育現場などでは、1人の子どもを複数の担任が見るというチーム保育やチーム学校という概念が徐々に取り入れられています。これは内的作業の安定化に重要であると監修の川島は考えています。

愛着障害とアダルトチルドレン

その他の重要概念として、愛着問題と非常に近い概念であるアダルトチルドレンについて補足としてお伝えします。アダルトチルドレンとは、大人になっても子供の頃に受けた精神的ダメージを抱え続けている人達のことです。

精神疾患というよりも心理的な問題の1つであり、ACと呼ばれています。ACを示す言葉には、「内なる子供」「機能不全家族で育った人」などがあります。ACの人達は、生き辛さや子供の頃のPTSDに悩まされていますが、根底に愛着障害を抱えている人達も多いと考えられています。

*詳しくは動画で解説しました。気に入って頂いたらチャンネル登録を頂けると励みになります。

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★愛着は人との関わり方のベース!理解を深めよう

目次

①症状や行動の癖を解説​
②愛着とは何か?
③「精神医学上の診断」
④子どもの保育・治療
⑤大人の愛着障害の治療
⑥愛着障害の簡易診断!

 

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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出典・参考文献
・Bowlby, J. (1969), Attachment and loss, Vol. 1: Attachment. New York: Basic Books
・Bowlby, J. (1973). Attachment and loss: Vol. II: Separation, anxiety and anger. New York: Basic Books.
・INGE BRETHERTON(1992) THE ORIGINS OF ATTACHMENT THEORY:JOHN BOWLBY AND MARY AINSWORTH  Developmental Psychology , 28, 759-775.
・丹羽智美(2005) 青年期における親への愛着と環境移行期における適応過程 パーソナリティ研究 13 156-169 名古屋大学
・金政祐司・大坊郁夫(2003)青年期の愛着スタイルが親密な異性関係に及ぼす影響 大阪大学
中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999)心理学辞典 有斐閣
・山本敬三・米澤好史 2018 愛着の問題を抱えるこどもの行動に関する研究 ー愛着の問題行動尺度作成と意欲、愛着タイプとの関連ー 和歌山大学教育学部紀要第68集第2巻
・遠藤利彦 2010 アタッチメント理論の現在-生涯発達と臨床実践の視座からその行方を占う- The Annual Report of Educational Psychology in Japan Vol. 49, 150-161
・初塚眞喜子 2010 アタッチメント(愛着)理論から考える保育所保育のあり方 相愛大学人間発達学研究 創刊号1-16