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愛着理論とは?

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愛着理論とは?ボウルビィとエインズワースの研究をわかりやすく解説

当コラムでは、愛着理論をテーマに解説しています。

①大人の愛着スタイルの特徴と対処法
②愛着理論とは?ボウルビィとエインズワースの研究

こんにちは。公認心理師・精神保健福祉士の筆者が、コミュニケーション教室で解説している内容の一部をお伝えします。今回は、次のような方に向けた記事です。

・愛着スタイルの理論的な背景を知りたい方
・元になった研究をわかりやすく知りたい方
・人間関係の癖と幼少期の愛着の関係を知りたい方

愛着理論とは、子どもが特定の養育者との間に築く情緒的な絆(愛着)が、心の安定やその後の人間関係の土台になると考える心理学の理論です。

この理論はイギリスの精神科医ジョン・ボウルビィが提唱し、心理学者メアリー・エインズワースの実験によって大きく発展しました。前回の記事で紹介した「大人の愛着スタイル」も、この理論から生まれた考え方です。

◆全体の目次
①愛着理論とは何か
②ボウルビィの愛着理論
③エインズワースの実験
④子どもの愛着の4つの型
⑤大人の愛着との関係
⑥愛着の世代間伝達
⑦愛着スタイルは変えられる
⑧まとめ
⑨最後に確認しよう
⑩教室で一緒に深めよう
⑪シリーズの続きを読む

愛着理論とは何か

心理学でいう「愛着(アタッチメント)」とは、不安や危険を感じたときに特定の相手にくっつき、安心を得ようとする心の働きと、その相手との絆を指します。赤ちゃんが泣いて親を呼んだり、怖いときに抱きついたりする行動が代表例です[1]。

日常語の「愛着」は「物に愛着がわく」のように、好きという意味で使われます。一方、心理学の愛着は「安心を確保すること」に重点がある点が異なります。

愛着理論の大きな特徴は、子ども時代の絆が、その後の人間関係のパターンにまで影響すると考えた点です。この発想が、のちの「大人の愛着スタイル」の研究へとつながっていきます。

ボウルビィの愛着理論

ジョン・ボウルビィ(1907〜1990)は、イギリスの精神科医・精神分析家です。家庭から離れて育つ子どもたちの観察などを通じて、養育者との関係が子どもの心の発達にとっていかに重要かを研究しました。

ボウルビィは1969年の著書『愛着と喪失 第1巻:愛着』で、愛着を体系的な理論としてまとめました[1]。そこでは、愛着行動は子どもが危険から身を守り、生き延びるために備わったしくみだと考えられています。

安全基地という考え方

愛着理論でよく使われるのが「安全基地(セキュアベース)」という考え方です。子どもは安心できる養育者を「基地」にして周囲を探索し、不安になると基地に戻ってきます。

この概念はエインズワースの観察研究のなかで具体的に示され、愛着理論の中心的な考え方になりました[2]。「頼れる場所があるからこそ、外の世界に挑戦できる」という点がポイントです。

内的作業モデルとは

ボウルビィは、子どもが養育者との経験から「自分は大切にされる存在か」「他人は頼れるか」というイメージを心の中に作ると考えました。これを「内的作業モデル」と呼びます[1]。

内的作業モデルは、人間関係で相手の行動を予想したり、自分の振る舞いを決めたりする際の「心の地図」として働きます。大人の愛着スタイルが子ども時代とつながると考えられるのは、このモデルが大人になっても持ち越されやすいためです[3]。

エインズワースの実験

メアリー・エインズワース(1913〜1999)は、ボウルビィと共同で研究を行った心理学者です。ウガンダやアメリカ・ボルティモアでの家庭観察を経て、愛着の個人差を測る実験方法を考案しました[2]。

それが「ストレンジ・シチュエーション法」です。研究成果は1978年に共著書としてまとめられ、現在も愛着研究の基本文献とされています[2]。

実験の8つの場面

実験の対象は、1歳前後の子どもとその母親です。見知らぬ部屋で、次のような場面が数分ずつ、全8場面で順番に起こるよう設計されています。

・母子で部屋に入り、子どもがおもちゃで遊ぶ
・見知らぬ大人(ストレンジャー)が入ってくる
・母親が部屋を出て、子どもとストレンジャーが残される
・母親が戻ってくる(1回目の再会)
・子どもが部屋に一人きりになる
・ストレンジャーが戻り、その後に母親が戻る(2回目の再会)

このように軽いストレスを段階的に強めていくことで、子どもの愛着行動が表れやすくなるよう工夫されています。

再会場面に注目

エインズワースが特に重視したのは、母親が部屋に戻ってきた「再会」のときの反応です。母親に近づくのか、無視するのか、すぐ落ち着けるのかといった違いから、愛着の型が分類されました[2]。

また、実験室での子どもの行動は、家庭での母親の関わり方とも関連していることが報告されています[2]。

子どもの愛着の4つの型

ストレンジ・シチュエーション法では、当初3つの型が見いだされ、のちに4つ目の型が加えられました[2][5]。それぞれの特徴を見ていきましょう。

安定型(B型)

母親がいなくなると泣いたり探したりしますが、再会すると喜んで近づき、すぐに落ち着いて遊びに戻ります。母親を安全基地としてうまく使えている状態と考えられています。

家庭観察では、子どものサインに敏感に応じる養育と関連していることが示されました[2]。

回避型(A型)

母親と離れてもあまり動揺を見せず、再会しても目をそらしたり離れたりします。平気そうに見えますが、甘えたい気持ちを表に出さない対処のしかたを身につけていると解釈されています。

葛藤型(C型)

「アンビバレント型」「抵抗型」とも呼ばれます。分離のときに強く混乱し、再会すると近づくのに、同時に怒って抵抗するなど、なかなか落ち着けません。

くっつきたい気持ちと怒りが同時に表れる点が特徴で、関わり方に一貫性が乏しい養育と関連すると考えられています。

無秩序型(D型)

のちに心理学者のメインとソロモンが加えた型です。近づきながら固まる、急に動きが止まるなど、一貫した対処のしかたが見られない反応を示します[5]。

どの型も「良い・悪い」を判定するものではありません。その子なりの、環境への適応のしかたとして理解されています。

大人の愛着との関係

ここからは、子ども時代の愛着の型が、大人の人間関係にどうつながるのかを見ていきます。

恋愛にも同じ型が

子どもの愛着の型を大人に当てはめたのが、ヘイザンとシェイバーの1987年の研究です。大人の恋愛関係も、乳児と養育者の絆と同じく愛着のプロセスだと考えました[3]。

質問紙調査の結果、大人にも安定型・回避型・不安/アンビバレント型が見られ、その割合は乳児期とおおむね同程度でした[3]。また、型によって恋愛の感じ方や、親との関係の振り返り方に違いがあることも示されています。

子どもと大人の対応表

子どもの型と大人の愛着スタイルは、おおよそ次のように対応すると考えられています。

子どもの型大人の愛着スタイル
安定型(B型)安定型
回避型(A型)回避型
葛藤型(C型)不安型
無秩序型(D型)恐れ・回避型

ただし、子ども時代の型がそのまま大人の型になるわけではありません。あくまで「つながりやすい傾向」として捉えてください。

大人の愛着スタイルごとの特徴と対処法は、大人の愛着スタイルの記事で詳しく解説しています。

愛着の世代間伝達

愛着は、子どもと親の二者だけで完結する話ではありません。親自身がどんな愛着を持っているかも、子どもとの関係に影響すると考えられています。

親の愛着が子に影響

愛着研究では、親自身の愛着のあり方が、子どもの愛着の型と関連しやすいことがわかっています。これを「愛着の世代間伝達」と呼びます。

ファン・アイゼンドールンは、親に子ども時代の経験を語ってもらう「成人愛着面接(AAI)」を用いた研究を、メタ分析で統合しました。その結果、親の愛着の状態が、乳児の愛着の質を予測することが示されています[4]。

連鎖は断ち切れる

一方で、この伝達は親の「敏感な関わり方」だけでは説明しきれない部分が残っており、「伝達のすき間」と呼ばれています[4]。愛着は親から子へ機械的に受け継がれるものではなく、さまざまな要因を含めて研究が続けられています。

「自分が不安定型だから、子どもも必ずそうなる」と決めつける必要はありません。親が自分の愛着のクセに気づき、関わり方を見直していくことにも意味があると考えられています。

愛着障害との違い

「愛着スタイル」と似た言葉に「愛着障害」があります。愛着スタイルは誰にでもある関係のクセであり、病名ではありません。

一方、子どもの愛着障害は、幼い頃に適切な養育を受けられなかったことなどを背景に、専門家が診断する状態を指します。詳しくは子どもの愛着障害の記事をご覧ください。

愛着スタイルは変えられる

ここまで読んで「子ども時代で決まってしまうのか」と不安になった方もいるかもしれません。最後に、変化の可能性について整理します。

大人になってからの変化

内的作業モデルは、新しい経験によって修正されうるものと考えられています。子ども時代の型は大きな影響を持ちますが、一生固定されるものではありません。

たとえば、信頼できるパートナーや友人との関係、カウンセリングなどを通じて安定した関係を経験することが、変化のきっかけになるといわれています。

安心できる関係を選ぶ

変化の第一歩は、自分の愛着のクセに気づくことです。「なぜ相手の返信が遅いと不安になるのか」「なぜ頼られると距離を置きたくなるのか」を、理論と照らし合わせて振り返ってみましょう。

そのうえで、安心して本音を話せる相手との関係を少しずつ増やしていくことが大切です。スタイル別の具体的な対処法は、大人の愛着スタイルの記事で紹介しています。

まとめ

今回の内容を振り返ります。

・愛着理論は、ボウルビィが提唱した「養育者との絆が心の土台になる」という理論
・エインズワースは、ストレンジ・シチュエーション法で愛着の個人差を測定した
・子どもの愛着は、安定型・回避型・葛藤型・無秩序型に分けられる
・ヘイザンとシェイバーは、同じような型が大人の恋愛にも見られることを示した
・愛着は親から子へ伝わりやすい一方、新しい経験によって変化する余地もある

最後に確認しよう

Q&A形式で確認しよう。気になる質問をクリックして確認してみてください。

Q. 愛着理論を提唱したのは誰ですか?

A. イギリスの精神科医ジョン・ボウルビィです。1969年の著書で、子どもと養育者の絆を体系的な理論としてまとめました。

Q. ストレンジ・シチュエーション法とは何ですか?

A. エインズワースが考案した実験方法です。1歳前後の子どもが母親と離れたり再会したりする場面を設け、特に再会時の反応から愛着の型を分類します。

Q. 子どもの愛着の型にはどんな種類がありますか?

A. 安定型(B型)・回避型(A型)・葛藤型(C型)の3つに、のちに無秩序型(D型)が加わり、4つに分けられています。

Q. 愛着スタイルは一生変わらないのですか?

A. 子ども時代の影響は大きいものの、一生固定されるものではないと考えられています。安定した人間関係などの新しい経験が、変化のきっかけになるといわれています。

教室で一緒に深めよう

愛着のクセは、理論を知るだけですぐに変わるものではありません。頭では分かっていても、実際の会話になると不安になったり、つい距離を取ってしまったりする方も多いのではないでしょうか。

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・「自分の思考のクセ」に気づくワーク
・不安や本音を、相手を責めずに伝える練習
・相手が安心して話せる「聴き方」のトレーニング

一人で抱え込まず、まずはコミュニケーション教室の体験受講から、安心できる場で練習を始めてみませんか。

コミュニケーション教室,講座,ダイコミュ

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まだ①をお読みでない方は、大人の愛着スタイル(安定型・不安型・回避型など)ごとの特徴と、人間関係での具体的な対処法から確認してみてください。今回の記事は、その愛着スタイルの土台となっている「愛着理論」の成り立ちを深掘りした内容になっています。

理論で自分のクセの背景がわかったら、①に戻って、スタイル別の対処法を日常の人間関係で試してみましょう。

①大人の愛着スタイルの特徴と対処法

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Bowlby, J. (1969). Attachment and Loss, Vol. 1: Attachment. London: Hogarth Press and the Institute of Psycho-Analysis.
[2] Ainsworth, M. D. S., Blehar, M. C., Waters, E., & Wall, S. (1978). Patterns of Attachment: A Psychological Study of the Strange Situation. Hillsdale, NJ: Erlbaum.
[3] Hazan, C., & Shaver, P. (1987). Romantic love conceptualized as an attachment process. Journal of Personality and Social Psychology, 52(3), 511–524.
[5] Main, M., & Solomon, J. (1990). Procedures for identifying infants as disorganized/disoriented during the Ainsworth Strange Situation. In M. T. Greenberg, D. Cicchetti, & E. M. Cummings (Eds.), Attachment in the Preschool Years (pp. 121–160). Chicago: University of Chicago Press.