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愛着障害の「精神医学上の診断」,他の精神疾患③

愛着障害の「精神医学上の診断」,他の精神疾患③

コラム②では愛着障害の歴史やどのような影響があるかを解説しましたが、今回はもう少し踏み込んでさらに詳しい定義をご紹介します。WHOが定める診断基準も載せています。愛着障害の疑いがある場合は参考にしてみてください。

愛着障害と定義・診断基準

愛着について不安定さが大きくなると「愛着障害」と呼ばれることがあります。詳しく定義すると

「母親をはじめとする養育者との間で、幼少期に安定した愛着を深める行動が断たれた事で引き起こされる、対人面や情緒面での問題症状」

とされます。世界保健機関(WHO)が定める「ICD-10」の診断基準において定義されています。簡単に要約すると

・5歳以前の発症
・対人関係の不安定さ
・感情の移り変わりが激しい
・他者とつながりを持とうとしない
 もしくは過剰に愛情を求める

などが挙げられます。診断基準は子どもを指していますが、大人になっても症状が続くことがあります。この症状は、幼児期の母子関係の不健康さから生じると言われており、自己肯定感の欠如、基本的信頼感の欠如など、人生を通して影響を与えると言われています。

愛着障害とは定義

愛着障害の特徴

アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアルの第5版(DSM-5)では、愛着障害は「反応性アタッチメント障害」「反応性愛着障害」として記載されています。愛着障害の子どもたちは、養育者との愛着関係を作る能力が自身に備わっているにもかかわらず、生後まもない段階から適切な養育を受けていません。その結果、下記の言動が見られることが多いです。

・自分以外の子どもや大人を
 過度に警戒している
・大人が近づいたときに視線をそらす
・自分を攻撃する
  頭を打ち付ける、噛みつく
・陽性の感情を示すことが少ない
  楽しい、嬉しいなど示さない
・陰性の感情をよく示す
  悲しい、イライラするなど

これらの言動の中で、他人に対する警戒心と自分への攻撃性が以後の人生に大きな影響を与えると考えられています。

愛着障害の特徴

愛着障害の有病率

愛着障害は、頻繁に見られる精神疾患ではありません。食事を与えない、1人で過ごす時間が多いといったネグレクトを受けている子どもに見られやすいですが、愛着障害と診断される子どもは10%未満です。しかし、愛着障害は自閉症スペクトラム障害やADHDなどの発達障害と区別がつきにくい一面があるため、正確な有病率は不明です。

平成30年度,児童虐待相談対応件数によると、相談件数は16万件前後であり、相当な数の子供、大人が愛着障害の可能性があると考えられます。

アダルトチルドレン・人数

他の精神疾患との関連

愛着障害は、うつ病や不安障害などの精神疾患との関連があります。また、日常生活に大きな支障が出る精神的な問題の根幹には、愛着障害が潜んでいることが多々あります。

・人格障害や不安障害

岡田(2011)によると、子どもの頃の愛着スタイルは、完全に確立したものではありません。愛着スタイルは、10代初期から明確になり始めて成人期に確立されますが、その人の社会や対人関係に対する言動などに大きな影響を与えます。

たとえば、不安が強い場合、人前で過度に緊張するといった症状が目立つ社会不安障害を発症する可能性があります。また、不信感が強い場合、孤独になることを異様に恐れる境界性パーソナリティ障害や自分の利益のためならば違法な行為でも平気で行う反社会性パーソナリティ障害になることがあります。

つまり、愛着障害を抱えていると、社会とのつながりが上手く築けない状態に陥りやすいです。

・依存症との関連

「夜と霧」の著者である心理学者のフランクル,V.E. は、アウシュビッツなどの強制収容所に閉じ込められていた時に、妻があたかも自分のそばにいることを思い描いていました。その結果、過酷な試練に耐えて生きながらえることができたと述べています。つまり安定した愛着スタイルは、ストレスの緩和や心の安定に役立ちます。

一方、愛着障害を有していると、ストレスや脅威を感じても愛着スタイルが適切に機能しません。そのため、アルコールやギャンブルなどの不適切な方法を用いてストレスなどを解消することがあります。このようなストレス解消法が繰り返されると、アルコール依存症やギャンブル依存症を患う可能性が高くなるのです。

・アダルトチルドレン,機能不全家族

実は愛着障害は、アダルトチルドレンと非常に近い概念です。アダルトチルドレンとは広義の意味では、機能不全家族で育った大人を意味します。虐待などがあった家庭の場合は、アダルトチルドレンと言われ、心の問題を抱えたまま大人になりやすい傾向があります。愛着障害と非常に近い概念なので、勉強をしたい場合は、アダルトチルドレンについての書籍を読んでおくのも良いかもしれません。アダルトチルドレンコラムもありますので参考にしてみてください。

 

日常生活での問題

 

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★対人関係に欠かせない要素。大人でも練習で愛着形成はできる

目次

①症状や行動の癖を解説​
②愛着とは何か?
③「精神医学上の診断」
④子どもの保育・治療
⑤大人の愛着障害の治療
⑥愛着障害の簡易診断!

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
・Bartholomew, K., & Horowitz, L. M. (1991). Attachment styles among young adults: a test of a four-category model. Journal of personality and social psychology, 61(2), 226.
・中尾達馬, & 加藤和生. (2006). 成人愛着スタイルは成人の愛着行動パターンの違いを本当に反映しているのか?. パーソナリティ研究, 14(3), 281-292.
・岡田尊司 2011 愛着障害 子ども時代を引きずる人々 光文社