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バーンアウト症候群の症状・回復方法の解説

バーンアウト症候群とは?症状と回復方法①

はじめまして!臨床心理士の竹元、精神保健福祉士の川島です。私たちは現在、こちらの初学者向け心理学講座の講師をしています。コラムを読んで興味を持っていただいたら、是非お待ちしています。

本コラムでは「バーンアウト」について詳しく解説をしていきます。目次は以下の通りです。

  • バーンアウト症候群とは?
  • 燃え尽き症候群3つの症状
  • スキルと難易度が影響
  • 発症しやすい人の特徴
  • 所属意識と職業観-心理学研究
  • 予防策と回復方法

しっかりと対策をお伝えしたいので全部で8分程度かかります(^^;ちょっと大変ですが。ぜひお付き合いください。

バーンアウト症候群とは?

定義

皆さんは、バーンアウト症候群(燃え尽き症候群・バーンアウトシンドローム)という言葉をご存知でしょうか?バーンアウトは、以下のように定義されています。

・心理学辞典(2013)
「とりわけ仕事やキャリアにおいて生じる身体的、情緒的、精神的疲労で、動機の減少、遂行能力の低下、自分自身や他者に対する否定的な態度を伴う」

つまりバーンアウト症候群とは、極度の身体疲労と感情が枯渇する状態のことです。簡単に言うと、普通に仕事などができていた人が、燃え尽きた(バーンアウト)ようになり

・やる気を失う
・朝起きられない
・会社に行きたくない
・無関心になる
・仕事のパフォーマンスが低下

などの状態になることを指しています。バーンアウト症候群の意味バーンアウト症候群になると、休職してしまったり、最悪の場合には仕事を辞めてしまうこともあります。そのためバーンアウト症候群は、労働者だけではなく、会社側にとっても頭の痛い問題となっています。

歴史

・1970年代
バーンアウト(burnout)という言葉は、元来はロケットエンジンが焼き切れたり、電球が切れる状態を示す技術用語でした。その後、1970年代アメリカで注目され、看護師や教師などの対人援助職(ヒューマンサービス)の領域で使われ始めました。

きっかけは、大変意欲的な支援をしていたヒューマンサービスの支援者が、心身の不良を急に訴えるようになり、仕事が継続できなくなるケースが多発したためです。心理学の世界では、フロイデンバーガーという学者が、学術用語として「バーンアウト」を使い始めました。

・1980年代
日本では、アメリカよりも10年ほど遅れた1980年代後半から、燃え尽き症候群の研究が始まりました。主に、看護職や教師、スポーツ選手などを対象に行われています。日本では、「燃え尽き症候群」と「バーンアウト」、両方の単語がほぼ同じ意味で用いられています。

バーンアウト症候群の歴史

バーンアウトの症状

ここでは、バーンアウトの症状について見ていきましょう。マスラックという学者を中心とした研究グループが、バーンアウトのチェックリストを作成しています。その中で、バーンアウト症候群の症状には大きく3つあると示しています。

① 情緒的消耗感
② 脱人格化
③ 個人的達成感の低下

それぞれについて解説していきます。

①情緒的消耗感

バーンアウト症候群1つ目の症状「情緒的消耗感」は、気持ちの疲れです。

たとえば、
・気遣いができなくなる
・仕事が面倒になる
・自分の感情に鈍感になる
などの状態があげられます。バーンアウト症候群の発症は、肉体的な消耗はもちろん、感情面でも消耗も大きな要因となります。特にヒューマンサービスでは、相手の立場に立った気遣いが職場はもちろん、プライベートまで必要とされるケースも少なくありません。

このように、気持ちのエネルギーを使う場面を、日々繰り返していくと、バーンアウトになるリスクを高めてしまいます。

②脱人格化

バーンアウト症候群2つ目の症状「脱人格化」は、感情が無くなり人間らしさを失うことです。

たとえば
・対応が終始マニュアル的
・人と会うことを避ける
・相手を名前で呼ばない
などの状態があげられます。ヒューマンサービスなどでは、「クライエントに対する非人間的な対応」が症状の特徴と言われています。

介護職員や学校の先生が、虐待や体罰など不適切とされる対応によるニュースを時々耳にします。このような状況は、バーンアウト症候群による脱人格化の影響が少なくないかもしれません。

個人的達成感の低下

バーンアウト症候群になると、仕事などのパフォーマンスが大幅に低下します。周囲の目にも明らかなくらい低下するうえ、本人も自覚できます。そのため、バーンアウト症候群になった本人は自信を失い、仕事の退職を考えたり、自殺など強い自己否定の行動につながることも少なくありません。

たとえば、
・以前は感じていた達成感がなくなる
・仕事への自信がもてなくなる
・やりがいをもてなくなる
などの気持ちが現れます。バーンアウト状態になる例

バーンアウトには2タイプある

バーンアウトには「①モラトリアム型」「②学習性無気力感型」の2タイプあります。

①モラトリアム型

「目標がない」「どう生きたらいいのかわからない」「成長を実感できない・・・」などの感覚がある方は、モラトリアム型バーンアウト症候群になっているかもしれません。モラトリアムとは、簡単に言えば目標を失っていて、どこに力を注いだらいいのかわからないような状況のことです。

ミハイ・チクセントミハイ(2000)は自分のスキルや作業の難易度によって、無気力になってしまうことを示唆します。以下の図は、縦軸が「作業の難易度」横軸が「スキルの度合い」を示しています。

モラトリアの解説

モラトリアムは、作業の難易度が自分のスキルより大幅に低い状況に該当します。モラトリアムでは、自分が力の注ぎ所やぶつけ所がわからず、味気ない毎日が続く…という状態になりやすくなります。

たとえば、RPGをプレイをしたときに、最初から主人公がレベルMAXの状態で、ひたすらレベル1のモンスターを倒すだけのゲームがあったらいかがですか?おそらくすぐに飽きてしまうのではないでしょうか。

②学習性無力感型

一方で、目標が高すぎる場合にも、バーンアウト症候群と似た「学習性無力感」と呼ばれる状態になってしまう可能性があります。学習性無力感とは、平たく言うと、自分は無力で何もできない存在なんだ…と無力を学習してしまう状態です。先ほどの、ミハイ・チクセントミハイの図を見てみましょう。

学習性無気力感の解説

学習性無力感は、作業の難易度が自分のスキルの範囲を大きく超えている状況に該当します。学習性無力感の状態は、目標が高いために、結果が出ない状態が長く続き、バーンアウトする恐れがあるのです。

たとえば、英語が全く話せない社会人のAさんが半年間勉強して「英検1級の合格を目指す!」といった目標を立てたとしましょう。達成することができますか?難易度が高すぎるため、途中であきらめてしまうかもしれませんね。

発症しやすい人とは?

バーンアウト症候群は、どんな人がなりやすいのでしょうか。心理学の世界では、性格傾向、職業やライフイベントなど、いろいろな面が影響しているといわれています。

発症しやすい条件①-性格傾向
・不安感が少し強い傾向の人
・些細なことが気になる傾向の人

発症しやすい条件②-職業
・対人援助職(教員、看護師、介護士など)
・対人援助職でも若手や経験の浅い方

発症しやすい条件③-その他
・精神的負荷の高い作業
・大きな目標を達成した後
・負担が大きいと感じる時(子育て、介護など)

バーンアウトしやすい職種

バーンアウトの心理学研究

伊藤(2000)は、小中学校の教員208名を対象に、バーンアウトの要因についてアンケート調査を行っています。この調査では、教員の仕事の取組み方(職業観)を以下の2種類に分類し、バーンアウト状態の各要因について検討しています。

・授業志向タイプ
クラス運営や授業の進め方を重視する
・関わり志向タイプ
生徒との関係性を重視する

以下の図は、授業志向タイプの結果です。クラス運営や授業の進め方を重視する授業志向タイプは、「授業指導の感覚」と「生徒との関わり」が低くなると、バーンアウトしやすいことが分かりました。

バーンアウト傾向と授業志向タイプ

授業志向タイプは、授業指導の仕方に自信がなくなると、バーンアウトにが起こりやすいことが考えられます。一方で関わり志向タイプはどのような傾向があるのでしょうか。

研究結果・バーンアウトの心理学事例をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・情緒的消耗感とバーンアウト
・所属意識との関わり
・達成感と精神的な安定
バーンアウトの心理学研究「所属意識」「職業観」など②

職業観でバーンアウトの要因が変わる

燃え尽き症候群の予防・回復方法

バーンアウトにならないために、どうしたらよいのでしょうか。本コラムでは、具体的な予防法を4つご紹介します。各項目にリンクが貼ってありますので、当てはまる部分からクリックしてみてくださいね。

①モラトリアムから抜け出す

「どう生きたらいいのかわからない」という感覚がある、モラトリアム型バーンアウト症候群の方は、アイデンティティが拡散傾向にあるかもしれません。

下山(1992)は、大学2年生369名を対象に、アイデンティティ拡散傾向とモラトリアムのタイプとの関連を調査しました。その結果、バーンアウト症候群の傾向が強いほど、アイデンティティ拡散傾向が強いことが分かりました。

以下の図は、職業決定などの人生の重要な決定を避ける「回避型」のモラトリアムは、アイデンティティ拡散傾向とプラスの相関を示しています。モラトリアム回避型高い解説

アイデンティティ拡散とバーンアウトには正の相関関係があるといえそうです。(※相関関係について詳しく知りたい方はコチラをご覧ください)

「自分の生き方が分からない…」という方は、アイデンティティ確立を学ぶことで、バーンアウトから抜け出すことができるといえそうです。

アイデンティティをより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・アイデンティティとは
・質問法で確立
・好奇心ツリーを育成
バーンアウトの対処法「新たな目標を探そう」③

②限界設定をする

学習性無力感型バーンアウト傾向がある方は、適切な目標設定ができてない可能性があります。

限界設定という言葉をご存知でしょうか。限界設定とは「自分には、ここまではできるけど、ここから先はできない」という区切りの部分になります。この部分をハッキリさせることで、適度な目標を立てることができ、バーンアウトになりにくくなります。

たとえば、
 会社員⇒残業は月30時間まで
 子育て⇒夕食手作りは週5まで
 学生 ⇒勉強は10日に1回は休む
このように、自分が達成できる限界を考えて、その範囲内で適応していきます。限界が設定されていることで度を越えて働くことがなくなります。

バーンアウトの予防「つい限界を超えて作業してしまう…」という方は、限界設定を学ぶことでバーンアウトを予防していきましょう。

限界設定をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・限界を推測する
・実際に行う
・限界設定を見直す
バーンアウトの治し方「限界設定」で適度な働きを④

③ソーシャルサポート

ソーシャルサポートとは、平たく言えば、周囲の人たちから得られる援助のことを意味します。そのサポートは、物質的なものに限らず、家族・友人・会社の同僚・専門家の援助など自分の周りにある環境の中でサポートしてくれる人やものを意味します。実はソーシャルサポートが得られると、バーンアウトの予防・改善につながる可能性があります。

大坪(2017)は、大学生254名を対象に、ソーシャルサポートと心理的な関係について調査をしました。その結果、家族、大切な人、友人のサポートを受けやすい方は疲労感などの項目においてプラスの関わりがあることがわかりました。

以下の図は家族のサポートと疲労感の関係を示しています。家族からのサポートで、疲労感・自律神経症が低くなっていることが分かります。家族のサポートは、疲れた心身をいやしてくれるのですね。

家族のサポートと疲労感の回復バーンアウト傾向の予防には、ソーシャルサポートが有効といえそうです。「ツライ気持ちが伝えられない…」という方は、ソーシャルサポートを増やすことでバーンアウト傾向を予防していきましょう。

ソーシャルサポートをより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・バーンアウトとの関係
・所属の重要性
・コミュニティの理想数
バーンアウトを改善する方法「ソーシャルサポート」を得る⑤

④医療の力を借りる

バーンアウトの治療法の1つに「心理療法」があります。これは、カウンセリングや教示を用いて認知、情緒、行動などを変容させ、精神障害や心身症の治療、心理的な問題、不適応な行動などの解決の図ろうとする治療法です。その他、薬物療法といった方法もあり、どちらにも長所短所があります。

「仕事に行けない」「生活がままならない…」などバーンアウトの症状が重い方は、精神科・心療内科への受診を検討するようにしましょう。

燃え尽き症候群から回復する方法

治療にはどんな方法があるのか、時間やお金、精神科に行くか否かの判断基準などの疑問点は、コラム⑥で詳しく解説しています。

医療の力を借りるをより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・心理療法の長所短所
・薬物療法とは
・精神科に行く基準
燃え尽き症候群が重い場合は「医療の力」を借りよう⑥

理解を深めて予防しよう

バーンアウト症候群の意味や症状、予防法や回復に向けたコツについて、心理学の研究を交えながら解説してきました。いかがでしたか。

対人支援職に就かれている方の中には、バーンアウト症候群の予防策をすでにとられている方もみえるかもしれませんね。バーンアウト症候群は、人生の様々な場面で発症する可能性もあります。今回のコラムをお読みいただいて、少しだけ頭に入れておいていただければうれしいです。次回は、バーンアウトの研究事例をご紹介していきます。お楽しみに!

★バーンアウト症候群の理解を深めて症状からの回復・予防を
心理学講座

目次

①バーンアウト-概観
②心理学研究で理解
③新しい目標を探そう
④限界設定で適度な努力
⑤ソーシャルサポート
⑥医療の力を借りよう

助け合い掲示板

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
・ファンデンボス,G.R.(2013)APA 心理学大辞典 p725
・Maslach, C., & Jackson, S. E. (1982) The Maslach Inventory, Palo Alto, CA: Consulting Psychologists Press.
中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999)心理学辞典 有斐閣
・伊藤美奈子(2000)教師のバーンアウト傾向を規定する諸要因に関する探索的研究 教育心理学研究, 48, 12-20
・久世浩司(2015)マンガでやさしくわかるレジリエンス 日本能率協会マネジメントセンター
・久保真人(2007)バーンアウト(燃え尽き症候群) ヒューマンサービス職のストレス 日本労働研究雑誌 49(1)54-64
・澤田忠幸(2009)看護師の職業・組織コミットメントと専門職者行動,バーンアウトとの関連性 心理学研究 80(2) 131-137
・田尾雅夫(1989)特集「ストレスの社会心理学」バーンアウト -ヒューマンサービス従事者における組織ストレスー 社会心理学研究 4(2) 81-89
・田村尚子(2018)感情労働マネジメント –対人サービスで働く人々の組織的支援- 生産性出版
・ミハイ・チクセントミハイ著,今村浩明訳:フロー体験 喜びの現象学,新思索社,2000
・大坪岳 追手門学院大学心理学論集;Otemon Gakuin University Psychological Review 2017 青年期のコミュニケーション・スキルとソーシャル・サポートがレジリエンスに及ぼす影響
・甲斐 裕子 永松 俊哉 山口 幸生  徳島 了 (2011)余暇身体活動および通勤時の歩行が勤労者の抑うつに及ぼす影響. 体力研究, 109, 1-8.