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バーンアウトの心理学研究

バーンアウトの心理学研究「所属意識」「職業観」②

コラム①では、バーンアウトについて概観していきました。重要な要素としては、「①心理学研究」「②新しい目標を探す」「③限界設定」「④ソーシャルサポート」「⑤医療の力を借りる」の5つでしたね。今回は「①心理学研究」について解説していきます。

バーンアウトの研究事例

1970年代以降、バーンアウトの研究は頻繁におこなわれていきました。今回は心理学的研究をもとに、バーンアウトの影響や原因を見ていきましょう。研究内容としては、大きく以下の3つがあります。

研究1 職業観とバーンアウトの違い
研究2 所属意識がある人は折れない
研究3 仕事のあいまいさが原因!?

それぞれの研究について見ていきましょう。

バーンアウトと3つの研究

研究1 職業観と燃え尽き

伊藤(2000)は、小中学校の教員208名を対象に、バーンアウトの要因についてアンケート調査を行っています。伊藤は教師自身の仕事の取組み方である仕事観に着目しました。この調査では、教員の仕事の取組み方を以下の2種類に分類しています。

i授業志向タイプ
クラス運営や授業の進め方をより大事にする
i関わり志向タイプ
生徒との関係性をより大事にしている

この研究では2つのタイプ別に、バーンアウト状態の各要因について検討しています。結果をタイプ別にみていきましょう。

i授業志向タイプ

まずは、授業志向タイプの結果です。バーンアウト傾向と「授業指導の感覚」と「生徒との関わり」にはマイナスの相関があることが分かります。

バーンアウト傾向と仕事観

つまり、授業の指導の仕方に自信がなくなると、バーンアウトにが起こりやすいことが考えられます。(※相関について詳しく知りたい方はコチラをご覧ください)

ii関わり志向タイプ

つづいて関わり志向タイプの結果です。こちらもバーンアウト傾向が高いと、周囲のサポートが低いというマイナスの相関関係が見られました。

バーンアウト傾向と周囲のサポートの関係人間関係の悪化や周囲のサポートが乏しい場合、バーンアウトにつながりやすいと言えます。

結果からバーンアウトになる原因は、職業観によって異なることが示唆されています。確かに、辛いと感じる状況は人によって千差万別だと思います。ただ一方でバーンアウト防止のキーポイントは、学校の先生であれば授業運営などの専門職としての技術に自信を持てていることや、同僚など職場での人間関係でサポートを受けることが大切であることが言えるのではないかと思います。

研究2 所属意識で予防

澤田(2009)は、地方の大規模病院の常勤の看護師407名を対象に、バーンアウトの要因についての調査を行いました。バーンアウト傾向と、「組織への愛着(例「この病院が気に入っている」などの項目)」とバーンアウトとの関連を調べた結果、コラム①でお伝えしたバーンアウトの3つの要素、

i情緒的消耗感
ii脱人格化
iii達成感

との関連性がみられました。

i情緒的消耗感

まずは、情緒的消耗感との関係を見てみましょう。情緒的消耗感とは、気持ちが疲れていると感じることを意味してましたね。組織への愛着と、情緒的消耗感にはマイナスの相関があるという結果になりました。

組織への愛着と情緒的消耗感の関係

つまり、所属しているグループをプラスに捉えることで、精神的な疲労が少なくなっていくということです。

ii脱人格化

次に脱人格化はどうでしょうか。脱人格化とは、気持ちが疲れ、情緒的に応対するなどの人間らしさが失われることです。こちらも、組織への愛着が高いほど、脱人格化が低いというマイナスの相関が見られました。

組織への愛着と脱人格化の関係

組織への愛着で、人間らしさも芽生え、バーンアウトになりにくくなるのです。

iii達成感

最後に達成感との関係を見てみましょう。達成感は仕事の個人的な到達度合い・パフォーマンスの高さという意味になります。こちらは、組織への愛着が高いと、達成感も高いというプラスの相関が見られました。

組織への愛着と達成感の関係

集団をプラスに捉えていると、達成感も上がり、バーンアウトが発症しづらいと考えられます。

ここまでをまとめると、

組織への愛着が高いと、
情緒的消耗感は低い
脱人格化は低い
達成感は高い

という結果となります。職場が好きであるという所属意識が強い人ほど、バーンアウトの傾向が低いことが示されています。私たちも、自分自身が職場のどこかに居場所があると思えるほど、バーンアウトしにくいと言えるかもしれません。また職場の集団でもいえることなのかもしれません。

研究3 曖昧さと燃え尽き

田尾(1989)は、介護士・理学療法士・作業療法士・看護師の4つの対人援助職の441名を対象に、「どのような状況が燃え尽き症候群に影響しやすいか」「どんなことが起こっていると症状が出やすいのか」という点について調査を行っています。調査では、「仕事の曖昧さ」「仕事のわずらわしさ」の2つについて、バーンアウトの要素の1つ「情緒的な消耗」との関連を調べました。

仕事の曖昧さ

まずは、仕事の曖昧さとの関係を見ていきましょう。情緒的な消耗が高いと、仕事の曖昧さも高いことが分かりました。

バーンアウトの原因

自分の仕事が明確化としていないと、バーンアウトしやすいといえそうです。

仕事のわずらわしさ

続いて、仕事のわずらわしさとの関係を見ていきましょう。こちらも同様に、情緒的な消耗が高いと、仕事のわずらわしさも高いというプラスの相関が見られました。

情緒的な消耗と仕事のわずらわしさの関係

経験的に理解しやすいと思いますが、煩雑な作業にずっと取り組んでいると、気分的にも落ち込んでしまいます。

これらの結果からは、
・仕事の裁量が曖昧な状況
・煩わしい仕事が多い状況
において、バーンアウトを引き起こしやすいといえそうです。

つまり私たちの日々の生活や仕事などでも「どこまでやるか?」「どの程度やるか?」という点を明確にさせておくということがとても重要であるといえそうです。

バーンアウトを予防する方法

バーンアウトの理解を深めよう

今回は、バーンアウトの心理学研究について解説していきました。職業観によって、バーンアウトの原因が異なるので自分が「授業思考」「関わり思考」のどちらのタイプか考えてみてくださいね。また、所属意識が強い人は、バーンアウトしにくい傾向があるので、組織への愛着を高めることはバーンアウトの予防につながります。会社などは積極的に親睦を深める会を開催するのも1つの手ですね。次回は、「新しい目標を探す」について解説していきます。

★バーンアウトは「職業観」「所属意識」「あいまいさ」が関係!

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心理学講座

目次

①バーンアウト-概観
②心理学研究で理解
③新しい目標を探そう
④限界設定で適度な努力
⑤ソーシャルサポート
⑥医療の力を借りよう

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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出典・参考文献
・田尾雅夫(1989)特集「ストレスの社会心理学」バーンアウト -ヒューマンサービス従事者における組織ストレスー 社会心理学研究 4(2) 81-89
・澤田忠幸(2009)看護師の職業・組織コミットメントと専門職者行動,バーンアウトとの関連性 心理学研究 80(2) 131-137
・伊藤美奈子(2000)教師のバーンアウト傾向を規定する諸要因に関する探索的研究 教育心理学研究, 48, 12-20