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認知行動療法の基礎②認知療法

認知行動療法の基礎②認知療法・論理療法のやり方

認知行動療法入門は、4つのシリーズで紹介しています。具体的には「①CBTの活用法」「②認知療法」「③行動療法」「④マインドフルネス療法」です。

今回は「②認知療法」についてお話します。


改善するお悩み
・落ち込みやすい
・悲しい気持ちになる
・緊張しやすい

  • 全体の目次    
  • 入門①認知療法とは何?
  • 入門②基本モデル
  • 入門③思考の緩め方・練習
  • 発展①論理療法と反証
  • 発展②認知療法とスキーマー
  • 助け合い掲示板

入門編①~③を読み進めていくと、基本的な知識と対策を抑えることができると思います。入門編は、ぜひ最後までご一読ください。

もしお役に立てたなら、初学者向け心理学講座でもぜひお待ちしています。

認知療法とは?定義・歴史

定義

認知療法とは、起こった出来事に対してどう反応するかに焦点を当てた治療方法です。

歴史・はじまり

認知療法は、アルバート・エリスとアーロン・ベックによって開発されました。

・アルバート・エリス
1955年に倫理療法を作りました。

エリスは、出来事の捉え方は認知によって変わるとしています。そしてネガティブな思考になったときには、自分の考えを検討することで改善できるとしています。

論理療法では、自分の考え方を実際どうかを検討する「現実検討力」や、自分の考えと反対の考えがあるのではないか?と考える「反証」が重視されています。

・アーロン・ベック
アルバート・エリスの論理療法にスキーマーの概念をプラスしたのが、アメリカの精神科医のアーロン・ベックです。

認知療法を提唱したアーロンベック

出典:wikipedia

ベックは、次のように考えました。

私たちの悩みの根本は、私たちの身に起きた出来事ではありません。解釈が、苦しみを生み出しているのです。

ベックは、解釈の根底にある思考(=スキーマー)が、出来事の捉え方に大きく影響しているとしています。

基本モデル

認知療法の基本モデルは、以下の通りです。

認知療法の基本モデル

私たちは出来事に対して、「出来事」→「思考」→「感情」の段階で進むのです。

たとえば、職場の残業時間が減った場合で考えてみましょう。

残業が減った(出来事)に対して、「給料が少なくなる(思考)」と考えれば、ネガティブな気持ち(感情)になるでしょう。

認知療法認知のゆがみ,考え方の例

一方で「副業が増加する(思考)」と考えたらどうでしょうか。うれしい気持ち(感情)になるかもしれません。

認知療法の考え方の例

つまり私たちの感情は、出来事が引き起こしているのではなく、出来事の捉え方(認知)が感情を作っているということです。

原因は認知の偏り

同じ出来事でも感じ方は人それぞれです。では、ネガティブな感情になりやすい人には、どんな特徴があるのでしょうか。

出来事の捉え方(認知)に認知の偏りがあると、ネガティブな考えが強くなる傾向があります。

たとえば、先ほどの例で見てみましょう。「給料が少なくなる」という思考が、認知の偏りです。

認知療法と認知の偏り

認知の偏りとは、偏ったネガティブ思考の捉え方です。認知の歪みはアーロン・ベックが提唱し、その後デビッド・D・バーンズがいくつかのパターンを挙げています。

代表的な認知の偏りはこちらです。

①白黒思考

物事を白か黒かで判断する考え方です。たとえば、少しでもミスをしたらすべてダメになる。

認知の偏り,白黒思考このようなに考えるのが白黒思考の捉え方です。

②過度の一般化

わずかな事実を挙げて、それが一般的な法則であるかのように結論づけます。

たとえば、彼は2回もミスをした。今度も必ずミスをするにちがいない。

認知の偏り過度の一般化「いつも」「全部」「絶対にそうだ」など、断定的な言葉を使うことが多くあります。

③選択的知覚

一つの情報を集め続け、感情を膨らませてしまう状態です。

たとえば、嫌われていると思ったことで嫌われた情報をどんどん集めてしまう。

偏った情報ばかりを収集することで、ネガティブな感情を膨らませてしまいます。

④べき思考

物事を「〜すべきである」「〜しなければならない」と考えることです。

たとえば、男性はたくましく女性はおしとやかであるべきだ。

周囲の事情や例外は認めず、他人にも自分にも求めるのできゅうくつな人間関係になります。

⑤レッテル貼り

ある出来事や失敗からネガティブなレッテルを貼ることをいいます。②の過度の一般化をさらに強めた場合がレッテル貼りになります。

たとえば、彼は2回もミスをした。何を頼んでもできないダメ人間だ。

認知の偏り過度のレッテル貼り

そのほかにも、認知の偏りはあります。

⑥悲観的シナリオ癖

一つのことに対してマイナスのシナリオをどんどん進めてしまうこと。

実際にはちょっとした失敗にもかかわらず、取り返しのつかない最大の失敗だと感じる考え方です。

たとえば、このテストで不合格になったら私の人生はもう終わり。取り返しがつかなくなる……。

⑦過大評価・過小評価

失敗や短所などを実際よりもとても大きく受け止め、成功や長所は実際よりもとても小さくに考えることです。

たとえば、あの上司に嫌われたら会社では生きていけない。

⑧感情的の決めつけ

自分の感情の一部分にとらわれてネガティブに考えることです。

たとえば、発表前に緊張を感じたら、「こんなに緊張しているんだから、失敗するに違いない!」などと考えます。

⑨自己関連付け

物事をすべて自分が関係している、自分のせいではないかと考えることをいいます。

たとえば、飲み会の席が盛り上がらないのはすべて自分のせいだと感じる。

⑩過度の自責

過剰に自責の念にとらわれてしまう考え方で何でも⑨の自己関連付けに使い意味合いです。

たとえば、プロジェクトがうまくいかなかったのはすべて自分のせいだ…。

⑪過度の読心

人の心をもみすぎちゃう。相手が言ったわけでもないに、気持ちを推測してしまう考え方です。

たとえば、みんなが私のことをバカだとおもっているにちがいない。

⑫公的自己意識

他人の目を過度に気にしてしまう状態です。

たとえば、上司からいつもみられているような気がして仕事が手につかない。

⑬失敗過敏

失敗することに敏感な反応をしてしまう状態です。

⑭勝ち負け

物事を勝ち負けにこだわってしまう状態です。

⑮比較癖

何事も他人と比較をしてしまう状態です。他人と比べることで、自分の悪いところや劣っているところばかりに目が行きがちです。

 

心への影響と認知療法の効果

認知の偏りは、メンタルヘルスに悪影響を与えることが分かっています。

竹田ら(2015)は、対人援助者220名を対象に、うつ病に対する認知療法の効果を調査しました。調査では、うつ病の諸反応について、認知の偏りが高い人と低い人で比較しています。

以下の図をご覧ください。状態不安とは、ある特定場面で感じている不安です。得点が高いほど不安を感じることを意味します。うつ病に対する認知療法の効果

認知の偏りが高い群は、普段から状態不安が高いことが分かります。加えて、認知の偏りが高い群は、認知療法後も認知の歪み低群より状態不安が高いことが読み取れます。

つまり、認知の偏りが強い人ほど、抑うつや不安になりやすいと言えそうです。ただし認知療法の効果は高いため、不安を軽減する治療法として活用できると言えそうです。

認知の偏りを緩めるには

では、認知の偏りはどのように緩めていけばいいのでしょうか。

シンプルな方法に、さまざまな考え方の引き出しを増やすことがあります。

たとえば、先ほどの定時退社で残業代が減るの場合で見てみましょう。給料が減るという考え方はじめ、いろいろな考え方ができると思います。

認知の複雑性の例

1つの出来事に対して、さまざまな考え方を増やすことで認知の偏りを緩めることができます。

このように、複数の考え方を持つことを認知の複雑性といいます。

メンタルへルスにプラスに働く

認知の複雑性は、メンタルヘルスにプラスの働きをすることが分かっています。

佐藤(1999)は、専門学生・大学生150名を対象に、自己表現の複雑性と抑鬱の関係を検討しました。その結果、認知の複雑性をもつ人は抑鬱になりにくいことが分かりました。

以下の図をご覧ください。肯定的自己複雑性は、自分のことを肯定的に見れるボリュームのことです。落ち込みにくい人のほうが多いことが分かります。自己表現の複雑性に関する各指標の平均値と標準偏差の図

つまり考え方を増やせると抑うつになりにくいため、自分に自信が持てたり積極的になるといえそうです。

認知の複雑性を増やすには?

では、複雑性を増やす方法は、どうしたらいいでしょうか。

今回は、質問を使いながら考え方を増やす方法をご紹介します。

以下は、考え方を増やす考え方です。自分が考えやすい質問を使いながら、考え方を増やしてみてください。

①現実的?

「その考え現実的?」
悩んでいるときは、悩んでいるときは現実的な思考に至らないケースが多いです。わずかな確率のことを100%と言ってしまうこともあります。

その考えは「現実的?確率はどれくらい?」と投げかけ、現実的な確率の考えを出していきます。

②他人なら?

「他人ならどうかんがえるかな?」
自分はこう思うけど、いつも明るい太郎さんならどう考えるかな?など、イメージできる人がどんな風に考えるかを考えて案を出していきます。

③なし→ある思考

「できたところはどこかな?」
悩んでいるときは、「ない」という発想で物事をとらえがちです。できていない部分ではなく、できたところ「ある」に注目して考えを増やしていきます。

④最悪よりまし!

「最悪の時よりはマシ?」
目の前の良くない状態は、広い目でみれば最悪の状態ではないかも。今の状態を、最悪の時よりはマシと考えてポジティブな考えを出していきます。

⑤痛みが分かる

「この経験が成長に!」
人生ではいろいろな経験をします。辛く悲しい経験が、心の成長になることも…。辛い経験をしたからこそ、人の心の痛みが分かると前向きにとらえるといいでしょう。

⑥チャンス

「このピンチはチャンス!」
上手くいかない状態は、成功につながるチャンスと考えることもできます。ピンチをチャンスを考えていきます。

⑦人生経験にプラス

「これは人生の経験だ!」
いろいろなことを体験していくなかで人生が豊かになるという考えのもと、プラス視点で考えを増やしていきます。

⑧ユーモアに

「これネタになるかも!」
目の前の不安も、笑いに変えることで、気持ちが楽になるものです。今度友だちと話す時に使えるかも…そんな気持ちでとらえてみるといい考えが思いつくものです。

⑨達観

「なんとかなるだろう!」
波乱万丈が面白い!そんな気持ちでとらえてみるといいでしょう。目の前の細かい悩みにこだわらず、少し先を見て考えてみると楽しく考えられるものです。

認知の複雑性の練習問題

認知の複雑性のトレーニングを事例で行っていきましょう。

<事例>
・会社員の花子さん
・「~べき」などの思考をしがち
・3日後に会社でプレゼン
・プレゼン会場には50名が集まる
・社長や部署も参加する認知療法の練習

認知の偏りが強い花子さんは「失敗したら社長からの評価が下がる」という思考から、緊張が高まりプレゼンに対してネガティブ思考でいっぱいになってしまいました。

認知療法の練習問題

花子さんの状況に、考え方を増やしていきましょう。先ほどご紹介した、認知の複雑性のコツを参考に、5つくらいを目標に考えていきましょう。

①現実的?確率計算する
②他人なら?
③なし→ある思考
④最悪よりまし!
⑤痛みが分かる
⑥成功はチャンス
⑦人生経験にプラス
⑧ユーモアに
⑨達観

 

 

 

 

 

 

解答例

認知の偏りを修正する練習

発展編

ここから先は認知療法をより深く理解したい方向けの内容です。さまざまな研究や知識をお伝えします。

認知療法について基礎的なことは理解したけど、もっと深く知識を得たい方、医療関係者や福祉関係の学生様は参考にして頂けると幸いです。

アルバートエリスとは?

論理療法を提唱した、アルバート・エリスは、心理学の発展に大きな影響を与えた人物の一人です。エリスの書籍や論文は、フロイトやロジャースに次いで引用される機会が多いとされています。

論理療法の効果

論理療法は、うつ病をはじめ、摂食障害、強迫神経症、パニック障害といった精神疾患に有効とされています。加えて近年は、発達障害を患う人たちの人間関係の悩みに対しても使われています。

基本モデル

論理療法では、出来事・受け取り方・感情に焦点を当てた考え方です。人間の感情は出来事の受け取り方次第で変わるという流れを、ABCDE理論で解決につなげます。

A=Activating event(出来事)
B=Belief system (受け取り方)
C=Consequence (感情や行動)
D=Dispute(反証)
E=Effect(感情や行動)

出来事(A)は変えることができませんが、受け取り方(B)は変えられます。受け取り方を論理的に書き換えることで、沸き起こる感情を修正します。そして感情を書き換えために、反証(D)し論理的な感情(E)にすることが重要だと説いています。

たとえば、大好きな人と別れたという状況で考えてみましょう。

認知療法とABCDE理論
A出来事
→大好きな恋人と別れた
B受け取り方
→もう2度と恋人のような異性と出会うことは絶対にない
C感情
→恋愛は2度としない
D反証
→二度と会わないというのは非現実的
E感情
→新しいことにチャレンジしてみよう。婚活もいいかも

「ついつい、極端な考え方をしてしまう」という、認知の偏りクセがある人は、ABCDE理論で現実的な捉え方を導き出すことができます。

反証とは?

反証する時には、以下ような問いかけをすると現実的な捉え方がしやすくなります。

「この考え方でよいのか?」
「ほかの見方はできないか?」
「その考え方に根拠はあるのか?」

反証をすることで、認知の偏りが修正され、ネガティブな気持ちを軽減することができます。

 基本モデル

認知療法は、20世紀中ごろアーロン・ベックが提唱した療法です。

特徴は、アルバート・エリスの論理療法に対して、スキーマーという概念をプラスしている点です。

基本モデルはこちらです。自動思考は頭の中で、何となく浮かび上がる思考の捉えてください。

スキーマーと認知療法モデル

スキーマーが認知の偏りの原因となり、自動思考の否定的要素を強くしてしまうのです。

スキーマとは?

認知の偏りに影響する、より深い思い込みと捉えるといいでしょう。

幼少や青年期に形成されるとされてい深い込みに

・高目標設定
・他社依存的評価
・失敗不安
などの極端な考え方があると、ネガティブナな自動思考を生み出すのです。

スキーマー尺度

家接ら(1999)は、大学生341名を対象に調査を行い、抑うつスキーマー尺度をまとめました。

こちらは「高達成思考」のスキーマー要因です。当てはまる人は、べき思考が強いかもしれません。

スキーマー要因

つづいて「他社依存的評価」のスキーマー要因です。当てはまる人は、他社評価や比較癖が出やすいかもしれません。

他社依存のスキーマー要因

つづいて「失敗不安」のスキーマー要因です。当てはまる人は、完璧主義やべき思考、過度の悲観癖が出やすいかもしれません。

失敗不安のスキーマー要因

スキーマがあまりにも強い方は、カウンセリングするがおすすめです。

認知療法の活かし方-まとめ

動画解説もあります。気に入って頂いたらチャンネル登録を頂けると励みになります。

まとめ

認知療法で感情を安定させるやり方は

・3つに分類する
・感情の偏りをチェック
・考え方を追加

認知療法のやり方は、まず「出来事」「捉え方」「感情」の3つに分類します。

そして、感情に偏りがないかを確認して、偏りが強い場合には考え方をたくさん追加しましょう。

1つの出来事に対して、3~4つくらいの考えができると、感情を安定させられるようになります。

「ついつい、極端な考え方をしてしまう」と言う方は、ぜひ認知療法を取り入れてみてください。次回は行動療法を解説します。

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人間関係講座

助け合い掲示板

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


ブログ→
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*出典・参考文献
・竹田 伸也・太田 真貴・松尾 理沙[他]・大塚 美菜子 2015 対人援助職者に対する認知療法によるストレスマネジメントプログラムの効果 ストレス科学研究 30(0), 44-51.
・佐藤徳,自己表象の複雑性が抑欝及びライフイベ ントに対する情緒反応 に及ぼす緩衝効果について,教育心理学研究,1999, 47, 131-140
・家接哲次、小玉正博 新しい抑うつスキーマ尺度の作成の試み,健康心理学研究/日本健康心理学会編集委員会編,1999,12,37〜46