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認知行動療法の基礎④ マインドフルネス療法

認知行動療法の基礎④ マインドフルネス療法の効果とやり方

認知行動療法入門は、4つのシリーズで紹介しています。具体的には
「①認知行動療法の全体像」
「②認知療法」
「③行動療法」
「④マインドフルネス療法」
です。

今回は「④マインドフルネス療法」についてお話します。


改善するお悩み
・感情コントロールが苦手
・落ち込むと立ち直れない
・集中力がない

  • 全体の目次    
  • マインドフルネス療法とは?
  • どんな効果があるの?
  • 呼吸法,観察法,~だな法
  • 助け合い掲示板

マインドフルネス療法とは?

歴史

マインドフルネス療法は、1970年代にジョン・カバット・ジンが提唱した心理療法です。カバット・ジンは分子生物学の博士号を取得しました。

その傍ら、ティークニートホン、崇山行願、鈴木大拙等から仏教や禅を、直接または書籍で学び、実践してきました。

そうして、禅や仏教の思想をベースとして、心理療法として昇華させ、マインドフルネス療法を提唱したのです。

出典:wikipedia

日本では2007年にマインドフルネス低減法という本が出版され、広く知られるようになりました。

認知行動療法では、認知療法と行動療法が基本でしたが、近年は、マインドフルネス療法も一緒に行うと効果が高いことが分かってきています。

意味

マインドフルネスは、以下のように説明されています。

・Kabat-Zinn(1994)

今ここでの経験に、評価や判断を加えることなく、能動的に注意を向けること

・心理学辞典(1999)

積極的にカテゴリーに注意を向け、それを創出している心的状態

・北川(2013)

すべてのことを迎え入れ、それをあるがままにしておく

つまり、今ここで起きている事柄に対して、「好き/嫌い」などの判断をせずに、観察して放っておくことという意味で捉えられます。

たとえば、イライラして怒りそうになった時に「あ、いま自分はイライラしているな」と気づくと、スッと冷静さを取り戻すことができます。

語源

マインドフルの語源は、古代インドで使われていたパーリ語のサティからきているといわれています。

サティは、「常に落ち着いた心の状態」という意味です。

マインドフルネス療法では、落ち着いた心で、自分の心の状態を確認し、ただ見つめることを大事にします。そして、すべてのことを受け入れ、それをあるがままにしておくのです。

たとえば、寂しい気持ちがあれば、今自分は寂しいんだなとただ眺め、あるがままを受け入れます。

なかなか哲学的ですね。マインドフルネスの今ここに

マインドフルネスと要点

それでは、ここでマインドフルネスで使われるキーワードの解説をしたいと思います。

キーワード①:脱中心化

脱中心化とは、自分の思考や感情に巻き込まれないようにする態度です。たとえば、雑念に心が浮かんできても、それは一時的なものであるとして捉えようとする姿勢を意味します。

不安に巻き込まれるのではなく、観察することで客観的に自分の状況を観察することを目指します。

キーワード②:自動操縦

自動操縦とは、不安や恐怖などの感情に左右されて、やるべきことができない状態です。例えば、明日にプレゼンを控えてより、緊張でなかなか眠りにつけなかった。といったようなことです。

マインドフルネスの考えを活かして、不安や恐怖を克服するには“脱中心化”と“自動操縦”の2つのキーワードを知っておく必要があります。

この2つのキーワードを抑えつつ、マインドフルネスの効果についての研究を紹介していきたいと思います。

マインドフルネスと効果

今ここの感情を冷静に眺める力がつくと、様々な効果が期待できます。

行動制御

自分の気持ちに気が付くと、やってはいけない行動を制御できます。例えば、怒りを相手にぶつけることが少なくなります。

行動始発

自分の気持ちに気が付くと、やらなきゃいけないことを、スッとできるようになります。例えば、勉強の前は逃げ出したくなることがあると思いますが、行動できるようになります。

集中力UP

やるべきことに集中できたり、集中できない状況を改善できます。最近グーグルが企業研修でも取り入れたことで仕事でも活用されています。

心配性の軽減

目の前のことに集中していると、心配事が起こりにくくなります。心配というのは、過去や未来のこと柄について考えることです。そこで、今ここに集中することで不安を感じる隙が無くなります。

 

具体的な統計結果が気になる方は下記を参照ください。

ここで研究を見ていきましょう。宇佐美ら(2012)らは、大学生266名を対象に、マインドフルネスと抑うつの関係を調べました。その結果以下のことが分かりました。

まずは、「行動制御の抑制」の結果です。マインドフルネスが行動制御の抑制に大きく影響することが分かります。

マインドフルネスと行動制御の効果

大変高い数値が出ているため、マインドフルネスができないと本能のまま動いてしまう可能性が高いと考えることもできます。

次に「行動始発の抑制」です。マインドフルネスが、気持ちの切り替えに有効と言えそうです。

マインドフルネス行動抑制の制御

つづいて「注意の制御」です。こちらもマインドフルネスが集中力に影響を与えることが分かります。

マインドフルネス注意の制御

田中ら(2010)は、12名の心配の高い大学生を対象に、1週間のマインドフルネスを実践してもらい、その効果を調べました。

結果を表したのが下のグラフです。

心配性を和らげよう

上図のように、マインドフルネスを実践する前と後では、心配性得点が有意に下がっていました。1週間という比較的短い期間ではありますが、マインドフルネスを毎日行うことで、心配性の得点が改善されたのです。今回の研究から、マインドフルネスには心配性を和らげてくれる効果があると考えられます。

 

マインドフルネスの手順

マインドフルネル療法は正式に実施すると2週間程度、専門機関でのトレーニングが必要です。ただ一般的にはそこまで時間は取れないと思います。

当コラムでは日常生活でもできるように、以下の5つのトレーニングをお伝えします。入門として参考にしてみてください。

①-4つの心構えを学ぶ
②-呼吸法
③-思考を眺める法
④-~だな法
⑤-ちゃぶ台法

①-哲学の復唱

まずはじめにマインドフルネスの哲学を頭に入れておきましょう。マインドフルネスの源流は仏教で、哲学的です。ワークだけ実施しても、なんのこちゃピンとこないです。

マインドフルネスの要素を統計的手法で分析されています(前川ら,2015)。今回は4つの基本哲学にまとめました。

トレーニング前に軽くつぶやくだけでも効果が出てくると思います。もし可能であれば、復唱しながら読んでみてください♪

マインドフルネス療法-哲学

いまここ

「今」にこだわる。今の自分の感情、思考がどのようなものかを意識する。

自他不二の姿勢

他人と自分は一体化で分けられない。全体から自分を感じ取る。全体の中の様々な因果関係の中にいる自分を客観的に眺める。

気づき

全体の中にいる自分を眺めながら、自分がどんな感情なのか、どんな思考なのかに気がつき、描写する。

自動的に反応しない

感情のおもむくままに動かない。自分を冷静に描写し、自分の人生にとって大事な行動をする。

 

いかがでしょうか?少し気持ちが落ち着いてきませんか(^^)

② 呼吸に集中

次に、呼吸をしていきます。呼吸はマインドフルネスのベースになります。

1:おなかで息を吸う

おなかから息を吸って、いい空気が入っていくるイメージを持ちます。最初は目はつぶったほうが集中できますが、慣れてきたら開けたままでもOkです。

2:鼻から息をはく

次に、鼻から息を吐きます。悪い空気が出ていくようにイメージするといいでしょう。

3:呼吸を観察する

今まさに、呼吸をしている自分を観察します。息の大きさ、おなかのふくらみ具合、姿勢、体の温かさなどを観察しましょう。

腹式呼吸は生理学的にも効果があります。不安な時、イライラしたとき、落ち着きたいときは、シンプルに呼吸法をするだけでいったん冷静になれると思います。

簡単にできるので私も緊張しやすい場面で使っています。

腹式呼吸,マインドフルネス

③ 感情と思考を眺める

先程は自分の身体感覚に目を向けるマインドフルネスでした。次に、思考や感情に目を向ける練習をしていきます。

1:呼吸法で準備

さきほどお伝えした呼吸法で、準備をします。

2:感情を観察する

たのしい、うれしい、リラックス、不安、緊張、おそれ

など比較的原始的な感情を確認します。イメージで確認してもOkですし、言葉にしてもOKです。

3:思考を観察する

次に、思考に目を向けます。思考の見つけ方ですが、先程見つけた感情をヒントにすると見つけやすいです。例えば、不安 という感情があることに気が付いたら、なぜ不安を感じたのかを探していきます。

明日の仕事で重要な発表があり、失敗するかもしれない…と考えている
将来、お金がが足りないかもしれない…と考えている

こんな感じで感情の裏側にある考えを見つけていきます。感情に比べて少し難しいので、最初はできなくてもOKです。

マインドフルネス療法のやり方

④ ~だな法

改めてマインドフルネスの手法をお伝えします。ここまで①~③について学習してきました。①~③は時間をある程度かけて自分を観察する方法です。

しかし、マインドフルネスは、短時間でする場面があります。例えば、カッとなってしまったとき、不安で逃げ出したくなる時、いちいち呼吸からじっくりやっている暇はないと思います。

こんな時は今回紹介する、~だな法がおススメです。

①-4つの心構えを学ぶ
②-呼吸法
③-思考を眺める法
④-~だな法
⑤-ちゃぶ台法

当コーナーでは④ ~だな 法を学びます。

「~だな」法のやり方

~だな法はすごくシンプルで、

・私は~と感じているんだな
・私は~と考えているな
・私の気持ちは~だな

と私を主語にして、今の自分の気持ちは感情を確認していきます。

マインドフルネス療法の手順

~だなは、自分自身の状態を客観的に観察するフレーズなので、マインドフルネスモードにはいります。特に日常的に感情が混乱しているときに試してみてください。

⑤ ちゃぶ台法

最後は私のオリジナルのやり方です(笑) マインドフルネスの手法はいろいろあるのですが、日本的なものがあってもいいのではないかな~と考え私自身で実践しているやり方です。

統計的な研究はないので話半分ぐらいで聴いてみてください。

①ちゃぶ台をイメージする

まずは日本的にちゃぶだいをイメージします。そこに自分だけいて、何かを作業しているイメージを持ちます。

ちゃぶ台法とは?

②感情や思考が入ってくる

ちゃぶ台の周りには様々な感情が入ってきます。不安くん たのしいくん やる気がでないくん 面白いくん 緊張くん

ちゃぶ台法を解説

③お茶を出す

感情の優劣はありません。不安くん、やるきが出ないくんだけ でていって!と考えるのではなく、下記のように等しくお茶を出します。

感情の対処法

④作業に集中する

感情にお茶を出したら、自分がやるべき作業に集中します。

これは私川島のやり方です。お茶をだす!という行為が、ありのままを認める感じがあって、私はしっくりきています。

マインドフルネスは、感情や思考の客観視、ありのままを認める姿勢があれば、様々なやり方が可能です。自分自身で腑に落ちるやり方を作ってみるのも面白いと思います。

まとめ

仕上げ動画

マインドフルネスについて動画でも解説しました。仕上げに役立ててくださいね♪

まとめ

マイドフルネス療法のトレーニングはいかがでしたか?私自身のことを言うと、何か悩みがあるときは、まずはマインドフルネスで感情や思考を観察し、そのあとに必要があれば、認知療法、行動療法に落とし込むようにしています。

感情や思考を自然なものとして受け入れるという部分が、なんだか日本的で好きな療法です。認知行動療法の1つとして柔軟に使ってみてください♪

まとめと発展

ここから先はマインドフルネス療法をより深く理解したい方向けの内容です。さまざまな研究や知識をお伝えします。

認知療法について基礎的なことは理解したけど、もっと深く知識を得たい方、医療関係者や福祉関係の学生様は参考にして頂けると幸いです。

マインドフルネスと様々な手法

今回紹介した手法は基礎編となります。もっとたくさんやり方を学びたい方は展開してみてください;

食べ物をしっかり味わって食べることで、五感に集中する方法です。

1:食べ物を用意する
レーズン1粒用意します。レーズンがなければ、粒チョコや小さめの梅干し、ガムやコーヒなど、小さくて、香りや味があるようなものでもOKです。

2:今ここの感覚を味わう
普段は意識しない感覚をしっかりと感じていきます。重さや軽さ、触感やにおいをじっくりと味わいましょう。

コツコツと続けていくことで、徐々にいまここに集中できるようになります。

レーズンエクササイズのやり方

ボディスキャンは、身体の各部分の感覚をありのままに観察していく方法です。手順は3つあります。

1:姿勢を正す
背筋を伸ばして椅子に座ります。足の裏は床につけ、肩幅程度に足を広げます。この時、背もたれにはもたれかかりません。

2:足先に感覚を集中
足先の感覚に注意を傾け、感じたことをあるがままに体験します。もしも心配や不安の雑念が浮かんでたら、以下の点を大事にしましょう。

・考えを変えない
・あるがままを観察する
・心配は自然な事とする

不安をなくす必要はありません。その感情をそのまま眺めるイメージです。

3:全身に感覚を集中
足先が済んだら、全身の感覚を順に集中させて行きます。足先から頭まで15分ほどかけて行います。

足の裏、足の甲、足首、ふくらはぎ、太もも、お尻、お腹、背中、胸、両肩、首、両目、鼻、口周り、ほほ、あご、そして頭へと注意を向けて、ボディスキャンします。ボディスキャンのやり方

川を流れる葉っぱに感情を乗せて思考を眺めていく方法です。手順は以下の通りです(Hayes & Smith,  2008を一部変更)

1:川を流れる葉っぱをイメージ
2:自分の考えや思いに意識を向ける
3:思いを葉っぱにのせる

ゆったりとした川の流れの傍らに腰を下ろして、葉っぱが流れていくのを眺めています。

流れに漂う葉っぱのやり方

①まずは、時計をそばに置いていつエクササイズを始めたのかをメモします。そして、少なくとも5分間は以下のイメージを続けてください。

目を閉じて澄みきったゆったりとした川の流れを想像してください。 川は、岩の上や木の周りを流れ、山を下って谷あいを進みます。 ときどき、大きな葉っぱが流れに落ちそのまま水面を漂っていきます。暖かい晴れた日に あなたはその流れの傍に腰をおろして葉っぱが流れていくのを眺めています。

それでは、自分の考えや思いに意識を向けてください。頭に浮かんだ考えや思いは、それぞれ1枚の葉っぱにのって、流れていきます。言葉で考えが浮かんだならその言葉を葉っぱにのせましょう。もし、絵で考えたならそれを葉っぱにのせます。

<大切なこと>
あなたが流れの傍らにいて、葉っぱを流れ続けさせることです。流れを速くしたり、遅くしたりしないでください。葉っぱの上にのせたものを変えようとしないでください。

もし、葉っぱが消えたり、意識がどこかよそに行ったり、あなたが川に入ったり、葉っぱと一緒に流れていることに気づいたら、一度中断して、何が起こったのか観察しましょう。

そして、何が起こったかを整理して、もう一度、流れの傍らに戻ってこころに浮かぶ考えを観察し、それらを1つずつ葉っぱにのせて、流れさせましょう。

次に、以下の質問に答えていきます。
あなたが考えに飲み込まれてしまうまで、どのくらい続けることができましたか?書いてください。

 

葉っぱのエクササイズ

流れていたものが止まったり、意識がよそに行った場合は、その直前に何が起こったかを書いてください。

葉っぱのエクササイズ

水が流れる様子をまったく想像できなかった場合、その間に、何を考えていたか書いてください。

葉っぱのエクササイズ

葉っぱのエクササイズでは、頭に思い浮かんだ考えや思いを、それぞれ1枚の葉っぱにのせて、流すようにします。そして何が起こったのかを観察しもう一度、流れの傍らに戻り、心に浮かぶ考えを観察して葉っぱにのせて流します。

ちなみに、葉っぱの他に、電車に感情を乗せて思考を眺めていくマインドトレインや座禅、瞑想などもあります。

 

森田療法

マインドフルネスに非常に近い分野で、森田療法という心理療法があります。マインドフルネスよりも80年近く前に発展してきた手法で、目的本位、気分本位、あるがままという重要な概念を学ぶことができます。

マインドフルネスが腑に落ちた感覚がある方は、下記のコラムもぜひご覧ください。

森田療法の基礎

 

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


ブログ→
YouTube→
Twitter→

*出典・参考文献
・Kabat-Zinn, J. (1994). Wherever you go, there you are: Mindfulness meditation in everyday life. New York: Hyperion
・北川嘉野・武藤崇(2013)マインドフルネスの促進困難への対応方法とは何か. 心理臨床科学, 3(1), 41-51.
・田中圭介, 杉浦義典, 神村栄一 (2010)心配に対する注意訓練とマインドフルネスの比較. 広島大学大学院総合科学研究科紀要. I, 人間科学研究, 5, 47-55.
・藤井 修平,マインドフルネスの由来と展開―現代における仏教と心理学の結びつきの例として―
・宇佐美 麗, 田上 京子, マインドフルネスと抑うつとの関連  自己制御の働きに着目して, 弘前大学教育学部紀要. 107, 2012, p.131-138
・前川 真奈美, 越川 房子, 6因子マインドフルネス尺度(SFMS)の開発,2015 , 28 , 2 , p. 55-64
・斎藤 武郎, マインドフルネスの臨床評価:文献的考察 ,Clin Eval 46(1)2018
・S・C・ヘイズ,S・スミス(著),武藤崇,原井宏明,吉岡昌子,岡嶋美代(翻訳):ACTをはじめる-セルフヘルプのためのワークブック.星和書店,2010