抑うつ状態とは?気分や症状・原因と改善方法
はじめまして!公認心理師の川島です。今回のテーマは
「抑うつ」
です。

改善するお悩み
・気分が落ち込んでいる
・元気がでない
・消えてなくなりたいと感じる
全体の目次
抑うつとは何か
様々な研究
3つの改善策
助け合い掲示板
しっかりと対策をお伝えしたいので全部で8分程度かかりますが、ぜひお付き合いください。
抑うつとは何か?
意味
まずはじめに抑うつとは何か考えていきます。性格心理学研究の佐藤ら(2001)の論文を参考にすると、抑うつは以下のように定義できます。
心配,苦悩,罪責感,焦燥などネガティブ情動が亢進し
かつ
喜び,興味 ,気力のポ ジ テ ィ ブ情動が低下した状態
このように抑うつとはとても広い意味で使われることが多く、一般的には元気がない状態と考えると良いでしょう。よく勘違いされますが、精神科医の方が抑うつがあると言ったからと言って、うつ病であるというわけではありません。
あくまで元気がないね…という感覚で抑うつという言葉を使います。また抑うつという言葉はと似たような用語があります。以下細かい用語の違いについて解説しました。理解を深めたい方は展開してみてください。
抑うつ状態とは、抑うつが比較的強い状態を意味します。抑うつ状態が長く続くと、うつ病と診断される可能性が高くなります。
抑うつ状態が長く続くと、うつ病と診断されることがあります。厚生労働省によると、うつ病は以下のように説明されています。
精神的ストレスや身体的ストレスが重なることなど、様々な理由から脳の機能障害が起きている状態です。脳がうまく働いてくれないので、ものの見方が否定的になり、自分がダメな人間だと感じてしまいます。そのため普段なら乗り越えられるストレスも、よりつらく感じられるという、悪循環が起きてきます。
抑うつが、思考や行動、感情の中心になっている状態が
うつ状態
うつ状態が長く続くと
うつ病
になってしまいます。そしてうつ病になると、掃除ができない、会社に行けないなど、行動面でも問題が起こりやすくなります。
これらが悪循環をつくり、ますます状況が悪化してしまうのです。
抑うつ反応は、ある程度原因がはっきりしている場合に、元気がなくなるときに使われます。例えば受験の失敗、失恋、死別などが挙げられます。
抑うつ反応は、通常の反応を超えたときによく使われます。
例えば失恋をしたときは誰でも落ち込みますが
「もう生きていけない」
「自分なんてどうなってもいい」
こんな形で、強い悲観に暮れる場合などは抑うつ反応があると表現されます。
原因がはっきりしている場合に生じる抑うつ反応が長期化し、通常よりも強く落ち込みがある場合は反応性うつ病、適応障害とされることがあります。
原因
抑うつの原因を考える場合以下の3つから考えることが大事です。
内因性
安心感を生み出すセロトニン、やる気を生み出すドーパミンと言った神経伝達物質が不安定になることで生み出されます。
心因性
死別、失恋、会社の人間関係の不和など、心に負担がかかっているときに起こります。
身体因性
体調不良、働きすぎ、体の病気、認知症などから起こる抑うつです。健康状態は心理面にも影響します。
抑うつ状態を改善するためには、これらの3つの原因を分析して対処していくことが大事になります。
抑うつと研究
抑うつについてはこれまで様々な研究があります。以下折りたたんで記載をしました。興味があるタイトルを展開してみてください。
うつ病の研究で有名なアーロン・ベックは、うつ病の患者には、以下の特徴的な否定的認知があることを示しました。
・自分に対する否定的認知
例:自分は物覚えが悪い。 だからつまらない人間だ。
・周囲に対する否定的認知
例:こんなつまらない自分と付き合いたい人間なんていないだろう。
・将来に対する否定的認知
例:この先楽しいことなどないだろう。
否定的認知とは、物事に対する悲観的な見方・考え方のことです。悲観的な思考を持っていると、気持ちや行動に影響が出てきますよね。
合わせて、アーロン・ベックは、うつ病患者の特徴的な否定的認知が行動にどのような影響を及ぼすかについても説明しています。
・活動量が減少
引きこもって喜びなどの体験が少なくなる。
・先延ばし
しなくてはいけないことを先延ばしにする。
・問題回避
飲酒やネットサーフィンでごまかす。
・コミュニケーションを避ける
うまく人と交流できなくなる。
名倉・橋本(1999)は、大学生の男女270名を対象に抑うつに関連する研究を行いました。その結果、抑うつになると、否定的な考えこみが増え、自分の世界に入りこむことがわかりました。
私たちは落ち込む時期は、マイナス思考が増え、自分と対話を始めます。
講師の川島も20代の前半に引きこもりをしたことがあるのですが、その際は否定的な考えに支配されて、一日中考え事をしていました。
ただ一方でこの時期は自分と深く向き合うことができて、人生をどう生きるかなどを考える貴重な時期だったと感じています。
竹島・松見(2013)は、小学生の高学年の児童を対象に、抑うつ症状を示す児童(10名)と低い児童(10名)の行動の違いを調査しました。その結果が下図となります。
自然場面における独り行動は
・抑うつ高群は多い
・抑うつ低群は少ない
ことがわかります。
もう1つの結果も引用させて頂きます。
自然場面における仲間との相互作用行動は
・抑うつ高群は少ない
・抑うつ低群は多い
ことがわかります。この結果から抑うつ症状が高い児童は、自然場面において孤立することが多く、仲間との相互作用も少ないことがわかりました。
抑うつの改善方法
ここからは抑うつの改善方法を解説していきます。復習をすると、抑うつの原因は、
内因性
心因性
身体因性
の3つがありました。これらを組み合わせていくと抑うつは改善しやすくなります。それぞれについてやり方をお伝えします。気になるリンクをぜひクリックしてみてください。
内因性の改善
神経伝達物質と個人差
抑うつはセロトニンやドーパミンが不安定になることで起こることがあります。セロトニンやドーパミンは身長や体重に個人差があるように、個人個人で量や安定度が異なります。
一方で、外見上は脳の中味は見ることができないので、元気がない原因を、環境の問題と考えたり、本人の努力不足と考えてしまうことがあります。
特に考え方は前向きにしている、日々の生活には客観的には特に問題がない状態で、抑うつが続いている場合は内因性の抑うつの可能性が高いと言えます。
医学の力と心理療法が基本
心療内科,精神科
内因性の場合は、医学の力を借りるのと心理療法を実践するのが基本的な対処法となります。特に、長期的に抑うつ状態が続いていて、消えてなくなりたい…やる気がでない…という方は要注意です。
お近くの心療内科か精神科で主治医の先生とよく相談をしてみてください。
心理療法
もう1つ大事なのは、心理療法を学ぶことです。心理療法は心の問題の改善を促す手法で、様々なやり方があります。抑うつと相性が良いのは、認知行動療法と言われる手法です。
認知行動療法は抑うつ気分を改善する考え方の学習、感情コントロール法、健康的な行動の仕方を学ぶ最もベーシックな手法です。心理療法を学んだことがないという方は是非下記のコラムを参考にしてみてください。
長所・短所
心療内科,精神科と心理療法のメリットデメリットについてはこちらの動画で解説をしました。違いをより深く理解したい方は参考にしてみてください。
心因性の改善
ストレス状態と抑うつ
私たちは日々、仕事、人間関係、家庭環境、経済的なストレスにさらされています。これらのストレス状態に対して、私たちは考え方を柔軟にしたり、誰かに悩みを相談することで対処しようとします。
この努力がうまく行かず、キャパシティをオーバーすると抑うつ状態になります。
心因性への対処法
・心理療法
心因性への対処法としては先程挙げた認知行動療法が最もオーソドックスな手法となります。考え方をほぐしたり、前向きに考える練習をすることで対処力を上げていきましょう。
・ソーシャルサポート
心理学の世界では、孤独な状況だと人間は精神的にマイナスになりやすいことが分かっています。悩みがあるときはお互い様です。一人で抱え込みやすい…という方は下記のコラムを参考にしてください。
ソーシャルサポートー時には周りに甘える
身体の面から改善
最後に体の面からの改善を考えていきます。私たちの心と体は深くつながってます。抑うつが続いている場合、体の健康を害している可能性があるのです。
たとえば、花子さんと太郎さんの生活で見てみましょう。
花子さんの生活
・適度な運動
・適切な食生活
・上質な睡眠がとれている
太郎さんの生活
・運動不足気味
・食事は3日間連続カップ麺
・睡眠も不足気味
花子さんと太郎さん、どちらの生活が心と体の健康にマイナスでしょうか?
心と体の健康にマイナスになりやすいのは、おそらく太郎さんの生活でしこのように、心だけでなく体調面からのアプローチも、健康には欠かせないと考えることができます。身体を整えるやり方としては、下記が挙げられます。
1-運動をする
2-日光に当たる
3-環境を整える
4-呼吸法でリラックス
5-食生活を整える
6-気晴らし型コーピング
身体の調子の悪さが、心理面に影響している…と感じる方は下記のコラムを参考にししてみてください。
心理学を学びたい方
本コラムでは抑うつをテーマに解説してきました。お役に立てたら光栄です。
最後に少しだけお知らせがあります。私たち公認心理師・精神保健福祉士は、行動力をつける心理学、メンタルヘルス向上の軽減を目指し、心理学講座を開催しています。
もっと心理学の勉強を体系的にしたい!という方のご参加をぜひお待ちしています。
執筆者も講師をしています(^^)
・認知行動療法の基礎
・落ち込みやすい状態を改善
・性格診断
詳しくは以下のお知らせをクリックして頂けると嬉しいです。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
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*出典・引用文献
名倉祥文, & 橋本宰. (1999). 考え込み型反応スタイルが心理的不適応に及ぼす影響について. 健康心理学研究, 12(2), 1-11.
竹島克典, & 松見淳子. (2013). 抑うつ症状を示す児童の仲間との社会的相互作用. 教育心理学研究, 61(2), 158-168.
大野裕. (2014). うつ病と認知行動療法入門. 総合病院精神医学, 26(3), 239-244.
岡島義, 国里愛彦, 中島俊, & 高垣耕企. (2011). うつ病に対する行動活性化療法. 心理学評論, 54(4), 473-488.
3 要因モデルに基づく, 抑うつならびに不安症状の分類: 多次元抑うつ不安症状尺度の作成
佐藤徳, 安田朝子, 児玉千稲 – 性格心理学研究, 2001