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抑うつとは?状態や気分、問題と改善方法

抑うつ状態とは?気分や行動の特徴

はじめまして!臨床心理士の加賀、精神保健福祉士の川島です。私たちは現在、こちらの初学者向け心理学講座の講師をしています。コラムを読んで興味を持っていただいたら、是非お待ちしています。

本コラムでは「抑うつ」について詳しく解説をしていきます。しっかりと対策をお伝えしたいので全部で8分程度かかります(^^;ちょっと大変ですが。ぜひお付き合いください。

  • 抑うつとうつ病の違い
  • 否定的認知とは?
  • 行動や思考の特徴
  • 気分を修正する治療法
  • 記録表のメリット・作り方
  • まとめ

しっかりとその問題や対策についてお伝えしたいので全部で8分程度かかります(^^;ちょっと大変ですが。是非お付き合いください。

抑うつとうつ病の違いは?  

みなさんは、抑うつとは何か知っていますか?うつとかうつ病はよく聞く名前かもしれませんね。

抑うつとは、精神医学的に説明すると、

・抑うつ気分や喜びの喪失が持続した状態
・気分が落ち込んで活動を嫌っている状況

です。抑うつは、思考・行動・感情・幸福感に影響が出ている状況をいいます。

抑うつとはこの抑うつが、思考や行動、感情の中心になっている状態がうつ状態です。うつ状態が長く続くとうつ病になってしまいます。

▼こちらは、うつ状態の心のしくみです。

うつ状態スパイラル

悲しい出来事などがあり抑うつ症状の傾向が強くなると、思考や行動にも影響を及ぼします。そしてその抑うつ状態が悪循環をつくり、ますます状況が悪化してしまうのです。

人は悲しみや苦しみを経験すると、さまざまな反応が心身に現れます。これは、自然な反応ですから、一過性の抑うつ状態が起きることは珍しくはありません。しかし抑うつ状態に気づかず長期化してしまうと、メンタルヘルスにマイナスの影響を与えてしまいます。抑うつ気分の特徴や日常生活に与える問題を知ることで、自分のしんどさに早めに気づいていきましょう。

・抑うつが引き起こす否定的認知とは?

まずは、抑うつ状態が引き起こす問題について心理学の研究をもとに見ていきましょう。

うつ病の研究で有名なアーロン・ベックは、うつ病の患者には、以下の特徴的な否定的認知があることを示しました。

・自分に対する否定的認知
例:自分は物覚えが悪い。 だからつまらない人間だ。

・周囲に対する否定的認知
例:こんなつまらない自分と付き合いたい人間なんていないだろう。

・将来に対する否定的認知
例:この先楽しいことなどないだろう。

否定的認知とは、物事に対する悲観的な見方・考え方のことです。悲観的な思考を持っていると、気持ちや行動に影響が出てきますよね。

合わせて、アーロン・ベックは、うつ病患者の特徴的な否定的認知が行動にどのような影響を及ぼすかについても説明しています。

・活動量が減少
引きこもって喜びなどの体験が少なくなる。
・先延ばし
しなくてはいけないことを先延ばしにする。
・問題回避
飲酒やネットサーフィンでごまかす。
・コミュニケーションを避ける
うまく人と交流できなくなる。

うつ病の特徴 否定的認知と行動

抑うつ状態が、思考や行動に与える影響については、国内でもたくさん研究されています。国内の研究をもとに、抑うつ状態の「思考」「行動」についてさらに詳しく見ていきましょう。

・抑うつ状態での「思考」とは?

まずは、抑うつ状態での思考について解説します。

名倉・橋本(1999)は、大学生の男女270名を対象に「考え込み型反応スタイルが心理的不適応行動を引き起こす影響」について調査をしました。方法は、2つの質問紙を使って影響を見ています。ここでは、抑うつ状態のときに陥りがちな思考の結果をご紹介します。

抑うつが思考や行動に及ぼす影響

抑うつ状態が高い時には、
・物事を否定的に考えこみ
・自分の世界に閉じこもる自己没入が増える
ことがわかりました。

つまり、抑うつ状態の否定的な気分のときには、自分の世界に閉じこもりがちになるということです。自分が落ち込んだ時を想像すると、納得しやすい結果ではないでしょうか。

また名倉・橋本は、調査の結果から、抑うつのときの考えこみがさまざまな不適応に結びつくことも証明しています。

・抑うつが引き起こす「行動」とは?

つづいて、抑うつ状態が引き起こす「行動」に関する研究結果を見ていきましょう。

竹島・松見(2013)は、小学生の高学年の児童を対象に、抑うつ症状を示す児童(10名)と低い児童(10名)の行動の違いを調査しました。

調査の方法は、質問紙で抑うつ症状が高い児童と低い児童を分け行動観察をします。行動観察は、自由な観察の中で、児童らが決めておいた指標行動をしたときにカウントをしています。以下が、行動観察に用いた行動の指標です。

(a)対象児が誰といるか?
独り:半径1m以内に誰もおらず、遊びに加わらない。
仲間:半径1m以内に児童がいる。又は遊びに加わっている。

(b)相互作用の有無
相互作用あり:他者への働きかけ、話す、身体接触がある。
相互作用なし:他者への働きかけ、応答、身体接触がない。

▼「対象児童が誰といるか?」の結果です。

抑うつの研究 独り

自然場面における独り行動
抑うつ高群多い
抑うつ低群少ない

▼「相互作用の有無」の結果です。

抑うつの研究 仲間との相互作用

自然場面における仲間との相互作用行動
抑うつ高群少ない
抑うつ低群多い

この結果から抑うつ症状が高い児童は、自然場面において孤立することが多く、仲間との相互作用も少ないことがわかりました。

・抑うつの思考と行動の特徴

ご紹介した2つの国内研究の結果から、抑うつにみらえる否定的認知が、気分と行動に影響を与え、その行動によって否定認知が強まるということが分かりました。

つまり、

否定的認知

否定的な気分が増す

孤立行動が増える
仲間との相互作用が減る

否定的認知が強まる

このような悪循環が生じるということです。

抑うつの悪循環冒頭でもお伝えした通り、抑うつは人間の感情にとって一時的に起こる自然な反応です。しかし、認知や行動の悪循環を作ると長期化をもたらしてしまいます。

つまり、抑うつの症状や原因を改善するには、「思考 — 気分 — 行動」の悪循環を断ち切ることが大切です。では、具体的にはどうすればよいのでしょうか?

本コラムでは、うつ病の治療でも用いられる認知行動療法から行動活性化法という行動技法をご紹介します。

行動して治療!行動活性化法とは?

行動活性化法とは、「達成感や楽しみをかんじられるような活動を増やして抑うつ状態の改善やうつ病を治療する」方法です(大野,2014)。

私たち人間は、達成感や楽しみが感じられる行動をすると気分が晴れます。一方で、何もしないでいると、気持ちがふさぎ込んでしまうものです。しかし行動をして少しでも変化を感じることができれば、「何をしても変わらない」という否定的認知が修正されます。

このように、行動で否定的認知の修正を目指すのが行動活性化法です。

これまでうつ病や強い落ち込みがある時には、休養が必要だと言われてきました。確かに休養は必要ですが、いくらか動けるようになってからは、何かをすることが治療上役立つということが、この治療から推奨されています(岡島, 国里, 中島 & 高垣,2011)。また、抑うつ的な患者は成功体験に反応して気分が改善してくるため、気分が良い方向に変わることが期待できる(大野、2014)としています。 

行動で認知を変える治療法つまり、心身の疲れが取れた時点で達成感や楽しみを感じられるような行動を無理のない形で進めてみることが、抑うつの改善につながります。

行動活性化法を行うときには、日常行動記録表を作り自分の行動を振り返っていきます。日常行動記録表を作って、抑うつを改善していきましょう!

・日常行動記録表の手順・メリット

日常行動記録表とは、達成感や楽しみを見つける事を目的した記録です。作成の手順と行動の振り返り方はこちらです。

1:自分の行動を毎日記録する
2:行動による楽しい気持ちや達成感を記入する
3:行動を振り返る(7日後)
4:気分が改善する行動を決める

<作る時のポイント>
日常行動記録表は、出来る限り具体的で簡潔につくります。細かくなりすぎると書くこと自体にエネルギーが必要となり続かなくなってしまいます。

日常行動記録表は、7日間の記入が終わったところで振り返り、楽しく思えた行動などを選びリストにしていきます。そのため、継続することがとても大切です。具体的に、そして簡潔に書き続けていけるようにしましょう。

日常行動記録表の目的は「達成感や楽しみを見つける」です。すべてをきちんと書くことは重要ではありません。

日常行動記録表の作り方メリット

<日常行動記録表のメリット>
日常行動記録表を作ることで、

・認知の偏りに気づける
・より満足感のある活動が増える
・苦痛な活動が減る

事前の予測と体験のずれを数字的に認識でき、認知の偏りに気づくことができます。また結果を振り返ることで、より満足感を得られる活動を増やし、苦痛な活動を減らす効果も期待できます。

それでは作り方を、例題を交えながらも説明します。

・日常行動記録表の作り方

それでは作り方を、例題を交えながらも説明します。

<例題>
高校生のA君は、部活で部員とトラブルがあってから抑うつが強い状況です。A君は、気分の落ち込みが続くため学校を休んで、家でゴロゴロすることが多くなっていました。そんなときA君は、

・身体はだいぶ回復してきた。
・少し動いた方がいいような気がする。

以上のように感じたため、行動活性化法を試すことにしました。A君の例をもとに、日常行動記録表を作成していきましょう。

1:自分の行動を毎日記録する
A君は、起床が大体6時で就寝は0時です。30分~1時間単位で記録します。

2:行動による楽しい気持ちや達成感を記入する
行動に対しての気持ちを0点~10点で記録します。

▼A君の日常行動記録表です。

日常行動記録表の記入例この記録を、7日間続けます。

3:行動を振り返る
・早朝の筋トレやランニングは、達成感が強い。
・午後の勉強時間は集中が落ちるため達成感が低い。
・犬と遊ぶことや友達とのLINEは楽しみを感じる。

A君は、今の生活では午前中に集中して勉強する事と軽い運動に達成感があり、他者とのコミュニケーションも楽しめるようになってきたと感じてきました。

4:気分が改善する行動を決める
・勉強は午前中にまとめ、午後は外出機会を増やす。

以上を目標にしてA君は、午前中にまとめて勉強をし、当面は午後に犬の散歩に行くことをきめました。

・毎日を記録!抑うつ状態を改善

それでは、あなたの日常行動記録表を作成し、行動の振りをしていきましょう。

1:自分の行動を毎日記録する
2:行動による楽しい気持ちや達成感を記入する

日常行動記録表

3:行動を振り返る(7日後)


4:気分が改善する行動を決める

 

いかがでしたか?何度も何度も繰り返していくなかで、自分にとっての達成感や楽しみのある活動を増やしてみましょう。活動をする中で、気分も少しづつ変わってくるはずです。

抑うつの気分・症状を改善しよう

抑うつコラムでは、心理学の研究を交えながら、抑うつとは何か?抑うつが引き起こす問題、原因などを解説してきました。

改善方法では、行動と通して否定的認知を解消していく方法でした。まずは、日常行動記録表を作成し、結果を振り返りましょう。その中で、自分にとって満足感が得られる活動を増やし、苦痛な活動を減らしていくことができます。

抑うつコラムを読み終えて「明日からやってみよう」と思って頂けると嬉しいです。また、ご紹介した改善方法を実践する中で、あなたが悩んでいた問題に抑うつが関わっていたんだ!という発見やその抑うつの問題が少しずつ改善されることを実感して頂けたらうれしいです。

・専門家の講義を受けたい方へ

最後に、これまで「抑うつ」コラムにお付き合いいただき、ありがとうございました。新しいことを生活に取り入れ、これまでの習慣を変えるのはなかなか大変なことです。焦らず、できそうなことから根気強く取り組んでみて下さい。

そして、専門家から直接学びたい!という方は良かったら私たち臨床心理士・精神保健福祉士が開催している、コミュニケーション講座への参加をおススメしています。コラムだけでは伝えきれない知識や実践的なワークを進めています。みなさんのコミュニケーション能力が向上するよう、講師も一緒に頑張ります!よかったらいらっしゃってくださいね(^^)

★抑うつの悪循環は行動で改善しよう!
心理学講座

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・引用文献
名倉祥文, & 橋本宰. (1999). 考え込み型反応スタイルが心理的不適応に及ぼす影響について. 健康心理学研究, 12(2), 1-11.
竹島克典, & 松見淳子. (2013). 抑うつ症状を示す児童の仲間との社会的相互作用. 教育心理学研究, 61(2), 158-168.
大野裕. (2014). うつ病と認知行動療法入門. 総合病院精神医学, 26(3), 239-244.
岡島義, 国里愛彦, 中島俊, & 高垣耕企. (2011). うつ病に対する行動活性化療法. 心理学評論, 54(4), 473-488.