情緒不安定,イライラする女性の特徴,生理前,女性ホルモンの変化
はじめまして!精神保健福祉士の川島です。今回のテーマは「女性の情緒不安定」「イライラする」です。

- 改善するお悩み
- イライラが止まらない
- 情緒不安定になる
- 旦那や子供の言動にカチンと来る
女性は時期によって、どうしても情緒不安定になってしまう時期があります。普段は温和な女性でも、旦那や子供の言動に、激しく怒りが込み上げてくる…。
そんなことがあるかもしれません。当コラムではこれらの女性の情緒不安定、イライラする原理を理解し、対応策を考えていきましょう。
女性の情緒不安定の問題
情緒不安定な状態では、旦那や子どもの些細な言動にイライラしてしまいます。時には、ガマンの限界に達し、八つ当たりしてしまうこともあるでしょう。
情緒不安定な時は、自分でもコントロールがきかないので、相手を傷つけてしまうことがあります。その結果、夫婦関係は気まずくなる、友人を振り回してしまう、子供にきつく当たってしまう方もいます。。
夫婦関係の悪化は子供の人格形成の問題点に影響することも分かっています。やはり人間関係は温和にしたいものです。
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子どもの人格形成の悪影響
情緒不安定な時は、旦那さんと口論になってしまうこともあるでしょう。しかし、夫婦喧嘩はものすごく危険です。
夫婦関係の良しあしは、子供の成長や教育、人格形成を左右する可能性があります。
張(2015)の研究では、夫婦喧嘩の巻き添えになった子どもたちは、「不機嫌・抑うつ・無気力といった数多くの深刻な問題を抱える危険性が高くなる」
と述べています。
以下の図をご覧ください。
このように、左側の〇で囲われた要素が元になって、子どものメンタルへルスに悪影響を及ぼしてしまうのです。
それだけではなく、菅原ら(2002)では、夫婦関係が悪いと子ども抑うつ傾向が増えることが分かっています。
研究では、1360名の母親を対象に夫婦関係が子どものメンタルヘルスにどのような影響を与えるか調査をしました。
その結果、上図のように「父親と母親がお互いに愛情を持っている」場合、家族の雰囲気がよくなり、子どもの抑うつ傾向が低くなることが分かっています。
また、母親が父親に対して愛情を持っていると、子どもに対しても暖かく接することができ、その暖かさが子どもの抑うつ傾向を下げるのです。
このように、夫婦関係によって子どもの精神的な健康が左右されてしまいます。夫婦喧嘩の中で「子どもたちは関係ないでしょ!」という発言をしてしまう人は、少し配慮する必要があるかもしれません。
原因①若い女性の場合
それでは、女性の情緒不安定はなぜ起きてしまうのでしょうか。まずは若い女性の場合から原因をみていきましょう。
生理前の体の変化
生理がある女性においては、卵巣ホルモンや基礎体温の変動、排卵・月経に周期的な月経リズムがあります。以下の図をご覧ください。
この図のように、エストロゲンは生理前になると減少する傾向があります。月経リズムで、情緒不安定になる傾向があるようなら、生理を疑ってみるのも良いでしょう。
黄体期後期における自律神経の働きの低下が、月経に伴う症状を高めている(松本ら,2008)という報告もあります。
ホルモンバランスが崩れている時期は、環境の変化やストレスが無くても、情緒不安定になりやすくなります。日常生活に支障が出ることもあるため注意が必要です。
解決策:薬物療法
薬物療法とは、噛み砕いて説明すると、薬剤を用いて気分を安定させる方法です。PMSの場合は、主に以下の2つの治療法が挙げられます。
1.排卵抑制療法
排卵を止めてしまうことで、女性ホルモンの変動をなくし症状を和らげる方法です。
女性ホルモンの大きな変動は、排卵が原因です。そのため排卵を止めることで、症状を緩和していきます。治療に用いられる主な薬は、以下の通りです。
・低用量経口避妊薬(OC、低用量ピル)
・低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)
これらの薬は、服用期間だけ排卵を一時的に止めるため、服用を控えれば排卵がすぐに戻ります。また少ないホルモン量で排卵を止めることができ、薬の副作用も少なくです。
その後の妊娠にも、悪影響を及ぼすことがありません。
2.痛み,不安を抑える薬
心を安定させるホルモンであるセロトニンの分泌を促すことで、情緒不安定を和らげる方法です。
神経症状や自律神経症状に対しては、「SSRI(精神安定剤や選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」を使用し、痛みに対してはロキソニンなどの鎮痛剤を用いて対処します。
3.漢方療法
PMSの症状によっては、漢方を使って、むくみや冷え、情緒不安定などの症状を和らげることができます。PMS治療では、主に以下の漢方が使われています。
i.帰芍薬散
帰芍薬散(とうきしゃくやさん)は体温を上げて水分代謝を高め、むくみを解消する漢方薬です。
ii.桂枝茯苓丸
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は血液の循環を良くし、のぼせ・足冷えなどを感じる方の生理痛を和らげる漢方薬です。
iii.加味逍遥散
加味逍遥散(かみしょうようさん)は、不足している血液を補い、精神を安定させる働きがある漢方薬です。
これらの漢方薬はすべて市販していますので、ドラックストアなどで購入できます。
原因②中年の情緒不安定
続いて中年女性の情緒不安定の原因を見ていきましょう。
更年期の体の変化
エストロゲンは更年期に大きく減少するとも言われています。更年期は身体の衰えや環境的な変化も多く、「中年の危機」とも呼ばれています。
それでは更年期障害とは、どのような意味で用いられるのでしょうか。日本産科婦人科学では、更年期障害とは以下のように定義されています。
「更年期に現れる 多種多様な症状の中で、器質的変化に起因しない症状を更年期症状とよび、これらの症状の中で日常生活に支障をきたす病態」
すこし難しい定義ですね。。
簡単に言えば、更年期の起こる症状で原因は物理的なものによらない、という定義ですね。
このような時期には、「こころ」だけ「からだ」だけではなく、両方を見た心身医学的アプローチをおすすめします。
情緒不安定と女性ホルモンの変化は切っても切れない問題です。
すぐには解決できないこともありますが、いろいろな方法を模索していく中で、情緒不安定の問題が解決したり自分に適した対処法も見つかるでしょう。
更年期障害についてより詳しく知りたい方は下記をご覧ください。
(↓クリックで開きます)
日本産婦人科学会(2013)では更年期障害の原因について、以下の4つを挙げています。
①卵巣機能の低下
卵巣機能の低下により女性ホルモンの減少が起こる。これに伴い、ホットフラッシュなどを代表する自律神経症状を中心としたさまざまな症状が出る。
②加齢に伴う身体的変化
体重の増減、肌質の変化、髪質の変化など容姿や体力の衰え
③精神心理的な要因
抑うつや不安を中心とする変化
④社会文化的な環境因子
子どもの自立や親の介護、夫婦関係など人間関係に変化
これらの要素が複合的に影響することにより、更年期障害が発症するとされています。
解決策:健康的な生活,薬物療法
更年期障害の解決策としては、主に以下の3つが考えられます。
1.栄養バランスに気を配る
ホルモンバランスを乱れの原因の1つに、不規則な食生活が挙げられます。基本的には1日3食を取るようにし、ホルモンバランスを調整する「ビタミンE」や「亜鉛」を積極的に取るように心がけましょう。
また、女性ホルモンと似た働きをする「大豆イソフラボン」を取ることも大切です。そのほか、以下の食べ物を偏りなく取るようにしましょう。
主食(ごはん、パンなど)
副菜(サラダ、お味噌するなど)
主菜(肉や魚など)
比率としては、上から順に3:2:1のバランスが理想とされています。
2.運動を積極的に
ウォーキングなどの有酸素運動は、血行よくし、自律神経の乱れを整えます。また、ストレス低減にもつながり、免疫機能も高まります。
運動習慣を持つことで、更年期障害による情緒不安定を和らげることができるのです。
大切なことは習慣を作ることです。そのため、ハードな運動を行うよりも、楽しくできる活動がオススメです。
昔好きだったスポーツを行う…、好きな街を散歩する…このように、ご自身が気楽に長く続けられそうな運動を取り入れてみましょう。
3.薬物療法
更年期障害の場合でも症状が重い場合は、薬物療法を用いることがあります。一般的な治療法としては、「HRT(ホルモン補充療法)」があります。
HRTでは、体内で不足している女性ホルモンを補充することで、更年期障害の症状を改善していきます。
副作用としては、不正出血・乳房のハリや痛み・おりものがたくさん出る・吐き気・食欲減退などが挙げられます。
感情コントロール法
若い人や中年の方のどちらにも共通する解決策として、感情コントロール法が挙げられます。
心理療法とは
心理療法とは、簡単に言うと、考え方や物の見方を変えることで、精神の安定を図る方法です。情緒不安定を改善させるためには、主に以下の3つが挙げられます。
1.感情の客観視
情緒不安定な時は、自分の感情に気づけてない場合が多いです。
ここで言う”気づく”とは、「あ~イライラする!!」という感情的な認識ではなく、「あ、怒っているな…」といった客観的な気づきです。
この感情の客観視が上手くできるようになると、情緒不安定に影響されずに冷静さを保つことができます。
つい感情的になってしまう…という方は下記のリンクをご参照ください。
情緒不安定の治し方「感情を客観視」しよう
2.思考の歪みを改善
自分は嫌われているに違いない!などの極端な思考を心理学では、「認知の歪み」と呼びます。この歪みがもととなって情緒不安定になるケースが良くあります。
認知の歪みに気づき、現実的な考え方に修正することによって、精神の安定を取り戻すことができます。
極端に物事を考えてしまう…という方は下記のリンクをご参照ください。
情緒不安定の改善法「認知の歪みを修正」
3.安全基地を作る
家族や恋人、親友と一緒にいる時は、安心感が得られるかもしれません。こうした、信頼できる環境のことを「安全基地」と呼びます。
この安全基地を持っている人は、常に「自分は大丈夫だ」という自信が持てるようになります。その結果、情緒不安定の改善につながり、安定した精神状態を保つことができるのです。
信頼できる環境がない…という方は下記のリンクをご参照ください。
情緒不安定の対処法「安全基地」を作ろう
早めの対処を
女性の場合、生理中や更年期に情緒不安定になりやすいことがお分かりいただけたと思います。ホルモンバランスが崩れている時は、ストレスがなくても情緒不安定になりやすくなります。
うつ状態になる可能性もあるため、症状が重い場合には、クリニックを受診して適切な薬を処方してもらうといいでしょう。
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
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*出典・参考文献
Basco Monica Ramirez 野村総一郎(訳)(2016) バイポーラワークブック 星和書店
Denise E. Wilfley他 水島 広子 (訳) (2006)グループ対人関係療法~うつ病と摂食障害を中心に~ 創元社
加藤忠史(2011) 双極性障害~病態の理解から治療戦略まで~ 医学書院
菅原ら(2002)夫婦関係と児童期の子どもの抑うつ傾向との関連より一部改変して掲載教育心理学研究,2002,50,129ー140