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アイデンティティクライシスを臨床心理士が専門解説

アイデンティティクライシス


アイデンティティクライシスを理解しよう-臨床心理士が専門解説

アイデンティティクライシスについて

みなさん、こんにちは。臨床心理士の竹元です。今回はアイデンティティクライシスというテーマでお話していきます。どうぞよろしくお願いいたします。

みなさんは、「アイデンティティクライシス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

アイデンティティクライシスとは?

まず「アイデンティティ」という用語を提唱したのは、エリクソンという発達心理学者です。エリクソンは元々ドイツで生まれました。しかし、エリクソンの容姿は北欧系ではなく、半分はユダヤ系とのハーフでした。しかし、母カーラはエリクソンの父親は誰なのか?秘密にしていたようです。

ユダヤ系であるエリクソンは戦争の影響もあり、最終的にはアメリカに生活の拠点を移しています。出生が分からない・・・迫害を受け生まれ故郷を後にする・・・そのような激動の時代を生きる中で、エリクソン自身、「自分が何者か?」というアイデンティティティティクライシスと向き合う人生だったのかもしれません。

エリクソンは、アメリカに渡った後、発達心理学者として様々な悩みを持つ方の援助を行いました。その援助のなかから青年期に乗り越えなければならない課題として、アイデンティティという言葉をはじめて創ったのです。

アイデンティティについては、簡単に言えば「社会の中に位置づけられた自分らしさ」という意味です。アイデンティティ形成というのは、主に青年期の課題として挙げられます。青年期とは現代でいうと、18歳~30歳くらいを指すでしょうか。アイデンティティ・クライシスとは

そしてクライシスとは英語のCrisisから来ています。そのまま「危機」という意味があり、日本語でアイデンティティ危機と表記されたりもします。

アイデンティティクライシスの意味ですが、社会生活を送っていく上で自分らしさが分からなくなってしまうという状態のことを指しています。アイデンティティ確立のちょうど逆の状態である拡散に向かってしまいそうな状態ですね。

アイデンティティクライシスはどんな時に起こる?

アイデンティティクライシスが起こりやすい場面はいくつかあります。

・学校などで進路を考えるとき
・転職など働き方について考えるとき
・環境になじめないとき
・外国などに行き異文化に接したとき
・自分の生き方を見つめ直したとき

アイデンティティ・クライシスになる時

その他もたくさんありますが、ひとまずこれくらいではないかと思います。つまりアイデンティティクライシスは人生で1回だけではありません。何度も何度も形を変えて起こることがあります。

このことからEriksonも最初はアイデンティティ形成を青年期の課題であると言っていたのですが、のちに考えが変わり、生涯をかけた課題であると言うようになりました。岡本(1994)も、自身の研究の中でアイデンティティクライシスが人生を通して何度も訪れ、それを何度も乗り越えていくことでアイデンティティが形成していくものだと述べています。モデルにすると下記のようになります。

アイデンティティ式発達モデルこの図は、アイデンティティのらせん式発達モデルといいます。詳しい説明は省きますが、上に行くほどアイデンティティが確立できている状態を示しています。

つまり一生のうちでアイデンティティを形成できたかと思いきや、また環境の変化や自分が年齢を重ねるなどの要因でアイデンティティクライシスがやってくること述べているということですね。

メンタルヘルスとの関連について

アイデンティティクライシスとメンタルヘルスの関連は多くの研究で報告されています。

谷(1997)は対人恐怖性心性などの関連を研究しています。そこでは、279名の大学生に質問紙を配布し調査を行いました。その結果対人恐怖性の傾向を示す対人恐怖性心性とアイデンティティクライシスとの間に-53.と中程度の負の相関があるという結果が報告されています。アイデンティティ危機は対人恐怖の傾向があるアイデンティティ危機がある場合、対人恐怖の傾向が出やすいという結果を示しています。

Erikson自身もアイデンティティクライシスの表れとして、他者と深い関係を築くことができないという親密性や、対人的距離の失調という他者との距離感がつかめなくなってしまう点などを指摘しています。これらはともに対人関係の問題や対人恐怖症の傾向と類似しています。

また日本という国では、「和を持って貴しとなす」という風調、自分が主体的に何か動きながらも、周りと協調が求められるという非常に難しい文化であると言えます。具体的な場面でいうと、自分の意見や考えを主張するか、主張しないでおくかという葛藤を経験したことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

このような葛藤を持った場合、いっそのこと全て周りに合わせていた方が楽なのですが、それでは自分がとても虚しい気持ちになったり、自分のことがよく分からなくなり、アイデンティティクライシスへとつながっていくということもあるのではないかと思います。

乗り越えるための方法とは?

しかし決してアイデンティティクライシスという時期は悪いものではありません。自分のあり方について見つめ直す時期です。「どのように生きるべきか?」「どうしたら人生に意味を見出せるか?」といった様々な葛藤が中心になってきます。その渦中にいると辛いですが、この葛藤するという作業自体はとても大切なことなのです。

例えば、「大きな病気」をしたとき、闘病生活を通して人生の意味を再構築して、やっと自分の生きる目標が決まる方がいます。大きな会社を作った経営者の方も昔は大きな借金を背負い、自分と深く向き合った・・・そんなことがよくあります。

仏陀とアイデンティティクライシス

実はお釈迦様も、アイデンティティクライシスを活かした人物です。お釈迦様は王族の生まれでしたが、王宮から出たとたん、あまりにも人間が簡単に死ぬという事実を目の当たりにしいてアイデンティティクライシスを体験します。そうしてその危機をバネに、何千年も続く教えを創ったのです。

 

アイデンティティ・クライシスを乗り越えるコツ

乗り越えるための方法とは?

アイデンティティクライシスは人生を意味のあるものとして認識するための重要な期間であると言えます。

さて!肝心のアイデンティティクライシスが起こったらどうしたらいいかということですね。具体的には以下の質問をゆっくり考えてみみてください。

①今つらいことはなんでしょうか?もしくはもやもやしていることはなんでしょうか?

②そのつらい体験の中からあえて学び取れるとしたらどんなものが挙げられますか?

③そのつらい体験、もやもやした状況は今後の人生にどんな意味をもたらしてくれるでしょうか?

 

これらの質問は当然、すぐに答えが出るものではありません。場合によっては数年かけて答えを見つけていくものです。しかし、こうして自分の気持ちと向き合うことでアイデンティティクライシスは自分の人生をより豊かにしてくれるのです。

アイデンティティクライシスのまとめ

アイデンティティクライシスを乗り越える資源は、必ずあなた自身の中にあります。結局は「自分がどのように生きたいか?」「どうしたら人生が充実するか?」という点は自分しか知ることができないのです。アイデンティティ・クライシス乗り越えよう

しかし、アイデンティティコラムの各章は、あなたの中にある資源を探すお手伝いをしております。必ずお力になれると思いますので、どうぞ読んでみてください。

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*出典・参考文献
Erikson.E.H(1950) Childhood and society. New York: Norton.(仁科弥生(訳)1977,1980 幼児期と社会1・2 みすず書房)
谷冬彦(1997) 青年期における自我同一性と対人恐怖性心性 教育心理学研究 45号3巻 254-262
岡本祐子(1994)成人期における自我同一性の発達過程とその要因に関する研究 風間書房



理解を深めて対処していきましょう