イライラする原因を論理療法「ABCシェマ」で改善③
コラム②では、イライラする原因の1つ目「自分の怒りに気づかない」の対処法として「怒りの火種を見つける」をご紹介しました。イライラの根本原因を探って、爆発する前に対処していきましょう。
今回のコラムでは、心理療法で使われる「ABCシェマ」を解消法として解説していきます。簡単なトレーニングを交えながらご紹介していきますね。
イライラする気持ちをABCシェマで解説
私たちは日常生活でイライラすると「あの嫌な出来事のせいでイライラした」と考えていることが多いと思います。これはごく自然なことですが、考えてみると実はイライラする気分を生み出す「思考の癖」があるのです。
この「思考の癖」は心理学で使われる論理療法ABCシェマで研究が進んでいます。
ABCシェマ(ABC理論)とは、アメリカの心理学者アルバート・エリスによって提唱されました。論理療法、理性感情行動療法とも呼ばれます。
ABC理論のABCとは3つの用語の頭文字です。
A:Activating event(出来事)
B:Belief(思考の癖、信念、固定観念)
C:Consequence(感情・結果)
出来事(A)があって感情・結果(C)につながるのではなく、結果にたどりつく前に思考の癖や信念(B)を経て感情・結果(C)に到着するという理論です。
頑な考えが原因?
例えば、あなたが友だちにDVDを貸しました。友だちは一週間後に返すと約束をしたのに返ってきません。
出来事(A)
→友だちが約束の日にDVDを返さない
固定観念(B)
→約束は守らなければならない!
感情・結果(C)
→イライラする、口喧嘩になる、絶交するなど…
となります。ABCシェマで自分の考え方の理解を深めることで、「正しい前提・正しい価値観」を持てるようになりイライラする解消法として活用できます。
イライラする気分がうまれるしくみ?
ここで、身近な例でイライラする気分が生まれる仕組みを考えて行きましょう。例えば、あなたが会社の採用面接を受けるとします。その時どんな気持ちになるでしょうか?「面接に落ちて、仕事が見つからなかったらどうしよう」「面接に落ちたことを笑われてしまったらどうしよう」と不安になる方が多いでしょう。簡単に示すと、
面接がある(できごとA)
↓
不安になる(感情・結果C)
と普通は考えます。
しかし、ABCシェマでは、もう少し深く洞察をしていきます。よく考えてみると実際は
面接がある(A)
↓
落ちて笑われないか不安(B)
↓
不安になる(C)
と、事実Aと気分Cの間に隠れた考え(B)があると考えるのです。つまり、採用面接という状況から直接的に不安が生まれるのではなく、採用面接という状況を私たちそれぞれがどう受け取っているか?で不安という気分が決まってくるのです。
もし考え(B)が見つかったらしめたものです!考え方を少し柔らかくしてみるといいかもしれません。
例えば、就職先はたくさんある。落ちたとしてもまた受け直せば良い。と考えれば不安(C)は少し柔らかくなるでしょう。
イライラする原因をABCシェマで解決
それでは、イライラする気持ちの解消法「ABCシェマの考え方」をイライラするシーンにあてはめて確認していきましょう。
例題1
「満員電車で強く押されてしまった時にイライラした」
これをABCシェマに当てはめると、以下のようになります。
A:できごと⇒ 満員電車で強く押される
B:思考の癖 ⇒ 私ばかりいつも押されてしまう
C:感情 ⇒ イライラする
Bの修正
満員電車は都会の風物詩。音楽を楽しむ時間にしよう。
例題2
「挨拶をしたが無視をされたのでイライラした」
これをABCシェマに当てはめると、以下のようになります。
A:できごと ⇒ 挨拶をしたが無視された
B:思考の癖⇒ 挨拶をするのは当たり前
C:感情 ⇒ イライラする
Bの修正
何か家庭で嫌なことがあったのかもしれない。私もたまにそっとしておいて欲しいことがある。
どちらの例も「イライラする」気持ちが出てきますよね。しかし、どうしてイライラするのかをじっくり考えてみると、皆さんなりの理由があります。これはあくまで1つの例です。「こういう可能性もあるかも・・・」と考えられる事が大事です。
イライラする状況にはキーワードが?!
できごとと気分の間に、前提となる考えが存在していることを感じて頂けましたか。そして、イライラする気持ちが発生する時にはある共通するキーワードがある事にきづきましたか。
実は「イライラする」というのは、自分なりの期待や公平さ・道理がキーワードになっていることが多く、そこから外れ自分が不当に扱われたときに発生します。そのため、前提の価値観がかたくなすぎると、イライラする気分が生まれやすくなってしまいます。
イライラする気分を生まないためには、イライラする前提に気づくことがまずは大切です。練習問題を通して、自分の考え方について理解を深め、気づいて行きましょう!
改善する方法を練習!
みなさん、コラムを読んでいると「あ、こんなことにもイライラしてる…」と堂々巡りになっていませんか?ここで少しリフレッシュ。ホッとひと息つきましょう。ひと息ついたところで、実際にイライラ解消法としてのABCシェマを練習問題で実践してきましょう。
問題1
配偶者(恋人)が私の話を聞いてくれなかった。最近は1週間それが続いているので、こんな人と結婚しなければ良かったと、イライラする。ABCシェマに当てはめて、Bの前提の部分を埋めてください。
A:できごと
⇒「配偶者が私の話を聞いてくれない」
B:思考の癖
⇒「 」
C:気分
⇒「イライラする」
Bの修正
解答例
B:思考の癖
・「配偶者は話を聞くべきだ」
・「私の話を聞いて当たり前」
B:思考の癖
・愚痴ばかりでは確かに聞く気にならないかも。ユーモアのある楽しい話をしてみよう。
問題2
最後に、自分自身の最近のイライラする出来事について考えてみましょう。
A:できごと
⇒「 」
B:思考の癖
⇒「 」
C:気分
⇒「 」
Bの修正
イライラしない気持ちづくりを
練習問題を取り組んでみていかがでしたか?最初は難しいかもしれませんが、慣れてくると普段からこのように考えるクセがつきます。自分のペースで実践してみてください。
「頑なな正しい価値観」を対処するためにABCシェマをご紹介しました。“思考の癖”に気付いていくことで、イライラする度合いを減らしていくことができるようになると思います。
日常生活でイライラすることが減れば、ストレスから身を守ったり、心の健康を保つことにも役に立ちます。また、周囲の人たちに当たることが減るなど人間関係を良くするためにもなりますよ。
次回は、イライラする解決策の3つ目「感情のコントロール方法」についてご紹介します。
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
- 社会心理学会会員
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
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*出典・参考文献
認知行動療法を学ぶ(下山晴彦編 金剛出版,2011) 認知行動療法(坂野雄二 日本評論社,1995)
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