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情緒不安定の症状「双極性障害」②

情緒不安定の症状「双極性障害」②

情緒不安定には心理学的にどのような症状を引き起こすのでしょうか。心が不安定な状態が深刻化すると、ハイテンションな時と、ローテンションな時が極端になり、場合によっては「双極性障害」と診断されることがあります。今回は情緒不安定が症状として現れた場合の「双極性障害」について解説をしていきます。

双極性障害の特徴

双極性障害とは、躁状態とうつ状態の病状を繰り返す精神疾患です。まずは、躁やうつなどを中心とした状態について解説をします。

①躁状態
まずは、躁状態からお話しします。躁状態とは、俗に言うテンションが高い状態です。陽気、多幸、過度にイライラした気分などが特徴的です。

具体的には…
・異常に気分が高揚する
・人と話し始まると止まらない
・金銭感覚がおかしくなり衝動買いをする
・喧嘩っぱやくなる
などです。

また睡眠欲求の減少やケガをしても気にせずに行動することがあるという疼痛に鈍感になるという特徴などもあります。このような状態が7日以上持続するのは躁状態です。

②うつ状態
躁状態とは真逆です。生命感情が著しく低下した状態です。
具体的には…
・落ち込んで悲しい気分
・興味を失って喜びをほとんど感じられない
・食欲の減退
・体重が大きく変動する
・寝つきが悪い
・睡眠が持続しない
・自分に価値を感じない
などです。

最悪の場合は自殺を考えてしまうケースもあります。このような気分や考えを持ち続けてしまうのがうつ状態です。

③混合状態
躁状態・うつ状態の基本的症状と、「感情」「精神運動」「思考」の3つの要素がタッグを組むように合わさって現れてくることを混合状態と言います。

例えば、「感情」は落ち込んで抑うつ気分なのに対して、「行動」はじっとはしていられない躁の症状になっている。などのことを言います。

「感情」、「精神運動」、「思考」がつくる混合状態像は以下 6 つです。
・抑うつ、あるいは不安躁病
・興奮性あるいは焦燥性うつ病
・思考貧困を伴う躁病
・躁性昏迷
・観念奔逸を伴ううつ病
・制止を伴う躁病

④軽躁状態
軽躁状態は躁状態より症状の軽いものをいいます。躁状態と軽躁状態の違いについて、以下の表で見ていきましょう。

躁状態に比べて診断基準が緩い分、様々な患者が軽躁状態と診断される可能性があります。

双極性障害の有病率は?

双極性障害の障害有病率は、双極Ⅰ型障害が0.2%~2.0%です。4.130名を対象としたデータでは、双極性障害(Ⅰ型、Ⅱ型を含む)の障害有病率は0.2%と低い値を示されたものがあります。その内訳は双極Ⅰ型障害が0.08%、双極Ⅱ型障害が0.13%でした。厚生労働省の報告書では0.4%となっています。

発症年齢は、日本では平均20~30歳代と考えられています。

双極性障害の治療法

双極性障害の治療法には「薬物療法」「心理社会的治療」「入院治療」の3つがあります。これから1つ1つ紹介していきます。

1.薬物療法

・リチウム
日本うつ病学会の双極性障害治療ガイドラインにおいて唯一「最も推奨される治療」に挙げられているのはリチウムです。日本においては、治療薬の選択としては第一選択です。

リチウムは、躁病エピソードと抑うつエピソードの両方に対する予防効果が期待できるとされています。ただリチウムの効果が十分ではない場合や副作用が起きた場合などは、他の薬との併用療法を検討していきます。

副作用:口渇、多飲、多尿、微細な振戦(手などの細かい震え)、吐き気、胃部不快感、食欲不振、下痢などです。

・クエチアピン・オランザピン
双極性障害の抑うつエピソードに最も効果が期待できのるは、エビデンスが確立しているクエチアピンです。その次に効果が期待できるのはオランザピンであると言われています。またラモトリギンも有効性が期待できると言われています。

副作用:不眠、頻脈、不安、頭痛、めまい、易刺激性など

※薬物療法の注意点
・薬物療法は主治医の処方により行われること
・薬物療法を開始、継続する際は主治医にその都度相談すること
・身体、心理などの面において日常生活で変化を感じる場合は主治医に相談すること

2.心理社会的治療

心理社会的治療とは、病気に対する知識や、病気との付き合い方などを学んで対処する力を身に着ける治療方法です。双極性障害の心理社会的治療には「心理教育」と「対人関係―社会リズム療法(IPSRT)」の2つが挙げられます。

①心理教育
再発の危険をよく説明して服薬を勧めると、逆に再発に対する不安が出現する場合もあり疾患の教育においては心理的サポートが不可欠です。このように、心理的配慮を行いつつ治療教育を行うことを心理教育と呼ばれています。おおよその内容は以下についてです。

Ⅰ:疾患とその治療法について正しい知識をもつ
Ⅱ:疾患および治療の必要性を受容する 
Ⅲ:起因と今後ありそうなストレスの予測と、今後のストレスを減らす方法の検討
Ⅳ:気分状態を自覚できるようになること、再発の初期兆候を知り家族等と共有

<効果>
集団での心理教育は、双極性障害についての正確な知識の入手だけではありません。双極性障害が患者さんに与える生活困難さ、生きにくさ、傷つきをもっているがそれについて自分だけでなかったんだという孤立無援感から脱して病気との向き合い方を前向きに考えていく大きな機会になります。これは心理教育に参加する一人ひとりに力強い希望と勇気を与えることになると思います。

<注意点>
心理教育は、過去を振り返って自己理解を深めるときも少なくありません。そのため、まだわだかまりが続いていることや充分に癒えていない傷つきに対して当時と同じようなストレス反応が現れてくることも考えられます。安心して、意味のある心理教育を受けていくためにも周りのスタッフの手を借りながら参加することが大事です。

②対人関係―社会リズム療法(IPSRT)
どういう人がどういうときにうつになるかというエビデンスに基づいて、対人関係パターンを変えるという心理療法になります。

<具体的な治療戦略>
・長期ではなく期間限定で進めていく
・治療対象について焦点を絞っていく
・過去ではなく現在の人間関係を扱っていく
・精神内界ではなく対人関係を取扱っていく
・認知的、行動的ではなく対人関係アプローチをとっていく
・パーソナリティは認識するが、治療の焦点にはせずにいく

また取り扱う対人関係は以下の4つの領域のうち一つに焦点を当てながら進めていきます。

Ⅰ:悲哀(重要な人の死)
Ⅱ:対人関係上の役割を巡る不和(不一致)
Ⅲ:役割の変化
Ⅳ:対人関係の欠如

このような進め方により、達成感の獲得、社会的孤立の克服、社会への帰属感を回復させ、自分の人生に意義を見出せるようにしていきます。

他には、認知行動療法、家族療法、集団療法、セルフヘルプグループの活用、精神分析療法等があります。

※認知行動療法はダイレクトコミュニケーションの心理講座でも9時間程、行っています。

3.入院治療

症状の悪化によって、生活がままならない場合などは入院をして、集中的な治療をすることもあります。入院治療の必要なケースは、
・自制が効かなくなって、生活が成りたたなくなる
・暴力など他者を傷つける恐れがある
・自傷、自殺など自身の生命の危険の恐れがある

などのケースが考えられます。

場合によっては、本人が抵抗してスムーズな入院治療が難しいことがあります。その場合は、家族の同意が得られれば入院治療が進むことがあります。そのことを医療保護入院と呼ばれます。

入院中でも診察は行われます。そこで今後の入院治療の説明を受けながら看護師等により入院生活の営みを通して気分状態をなだらかにするだけではなく、作業療法士、精神保健福祉士、臨床心理士等による支援も受けながら社会復帰を目指します。

情緒不安定が続く人は注意

このように、情緒不安定が悪化してしまうと、躁やうつといった状態が出てくることもあります。さらに症状が進むと、双極性障害などの疾患にかかって治療が必要になってくるパターンもあります。情緒不安定な状態が続いてしまう人は注意が必要です!

次回は女性の情緒不安定について、女性ホルモンなどの視点から解説をしていきます。

★情緒不安定は健康に悪影響!見捨てられ不安に要注意

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目次

①症状の原因・改善策
②「双極性障害とは」
③症状とは?女性に多い理由
④見捨てら不安との関連
⑤実は長所もたくさんある
⑥対処法「安全基地」を作ろう
⑦改善法「認知の歪みを修正」
⑧治し方「感情を客観視」
⑨「薬物療法」による改善
⑩診断とチェック

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
Basco Monica Ramirez 野村総一郎(訳)(2016) バイポーラワークブック 星和書店

Denise E. Wilfley他 水島 広子 (訳) (2006)グループ対人関係療法~うつ病と摂食障害を中心に~ 創元社

加藤忠史(2011) 双極性障害~病態の理解から治療戦略まで~ 医学書院