虚無感で人生に興味が持てない時の対処法ー目標を設定しよう④
虚無感を目標設定で対処しよう
コラム③では、虚無感の対処法として「小さな幸せに気付く方法」についてお話ししてきました。日常のポジティブな側面に目を向けてみてくださいね。今回は、虚無感の原因の3つ目「目標設定で虚無感に対処する」を紹介します。
虚無感は「何をすべきか」で改善
中島(2014)や近藤・鎌田(1998)の研究などでは、目標を持って生活をしている人の方が、目標がない人に比べてして充実感のある人生を送っている傾向がありました。他にも、適切な目標がある人は自分の能力を最大限に発揮し、活発に生活できる「フロー心理学」という概念があります。虚無感を減らすためには、毎日目標に向かっていくことが大切なのです。
それでは目標はどのようすれば見つけられるのでしょうか?今回は、心理療法の1つの方法である「解決志向アプローチ」を紹介していきます。
虚無感を改善する「解決志向アプローチ」
解決志向アプローチとは、あなたの望む未来を実現するためには、何が必要なのか?何が大切なのか?と一緒に考えていく方法です。解決志向アプローチは、スティーブ・ド・シェイザー、インスー・キム・バーグを中心に開発された心理療法です。現在は、学校や産業場面など幅広い分野で活用されています。
アプローチの具体的な進め方としては、まず自分の理想的な状態を設定していくところからスタートします。今回は、それを基準に目標を定めていきましょう。ポイントとしては以下の2つです。
1.理想の自分はどんな人か?
これは解決志向のアプローチで頻繁に使われる質問です。もちろん未来をイメージするために使用されるものですが、「理想」という今には無いものを考えることで、現在を広い視野で見ることも狙いとしてあります。
2.達成のためにできそうなことは?
理想を自分をイメージした上で、今から理想に近づくためには何をすればよいか目標を立てるための質問です。「夢のまま」で終わらせず、できるところから少しづつ取り組んでいくという姿勢が目標を見つけるために重要です。
コラム①でも少し解説しましたが、自分のスキルに合わせた目標はフロー状態になりやすいと考えられています。フローとは、集中力やモチベーションを高めてくれ、自我や時間を忘れて物事に集中している状態です。
上図のように難易度とスキルがとも「高い」ときにフロー状態になりやすいと考えられています。解決志向アプローチでは、能力とのバランスの取れた目標設定で、着実にに虚しい気持ちを克服していきます。ここで上記の2つのコツを生かしたAさんという人と一緒に考えていきましょう。
ここで2つポイントを生かしたAさんを例に一緒に考えていきましょう。
*********<事例>********:
Aさんは、現在は30代の会社員です。家庭を持っていて、子どももいます。しかし、仕事では中間管理職についていて部下と上司に板挟み。上司にも怒られてしまうことも多いです。家族との時間が作れず、奥さんからの風当りも強い。家に返っても自分は何のために仕事をしているのか分からなくなってしまい虚無感を強く覚える。という状況でした。
このAさんの「虚無感」を改善していくために、以下の2つの質問をしました。すると、Aさんからこのようか回答が返ってきたのです。
①理想の自分はどんな人?
仕事にやりがいを感じながら働けたらと思う。
家族と過ごす時間をもっと増やしたい。
➁達成のためにできそうなことは?
ひとまず家族との関係を深めたい。振り返ってみれば、食事のときもゴミ出しがどうだとか事務的な話ばかりで、妻や子どもの近況の会話があまりない。
なので、食事のときぐらいは子どもの学校生活や妻自身の話をもっと聞いてみよう。
と答えました。
最初は、Aさんも「こんな些細なことでいいのか?」と思われていたようでした。しかし、理想と目標を決めて、実行するだけで家族との会話が弾み、家への足取りが少し軽くなりました。すると少しずつ「この団らんを守るために仕事をしていたのだ」と感じるようになり、毎日の生活に活気を取り戻すことができたのです。今では、虚無感ではなく「充実感」を強く覚えながら仕事に取り組めていると言います。
ここで大切だったことは、「理想の生活」をイメージすることと、それに近づくために「現実的にできることを考え、実行に移した」ことだと思います。「理想の生活」を明確にすることで、新しい目標が生まれました。Aさんは「頑張って仕事しても家族はわかってくれない」と思っていたのです。つまり、「仕事を頑張れば家族との関係も深まる」と考えていたのです。
しかし、家族との溝が深くなっていきます。ここで「理想の自分」をイメージすることで、必要なのは家族との会話をもっと大事にすることだと気づくことができたのです。それをAさんが、できる範囲の行動で実行に移したことが非常に重要でした。皆さんも虚無感に対して、理想像をイメージして目標を作ってみましょう。そして、実行に移すことが何より大切です。
虚無感を少なくする練習問題
ここまではAさんの事例を紹介しました。非常にシンプルな方法ですが、ぜひ自分の問題でチャレンジしてみましょう。まずは、理想の自分について考えてみましょう。
①理想の自分はどんな人か?
いかがでしょうか?もし思いつかないという人は、「明日の朝、目が覚めたときに願いがなんでも叶うとしたら」と考えてみてください。どんなもので構いませんので、理想の生活を考えるのです。
理想の自分像:
「 」
そうですか、それはすごく楽しそうな状態ですね。それでは、もう1つ考えてみましょう。
➁達成するためにできそうなことは?
あなたのできそうなこと:
「 」
これで理想の自分に近づくための目標が定まったのではないかと思います。ぜひ明日から1つずつ実行してみてください。ちなみに目標をクリアしたら、次は少しレベルを上げた目標にするといった様にゲーム感覚でどんどん目指すべきポイントが見えてくると思います。しかし、Aさんのように最初の1つの目標を少しずつ行うだけでも大きな効果が得られえるはずですよ。ぜひ、みなさんもやってみてください。
目標を定めることで「虚しい」気持ちに対処する
自分にとって理想的で素晴らしい目標を立てることが、解決志向アプローチでの目標設定のコツです。それは現時点では、叶いそうにないものでも構いません。あなたが「こうなったらどれだけいいだろうか」と思う理想や目標でOKです。イメージすると、わくわくしてきませんか。その「虚無感」の真逆に位置するモチベーションを得ることができますからね。
今回は「虚無感」を軽減するための解決志向アプローチを利用した目標設定の方法について解説しました。いかがでしたでしょうか。毎日イキイキとした生活を送ることができれば、「虚無感」を感じたくても感じられなくなりますよ。
次回は、「虚無感」コラムのまとめです。これまで解説した内容についておさらいしていきます。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
- 社会心理学会会員
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
YouTube→
*出典・参考文献
森・黒沢のワークショップで学ぶ解決志向ブリーフセラピー ほんの森出版 森俊夫・黒沢幸子(2002)
ミハイ・チクセントミハイ(2000)フロー体験 喜びの現象学