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モラトリアムの負の側面!対人不安UP!?③

モラトリアムの心理学研究「対人不安UP」!?③

コラム①では、モラトリアムについて概観していきました。重要な要素としては、「①意味や語源」「②メリットデメリット」「③モラトリアム脱却法」の3つでしたね。

今回は①意味や語源について解説していきます。 

充実感のない日々が続く

大野(1984)は「充実感」とEriksonのアイデンティティは関連があることを実証しました。モラトリアム期間を脱して、アイデンティティが確立できている達成グループは充実感が高く、「毎日を健康的に主体的に生きている」感覚を得やすいことがわかります。

逆にモラトリアム(アイデンティティ拡散型)グループは「毎日が楽しくない・・」「何となくむなしい・・」といった感覚になりやすくなります。例えば、同じ仕事をしていても、「これが私のやるべき仕事だ!」と考えている場合と、「これは本当は私のやるべき仕事ではない」と感じている場合は、充実感に大きな違いが出てくるでしょう。いま生活に充実感がない場合は、モラトリアム期間の中にいる可能性が高いと言えます。

他者と親密になれない

モラトリアム期間が長期化している方は、自分に自信を持つことができず他者との親密な関係から尻込みしてしまうといわれます。それは自分以外の他者と関わると、自分が飲み込まれてしまうような感覚を抱くからです。谷ら(1997)の研究では、対人恐怖に似た性格傾向である「対人恐怖性心性」とアイデンティティとの関連について大学生279名を対象にした質問紙調査を行っています。

自分探しのしすぎ

「自分らしい」ということを考えたことがありますか?「自分らしさ」というキャッチコピーをCMや歌詞などでも時々目にします。近年社会的に、「自分らしさ」という言葉は、何も青年期だけではなく、大人になっても、お年寄りになっても意識し、探求していこうという気持ちを持ちやすい風潮となっています。

青年期では、「本当の自分」を探す、「自分探し」というのも非常に流行った時期がありました。今もまだまだありますね。しかし、その言葉にとらわれ過ぎて、社会生活への適応が悪くなってしまう事例は多くみられています。「どこかに本当の自分はあるはずだ」と考え、現実逃避的に職場を転々とすることや、長期のひきこもり生活となってしまうケースも少なくないように思います。

期間が長くなればなるほど、当然再適応しづらくなります。社会適応がしにくくなると、当然メンタルヘルスの面でも悪い影響が生じてきます。ひきこもりの事例などでも、当初はモラトリアムのつもりで家にいたのですが、次第にどんどん外に出づらくなり、うつ病や適応障害といった精神疾患の診断がついてしまうようなケースも数多くあります。

モラトリアムにはいい面も‐熟考効果

モラトリアムにしっかり考えて目標を決めたものは強いことが多いです。例えば、大学生で就職するのであれば、「自分には何が向いているんだろう…」と、深く悩むモラトリアムの時期を経験することもあるでしょう。この時、真剣に自分の人生の向き合って決めた職業は、少しのことでは揺るがないことが多いです。

モラトリアムの意味と期間中の気持ち

日本では、「まだ学生をやっているのか」など比較的否定的な意味合いでつかわれることも少なくありません。しかしモラトリアムの期間は何も否定的な意味ではなく役割実験の時期とも言われとても大切な時期なのです。

将来を見据えて、自分がどんな社会的役割を担うかを色々試行錯誤してみることが許される期間でもあります。そのためこの期間をうまく活用できると、アイデンティティを形成していくための資源となる材料が手に入ることがあります。

モラトリアムから脱却

今回は、モラトリアムのメリットデメリットについて解説していきました。負の側面としては、対人不安や充実感のなさにつながってしまう恐れがあります。一方で、自分とは何かを深く考える時期でもあります。

モラトリアムの期間をうまく活用して自分を確立させていきましょう。

次回は、モラトリアムの負の側面について解説していきます。

モラトリアムは大人になる前の準備期間!

目次

①意味や特徴・診断してみよう
②モラトリアムの意味や語源とは
③心理学研究「対人不安UP」
④簡易診断とチェック
⑤モラトリアム脱却法!

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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出典・参考文献
大野久 現代青年の充実感に関する一研究(5)日本教育心理学会総会発表論文集 26(0), 478-479, 1984
谷冬彦(1997)青年期における自我同一性と対人恐怖的心性 教育心理学研究 45,245-262