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無気力症候群の克服法「難易度の見直し」②

無気力症候群の克服法「難易度の見直し」②

コラム①では、無気力症候群について概観していきました。解決策としては、「①タスクの難易度を見直す」「②アイデンティティの確立」「③失敗Ok!60%基準法」「④生活リズムを整える」「⑤精神科での治療」の5つでしたね

今回は、「①タスクの難易度を見直す」について解説していきます。

完璧主義は無気力症候群を招く

仕事を抱え込む=無気力

学習性無力感型の無気力になりやすい方は、仕事を抱え込んでしまったり、大きすぎる目標を掲げてしまっていることが多いです。コラム①でご紹介した図をもう1度見てみましょう。

水色のエリアの学習性無力感は、難易度が高く、スキルが低い時に起こります。つまり、自分の能力では達成できない課題に取り組んでいる時に、無気力に陥ってしまうのです。

こうした、自分の許容範囲内を超えて、周囲に合わせようとすることを、心理学では「過剰適応」と言います。無気力になりやすい方は、自分の気持ちを押し殺して、相手や環境に必要以上に合わせてしまうのです。

例えば、上司からの理不尽な指示になんとか応えようとする、恋人の強引な要求になんでも応じてしまう、明らかにブラック企業で身を粉にして働いてしまうなどが当たります。

無気力 原因

過剰適応のリスク

感情を偽る=過剰適応

自分の感情を抑える「感情労働」が求められる職場では、過剰適応になりやすいため注意が必要です。特に高度な接客技術が求められる職場は感情労働が強く求められるため、無気力が起きやすいです。

例えば、
CA、ホテルマン、飲食業、看護師、営業職などがあたります。

明るい接客はすがすがしいものですが、接客するのは人間です。心が安定してない場合に、無理に感情労働が続いていないか?日々のストレスや無気力にしっかりと目を向けていくことが大切です。

不安,不眠との関係

感情労働が長期化すると、不安や不眠に苛まれることも分かっています。荻野(2004)の研究では、感情労働が不眠に与える影響を調べています。実験では、231名の看護・介護職を対象に質問紙を用いて調査を行いました。その結果が、下図のようになりました。

「感情の不協和」は感情労働の1つの要素で、これが原因となって燃えて「不安や不眠」「うつ病」といった症状が表れています。また、その中でも「不安と不眠」の数値がもっとも大きいことが分かります。

このように感情労働が続くと、睡眠の質も悪化してしまいます。自分の感情を抑え続けると精神的にも身体的にも不健康なものになってしまうのですね。

脱無気力!仕事を削減

それでは、過剰適応から抜け出し、無気力を改善する方法をご紹介します。自分の許容範囲内を超えて、頑張りすぎないためには、大きく2つのステップがあります。

ステップ① 課題の見直し

自分の「スキル」に見合った「課題」でないと、難易度が高すぎてしまいモチベーションが上がらなくなってしまいます。そこで、自分の領域を超える膨大なタスクを抱えている場合は、課題を見直していく必要があるでしょう。自分の能力で「少し努力すれば」達成できる課題にできればベストです。

ステップ② 相手に相談

どこまで難易度を下げるか、相手がいる場合は自己主張していきましょう。たとえば、会社であれば上司に相談、恋人の関係なら恋人に相談、進学塾なら講師に相談といった形で、課題に関わっている人に難易度を下げてほしい旨を伝えましょう。

しかし、「上司に意見をするのは抵抗がある」「仕事が多いのは皆同じだ」などと自分の意見を伝えるのを躊躇してしまう方も多いでしょう。

そこで、活用できるのが「アサーション」という自己表現の技術的です。アサーションとは、その場にふさわしい方法で、自分の気持ちを素直に表現するコミュニケーションスタイルになります。相手にも利点があることを伝え、お互いがプラスになるように議論していきましょう。

仕事で無気力の例

それでは、難易度の見直しとアサーションを活用して、無気力を克服したAさんの事例を見ていきましょう。

Aさんは、某出版社のエディターとして働いています。繁忙期になると、職場に寝泊まりするのが当然な労働環境でした。働いても働いても仕事が終わる見込みが立たず、だんだんと無気力になってしまいました。そこで、Aさんは仕事量を見直し、上司に相談することにしました。

ステップ① 課題の見直し
まず、Aさんは請け負っている仕事をすべて書き出しました。

・週間誌、図書の企画
・原稿のライティング
・原稿の校正・校閲
・作家との打ち合わせ
・執筆のための取材

今の自分のスキルでは難易度が高すぎるとして、
以下のように見直しました。

・図書の企画
・原稿のライティング
・原稿の校正・校閲

Aさんは文章のライティングが得意でした。
そのため、ライティング系のタスクのみに
集中しようと考えました。

仕事が辛い 克服

ステップ② 上司に相談
次にアサーションを活用して上司に相談します。
Aさん
「実は今、仕事量が多く無気力になっています。
ここまで仕事量を減らしていただけないでしょうか。」

上司
「皆、仕事量が多いなか頑張っているんだ。
もう少し頑張ってくれないか。」

Aさん
「そうですよね。ただ、私は執筆が得意分野ですので、
執筆系のタスクに注力した方が、会社全体の効率もUPすると
思います。」

上司
「言われてみればそうだな。取材や打ち合わせはBさんが得意だから、
適材・適所で配分した方が効率的かもな。」

その後、Aさんの作業効率は格段に上がり、無気力な状態も少なくなっていきました。締め切りも余裕をもって守れるようになり、現在も活発に働いています。

このように、アサーションでは相手もOK自分もOKの姿勢で自己主張し、お互いにとって有益な議論を進めていきます。

もちろん、Aさんのようにスムーズに事が運ぶとは限りませんが、主張してみる価値は十分にあるでしょう。無気力な状態です…と伝えるだけでも、現状を変えるきっかけになるかもしれません。

また、仮に相手が対応してくれなくても、否定せずに受け入れましょう。相手の言い分もしっかりと聞き入れ、お互いが納得できる結論を目指すことが大切です。

無気力症候群の改善・予防

いつも頑張りすぎてしまう…という方は、取り組んでいる課題の難易度を見なすことで、無気力が改善できます。ポイントは、少し努力すればできそうだな、程度の難易度で取り組めれば、作業も楽しくなるでしょう。

社会で生きていくには、適応することも大切ですが、過剰になりすぎないように自己主張もしっかりと行っていきましょう。

次回は「アイデンティティの確立」について解説していきます。

★無気力は「難易度の見直し」で克服!

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目次

①無気力症候群-概観
②「失敗Ok!60%基準法」
③「アイデンティティ確立」
④「心療内科・精神科」での治療
⑤「生活リズムを整える」
⑥無気力症候群簡易診断

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
・愛着障害 子ども時代を引きずる人々 岡田 尊司 光文社新書
・認知行動療法を学ぶ(下山晴彦編 金剛出版,2011)
・認知行動療法(坂野雄二 日本評論社,1995)
・自己志向的完全主義の特徴 : 精神的不健康に関する諸特性との関連から 2009 齋藤, 路子; 今野, 裕之; 沢崎, 達夫対人社会心理学研究. 9 P.91-P.100
点斎藤(2003)自己志向的完全主義の特徴 対人社会心理学研究, 9, 2009