ナーバスの意味とは?性格の特徴を
みなさんこんにちは。
公認心理師,精神保健福祉士の川島達史です。
今回のテーマは
「ナーバス」
です。
という流れで解説していきます。読み進めていくと、基礎知識と対策を抑えることができると思います。是非入門編は最後までご一読ください。
もしお役に立てたなら、初学者向け心理学講座でもぜひお待ちしています。
ナーバスの意味とは?
まず初めにナーバスの語源や意味を見ていきましょう。
語源
ナーバスは英語では、nervousと表記されます。
これは
nerve
osus
が組み合わさった言葉です。
nerveは中世ラテン語から派生した言葉で「神経」を意味します。
osusは原始インドヨーロッパから派生したことばで「いっぱいにする」という意味があります。
英語,日本語としての意味
nervousは英語の意味としては大きくわけて2つあります。
1つ目主に身体的な部位としての
神経
を意味します。私たちの体はたくさんの神経システムがあるおかげで、健康的な生活を維持できます。
2つ目は心理的な意味としての
不安,緊張,過敏
などを表す言葉として使われています。
He’s a nervous person.
彼はナーバスな人だ!
彼は神経質な人だ!
と使われています。日本語は後者の意味として使われることが多いですね。
神経質とは何か?
神経質の中味についてもう少し深堀をしていきましょう。下図をご覧ください。
こちらは人間の神経の図です。私たちの体には、神経が全身に伸びていて、運動をしたり、痛みを感じたり、温度を感じたりします。ナーバスとはこれらの神経が活発に活動している状態を意味します。
ナーバスな人は、ちょっとした刺激や、環境の変化を敏感に感じ取れるというイメージから派生し、このような意味になってきたのです。
ナーバスと近接概念
ナーバスと日常会話
ナーバスという言葉は日常会話で
・試合前にナーバスになっている
・あの人は今ナーバスな時期だから
・ナーバスな展開だ
このように日常会話で使われるシーンが多いです。例えば、試合前日は神経が高ぶりなかなか寝れないですね。このような状況をナーバスと言います。
一方でナーバスという言葉は心理学上は研究されることはあまりありません。以下に紹介する言葉で研究されています。
神経症的性格
人間の性格は様々な統計処理をした結果
開放性 外向性 誠実さ 調和性 神経質
の5つがあることがわかっています。このうち、神経質は「Neuroticism」と言われ、神経質傾向が強いと、イライラしやすい、罪悪感を持ちやすい、不安障害になりやすいなどの特徴があります。
遺伝率の推定値は40~60%とされています。下記の診断で大きさを把握することができます。
HSP
ナーバスについて、最近ではHPSの分野で研究されることも多くなってきています。HSPはアメリカの心理学者、アーロン博士が1996年に提唱した概念で
Highly Sensitive Person
と綴られています。直訳すると「とても敏感な人」と訳されます。
刺激に敏感
聴覚、嗅覚、触覚、味覚がとても敏感 小さな物音などに反応する
失敗や間違いへの繊細さ
とりとめもない失敗がきになる。完璧主義傾向がある。
微妙な変化に気づく
他人の表情や、雰囲気の変化に敏感、他者に対する共感力が高い
などの特徴があります。
ナーバス(神経質)と心理研究
ナーバスな人にはどのような特徴があるのでしょうか?心理学における研究をいくつか紹介させて頂きます。
①ストレスを見つけやすい
鷲見ら(1996)は、255名を対象に質問紙調査を用いて、ナーバスが職業性ストレスにどのような影響を与えるかを調べました。それぞれの結果を見ていきましょう。
まずは職業性ストレッサーから見ていきましょう。以下の図をご覧ください。
上記のように、神経質傾向と職業性ストレッサーにプラスの相関が見られます。つまり、神経質傾向が高い人は、仕事でストレスをみつけやすいと言えます。
ナーバスな人は、上司の顔色や些細なミスを気にしがちです。気にしい性格のせいで職場でのストレスが高まってしまうのかもしれません。
②抑うつが高い
次に抑うつとの関連を見ていきましょう。以下の図をご覧ください。
このように、抑うつとの関連もプラスの相関が見られました。つまり、ナーバスな人は、抑うつになりやすいと考えれます。
神経質で考えすぎてしまう人は、無意識にネガティブに物事を考えることが多いです。こうした、マイナス思考が積もり積もって抑うつに発展することがあるわけです。
③ナーバスは遺伝する
行動遺伝学者の安藤(2000)によると、神経質の遺伝率は41%、家庭環境は7%、外部環境が52%とされています。両親がナーバスだと、自分自身もその性格をある程度引き続ぐと推測されています(性格と遺伝コラム)。
関連する精神疾患
精神疾患の歴史
高嶋(1989)によると、神経衰弱症(neuras-thenia)という病名が、1920年代にはじめてベアードという精神科医が提唱したとされています。その後、ナーバスの研究は進み、様々な精神疾患と関連することが分かっています。
恐怖症
特定の状況や対象が怖くなる。広場が怖い。人が怖い。とがったものが怖いなど。
不安障害
根拠のない不安を持つこと。交通事故にあうのではないか。火事になるのではないかなど。
ヒステリー
怒ったり、泣いたり感情の起伏が激しい。やや演技的である。
心気神経症
実際には病気でないにも関わらず病気と思い込む。病院の検査を繰り返したりする。
精神疾患の目安
ナーバスな状態は短期的で、理由がはっきりしている場合はそこまで問題ではありません。例えば、受験の1か月前、大きなプロジェクトが迫っている。こんな状態であれば、だれでもナーバスになるものです。
一方で、特に大きな理由がないにもかからず些細なことが気になって仕方がない感覚が続き、不眠、イライラ、抑うつ感が続く場合は上記に当てはまる可能性が出てきます。
ナーバスへの対処法
ここからはナーバスで苦しい方向けにおススメの3つの心理療法をお伝えします。
①認知行動療法
認知行動療法は最もポピュラーな心理療法です。大きく分けて、認知療法,行動療法,マインドフルネス療法の3部構成になっています。
全部学習するのは少々骨が折れますが、ナーバスな気持ちを改善したい方にかなりおススメの心理療法です。
偏った考えの改善、極端な行動の改善、感情的になることを抑えることができます。しっかり勉強してみたい方は下記のリンクを参考にしてみてください。
②森田療法
森田療法は日本人が作成した心理療法で、神経質な症状を改善する手法として伝統的に使われてきました。
森田療法では、「あるがまま」という考え方をベースとして、ナーバスな気持ちを無理になくそうとせず、うまく付き合いながら、行動範囲を広げていくことを目的としています。
一度ナーバスになるとなかなか行動できない…という方は下記のコラムを参考にしてみてください。
③体の面からリラックス
心と体は連動しています。ナーバスになっている状態は、運動不足で体が堅くなっていたり、緊張で力がカチコチになっていたり、呼吸が荒くなっていることがあります。
体をリラックスさせると、結果的におおらかな心が育っていく面もあります。体のリラクゼーション法を学びたい方は、以下の2つのコラムをオススメします。
講座のお知らせ
公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかり心理学を学習したい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。
講座では
・心理療法の基礎
・ナーバスな心の改善
・暖かい人間関係を築くコツ
など練習していきます。興味がある方はお知らせをクリックして頂けると幸いです。お知らせ失礼いたしました。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
YouTube→
Twitter→
*出典・引用文献
青木万里(2015)森田療法的アプローチによる心理教育―日記療法の手法を用いて―. 鎌倉女子大学紀要, 22, 23-33.
今野千聖・鈴木正泰ら(2016)一般人口におけるうつ病の心理社会的な要因に関する疫学的研究. 日大医誌, 75(2), 81-87
Assari (2017) Neuroticism predicts subsequent risk of major depression for whites but not blacks. Behavioral Sciences, 7,64.
わが国における 「神経質」 に関する研究の歴史的展望
高嶋正士, 共立女子大学 – 基礎科学論集: 教養課程紀要, 1989
鷲見 克典, 早川 精一(1996)職業性ストレスに対する職務関与と神経質傾向の効果 名古屋工業大学学術機関リポジトリ Nagoya Institute of Technology Repository
心はどのように遺伝するか―双生児が語る新しい遺伝観,安藤 寿康,講談社 (2000)