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認知的不協和理論の意味とは?研究と解消法・具体例

認知的不協和理論の意味とは?解消法・具体例

はじめまして!公認心理師の川島です。今回のテーマは「認知的不協和理論」です。


当コラムの目標
・認知的不協和の基礎を学ぶ
・不協和解消手段を学ぶ
・関連する理論を学ぶ

全体の目次
・認知的不協和理論とはなにか?
・悩みやすいシチュエーション
・低減する4つの方法
・均衡理論,斉合性理論との違い

認知的不協和理論とは?

意味とは?

認知的不協和が提唱されたのは1950年代です。アメリカの心理学者レオン・フェスティンガー(Festinger, L.)によって提唱された社会心理学の用語です。

認知的不協和-フェスティンガー

認知的不協和は次のように定義されています。

認知を構成する要素相互の間に不協和が起きることを認知的不協和とよぶ。そして不協和を低減する行動がおきる(心理学辞典,2008,一部簡略化)。

少し難しいですね。もう少し細かく解説していきます。

要素相互
ざっくりと理想と現実を意味します。

不協和
理想と現実のギャップと考えると良いでしょう

低減する行動
ギャップを埋める行動を意味します。

要約すると、理想と現実にギャップがあるときにそのギャップを埋めようとする動きとなります。

具体例

認知的不協和の有名な例として、イソップ物語の「キツネとすっぱい葡萄」が知られています。

理想
キツネは高い所にあるブドウが食べたい

現実
何度か跳び上がるが届かない

不協和
キツネはムスクれる

イソップ童話と認知的不協和

低減行動
最後には「あのブドウはまだ青くて食べられない。酸っぱくて食べられたものじゃない」と負け惜しみの言葉を残して去る

キツネは手に入れたい葡萄を諦めた後、価値のないものだと思い込み、心の平安を得ようとしたのです。

以下日常的な認知的不協和の例もあります。気になる方は展開してみてください。

近年、やりがい搾取という問題が社会問題になっていました。やりがい搾取とは、企業がやりがいを提示することで、労働者を安い賃金で働かせるという理論です。

実はこの原理は60年ほど前にすでに実験があったのです。

目的
Festinger(1959)は、退屈な作業による認知的不協和が報酬によって変化するのか?という調査を行いました。

方法
①実験参加者
71人の男子生徒を参加者として募る

②退屈なタスク
*ペグボードでペグを1時間回転させる 
 下図を見るとすごくつまらなそうですね!

ペグボード実験-退屈

③管理者役からお願いされる
この実験のあと、管理者役の人から、まだ作業をしていない他の人に、楽しいしごとだぜ!と言ってくださいと言われる。

この時、
1ドルしかもらわない群
20ドルもらう群

にわける

さて!皆さんにクイズです!1ドルしかまらわなかった人、20ドルもらった人、どちらがこの仕事を好きになったでしょうか?


結果
なんと1ドルしか受け取らなかった人たちの方が、このタスクを楽しいと評価したのです。1ドルしかもらわなかった人たちは、当然不協和が生じます。

この不協和を解消するには、仕事をどうにか楽しいと思い込むことにして、自分を納得させようとしたと推測されています。

逆に20ドルをもらった人たちは、そもそも満足してしまっているので、わざわざ仕事を好きになる必要はありませんでした。

やりがい搾取をしている企業はこの原理を巧みに利用していると言えるかもしれません。

*画像出典,参考サイト
https://www.simplypsychology.org/cognitive-dissonance.html

 

李ら(2018)は、20代の男女42名を対象に、認知的不協和理論を用いた偏見を抑制する研究を行いました。手順は以下の通りです。

①偽善テーマを書かせる

タトゥーへの偏見をなくすべきというエッセイを書いてもらいます。

②現実に直面させる

実際それが出来たかを書いてもらいます。そして参加者の多くは偏見的な態度をとったことがあり、先ほど書いた偏見をなくすべきというテーマとギャップが生じ、認知的不協和となります。

③偏見の大きさを調査する

この2つのプロセスで偏見の大きさがどうなったのかを調査しました。グラフでは
「偽善モデル導入群(偽善テーマを書いた群)」
「統制群(偽善モデルを書いていない群)」
を比較しています。

認知的不協和理論と偏見の低減

表から「統制群」に比べて「偽善モデル導入群」がタトゥーに対する偏見が小さいしていることが分かります。

この実験から言えることは、とりあえず偽善でも良いので、偏見はだめだ!と書くことで、現実の自分との認知的不協和が生じ、不協和を解消するために、実際に偏見をなくそうと心が変化していくことが示唆されています。

この原理を応用すると、例えば、犯罪を犯してしまった少年に、本来ならどう生きるべきだったか理想を掲げてもらうことで、実際に自分の考えを変えるきっかけにできるかもしれません。

解消例と具体例

不協和が起きやすい状況

認知的不協和は、起きやすい状況と解消パターンの傾向があります。フェスティンガーは、不協和が起きやすい状況を5つ提唱しています。

➀決定後の不協和 

一度決めた選択を後から修正しようとしても、もはや後戻りできない場合は不協和が生じやすくなります。

具体例
・不協和
馬券を買った後に、別の馬券が良かったと感じてしまう。しかしもう出走直前で買い直しができない。


②強制的承諾の不協和

本人の考えと違う考えを強制的に選択させられると、認知的不協和が生じやすくなります。

具体例
・不協和
好きでもない人を仲人から強く勧められ結婚してしまう

➂情報への偶発的接触の不協和

相反する情報に偶発的に接触すると、不協和が生じやすくなります。

具体例
・不協和
恋人の携帯電話に、たまたま会社の同僚と思われる異性からの💛マーク付きのメールをみつけてしまう

④社会的不一致の不協和

社会的に好ましくない感情を抱くと、不協和が生じやすくなります。

具体例
・不協和
ウイルスがまんえいしているにも関わらず、外に出かけたくなってしまい、遊びにいく。罪悪感に支配される。

⑤現実と信念との食い違い

現実と自身の考えに食い違いがあると、認知的不協和が生じやすくなります。

具体例
・不協和
絶対あきらめない!と信念を持ち会社員を辞めて起業をしたが、うまくいかず貯金が底をつく

認知的不協和の解消法

不協和の低減法

認知的不協和が生じると、不協和を低減する行動が起きます。不協和の低減法には、

「行動の変更」
「認知要素の変更」
「過小評価・過大評価」
「新しい認知要素の追加」

の4つがあります。

行動の変更

現実を理想に合わせることです。行動の変更は現実を受け入れず、理想を追求していく点で特徴的です。

具体例
・不協和
絶対あきらめない!と信念を持ち会社員を辞めて起業をしたが、うまくいかず貯金が底をつく

・低減
再び貯金をして成功するまでがんばる。

認知要素の変更

現実はそのままに、理想を修正する方法です。

具体例
・不協和
馬券を買った後に、別の馬券が良かったと感じてしまう。しかしもう出走直前で買い直しができない。

・低減
もう出走してしまう!どうせなら応援しよう!と考えを変更する。

過小評価と過大評価

理想を価値の低いもの、もしくは過大評価してしまうことです。

具体例(過小評価)
・不協和
恋人の携帯電話に、たまたま会社の同僚と思われる異性からの💛マーク付きのメールをみつけてしまう

・低減
恋人なんていつでもできる。恋人に固執する必要はない。と考えを変更する。

具体例(過大評価)
・不協和
ウイルスがまんえいしているにも関わらず、外に出かけたくなってしまい、遊びにいく。罪悪感に支配される。
・低減
遊ぶことは人生においてウイルスよりも大事なことだ!と考える。

新しい協和的認知要素の追加

固定化した理想に、新たに考えを増やして、考えの幅を広げることです。

具体例
・不協和
絶対あきらめない!と信念を持ち会社員を辞めて起業をしたが、うまくいかず貯金が底をつく

・低減
チャレンジできた自分を褒めよう。失敗できたことが財産で次につながる。

3つの方法で解消

このように私たちは、認知的不協和が生じると心に負担がかかるので、どうにか改善しようとあれやこれやと考え方を変更するのです。

認知的不協和に類似した理論

認知的不協和理論に類似した理論に
「認知的斉合性理論」
「認知的均衡理論」
があります。よく混同しがちなので解説していきます。全体の関係は以下の通りです。

認知的均衡理論,不協和

斉合性理論

「人は一貫性を保ちたい」という理論です。図のように、不協和一論、均衡理論の基礎となっている概念です。

均衡理論

認知的均衡理論は「好き,嫌い」「2者関係+対象」を扱うという特徴があります。アメリカの社会心理学者ハイダー(Heider,F.)により提唱されました。詳しくはこちらの親近感コラムで解説しています。

均衡の取れた人間関係

不協和理論

当コラムで解説してきた認知的均衡理論は「好き,嫌い,態度,行動」「1人」を扱うという特徴があります。フェスティンガーによって提唱されました。

まとめ

まとめ

認知的不協和とは、「人が自身の中で矛盾する考え(認知)を同時に抱えた状態。またそのときに覚える不快感」を表すことで、私たちの日常生活でとても密接に関わっています。

不協和によってさまざまな考えが生まれ、解決されていきます。もし「なんだか自分の中で考えが矛盾しているな」「偏見が強いかも」と思ったら、自分に合った解決方法を見つけることで、よりよい生活を過ごすことができるようになると思います。

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
・外林ら(編)心理学辞典 誠信書房 2008
・室川 明良・赤井 理奈・服部 元・藤田 うらら 2014 認知的不協和が行列行動に与える影響 慶應義塾大学大垣昌夫研究会 2018,1-7.
・李 瑋琳・宮下 達哉・岡 隆 2018 偏見の低減への認知的不協和理論に基づく偽善モデルの適用 日本心理学会大会発表論文集 2018,82,1AM-013.
・藤永 保(監修)・内田 伸子・繁桝 算男・外山 憲司(編集) 2014 最新 心理学事典 平凡社.