>
>
>
認知的不協和理論とは?意味・解消法・具体例

認知的不協和理論とは?解消法・具体例①

はじめまして!学校心理士・応用心理士の栗本です。私は心理学の大学院を卒業し、カウンセリングや教育相談を行っています。本コラムでは「認知的不協和」について詳しく解説をしていきます。

  • 認知的不協和理論とは?
  • 不協和の具体例
  • 起きやすい状況・解消例
  • 不協和の低減法
  • 類似した2つの理論
  • 特徴と心理学の研究

しっかりと対策をお伝えしたいので全部で8分程度かかります(^^;ちょっと大変ですが。ぜひお付き合いください。

皆さんは「認知的不協和」と聞いて何をイメージするでしょうか。

「何かの専門用語かな」
「堅苦しそう」
「言葉だけなら聞いたことあるかも・・・」

馴染みの無い言葉かもしれませんね。「認知的不協和」とは、我々の生活の中にとても関連深い専門用語です。

「認知的不協和」ついて正しい知識を得ることで、自分の生活や大切な人の生活に役立つと思います。本コラムでは、「認知的不協和」について知りたい方向けに、正しい知識を解説していきます。

認知的不協和理論とは?

定義

認知的不協和(cognitive dissonance)は、アメリカの心理学者レオン・フェスティンガー(Festinger, L.)によって提唱された社会心理学の用語です。認知的不協和は次のように定義されています。

認知を構成する要素相互の間に不一致、不調和などが起きることを認知的不協和とよび、この不協和が起きると、不協和を低減する行動がおきる(心理学辞典,2008)。

少し難しいですね。簡単にまとめると、自分自身の矛盾する2つの考え(認知)に対して、調和できるよう調節する行動のことです。人間が心のバランスを取るための防衛的な反応だといえます。

認知的不協和の具体例

認知的不協和の有名な例として、イソップ物語の「キツネとすっぱい葡萄」が知られています。

キツネは高い所にあるブドウが食べたくて何度か跳び上がるが届かない。最後には「あのブドウはまだ青くて食べられない。酸っぱくて食べられたものじゃない」と負け惜しみの言葉を残して去る。といった逸話です。

キツネは手に入れたい葡萄を諦めた後、価値のないものだと思い込み、心の平安を得ようとしたのです。

イソップ童話と認知的不協和

日常的な認知的不協和の例も見ていきましょう。

Aさん
・社会の為に、電気自動車が良いと考えている
・実際は、ガソリン自動車を運転している

Aさんは、言っていることとやっていることが矛盾しているので、矛盾(不協和)が生じます。そこで「自分が乗りたいものに乗っている」と考え方を変えて矛盾を解消します。図にすると以下のようになります。

認知的不協和の図

その他に、仕事の例なら、

Bさん
・得意な事が活かせる仕事だと思って就職
・実際は自分が望まない仕事ばかり
・やりがいがもてない職場だった

Bさんは、モヤモヤする気持ちに不快感を持っていたが、不快感を覚えたままでは辛いため、その仕事にやりがいと見出そうと自分を納得させる。

「嫌な仕事だけど、自分が知らないことも覚えられていいかも」「お金のためだからどうでもいいや」と考え解消します。

このように、日常生活のさまざまな場面に認知的不協和が生じているのです。

不協和が起きやすい状況と解消例

認知的不協和は、起きやすい状況と解消パターンの傾向があります。フェスティンガーは、不協和が起きやすい状況と解消法を5つ提唱しています。

➀決定後の不協和 

変更できない選択肢から希望の選択肢を決定した後は、不協和が生じやすくなります。自分が決めた選択に自信を深めることで不協和を解消します。

具体的には、
馬券を買った後に、別の馬券が良かったと感じてしまう(不協和)。モヤモヤした気持ちを解消するため、自分が決めた馬券に自信を深める(解消)。

②強制的承諾の不協和

本人の考えと違う考えを強制的に選択させられると、認知的不協和が生じやすくなります。強制的に選択した考えを信じることで不協和を解消します。

具体的には、
自分の辛い経験を、友人に「人生にとってプラスの経験」と説得される(不協和)。友人に説得された考えを信じる(解消)。

解消例と具体例

➂情報への偶発的・無意図的接触の不協和

相反する情報に偶発的・無意識に接触すると、不協和が生じやすくなります。意識的に接触する情報を選択していくことで不協和を解消します。

具体的には、
考えに考えてパソコンを購入したが、たまたま見かけた広告を見て別のパソコンの方が良かったかもと思ってしまう(不協和)。自分の行動が正しいと思えるような広告だけを読もうとする(解消)。

④社会的不一致の不協和

問題が起きている時に社会的に好ましくない感情を抱くと、不協和が生じやすくなります。問題が起きていることを説明することで不協和を解消します。

具体的には、
地球温暖化が進んでいる状況に「起きても当然だと」感じてしまう(不協和)。地球温暖化にまつわる人間の行動について説明する(解消)。

⑤現実と信念・感情との食い違いの不協和

現実と自身の考えに食い違いがあると、認知的不協和が生じやすくなります。現実を信じていくことで不協和を解消します。

具体的には、
仕事上で自分の考えとは違う選択で進めなければならなくなった(不協和)。自分とは違う考えを信じて業務を進める(解消)。

認知的不協和の解消法

不協和の低減法

認知的不協和(2つの考えの矛盾)が生じたときには、不協和を低減する行動が起きます。これを不協和の低減法といいます。

不協和の低減法には、「認知要素の変更」「過小評価・過大評価」「新しい協和的な認知要素の追加」の3つがあります。

認知要素の変更

不協和な関係にある認知要素の一方を変化し、相互に協和的関係にすることです。簡単にまとめると、不協和な関係の考えを、同じ考えにするということです。

例えば、
よく当たると有名な占い師に将来について占ってもらったが、自分の思い描いていた将来とは違った回答があった場合に、「実は、自分も占い師と同じことを思っていた」と、考えを変えることです。

過小評価と過大評価

不協和な関係の考えを価値の低いものと考えて、同じ考えのものを価値の高いものと考えることです。

例えば、
勉強会などで自分の考えと専門家の考えに違いがあった場合、「自分の考えの価値は専門家の考えよりも低い」と考えることです。

新しい協和的認知要素の追加

不協和な関係の考えに、新たにもう一つ考えを増やして、考えの幅を広げることです。

例えば、
進路選択の時に大学に進学するか就職するか悩んでいた場合に、「専門学校に行く選択もあるな」と考えの幅を広げることです。

3つの方法で解消

認知的不協和に類似した理論

認知的不協和理論に類似した理論に「認知的斉合性理論」「認知的均衡理論」の2つがあります。

➀認知的斉合性理論

認知的斉合性理論(congnitive consistency theory)とは、「人はいつも同じでありたい、認知の一貫性を保ちたい」という理論です。

例えば、
犬好きの男性が、好意を抱いた相手も犬好きであったことを知る。男性にとっては、「自分が相手に好意をもっている」という認知と「自分が犬好きだ」という認知に、「彼女も犬好き」という認知が加わることでうまくつじつまが合います。

②認知的均衡理論

認知的均衡理論(cognitive balance)とは、「自分と、他者と、対象の間には、均衡状態と不均衡状態があり、不均衡状態にある場合は、解消するように動機付けられるという理論」のことです。

アメリカの社会心理学者ハイダー(Heider,F.)により提唱されました。

例えば、
「好きな人が愛用している物を、バランスを取って自分もその物を愛用する」「ギターが好きだけど、相手から否定されたらその相手を嫌いになる」などです。

認知的不協和の特徴・研究

認知的不協和は、我々の日常生活なのかで多くのことに関係しています。そのため、認知的不協和は、心理学の世界でさまざまな研究がなされてきました。

研究①通常の選択と逆の選択をする

室川ら(2014)は、大学生を中心とした78名を対象にアンケート調査を行い、認知的不協和が行列行動にどのような影響を与えるかについて研究を行いました。

調査の結果、認知的不協和の傾向が強い人には、2つの傾向があることが分かりました。

1:行列に並んで待てる時間が短い

認知的不協和が強い人の特徴行列に並んで不満を持ったことが無い、認知的不協和が強い人は、行列で待てる時間が短いことが分かりました。このタイプの人は、情報に対して受動的ではありません。

「あのお店は、美味しい。だからいつも行列ができている(認知)」という情報に対して認知的不協和が働き

「とはいっても、期待する美味しさかどうかは分からない」と思い込むため逆の行動を取る傾向があると考えられます。

2:行列に並んで待てる時間が長い

認知的不協和が強い人の特徴

行列に並んで不満を持ったことが有る、認知的不協和が強い人は、 行列で待てる時間が長いことが分かりました。

行列に不満があるのになぜ並ぶのか?「これまでの経験から行列のあるお店は、わざわざ並ぶほど美味しくない(認知)」という考えに対して認知的不協和が働き

「今回こそは美味しいに違いない」と思い込むためと考えられます。

この結果から、
認知的不協和が強い人は、
本来の認知とは逆の選択
をする傾向が強いと考えられます。

認知的不協和は、その人のこれまでの経験に影響を受けています。行列に並ぶかどうかは、今までの経験やそのものへの期待があるといえそうです。不協和解決の事例

研究②不協和は偏見の軽減につながる

李ら(2018)は、20代の男女42名を対象に、認知的不協和理論を用いた偏見を抑制する研究を行いました。研究では、参加者に不協和を経験させ、タトゥーへの偏見を軽減できるかを見ています。

具体的には、以下の偽善モデルで不協和を経験させています。「偽善モデル」とは、自分を良く見せようとするが、実際は違う行動をとっている状態です。

①理想:タトゥーへの偏見をなくすべき
「タトゥーへの偏見を何故無くすべきか」というテーマで、強い説得力のあるエッセイを書かせます。

②現実:実際は偏見的な態度をとっている
タトゥーを入れた人に対して偏見的な態度を取った実際の経験を2つ書かせ、偽善に直面させています。

結果を下の表に示します。グラフでは「偽善モデル導入群」と「統制群(偽善モデルを導入していない群)」を比較しています。

認知的不協和理論と偏見の低減

表から「統制群」に比べて、
偽善モデル導入群」では
タトゥーに対する偏見が低下
していることが分かります。

つまり、偽善モデル導入によって、不協和を経験させタトゥーへの偏見が低減できるということです。偏見を減らすことは社会にとって非常に重要な課題であり、また社会心理学の領域においても、非常に重要なテーマです。

日常生活の中で、偏見が多かったり、気になったりした時には、ぜひこの認知的不協和を意識して、その軽減・解消をしてみてください。

まとめ

認知的不協和のまとめ

認知的不協和とは、「人が自身の中で矛盾する考え(認知)を同時に抱えた状態。またそのときに覚える不快感」を表すことで、私たちの日常生活でとても密接に関わっています。

不協和によってさまざまな考えが生まれ、解決されていきます。もし、自分が「なんだか自分の中で考えが矛盾しているな」「偏見が強いかも」と思ったら、自分に合った解決方法を見つけることで、よりよい生活を過ごすことができるようになると思います。

講座のお知らせ

最後に、心理の専門家の講義を受けてみたい!という方は良かったら私たち臨床心理士・精神保健福祉士が開催している、コミュニケーション講座への参加をおススメしています。コラムだけでは伝えきれない知識や実践的なワークを進めています。みなさんのコミュニケーション能力が向上するよう、講師も一緒に頑張ります!よかったらいらっしゃってくださいね(^^)

★認知的不協和理論の例を参考によりよい生活を目指そう!
心理学講座

助け合い掲示板

コメントを残す

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


ブログ→
YouTube→
Twitter→

*出典・参考文献
・外林ら(編)心理学辞典 誠信書房 2008
・室川 明良・赤井 理奈・服部 元・藤田 うらら 2014 認知的不協和が行列行動に与える影響 慶應義塾大学大垣昌夫研究会 2018,1-7.
・李 瑋琳・宮下 達哉・岡 隆 2018 偏見の低減への認知的不協和理論に基づく偽善モデルの適用 日本心理学会大会発表論文集 2018,82,1AM-013.
・藤永 保(監修)・内田 伸子・繁桝 算男・外山 憲司(編集) 2014 最新 心理学事典 平凡社.