セルフハンディキャッピングの意味とは,テスト前
みなさんこんにちは。公認心理師の川島です。私たちは現在、初学者向け心理学講座の講師をしています。今回のテーマは
「セルフ・ハンディキャッピング」
です。
セルフ・ハンディキャッピングとは
意味
セルフ・ハンディキャッピングは、アルコール依存症を研究していた、エドワード・E・ジョーンズらによって1970年代後半に提唱された概念です。
心理学辞典(1999)によると、以下のように定義されています。
ある課題を遂行する際に
結果の評価的な意味をあいまいにするため
障害を自ら作り出す行為
例えば、難しい宿題をやらない自分を正当化するために、部屋の片づけを行うなどです。こうすることで、宿題ができなくても「部屋が散らかっていたから仕方ない」と言い訳が作れます。
セルフハンディキャップの特徴としては、
「自分の能力について焦点が当たることを避ける」
こんな狙いがあります。
掃除の例で言えば、宿題ができなかったのは、自分の能力のせいではなく、掃除をしていたという部分に焦点を充てることができます。
獲得的セルフハンディキャッピング
セルフ・ハンディキャッピングにはさらに2つの種類があります。
獲得的セルフ・ハンディキャッピングは、先ほどの掃除の例のように、自分でハンディキャップを作り出してしまう現象です。
・試験前にあえてゲームをする
・勝ち目が薄い試合の前に
あえて体調不良になる行動をする
・恋愛に自信がないので、仕事に没頭して、
モテないのは仕事のせいとする
②主張的セルフハンディキャッピング
主張的セルフ・ハンディキャッピングは、あらかじめ予防的な発言をして、自分にはハンディキャップがあると周りに主張することです。
・試験の直前に「全然勉強してない」と宣言する
・人前に立つときに「あがり症なので」など宣言する
・普通に会話ができるにも関わらず「コミュ障」です
と発言する
4つの原因
セルフハンディキャップを行う原因は以下の3つがあります。
勝算が薄い
セルフハンディキャップは勝算が薄い時にも起こりやすくなります。最高のパフォーマンスを発揮しても、敗色濃厚になると、あらかじめ負けたときの、心理的なストレスをあらかじめ軽減しようという心理が働きます。
自尊心を守る
セルフハンディキャップを行う人は、自分に対する不安感や自信がないことが多くあります。全力を出して、取り組んだにも関わらず失敗に終わってしまえば、心に大きな傷が残るかもしれません。
そこで、自己評価や自尊心を守るために、セルフ・ハンディキャッピングを行ってしまうのです。
文化的な要因
セルフハンディキャップを行う人は謙虚として評価される文化もあります。
「体調ばっちりです!勉強も十分やった。
多分僕がクラスで一番だ!」
という人と
「ちょっと体調悪くて、
勉強もいまいちだったかなあ。
でも頑張るよ」
こんな感じで言う人がいたとき、どちらのキャラクターが好まれるかは集団の文化によってきます。
それぞれの個性を認め合うような関係性であれば、前者でもOkですが、出る杭は打たれるような文化の場合は後者が好まれることもあります。
能力を印象付ける
稀にですが、勝算が確実にある場合に、自分の能力をアピールするために行われることもあります。
例えば、本当はものすごい勉強をしたのに、勉強していないアピールをした人がいたとします。この方が、テストで100点を取ったとすると、周りからすると、勉強しないで100点をとるとは天才なのでは?
という印象を持たせることができます。このように自分の能力を大きく見せるために行われることもあります。
実は深刻な問題になることも
セルフハンディキャップは、試験や掃除などであれば、そこまで大きな問題になることはありません。しかし、深刻な状況になると、様々な問題が起こることがあります。以下私の経験上であった2つの事例を個人が特定できない形で、紹介したいと思います。
ギャンブルへの依存
Aさん 40歳 独身 男性 IT系
現実を忘れるためギャンブルがやめられない
Aさんは、ギャンブルへの依存が見られました。口癖のように、私の人生がうまく行かないのは、ギャンブルをしてしまうせいと発言していました。
もちろんギャンブルにその原因の一部もあるかもしれないですが、経営者で成功している人の中には、ギャンブルが好きな方もいらっしゃいます。
Aさんは、ギャンブルという原因のせいにしてしまうことで、セルフハンディキャップする癖がついてしまっているように感じました。
大変な事例ですが、セルフハンディキャップで自暴自棄な行動をとる癖を整理して、健康的な行動をとれるように、一緒に考えていきました。
結果的に、Aさんの自傷的なギャンブル依存の回数は減り、人生に前向きな行動が増えていきました。
攻撃的なBさん
Bさん 29歳 女性 婚活中
短期的な別れを繰返してしまう
Bさんは、婚活中の女性ですが、付き合ってもすぐに別れてしまうという問題を抱えていました。自尊心が低く、付き合ってもどうせフラれてしまう…という世界観を持っていました。
Bさんは、関係がすすむと、
・なぜか攻撃的になってしまう
・服装がだらしなくなる
・浮気をほのめかす
というような行動をしていました。あらかじめ、異常な言動をすることで、フラれることについての、予防線を貼るような行為に見られました。
少し複雑な心理ですが、Bさんは、恋愛について自信が持てず、失敗することを想像するあまり、あえて攻撃的に振る舞い、フラれるように仕向け、自尊心を守るという複雑なパターンを持っていました。
その後Bさんは、心を整理して、このような不安な気持ちがあった時に、感情に流されず、今まで通り、健康的な関係を築くことを意識するようになり、以前よりも長くお付き合いができるようになりました。
まとめとお知らせ
まとめ
今回はセルフハンディキャップについて解説をしてきました。セルフハンディキャップは元々はアルコール依存の問題から派生した理論となります。
自分を守るための、自暴自棄な行動や発言は、結果的に自分を守らない行動をしてしまうことになります。深刻な事態にならないように、当コラムの事例などをぜひ参考にしてみてください。
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
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出典・参考文献