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視線恐怖症の症例「人の評価が気になる」を認知療法で克服

視線恐怖症「人の評価が気になる」-認知療法で克服②

コラム①では視線恐怖症の症状と、その原因として3つの解決策を提案させて頂きました。視線恐怖症は、周りの人からの視線を過敏に感じ恐れるという対人恐怖の一種でした。今回は視線恐怖症の解決策の1つ「歪んだ現実→現実に」について紹介します。

不安を軽減できる感覚とは?

・大学生とSAD患者を比べた実験
社交不安障害(SAD)をはじめとする不安障害の方は、否定的な感情や緊張などの身体の変化があると、感情をコントロールできず、混乱しやすいと考えられています。

城月健太郎(2013)は、社交不安障害(SAD)患者14名と大学生251名に対し、不安のコントロール感に関する研究を行いました。結果が下図となります。

大学生の方が点数が高く、SAD患者のグラフが低くくなっていますね。これは健康的な大学生は不安を和らげられる感覚があり、SAD患者は不安をコントロールをできる感覚が少ないことを示しています。こうした状態が長続きすると、社交不安障害が深刻化するリスクがあるため注意が必要です。

・再確認がキーポイント
では社交不安で悩む方は、どのようにコントロール感を取り戻せばいいのでしょうか。ストレスを受けた際に、ネガティブ思考になってはいないか、思い込み囚われていないかなど、再確認する習慣をつけていくことが大切です。

現実的に自分の考えや感情を再チェック,再認識していく作業を繰り返し、不安になってもそれに巻き込まれないように意識すると、不安をコントロールする感覚を身に付けることができます。具体的には認知行動療法やマインドフルネス療法が有効です(後ほど解説します)。

認知療法で視線恐怖症を改善

人の評価が気になる事で視線恐怖症の症状が出ている場合、認知療法が有効な解決策となります。認知療法とは、1960年代にアーロン・ベックが提唱した心理療法です。

認知療法は
①「事実」は何か
②「考え」「感情」「行動」に分ける

③ 認知の歪みを知る
④ 認知を修正する

以上のプロセスを踏むことで症状が改善されるという心理療法です。人には個人個人の認知フィルターがあり、そのフィルターを通して、考えたり、感じたり、行動します。その認知フィルターが歪んでいる場合、否定的な考えに陥ったり悲観的な感情が沸き起こってしまいます。

認知のゆがみと視線恐怖症

例えば、ある時、あなたが近所の人に挨拶したが、目が合うとどこかびっくりした表情になっていたとします。このような時、視線恐怖症の方は

「私の目線が鋭いから怖くなったのかも(考え)」
「私が嫌いで私を避けているに違いない(考え)」

など、極端に考えてしまうのです。このように偏った考え方を「認知の歪み」と言います。視線恐怖症の方は、この認知の歪みがあることが多く、非現実的な思い込みを持っている可能性が高いといえます。

認知のゆがみは頑固

相澤(2004)の研究では、対人恐怖は、対人場面において直接的な感情や内面的な思い込みで判断し、その思い込みに即した行動ばかりを見つけてしまい、さらに思い込みを深めると主張しています。

例えば、
「私の目が変な形だと思っている」

という考えを強く持っているとします。こうなってしまうと、いくら友達が、目がかわいい、男らしくて素敵な目・・・と言ってくれたとしても耳に入らなくなってしまいます。

逆に
「今日は目に元気がないね・・・」
など言われると、そら見たことか!やっぱり私の目はおかしいんだ!とどんどん確信を深めてしまうのです。この思い込みを修正するには、歪んだ認知を修正する認知療法が、対人恐怖および視線恐怖には有効であると言えるのです。認知療法で視線恐怖症のネガティブな捉え方を修正する

認知療法・実際例

繰り返しになりますが認知療法を実施する過程は、

①「事実」は何か
②「考え」「感情」「行動」に分ける

③ 認知の歪みを知る
④ 認知を修正する

という流れで行います。
認知の歪みを修正して視線恐怖症を改善しよう

では、実際に事例を通して具体的に考えてみましょう。

事実
新入社員のゆきこさんは、上司に重要な会議の司会進行を初めて任されました。

考え
・司会進行では絶対に失敗をしてはならない  ⇒すべき思考
・失敗すると評価がガタ落ちになるに違いない ⇒感情的決めつけ
感情
・恐怖、視線が怖い
行動
・原稿を棒読みしてしまう。
・伏し目がちで司会を進行する

⇒考えを修正してみよう

では、認知療法を取り入れるとどうなるか考えてみましょう。ポイントは「考え」をもう少し現実的にしてみることが重要です。以下に回答を書きましたが、まずは自分で考えてみましょう。

 

 

解答例

⇒考えを修正
「失敗してもOk。緊張はだれでもする。緊張しながら伝えるべきことを伝えよう」
「皆に見られるのは怖いけれど、ゆっくり話そう」

事例では「絶対に失敗してはならない」と考えていたものが、失敗しても良いと認知が修正されました。また、「皆に見られるのは怖いけれど、できるだけやってみよう」と、前向きな気持ちになり、練習を繰り返し司会に挑む行動を取るようになりました。

認知療法にチャレンジ

それでは今度は自分自身で試してみましょう。少し心に負担のかかるワークなので、気持ちに余裕があるときに試してみてください。

事実(あなたが視線恐怖症になりやすいのはどのような状況でしょうか?)

考え(その時どんな考えが頭に浮かびますか?)


感情(その考えにたいしてどのような感情になりますか?)

行動(その感情や考えによってどのような行動をしていますか)

考えを修正に、考え方を修正するとどうなるでしょうか?

 

人の評価にふりまわされないために

いかがでしたでしょうか?最初はうまく埋められないと思います。心に余裕があるときに、考えてみてくださいね。視線恐怖症の場合、思考の歪みから、視線について非現実的な思い込みを持つことが多いのです。その結果、恐怖心が沸き起こり、さらに視線恐怖が強くなってしまいます。まずは視線恐怖症の裏側にある考え方に焦点を充てて考えてみることをお勧めします。じっくり取り組んでみてください。

視線恐怖症の考え方を修正しよう

次回は、視線恐怖症の解決策2つめ「あるがままを大切にする」についてご紹介します。お楽しみに!

★認知の歪みを修正して、視線恐怖症を改善しよう

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


ブログ→
YouTube→

*出典
城月 健太郎・児玉 芳夫・野村 忍・足立 總一郎 2013 不安のコントロール感に関する基礎的検討―社交不安障害の観点から― 心身医学, 53:408-415
相澤 直樹 対人恐怖における認知の偏りの内容特定性について:敵意帰属との関連から
神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要,8(1):103-106