入門③視線恐怖症を改善する森田療法,「あるがまま」とは
今回は「あるがまま森田療法」について解説していきます。森田療法は100近く前に、森田正馬という精神科医が提唱した心理療法です。
筆者の川島も20代の前半に、この療法と出会い随分助けられました。以下森田療法の考え方と、視線恐怖への応用に仕方をお伝えします。
視線恐怖と「とらわれ」
小川(1971)は以下のように主張しています。
対人恐怖症の場合、極めて意識性に富み、自己内省的で、対人場面における自己の一挙一投足を極端なまでに意識し、それにこだわり、そこから由来する不安について悩む
かなり難しい表現ですね(^^; もう少しわかりやすく解説します。ポイントは以下の3点です。
①恐怖心と過剰に向き合う
視線が怖くなると、その視線の恐怖と必要以上に向き合います。四六時中視線のことを考える状態になります。
②情報を集め確信を深める
実際の会話で視線に関する情報を異常に集めます。例えば、相手の表情をみて、ちょっとでも顔色が悪かったら、私のことが嫌いなのかな…と確信を深めていきます。
③恐怖を追い出そうとする
怖い感情をなくしたい!
恐怖をなくさないと!
恐怖を抑えおこみたい!
とマイナス感情を追い出そうとします。
視線恐怖症の方は「視線恐怖症」に人一倍こだわっている言えます。目を合わせると嫌われる、目を合わせると容姿が劣っていると思われる、目を合わせると緊張がばれる・・・など、
とにかく、目、目、目、目、目とこだわっていると言えるのです。
精神交互作用
このように、視線を無理に排除しようとすることで、ますます視線が気になってしまう。この悪循環を精神交互作用といいます。下の図が精神交互作用のメカニズムです。
あるがままが恐怖軽減
あるがままとは
この精神交互作用を断ち切るには森田正馬が考えた
「あるがまま」
が有効です。あるがままには以下の特徴があります。
・恐怖心を打ち消そうとしない
・そのまま受け入れる
・前向きな目的に注意を向け行動する
視線恐怖の症状は、注意が視線に執着することによって起こります。それをなくそうともがくのではなく、今自分がやるべきことを実行してゆく!という姿勢を持つことが大事だと森田は主張しています。
具体例
ここで次の例題について考えてみましょう。
例題
今日は、初めての習い事の日だなぁ…人と話せるようになりたいな、でも行くと緊張してパニックになるし、視線が怖いなぁ…
<あるがままで考えた場合>
⇒
解答例
緊張して震えるくらい視線が怖い。でもこの気持ちはあるがままの姿勢で自然なことと考えよう。視線が怖い、怖くないにこだわらず、やるべきことをやろう。
このように、見られる恐怖を取り除こうとせずに、恐怖心を感じながら、その恐怖を受け入れて、行動に移して行くのがコツです。はい!それができたら話がはやい・・・という皆さんの声が聞こえてきます。もちろんすぐには難しいですが、「こだわりすぎない」という姿勢はぜひ参考にしてみてください。
研究-身体の変化に過敏
筑波大学の八重澤・吉田(1981)らは、18~30歳の女子大生38名を対象に視線と人間の心理について実験しました。
その結果、神経質傾向が高い人は、心(認知反応)と身体(生理反応)のギャップが大きいことがわかりました。
つまり
身体は緊張していないのに
心は過敏に不安や緊張を感じている
と言えます。わかりやすく表現すると、体は大して緊張していないに、心は「緊張している!どうにかしなきゃ!」と神経質になっていると言えます。
視線恐怖の人は、自分の体の小さな変化を必要以上に大げさに捉えていると解釈できるかもしれません。
視線にこだわり、視線の中で人生を過ごすのではなく、前向きに自分らしく生きてゆけるよう、森田療法の『あるがまま』に取り組んでみてくださいね。視線へのこだわりが、少しでも軽減されつことを願っています。
コラムだけでなく心理の専門家の講義を受けてみたい!という方は下のお知らせをクリックして頂けると幸いです。私たちが講義をしている講座となります。
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
ブログ→
YouTube→
Twitter→
*出典・引用文献
小川 捷之 いわゆる対人恐怖症における「悩み」の構造に関する研究
横浜国立大学教育紀要,14:1-33,1974