ストレス症状の種類!短期・長期の反応を詳しく解説⑥
コラム⑤では、ストレスコーピングの種類について解説していきました。6種類のコーピングがあり、複数の視点から対処することが大切でしたね。
今回は、「ストレス症状とその種類」について解説していきます。
ストレスと直接的効果
コラム②でも説明したとおり、ストレス反応は「直接的効果」と「長期的効果」の2つがあります。まずは直接的効果について詳しく見ていきましょう。
直接的効果は、単発で発生するストレス反応で一時的なものでしたね。
・戦うか逃げるか反応
この短期的なストレス症状を理解するうえで、外せないのがウォルター・B・キャノン(1929)よって提唱された戦うか逃げるか反応です。これは、外敵に襲われるような緊急事態が起きたの生理的・心理的な反応を意味します。
生理的なメカニズムとしてはストレス要因に遭遇した時に、情動を司る脳の扁桃体(へんとうたい)と、体温調節などの生理機能を司る脳の視床下部(ししょうかぶ)が活発になります。
そして、ホルモンの分泌をうながす脳の下垂体(かすいたい)が、特定のホルモンを合成する副腎皮質を刺激るするACTHを分泌させます。
その結果として、副腎皮質からストレスホルモンである「コルチゾール」と、体のパフォーマンスを高める「アドレナリン」が分泌され、様々な反応を起こします。
・身体的反応
アドレナリンの分泌によって緊急事態に有効なストレス反応が生じることが分かりました。「戦う」もしくは「逃げる」ために、体のパフォーマンスを高めようと働くのです。
具体的には、身体的反応を引き起こします。
①心拍数の増加
②膀胱の弛緩
③視野が狭くなる
④震え
⑤瞳孔が広がる
⑥顔が赤らむ
⑦口が乾く
⑧消化が遅くなる
⑨耳が遠くなる
地面蹴って走ったり、敵の攻撃に備えるために血流量を上げて筋肉を緊張させます。そのため、心拍数が増加するのです。また、より多くの情報を得るために瞳孔が開きます。
ここまでの戦うか逃げるか反応をまとめたものが以下のインフォグラフィックです。
このように、ストレス要因が現れた時に人間は本能的に「戦うが逃げるか」の選択を迫られるため、身体的な反応が現れます。危機を乗り越えるために、運動能力や判断力を高めるのです。
・適度なストレスは味方
ヤーキーズ・ドットソンの法則は、生理学者ヤーキーズとドットソン博士が、マウスに電気ショックを流して学習を促した実験から出された有名な理論です。
この実験では、次のことが分かりました。
・電気ショックが適度なとき最も学習できる
・電気ショックの強弱がありすぎると学習能力が低下する
つまり
「適度なストレスが、学習や仕事のパフォーマンスを向上させる」
ということです。
下図がストレスとパフォーマンスの関係です。ストレスレベルが適度な時に、パフォーマンスが最も高くなるのがわかりますね。
このようにストレスは適度に取り入れることでメリットとして取り入れることができるのです。
マイナスイメージが強いストレスですが、コントロールをしてうまく付き合っていきたいものですね。
長期的効果
ストレスは短期的であれば、体のパフォーマンスを上げたり、判断力や集中力を高めてくれますが、長期間にわたってその状態が続くと心身にさまざまな悪影響を引き起こします。
武田(2004)では、長期ストレスによって起こる「心身症」や「神経症」の症状を以下の3つのカテゴリーにまとめています。
1.行動異常的発症
ストレスが非合理的、攻撃的、自己破壊的な
行動によって表出される症状。
2.心身症的発症
ストレスの影響が体に現れる症状。
3.神経症的発症
不安障害、ノイローゼと呼ばれるもの
「恐怖症」「強迫神経症」などの心身に様々な症状を引き起こす。
この3つから発症する代表的な症状をまとめたものが、以下の図です。
このように、長期間にわたってストレスを受け続けると、「行動面」「心理面」「身体面」にさまざまな悪影響が出てしまいます。ストレスはできる限り、長引かせないように心がけることが大切です。
ストレス症状を種類を覚えよう
今回は、ラザルス理論の「直接的効果」「長期的効果」の2つを見ていきました。ストレスは短期的で適度なものであれば、パフォーマンスを高めてくれます。そのため、頭ごなしに悪者だと決めつけずにうまく利用していくことが大切です。
ただし、ストレスが放出された状態が長くつづくと、心身症や神経症、行動異常などの各種症状を引き起こすリスクが高まりますので注意が必要です。
ぜひ、これからご紹介するコラムのストレス対処方法を参考にして、適度なストレスを保てるようにしていきましょう。
次回は、「ストレス診断とチェック」についてご紹介します。お楽しみに!

目次
①原因と症状を知ろう-概観
②ストレッサー」の意味と種類
③考え方が原因「一次評価」とは
④対処行動を考える「二次評価」
⑤対処方法「コーピングスキル」
⑥種類!短期・長期のストレス反応
⑦ストレス診断とチェック!
⑧問題解決型コーピング
⑨情動焦点型コーピング
⑩症状の原因「認知のゆがみ」
⑪ソーシャルサポートを得よう
⑫身体的コーピング
⑬気晴らし型コーピング
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
- 社会心理学会会員
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
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出典・参考文献
武田(2004)第2章 心身症・神経症等に関する文献研究 心身症・神経症等の児童生徒の実態把握と教育的対応に関する文献研究 平成14年度~平成16年度科学研究費補助金(基盤研究(C)(2))研究
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