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情動焦点型コーピングで発散方法

ストレスの発散方法「情動焦点型コーピング」とは⑨

コラム①では、「ストレス理論」について概観していきました。コラム⑧からはコーピング方法についてより深く解説していきます。少しおさらいすると、「①問題解決型」「②情動焦点型」「③認知評価型」「④社会的支援検索型」「⑤身体的」「⑥気晴らし型」の6つのコーピングありましたね。

今回は、ストレスの対処方法の2つ目「②情動焦点型」について解説していきます。

情動焦点型とカタルシス

ストレスコーピングを理解

情動焦点型コーピングについて軽くおさらいしておくと、自分の感情を何らかの形で外に出すことによってストレス症状を和らげていく対処法でした。

その感情を表出し、ストレスを発散する方法が「カタルシス」です。

カタルシスは主に「哲学・医療・宗教・心理」の4つの分野で使われてきました。

①哲学

紀元前330年頃:アリストテレスが著書『詩学』の中にある悲劇論に、「悲劇が観客の心に怖れと憐れみの感情を呼び起こすことで精神を浄化する効果」として書かれ、以降から使われるようになりました。現代においても演劇学用語として映画や演劇・小説・漫画の批評などにこの表現が使われていることが多々あります。

②医療

紀元前330年~6年頃:「カタルシス」は医学用語として転用されました。医学用語としての「カタルシス」は、患者に薬剤を使って吐かせたり、患者に下痢を起こさせたりする治療行為を指していました。

③宗教

紀元前6年~5年頃:オルペウス教などの宗教界で、「魂の浄化」を意味する用語となったと言われています。語源的には「体内の有害物質を瀉出(しゃしゅつ)すること」または「宗教的な浄め」を指すことから、学術研究領域では定義をめぐって、「瀉出(排泄)説」、「教化説」など様々な説があります。

④心理

*ブロイアーとカタルシス
1880年~1882年:ブロイアー(Breuer,J.)はアンナ・O嬢のヒステリー治療の際に、うっ積した感情の表現を促すことによって症状が改善することを発見して、初めてこの用語を用いたとされています。心理学においては、心の奥底に溜まった感情を表現することで前向きになれるという意味で現在も活用されています。

*フロイトとカタルシス
1880年~1894年:ブロイアーによって発見されたカタルシス効果を発展させたのが、精神科医のジークムント・フロイトです。フロイトは、ブロイアーと出会ってカタルシスについて聞き、その後1885年、フランスへ留学。神経学者のシャルコーの講義を受けて、催眠下で外傷が露呈するという外傷仮説を学びました。そこで、催眠時のカタルシスで症状が治癒するのではという着想を得て、ブロイアーと共にヒステリー研究を開始しました。

フロイトとカタルシスをより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・精神分析学の種に
・アンナ・Oの事例
カタルシス効果とヒステリー研究と事例②

もしかしたら皆さんにも同じような経験があるかもしれません。ストレスを感じている時、その感情を思い切って誰かに打ち明けたときにスッキリすることがありますよね。

カタルシスでストレス減

それ以降心理学の世界では、心の底にあるマイナスな感情が開放されることでなされる情緒的な回復という意味で定着していきました。

研究① フェッシュバックの古典的研究

「カタルシス効果」の存在を示した先行研究として、フェッシュバックの古典的研究(1955)があります。この研究では、大学生を対象に「侮辱群」「侮辱・空想群」に分けてカタルシスの効果を測定しました。少し難しい研究なので、簡単にして解説します。

1.侮辱されるだけの群
大学生の1つのグループは実験者から権威的な態度を取られたあと、攻撃性を測定しました。

心を浄化しよう

2.侮辱・空想群
もう一方のグループは、実験者から権威的な態度を取られたあと「絵を見せられ物語を空想」してもらいました。その後、攻撃性を測定しました。

カタルシス効果とはこの2つのグループ、どちらの方が攻撃性が低かったでしょうか。結果は以下のようになりました。

このように、空想を入れたグループの方が攻撃性が低くかったのです。つまり、自由に物語を書くという代理的行為によってストレスが解消され、「カタルシス仮説」の影響が見られたというわけです。

スポーツ観戦でカタルシス効果を得る

研究② 朗読療法とカタルシス効果

心理学では、カタルシス効果について研究がされてきました。飯久保(2005)によると、朗読によって

①カタルシス効果
②イメージ効果
③リハビリ効果

の3つの臨床心理的効果が得られる可能性があります。その中から、朗読療法とカタルシス効果について研究したものをご紹介します。

・朗読後のカタルシス効果研究

藤野(2012)が行った研究では、朗読によるカタルシス効果を検証しています。その研究内容とは、首都圏の大学生・大学院生43名を対象に、朗読後の気分の変化を比較しています。その結果を以下に示します。

この表の結果から、

怒りや敵意、ネガティブ感情が下がった。
特に緊張や不安、疲労が和らいだ

ということが言えます。特に、カタルシス効果と親密な関係を持つ緊張や不安が、朗読による有意な低下を示しました。これは朗読によってストレスが和らいだことか考えられます。

こうした朗読を用いたカタルシス効果は、精神障害にも応用されているといいます。特に、不登校、睡眠障害、摂食障害などが改善されたという研究結果もあります。

ストレスコーピングを習得

これまで、ストレスと「カタルシス」について、ご紹介してきました。最後に、カタルシスについてマイナスとプラスの部分について考えていきましょう。

マイナスの部分
カタルシスは、攻撃的に表出されることがあります。例えば、虐待などでは怒りを子供に向けることで親が自分の心理状態を安定させようとするものです。特に、現在暴力や社会的にあまり許されない方法で発散をしてしまっている人やため込みすぎてしまっている人は要注意です。

プラスの部分
健康的なカタルシスとは、平たく言えば、「攻撃衝動を社会的に許される無害な形で発散させようとする」ことです。日ごろの発散出来ずに抱えてしまっている気持ちを、社会的に無害な方法で発散していきましょう。

日常的には、朗読や、映画鑑賞をしたりすることで、ストレスの低減を実感できるかもしれません。また深刻な悩みであれば、専門家を訪ねてカウンセリングを受けてみるのも解決につながるかもしれません。

次回は、ストレスの原因に対処する方法の3つ目「認知療法」について解説していきます。次回もお楽しみに!

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目次

①原因と症状を知ろう-概観
②「ストレッサー」の意味と種類
③考え方が原因「一次評価」とは
④対処行動を考える「二次評価」
⑤対処方法「コーピングスキル」
⑥種類!短期・長期のストレス反応
⑦ストレス診断とチェック!
⑧問題解決型コーピング
⑨情動焦点型コーピング
⑩症状の原因「認知のゆがみ」
⑪ソーシャルサポートを得よう
⑫身体的コーピング
⑬気晴らし型コーピング

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
Feshback,S. 1955 The drive-reducing function of fantasy behavior. Journal of Abnormal and Social Psychology. 50, 3-11藤野 雄教・桂川 泰典・菅野 純 2012 朗読によるカタルシス効果 日本教育心理学会総会発表論文集 第54回総会発表論文集 649.
飯久保 百合子 2005 朗読による心理療法的効果の可能性 山梨英和大学心理臨床センター紀要 ([1]), 14-26.
松浦 元貴 2015 スポーツ観戦によるカタルシス効果 高知工科大学 1-7.
寺田 治史 コミュニケーション能力を育てる粘土対話法 : 学級カウンセリングの技法開発III 日本教育心理学会総会発表論文集 第48回総会発表論文集 68.