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自己嫌悪を改善する心理学「アイデンティティの確立」⑥

自分が嫌いを改善する心理学「アイデンティティの確立」⑥

コラム①では、自分が嫌いについて概念していきました。コラム②からは、対処法について解説していきます。少しおさらいすると、「①リフレーミング」「②アイデンティティの確立」「③ソーシャルサポート」の3つでしたね。

今回は、自分が嫌いの対処法「①リフレーミング」について解説していきます。

イラスト:アイディンティティを確立している人

アイデンティティとは?

「自分が嫌い」を改善するには「アイデンティティの確立と拡散」を理解すると効果的です。アイデンティティとはどこかで耳にしたことがある言葉だと思います。まずは2つの用語を解説します。

・アイデンティティ確立

アイデンティティ確立とは、エリクソンが提唱しました。簡単に言いますと「自分の生き方が明確である」「私は〇〇という個性を発揮している」という感覚が持てるようになることです。言い換えると、自分なりの価値観や生き方を確立することです。

・アイデンティティ拡散

反対に、アイデンティティを確立できないことをアイデンティティ拡散と言います。例えば、「自分がわからない」「個性を発揮できない」という状態です。アイデンティティ拡散になると、自分に自信が持てず、自分が嫌いになりやすくなると考えられます。

イラスト:自分に自信がなく、アイデンティティ拡散状態の人

このことは研究でも実証されています。

中間ら(2015)は、アイデンティティ発達の様相をとらえる尺度を作成した際に、453名の大学生を対象に調査を行いました。その中で、自尊感情のグループごとの比較を行っています。自尊感情とは、平たく言うと「自分のことを価値があると思う」ことで、自分が嫌いとはほぼ対義語にあたる言葉です。群比較の結果、アイデンティティ達成群は、他の群に比べて有意に高い結果を示しました。

棒グラフにて、自尊感情の高さが示されています。グラフが高く、値が大きいほど、自分が嫌いな気持ちが少なく健康的であることを示しています以上から自己嫌悪には、アイデンティティが確立できているかどうかは重要な問題であると考えられます。

ではアイデンティティはどのように確立していけばいいのでしょうか?今回は私のカウンセリングの事例をご紹介します。

原田さんの事例

ある日カウンセリングルームに、原田さん(仮名)という方がいました。20代の男性でした。大学卒業が差し迫るなか、就職先が決まらないという状況でカウンセリングに来室されました。原田さんもだいぶ自分が嫌いな気持ちが強かったようです。

「自分はスキルが低い」
「誰にも必要とされない」
「自分のことが嫌い」

としきりにお話しされていました。かなり落ち込まれていて、私もどこから取り掛かってよいかわからず、最初はただ話しを聞いていました。

話を聞いていくと、自分が嫌いの原因は、
・周りと比較しずきて自分を見失っている
・「普通」であることに執着する
・自分の強みは一切ないと考える

ことにあると考えられました。つまりアイデンティティの拡散の問題です。原田さんには、原田さんなりの生き方があります。周囲の評価に振り回されるのではなく、ご自身なりの価値観を見つけた方が原田さんも今後の生活が送りやすいのではないかと私は思いました。

そこで私は、原田さんにアイデンティティを形成してもらうことをテーマに据え、カウンセリングを進めていきました。

具体的には、ご自身の人生を振り返り、ご自身なりの価値観をある程度作ってもらうことを目標としました。コラム1でお話しした通り、自分自身の振り返りをしてもらうべく、いくつかの質問をしながらカウンセリングを進めていきました。次第に原田さんは、

「会社の知名度や将来性ばかりにとらわれていた」
と話し始めました。さらに、これまで楽しかったことを振り返ると、

「モノづくりが楽しい」
「お菓子作りが好き」

イラスト:好きなことが見つかり、アイデンティティを形成できた人

といったように考え方に変化が現れたようでした。その後、原田さんはスイーツ職人となって働いておられます。仕事を楽しまれ、毎日イキイキと生活されておられるようです。原田さんのように、自分の価値観や軸を持つことができると、周囲の評価に左右されず自分が嫌いな気持ちも軽減していくことができます。

アイデンティティ形成

それでは、みなさんも練習問題に取り組んでみましょう。ここからみなさんにアイデンティティ形成のために、いくつか質問をします。これは私が原田さんにお尋ねした質問の一部です。みなさんも回答してみてください。参考に原田さんの答えも載せておきますね。アイデンティティを確立させることは簡単ではないですが、少しでもヒントになると嬉しいです。

質問①
みなさんが今までの人生で幸せ・充実感を感じたことはどういったことでしょうか?「幼少期」「学生時代」「最近」と時期を分けて考えてみましょう。

幼少期

学生時代

最近

 

解答例(原田さんの場合)
幼少期
 →夏休みの自由研究で優秀賞を取った、甘いお菓子を食べている時
学生の時
 →あまり上手ではなかったが、野球部でバッティングだけが得意だった。毎日練習して試合に出ることができた。文化祭でクラスメイトと一緒に、出し物を考え・作り上げたこと。
 最近
 →お客さんに自分のお菓子を喜んで食べてもらえること

 

質問②
みなさんがこれまでの人生で、自分を褒めても良いと思えることはどんなことでしょうか?「幼少期」「学生時代」「最近」と時期を分けて考えてみましょう。

幼少期

学生時代

最近

 

解答例(原田さんの場合)
幼少時
 →家事の手伝いをしていたこと。自作のお菓子を食べたおじさんが喜んでくれた。
学生の時
 →毎日夜まで練習したこと・少しずつ勉強を積み重ねて大学に合格したこと
最近
 →アルバイト先で、新メニューを考案した

 

質問③
ここまで挙げていただいた体験を、将来につなげるためにはどうしたら良いでしょうか?


 

解答例(原田さんの場合)

・お菓子作りに関わる職業につけばよいのではないか
・自分の作ったお菓子で誰かが喜んでもらえると嬉しいと思う
・お菓子は作るのも食べるのも、好きなので身近に感じられるといいな

自己嫌悪に陥らない

今回は、アイデンティティの確立について解説してきました。いかがでしたでしょうか。自分の価値観を持つことは、アイデンティティ形成の作業の中で大部分を占めます。事例で紹介した原田さんのように、「誰かと比較したり・他の人や周りの価値観に振り回されずに自分らしい」生き方ができるようになると自分が嫌いな感情も減っていくでしょう。

次回は、自分が嫌いの対処法「ソーシャルサポート」について解説していきます。

★価値観を確立して、自分が嫌いから抜けだそう

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目次

①自己嫌悪-概観
②心理学的な意味・定義
③相手も嫌いになってしまう
④問題意識が芽生える
⑤リフレーミングとは
⑥やりたいことに集中
⑦褒め褒め君を探そう
⑧自己嫌悪診断でチェック!

 

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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