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心からコミュ力を改善する

コミュ力を鍛える「心理的な健康」④

コラム①では、コミュ力について概観していきました。今回からは具体的に高め方について解説していきます。軽くおさらいすると、「①傾聴力」「②発話力」「③心理的な健康」「④交互作用を知る」の4つでしたね。

今回は「③心理的な健康」について解説していきます。

認知行動療法とコミュ力

コミュ力を高めるためには、不安や緊張を和らげる必要があります。どんなに会話テクニックを身に付けても、それを本番やプレッシャーのかかる場面で使えなければ意味がありません。

そこで、「自分は嫌われているに違いない」など考え方を改めて、メンタルへルスを改善していく必要があります。

認知行動療法は、「認知(考え方)の歪み」を修正することで症状の改善を目指す療法です。

1960年代アメリカの精神科医アーロン・T・ベック氏が提唱した認知療法に由来しており、1980年代イギリスのクラークらが認知療法に行動療法を組み合わせ生み出されました。

例えば、
コミュニケーションがうまくいかない場面では、

・相手に自分は嫌われた…
・相手に不快な思いをさせた…

などネガティブな考え方に悩まされることがあります。

1950年ころに、この考え方(認知)がコミュニケーション能力に大きな影響を与えることがわかり、認知療法では「考え方(認知)を変える」ことで、うつ病などの精神疾患の治療を行い世界的に知られることとなりました。そして、より効果のある療法として研究が進み、20年ほど歳月をかけ認知行動療法が確立されました。認知行動療法はコミュニケーション能力に影響する考え方を捉え直す方法認知行動療法は、コミュニケーション能力に大きな影響を与える考え方(認知)を見つめなおすことで、ストレスを軽減しコミュニケーションでの問題に冷静な対処ができるよう手助けする療法です。

精神疾患の治療はもちろん再発予防に効果があることから、主に精神医療の現場で用いられてきましたが、最近は学校での生徒指導・企業での社員研修など、コミュニケーション能力が必要とされる様々な場面でも用いられるようになっています。

認知行動療法をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・自動思考とは何か
・コミュ力とゆがみ
・2つのトレーニング法
コミュニケーション能力-心理①認知行動療法とは何か

アサーティブとコミュ力

アサーションは、自分と相手を大切にする表現スキルです。

アサーション(assertion)の意味が「断言」「断定」「主張」のため、強い自己主張をイメージするかもしれませんが、アサーションは、自分も相手も大切にする自己表現です。自分の意見を相手に押し付けるような表現ではありません。

・コミュニケーション能力を伸ばすスキル
現在アサーションは、学校や企業でのコミュニケーション能力を伸ばすための研修で使われることが増えています。

教育現場では、いじめの問題に対処するためのコミュニケーションスキルとして、企業研修では、パワハラ、セクハラへの対処、職場での鬱(うつ)などに効果を発揮します。

そして、友人関係や親子、夫婦、地域での人付き合いなど身近な対人関係で必要となるコミュニケーション能力にもアサーションのスキルは活かすことができます。アサーションはコミュニケーション能力に欠かせないスキル

アサーションをより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・アサーションの歴史
・3つの自己表現タイプ
・練習問題で習得しよう
コミュニケーション能力‐心理②アサーティブコミュニケーション

対人不安の改善

・消極的⇒積極的完璧主義
対人関係で「失敗をしてはいけない…」と思うことはだれしもあります。しかし、完璧を求めるレベルまで強い場合、対人不安を引き起こす原因となることがわかっています。

完璧主義は大きく分けて2種類あります。

消極的完璧主義
「恥をかいてはいけない」「失敗をしてはいけない」など失敗を恐れる完璧主義です。

積極的完璧主義
「絶対笑顔で話をする」「必ず会話を盛り上げる」など高い目標をもつ完璧主義です。

どちらもコミュ力で極端な考え方をしていますが、消極的な完璧主義が対人不安になる傾向があります。

ここで、齋藤(2009)が行った調査をご紹介しましょう。齋藤は、東京都の大学生474名に、完璧主義と心理的な影響について調査を行いました。

2つの完璧主義からコミュニケーション能力を解説しています失敗過敏完璧主義(消極的な完璧主義)の場合、「集団に溶け込めない」「人間関係で当惑」する傾向があることがわかります。そして、高目標完璧主義(積極的な完璧主義)の場合、これらの傾向はみられず幸福感が高くなっているのがわかります。

このように、消極的な完璧主義は、マイナスの感情が過度なプレシャーになり、さらに不安を強めてしまうのです。

また、失敗など消極的なイメージは実際の結果にもマイナスを与えてしまいます。これは「ゴーレム効果」と言われ、ありもしない予言を信じることで、本当に実現しやすくなるのです。

対人不安の改善をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・対人不安とコミュ力
・ネガティブ⇒ポジティブへ注目
・公的⇒私的自己意識への転換
コミュニケーション能力‐心理③対人不安の軽減

コミュ力と自己肯定感

自己肯定感とは、「自分の存在を積極的に認めること」です。自己肯定感が低いと、

・他人に意見が言えない
・精神的に不安定になる
・人の言葉を素直に受け入れることができない

など、コミュニケーションで様々な問題が起こります。

自己肯定感は、自分を大切な存在・自分はかけがえのない存在と考えることが土台となります。そのため、自己肯定感が持てない(=自分の存在を認められないため)と「自分なんて、人と話す価値も無い」という気持ちのままコミュニケーションをすることになります。

これは、他人からは謙虚にみえても本人にとっては、とてもつらい状況のため、コミュニケーションで問題が起きたり、コミュニケーションそのものに消極的になってしまいます。

・自己肯定感を下げる自己嫌悪とは
自己肯定感が持てないと、コミュニケーション能力を伸ばす機会を逃してしまうのはもちろん、人付き合いがうまくできない自分のことが嫌になってしまい自己嫌悪に陥ることもあります。

自己嫌悪の代表的な気持ちは

・周りと比べて能力が低いと思う
・自分の見た目が嫌い
・こんな自分はダメだと思う

などです。失敗や失望からこの気持ちが強くなると、自己嫌悪の症状がひどくなりメンタルヘルスにもマイナスの影響を与えてしまうこともあります。また、自己肯定感を更に下げてしまう要因となるため、極端な考え方には注意が必要です。

自己嫌悪からコミュニケーション能力を考える

自己肯定感の高め方をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・自己肯定感が形成される時期
・コミュ力につながる高め方3つ
コミュニケーション能力‐心理④自己肯定感の持ち方

信頼関係の築き方

私たち人間は社会的動物といわれています。先祖の時代から、コミュニケーション能力を用いて互いを信頼関係で結びつけることで幸福な社会を形成してきました。また、心理学のさまざまな研究では「相手を信頼する」傾向がある人の方が、メンタルヘルスが良好なことがわかっています。

このように「信頼する」習慣がないと、人間関係が崩れてしまったり、良い対人関係でのリスクが高くなります。相手を信頼する習慣は、コミュニケーション能力には欠かせない要素といえます。信頼関係を築いてコミュニケーション能力を伸ばすコツを解説

・安心と信頼の違い?
信頼関係の視点から、コミュニケーション能力を伸ばすために、まずは「安心」と「信頼」の違いを知りましょう。

安心
しっかりとした根拠があり、お互いを信じる
信頼
しっかりとした根拠がなくとも、お互いを信じる

ポイントは「あり」「なくとも」です。安心には根拠があり、信頼は根拠がなくても相手をなるべく信用しようとする行為です。

例えば、
恋愛関係で考えてみましょう。

安心
浮気をしていないか心配なのでメールを確認した。異性とのやりとりはなかった(根拠がある)から、信じられる

信頼
浮気をしていないか心配だが確認しなくても(根拠はなくても)、私は相手を信じられる

いかがですか。安心は根拠に基づくため、壊れやすい人間関係になりがちです。信じる気持ちを大切にしている信頼は、人間関係を強固なものにしてくれます。

実は、人間は自分が信頼されると、信頼してくれた人を信頼する習性があります。信頼することで、信頼関係を強くしていけるのです。

信頼関係の築き方をより深く知りたい方は下記をご覧ください。
・類似性とは?
・外見的魅力の重要性
・自己開示が大切
コミュニケーション能力‐心理⑤信頼関係の築き方

コミュ力を内側から改善!

今回は、コミュ力を高める「心理的な健康」について解説していきました。会話術ももちろん大切ですが、それと同じくらいコミュニケーションは心の在り方に左右されます。相手への不信感や緊張などを少しでも和らげることで、自然とコミュ力も向上していきますよ。

★コミュ力を心の安定から高めていこう!

次のコラムへ進むボタンはもう少し下にあります。だけでなく心理の専門家の講義を受けてみたい!という方は下のお知らせをクリックして頂けると幸いです。私たちが講義をしている講座となります。

社会人講座

目次

①コミュ力を上げる方法
②「傾聴力」を向上させよう
③「発話力」の鍛え方
④「心理的な健康」とは

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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出典・参考文献
・自己志向的完全主義の特徴 : 精神的不健康に関する諸特
性との関連から 2009 齋藤, 路子; 今野, 裕之; 沢崎, 達夫
対人社会心理学研究. 9 P.91-P.100