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人間嫌いと愛着障害の問題③

人間嫌いと愛着障害の問題③

人間嫌いな性格は今の自分に原因があると考えがちですが、幼少期の体験がベースになっていることがあります。幼いころにどれだけ愛情をもらったかによって人生を通してコミュニケーションスタイルに影響が出てきます。

愛着障害とは何か

愛着について不安定さが大きくなると「愛着障害」と呼ばれることがあります。詳しく定義すると

「母親をはじめとする養育者との間で、幼少期に安定した愛着を深める行動が断たれた事で引き起こされる、対人面や情緒面での問題症状」

とされます。精神科などで用いられる世界保健機関(WHO)が定める「ICD-10」の診断基準において診断基準が定義されています。簡単に要約すると

・5歳以前の発症
・対人関係の不安定さ
・感情の移り変わりが激しい
・他者とつながりを持とうとしない
 もしくは過剰に愛情を求める

などが挙げられます。診断基準は子どもを指していますが、大人になっても症状が続くことがあります。この症状は、幼児期の母子関係の不健康さから生じると言われており、自己肯定感の欠如、基本的信頼感の欠如など、人生を通して影響するとされています。人間嫌いは愛着障害がベースになっていることが良くあります。

愛着障害は人生を通して影響する

・対人不安への影響
このように愛着障害は、幼少期の母子関係によって左右されながら、様々なタイプにわかれています。では実際、問題を抱えるとどのような影響が発生するのでしょうか。

具体的に関連する研究を報告しておきます。丹羽(2005)は、大学1年生628名を対象に、「大学入学時の対人関係不安と愛着不安」について調査を実施しました。

具体的には、
・愛着不安高い群
→親などとの重要な他者と情緒的に支えられていいない愛着不安の高い群

・愛着不安低い群
→他者から情緒的に支えられてる愛着不安の低い群

に分け、それぞれ大学にうまくなじめているかを調査しました。その結果は以下のような特徴があることがわかりました。

対人不安と愛着(丹羽(2005)の研究の一部を掲載)

①入学時に不安が大きい
愛着不安高い群のほうが低い群より対人不安が強い。愛着不安がある人は、入学時に友達ができるか?という不安が強く、愛着不安が少ない方は、友達ができて上手く馴染めるという感覚を持っていると考えられそうです。あい

②3か月後も不安の大きさは継続
どちらも対人関係不安は下がるが、愛着不安が高い群は高い対人関係不安を示しています。得点としては3ヶ月経過後で、低い群の入学時期の得点にようやく近づいています。

大学という新しい環境で、愛着不安の低い人の方が、友達をスムーズに作って慣れるスピードが早いと解釈できるのです。このように、愛着は実際に社会適応ベースになっていると考えられます。人間嫌いにも影響を及ぼしていると考えれます。*今回は論文の一部を抜粋し加工しています。詳しくは出典をご確認ください。

・恋愛への影響
異性関係と愛着との関連性を調査した大坊ら(2003)の研究によると、どのような愛着スタイルを持っているかによって、恋愛への印象も違ってくることがわかっています。この研究では、大学生の男女449名に「愛着スタイル」「恋愛イメージ」を測るアンケートに答えてもらいました。

まず「愛着スタイル」テストの結果により、『安定型』と『回避型』『アンビバレント型』の3種類にわけ、それぞれのタイプが恋愛に対して、どのようなイメージを持つ傾向にあるか、「恋愛イメージ」テストの結果を調査しました。

分析の結果、『安定型』は、恋愛に対して「相手との信頼関係」や「自身の成長」など、前向きなイメージを持ちやすいことがわかりました(※金政・大坊ら(2003)の論文を参考に作成)。

愛着障害 人間関係

そして、愛着が不安定で人間関係を避ける傾向がある『回避型』は、恋愛はアクセサリーのような「刹那的」であり、信頼や成長とは無縁だ、と考えやすいことが報告されました。

愛着障害 克服

この意味で愛着形成は恋愛の安定さへも関わると言えそうです。

大人の愛着スタイル

先ほど愛着スタイルについて少し触れましたが、愛着スタイルは一般的には4つに分かれています。大人の場合は、「見捨てられ不安」と「関係構築回避」に着目します(中尾,加藤2004を参考に記述)。

「見捨てられ不安型」
「自分は愛されているか」「見捨てられるのではないか」「拒絶されないか」といった感情を意味します。例えば恋人を束縛するという行動の背景には、こうした不安感の強さに何とか対処しようとして、そばにいてもらうように恋人に働きかけているという行動をとりやすくなります。相手が自分を満たしてくれないと人間嫌いになります。

「関係構築回避」
他者との関係に情緒的な距離を置き、なんでも自分一人でやろうとします。簡単にいうと、当たり障りなく人と付き合い、心を開かない傾向があると回避型となります。うわべの関係が多い人は人間嫌いの根底に回避型のスタイルが隠れているかもしれません。

愛着障害 タイプ

それぞれの特徴は以下のようになります。

安定型
不安が低く、回避もしていない、一番セーフティなタイプです。困った時は悩みを外に出したり、相談をしたりなど他者を信頼して関わることができるし、親密な関係も構築できます。自分自身も安定していると言えます。おそらく充実した対人関係を持てていると言えるでしょう。

見捨てられ不安型
人と関わることには積極的なのですが、見捨てられ不安を持ちやすい傾向があります。親密でありたいと強く願い、しがみついてしまいます。他者からどう評価されるかを考えこみ、拒否されたり、見捨てられることを過剰に意識してしまいます。自分自身もエネルギーを消耗しますし、相手にとっても負担に感じられることがしばしばあります。

関係構築回避型
不安は低く、他者と距離を置くタイプの人たちです。基本的に他人を信用しておらず、感情表現を抑えて自分を律しようとしています。日常生活では、比較的適応することもありますが、親密な関係をプライベートで持つという点に課題を持っていることが多いです。

引きこもり型
不安が高く、他者との関係を回避するタイプの人たちです。「他人は危険な存在だ」「きっと嫌われるに違いない」「どうせ私を見捨てて去っていくだろう」といったことを予期して、親密な関係を回避します。トラウマなどの傷つき体験を抱えた人などに良く見られます。あまり親しい関係を持てずに、対人関係が、ストレスとなってしまうことが多いでしょう。

なお愛着障害については愛着障害コラムで詳しく解説しています。より深く学習したい方はご覧ください。先に進みたい方はページ下部のリンクで次に進んでいきましょう。

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目次

①克服方法を解説
②心理学研究
③愛着障害の問題
④周りの目を気にしない
⑤積極的完璧主義
⑥見捨てられ不安とは

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
・中尾達真・加藤和生(2004)” 一般他者” を想定した愛着スタイル尺度の信頼性と妥当性の検討 九州大学心理学研究 5 19-27
・丹羽智美(2005) 青年期における親への愛着と環境移行期における適応過程 パーソナリティ研究 13 156-169
・金政祐司・大坊郁夫(2003)青年期の愛着スタイルが親密な異性関係に及ぼす影響