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愛情表現不足の問題「愛着不安」

愛情表現不足の問題「愛着不安」心理・改善方法②

コラム①では、愛情表現が不足する問題と対処法をご紹介しました。今回は、愛情表現不足による問題のひとつ「愛着不安」について解説していきます。愛着障害、愛着不安の理解を深めて、愛情表現の苦手意識を緩和していきましょう。

愛着研究の歴史

愛着とは「安心感」「大好き」といった落ち着きをつくる情緒的な感情です。愛着は、母親に対して子供が甘え「抱っこをする」「温かい声をかける」「スキンシップをしっかりする」など継続的な愛情表現をするなかで、健やかに形成されます。

この情緒的な感情「愛着」については、いろいろな研究が行われていますが、もともとは精神科医・精神分析家 ボウルビィが愛着理論として提唱したのが始まりです。

・ボウルビィの愛着理論

ボウルビィの愛着理論は、戦争で被災した孤児と関わる中で、母性的な養育と心身の健康的な発達が関係していることに気づきました。

「泣いたときにあやしてもらう」「適切なタイミングでミルクをあげる」といった、母性的な養育体験が欠如した子どもは、

・気持ちをコントロールできない
・気持ちを適切に表現できない

このような情緒面の問題が現れる傾向がありました。また成長が遅い、体調不良といった問題も見られることが多かったようです。愛着の問題はその後、世界中で広がり、現在では愛着障害という精神疾患の1つとして挙げられるようになったのです。

愛着とは愛着は、適切に助けを求め、同時に依存しすぎない能力に近い事が分かっています。言い換えると、

”他人との距離感を大事にしながら、甘えるときは甘えられる感覚”

愛着はこのような感覚に近いため「愛着は人間関係を築くベース」になります。

乳児期に安定した愛着が形成できれば、安心感や信頼感をもって良好な対人関係を築けます。一方で愛着形成に失敗すると、相手に依存をしたり、逆にすべてを自分で抱え込み、一切他人を信用しないなど、生涯にわたり影響すると言われています。

・Harlowの愛着形成‐動物実験

ここで愛着に関する有名なHarlowの動物実験を紹介します。

Harlowはサルを対象に心理的な実験を行いました。

手順は、
①アカゲザルの赤ん坊を母親と引き離して生活させます。
ワイヤー母布の母の2体用意してミルクを入れた哺乳瓶を取り付けます。

昔こういったひどい実験が結構行われていました(^^;

愛着障害の原因

ワイヤー母に育てられたサルは、
布の母に比べて好奇心が育たず、生き残ることが困難でした。

布の母に育てられたサルは、
好奇心が豊かに育ったと言われています。ただし、大人になってから愛着障害に近い症状が見られたそうです。そこで、布の母だけでなく仲間との交流をする機会を増やしたところ、社会性がずいぶん改善されました。

この実験の結果から、霊長類のように社会をつくる動物は生まれた時から外界との心地よい接触を求め、それが生育上重要な役割を果たすということが示唆されました。

つまり私たち人間は、乳児期に「抱っこをする」「あたたかい声をかける」「スキンシップをしっかりする」という愛情表現や「友達同士で遊ぶ」といった習慣をしっかりする必要があるのです。

「愛情表現が苦手…」の原因

幼児期の愛情表現不足が原因で、愛着が健やかに築けないと「自分は見捨てられるのではないか」「どうぜまた一人になってしまう」など、愛着不安が強くなる傾向があります。

愛着不安が強くなる根底には、次のような思考や行動があるためです。

・良い子でなければだめだという思い込み
・人を信頼することに時間がかかる
・いつも自分に自信がない

このような思考があると、対人関係で愛情表現が上手くできず、良好な人間関係を築くことができません。「気持ちの伝え方が分からない」「愛情表現の言葉が分からない」など、愛情表現に苦手意識がある場合は、愛着不安の傾向が強いかもしれませんね。

・愛情表現の積み重ねで改善

健やかな愛着形成の基本は親子関係での愛情表現です。

Esposito(2013)の研究では、生後6か月の子どもを持つ母親13組を対象に母親が赤ちゃんを腕に抱いて約30秒ごとに「座る・立って歩く」という動作を繰り返し心拍数を測定しました。その結果、赤ちゃんが泣いたときに抱いて5分間歩くとリラックスすることが示されています。

「抱っこする」「温かい言葉をかける」など愛情表現を心がけてみましょう。また大人になってからでも、愛情表現を重ねる事で、愛着をある程度回復することができますから、意識してみてくださいね。

 

私たち人間は、親子関係での愛情表現で「わがままを聞いてもらった」「泣いたときにあやしてもらった」などの体験をします。このような体験を通して、幼児期に親子の間での「愛着」が育まれることは、子どもにとって心の支えとなります。つまり、愛情表現を積み重ねることで、愛着不安を改善することができ、対人関係での愛情表現の苦手も克服できるのです。

まとめ

幼児期の愛情表現の不足が、愛着障害や愛着不安を招くことがお分かりいただけましたか。

愛情表現の不足は、生涯に渡って影響を及ぼすことが分かっています。「抱っこする」「温かい言葉をかける」日ごろから愛情表現を心がけてみてくださいね。

★愛着不安の理解を深めて、適切な愛情表現を増やしていこう!

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
・Bowlby, J. (1969), Attachment and loss, Vol. 1: Attachment. New York: Basic Books
・Bowlby, J. (1973). Attachment and loss: Vol. II: Separation, anxiety and anger. New York: Basic Books.
・INGE BRETHERTON(1992) THE ORIGINS OF ATTACHMENT THEORY:JOHN BOWLBY AND MARY AINSWORTH  Developmental Psychology , 28, 759-775.
・Esposito, G., Yoshida, S., Ohnishi, R., Tsuneoka, Y., del Carmen Rostagno, M., Yokota, S., … & Venuti, P. (2013). Infant calming responses during maternal carrying in humans and mice. Current Biology23(9), 739-745.