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引っ込み思案になる恐怖や緊張を緩和する「マインドフルネス」を解説

引っ込み思案は「マインドフルネス」で客観視しよう④

コラム③では、引っ込み思案が強い原因の1つ「行動療法」の対処法として系統的脱感作法をご紹介しました。スモールステップで着実に!引っ込み思案を克服していきましょう!

今回は原因の1つである「人が怖い気持ちに支配される」を解決するためのコラムです。引っ込み思案が強いことへは「マインドフルネス」という技法が効果的です。成功例・思考のポイント・練習問題を交えながら紹介していきます。

マインドフルネスで恐怖心を軽減

心理学では、マインドフルネスについてさまざまな研究がなされています。その中でも、マインドフルネスと恐怖の関係について室井(2015)は、以下のような報告をしています。

恐怖心を軽減して引っこみ思案を克服する

上の図では、マインドフルネスと対人恐怖心性は負の相関があることを表しています。負の相関とは、片方が上がると、片方は下がるということを意味します。

ここでは、マインドフルネスが上がると、対人恐怖心性は下がるということを意味しています。

つまり、うまくマインドフルネスを習得すると、対人恐怖から生じる引っ込み思案を克服できるということです。では、実際に引っ込み思案を克服するマインドフルネスとはどのような技法なのでしょうか?

恐怖による引っ込み思案を克服する方法

脱中心化で引っ込み思案を克服

マインドフルネスとは、東洋の瞑想で用いられていた表現で、以下のように定義づけされています。

「今ここでの経験に、評価や判断を加えることなく、能動的に注意を向けること(Kabat-Zinn, 1994)」

すなわち、「すべてのことを受け入れ、それをあるがままにしておく」ということです。(北川, 2013)引っ込み思案な思考や感情を抑え込もうとせずに、そのまま受け入れることが大切なのです。

マインドフルネスを応用した心理療法は、世界的に不安障害やうつ病に対して効果があることが示されています(Hofmann et al., 2010)。それでは、マインドフルネスにおける重要な概念をいくつかご紹介していきます。

キーワード① 脱中心化

マインドフルネスの中でもかなり重要視されるのが「脱中心化」という概念です。脱中心化とは、

「思考や感情を、自分自身や現実を直接反映したものとして体験したり、解釈するのではなく、それらを心の中で生じた一時的な出来事として捉えること」

と定義されています(Teasdale et al., 2002; 田中ら(2013)より)。これは、引っ込み思案の考えや感情に行動を左右されないと言うことです。

キーワード② 自動操縦

脱中心化と反対の概念として「自動操縦」というものがあります。「自動操縦」とは、感情や習慣に囚われて意図せずに行動してしまう状態です。例えば、新しく入ったサークルで不安に押しつぶされて人に話しかけることができないような状態です。

引っ込み思案が強く出ている時は、他人に対する不安や恐怖に自動操縦されて、必要な行動が取りづらくなってしまいます。

キーワード③ 感情の客観視

引っ込み思案な考えに自動操縦されている時は、脱中心化して抜け出すことができれば、落ち着いて初対面の人に話しかけるなどができるようになります。それでは具体的にどのように、自動操縦から脱中心化していくのでしょうか?

マインドフルネスに関連した研究として、田中ら(2013)は、336名の大学生にアンケート調査を行い、マインドフルネス傾向や脱中心化を促進する要因を探りました。

結果として、「注意の制御=必要に応じて、集中したり、注意を切り替えたりする能力」が重要であることが示されました。

つまり、自動操縦から脱中心化するには、感情を客観視する集中力が大切だということです。

キャベツの千切りでマインドフルネス!

具体例を挙げてきましょう。
あなたはレストランでアルバイトとして働いています。
オーダーミスがあり、お客様を長い時間待たせてしまっています。
強面の店長はもうカンカン。
「あと3分で丸々1つキャベツの千切りをしなさい!!!」
と、プレッシャーとするどい視線を浴びている状態です。

この時、緊張や焦りに囚われて、自動操縦されてしまったらどうでしょう。「急げ、急げ急げ、怒られる!」!と不安にさなまれなが切るため、いっぽ間違えれば指を切ってしまう上に、クオリティーの低い仕上りになりそうですね。

一方で、しっかりと脱中心化していれば、「今、焦っているな」と客観的に自分を観察しつつ、「一定のリズムで切ろう、1、2、1,2」と感情に囚われず作業に集中することができます。このように、不安や恐怖の感情を観察しながら、今すべきことに注意を向け続けるのです。

引っ込み思案もこの脱中心化で克服することができます。例えばサークルで新しく入ったサークルで自己紹介するとしましょう。知らない人ばかりで緊張がピークに達しています。この時、考え方次第で以下のような違いが表れます。

自動操縦⇒失敗してはいけない!あがっちゃいけない・・・

脱中心化⇒あがっているな、1つ1つ丁寧に話そう

何かを「禁止する」考え方よりも、「~しよう!」といった行動に注意を向ける考え方にすることで、引っ込み思案による焦りや緊張にとらわれなくなります。その結果、新しく入ったサークルで1人も知り合いがいない状況でも、スムーズに自己紹介することができるようになるのです。

マインドフルネスに本格的に取り組むとなると、2~3週間のトレーニングが必要なのですが、当コラムでは入門として、シンプルなやり方を2パターンご紹介します。

パターン1:呼吸と思考を観察するワーク

では、先程の例を参考に、脱中心化を行っていきましょう!以下のステップで、引っ込み思案な感情に囚われない心理状態を作っていきます。

①不安の確認
まずは自分が今どんな不安を持っているか?確認しましょう。

②柔らかいイスに腰掛ける
呼吸に集中しやすくする環境を作っていきます。明るすぎず、静かな空間で、座り心地の良いイスに腰掛けましょう。固めの椅子よりは、クッションの入った柔らかい椅子の方がいいでしょう。

また、ふかふかなベッドの上に座るのも良いですし、布団や座布団の上にリラックスした姿勢で座るのも良いでしょう。
*物理的にできない状況であれば、立ったままでも可能

③呼吸に集中する
息を吸って吐くことだけに1分ほど意識を集中させましょう。吸って、吐いてをいつも通りのリズムで行います。空気が肺に入って出て行く感覚をじっくり味わってください。
*時間がない場合は10秒でもOK

④浮かんできた考えを受け入れる
引っ込み思案な考え、不安、ネガティブな思考などが浮かんできたら、それらをじっくり「観察」してみましょう。

そうした感情や考えが現れることはごく自然なことだと考え、心に浮かんできたことを客観的にそのままに受け止める気持ちが大切です。善悪の評価なしに考えを受け入れていきましょう。このように「呼吸」と「観察」をベースに脱中心化します。

⑤観察した状態で行動する(応用)

最終的に、引っ込み思案な考えを観察しながら必要な行動を起こしていきます。「不安や恐怖」に自動操縦された状態で行動するのではなく、「自分は不安や恐怖を抱えている」と認識した上で行動するのです。

パターン2:呼吸と感覚に意識を向けるワーク

1:背筋を伸ばして座って、目を閉じる
正座でも、足を組んでいてもイスに座っていても、自分が楽な座り方で座ってください。ここでは、「背筋が伸びてその他の体の力は抜けている」といった楽な姿勢を見つけてください。

2:呼吸をあるがままに感じる
呼吸をコントロールしないで、体がそうしたいようにさせていきます。そして、呼吸に伴って腹部や胸(体)が膨らんだり縮んだりする感覚に注意を向けて、その感覚の変化に気付きが追いかけていくようにします。

3:湧いてくる雑念や感情に捉われない
マインドフルネスをしていると、引っ込み思案な考えなどさまざまな雑念が浮かんできます。そうした時には「雑念、雑念」と心の中でつぶやいて、考えを切り上げてしまい、「再開します」と唱えて、呼吸に注意を戻します。

4:身体全体で呼吸するようにする
注意する範囲を呼吸から広げていきます。「今の瞬間」の現実を幅広く捉えるようにしていきます。最初は、身体全体で呼吸をするように、吸った息が手足の先まで流れ込んでいくように、吐く息が身体の隅々から流れ出ていくように感じましょう。

5:身体の外にまで注意する範囲を広げていく
自分の周りの空間の隅々に気を配って、そこで気づくことのできる現実の全てを見守るようにしていきましょう。自分を取り巻く部屋(空間)の空気の流れ、温度、広さ、反響などを感じて、さらに外側の空間にも気を配っていきましょう。

6:マインドフルネスを終了する
まぶたの裏に注意を向けて、ゆっくり目を開けていきます。ストレッチをしたり、さすったりして、普段の自分に意識を戻します。

人への不安を軽減して引っ込み思案を克服しよう

恐怖を緩和して引っ込み思案を克服しよう

以上のマインドフルネスの技法を試していかがだったでしょうか?引っ込み思案に支配されると、体は緊張し呼吸も乱れがちになります。マインドフルネスの技法を使うことで、うまく緊張がほぐれ、引っ込み思案な考えも薄れていきます。

具体的な場面としては、
・大事な発表があって、人前に立つ日の前日
・大事な人とのデートで緊張しているとき
・新しい環境に触れる時
・試験などの結果が告知されるとき
・面接をする前日

などなど、引っ込み思案になりがちなときは、マインドフルネスを試してみましょう。次回は引っ込み思案を克服するための4つ目の方法「森田療法」についてご紹介します。次回もお楽しみに。

★マインドフルネスで気持ちを楽にして、恐怖による引っ込み思案を克服しよう

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人間関係講座

*出典・参考文献
原野 明子 1992 引っ込み思案幼児の社会的相互作用の維持に関わる要因 心理学研究 63, 2, 77-84.
室井 希 2015 マインドフルネスと対人恐怖心性との関連性 奈良大学大学院研究年報 20,125-126.
Pope, A. W., McHale, S. M., & Craighead, W. E. 1988 Self-esteem enhancement with children and adolescents. New York : Pergamon Press.
佐藤 正二・佐藤 容子・高山 巌 1988 拒否される引っ込み思案児の社会的スキル 日本教育心理学会総会発表論文集 30, 48.
手銭 俊夫 1999 引っ込み思案の子どもでのSST(学校におけるスキル教育を考える)  日本教育心理学会総会発表論文集 41, 46.

山下 陽平・窪田 由紀 2014 小学生を対象とした対人関係ゲーム・プログラムの効果の検討 : 引っ込み思案・攻撃性の高い児童への効果の検討 日本教育心理学会総会発表論文集 56,269.