コミュニケーションと心理学的理論⑦~“フレーミング効果”言葉遣いの極意~

フレーミング効果の課題
いきなりですが、以下の問題を読んで、AかBの対策のうちどちらが良いか、選んで下さい。
問題 米国が600人を死亡させると予想される珍しいアジアの疾病の流行に対して、AとBの2つの対策が準備されています。AとBはそれぞれ次のような結果が予測されました。
・Aの対策…200人が救われる。
・Bの対策…3分の1の確率で600人が救われるのに対して、3分の2の確率で誰も救われない。
さて、どちらの対策を選びますか?
この問題文は、Tverskyらが1981年に行った研究で使用されたものです。研究に参加した回答者の7割が「A」の対策を選んだそうです。
では、次のCとDの対策だったら、どちらを選びますか?
・Cの対策…400人が死亡する。
・Dの対策…3分の1の確率で誰も死亡しないのに対して、3分の2の確率で600人が死亡する。
どうでしょうか?Tverskyらの研究では「D」を選んだ人が8割いたそうです。お気づきのことと思いますが、AとC、BとDは同じことを言っています。しかし、ちょっとした表現の違いで選択が変わってしまうのです。
ポジティブとネガティブの見せ方で変わる!
こういった、言語表現の違いによって決定が変わってしまうことを心理学では、フレーミング効果と呼んでいます。なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?
一つには、人は利益(ポジティブ)になる問題か損失(ネガティブ)になる問題かを判断してから、選択を行っているという説明があります。Aは「救われる」(ポジティブ)と書かれ、Cは「死亡」(ネガティブ)と書かれています。この表現から利益か損失かを考え、判断を変えてしまうということです。
日常生活でも、この効果を利用したものがあります。例えば、スーパーで、「肉:赤身75%」と「肉:脂身25%」とでは前者が選ばれやすいでしょう。また、手術の成果を「死亡率5%」と説明されるよりも、「生存率95%」と説明されるほうが助かる可能性が高いと思ってしまいます。
つまり、ここまでのことをまとめてみると、「ネガティブなものは少ししかありませんよ」と説明されるよりも、「ポジティブなことの方が多いですよ!」と説明されたほうが選択肢として選ばれやすいということです。このように、言葉の表現一つで選択肢が決まってしまう。人間の心理というものは面白いものですね!
- フレーミング効果は言語表現の違いで決定が変わってしまう
- 人は利益(ポジティブ)か損失(ネガティブ)かで判断する傾向がある!
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