第一次反抗期の時期と対応「2歳,3歳,4歳の子ども編」②
反抗期コラム①では、反抗期には第一次反抗期と第二次反抗期があることを解説してきました。
反抗期コラムの目次は以下の通りです。
コラム1 反抗期はいつまで?時期・対応
コラム2 第一次反抗期,接し方
コラム3 第二次反抗期,接し方
コラム4 反抗期がない原因,影響
今回は心理学的な見地から「第一次反抗期の子どもへの接し方」を紹介します。
このコラムを書いている、筆者の川島は1歳,3歳,5歳の父親です。私自身もまさに今、反抗期の子供と接しています。私の体験談も適度に含めながら解説していきます。
第一次反抗期とは?
第一次反抗期はいつ?
第一次反抗期は、一番最初におとずれる反抗期です。
一般的に第一次反抗期は、2歳から4歳にかけて起こります。早い子どもで1歳半くらいはじまり「魔の2歳児」という言葉ある様に、自己主張の嵐が始まります。
大体の目安ですが2~4歳の前半ぐらいまでは続くと考えると良いでしょう。
第一次反抗期の特徴
・何をするにも否定が増える
「イヤイヤ」と言って否定することが多くなります。例えば、私のケースですとパンを食べたくない、ご飯を食べる!と主張し、ご飯を出すと、ご飯はイヤ!と否定したりします。
・自己主張が強くなる
「自分でやる」と主張することが増えます。心理学の世界では2歳前後に自我が芽生え始めることが分かっています。自我の芽生えと共に、自分の感情や価値観への気づきが明確化され、自分はこうしたい、自分はこう考えているという主張が増えていきます。
・癇癪を起す
自分の主張が通らないと、感情が爆発し、泣きわめくようになります。幼少期は周りへの迷惑を考える余裕はありません。自分の主張が第一なので、要求が通らないと周りの目を気にせず感情的になるのです。
第一次反抗期と成長
第一次反抗期の子どもは、自己主張と自己抑制を学び成長していきます。
子どもは、親に「反抗 ― 依存」を繰り返す中で、成長し自立していくと考えられています。第一次反抗期では、自己主張する気持ちと親に甘えたい気持ちとの葛藤があります。
この矛盾した気持ちを経験することで、子どもは自立に向け成長していくのです。
小高(1998)の研究では、大学生801名(男子大学生379名・女子大学生422名)を対象に「親に対する態度」を調査しました。その結果、親に対する態度(親子関係)には4種類あり、自立までの過程にもなっていると考察されています。
密着した親子(A型)
親を尊敬し服従した親子関係。幼少期の親に依存した状態です。
矛盾した親子(B型)
矛盾や葛藤がある親子関係。第一次反抗期の状態です。
離反的な親子(C型)
親に反発し距離を置いた親子関係。第二次反抗期の状態です。
対等な親子関係(D型)
親を一人の人間として尊敬し感謝もしている親子関係。自立した状態です。
以下に図で表しました。
親子関係の変化が、自立に向けた成長の過程ということがよく分かりますね。
反抗期とリスク
自己焦点型の育児に注意
子どもの反抗的な態度が強い時には、感情に任せた態度をとってしまうことが増えます。例えば、怒る、叩くなど威圧的な態度で親の意図に子どもを強制的に従わせてしまうのです。
Ujiie(1997)は、2歳半の子どもをもつ日本の母親を対象に、子どもが反抗や自己主張を示した時の対応について調査しました。その結果、以下の3つの型があることが分かりました。
・自己焦点型
怒る・突き放す・叩くなど、母親の期待や意図を強制的に従わせる。
・自己・子焦点型
説明・説得など、母親の意図や計画に子どもを従わせるように方向付ける。
・子焦点型
本人が納得いくまでやらせるなど、母親の側が子どもの意図や要求に従う。
多くの母親は、子どもに子焦点型の態度をとりたいと思っています。しかし反抗期の子どもに対しては「自己焦点型」になりやすいのです。
人格形成への影響
反抗的な子どもの態度に適切な対応ができないと、愛着不安が強くなってしまいます。例えば、子どもを無視したり、理不尽な叱り方をすると、信頼関係が築けず愛着不安が生まれてしまいます。
この点、子どもが癇癪を起して、感情をぶつけてきた時には、親が適切なタイミングで関わることが大事です。その都度、抱っこしたり、なだめたり、ダメな時にはダメとしっかり話すことも必要です。このような関りと通して、親子間で信頼関係を作って行くのです。
虐待行動に発展
子育てのストレスが溜まりすぎると、虐待行動に発展する可能性があります。例えば、暴力をふるう、暴言を吐くなど、取り返しのつかない取り返しのつかない行動をとってしまうこともあるのです。
第一次反抗期は「子どもの成長の証」と頭でわかっていても、子どもの反抗的な態度が顕著な時にはイライラしてしまうものです。イライラする気持ちは、心身共に不安定な状態を招き、怒りの感情に発展することもあります。怒りの感情に流されてしまうと、子どもに対して健全なコミュニケーションができなくなってしまうのです。
適応障害になる
子育てによるストレスで、適応障害になる可能性があります。例えば、不眠、体調不良、育児ノイローゼなどの症状がある場合は、注意が必要です。
適応障害は、ある特定の状況や出来事が非常につらく耐えがたく感じられ、気分や行動面に症状が現れる障害です。子育てがストレスの場合は、子どもから離れたり、子育ての負担を軽くすることで症状は次第に改善されます。
一方で症状の改善が見られない場合は、症状が慢性化することもあり専門家によるケアが必要な場合もあります。
第一次反抗期の対応
第一次反抗期への対応法には、以下の6つが挙げられます。
・暖かく見守る
・叱るときは無条件の肯定をセット
・叱るときは理由を必ずいう
・タイムアウト法
・ダブルバインドに注意
・夫婦関係を円満に保つ
・親も余裕を持つ
まずは全体を概観してから気になるリンク先をクリックしてみてください。
暖かく見守る
子どもの癇癪やイヤイヤは、”成長の証”と捉えて、子どもの姿を見守る姿勢をもつことです。
坂上(2002)は、2歳児147名の母親を対象に「子どもの反抗・自己主張に対する母親の考え」を調査しました。自由記述で解答が多かった上位5つが以下グラフです。
多くの母親が、子どもの反抗を「成長の過程」だと理解していることが分かります。また苛立ちを経験し「反抗期はいつか収まる」と考え見守る母親が多いことも読み取れます。
この調査結果から「子どもは見守りながら育てていくのが望ましい」とゆったり考える母親が多い傾向がうかがえます。反抗期はいつか収まる!ゆったりとした気持ちで見守れるといいですね。
叱るときは無条件の肯定をセット
「ダメ!」と伝える時には『肯定-否定-肯定』の無条件の肯定をセットにして伝えます。
自分の言動を否定される子どもは、耳をふさぎたくなるくらい嫌な気持ちになります。ダメな事を伝える時には、柔らかいパンのような無条件の肯定的な言葉をセットにして伝えましょう。叱っている内容が受け入れやすくなります。
例えば、
箸の持ち方
お箸うまくなってきたね!(肯定)
でももう少し先の方を持つと食べやすいよ。(否定)
そうそう!上手上手。(肯定)
そして叱る人は、子どもと信頼関係が既にできている大人が行うことは非常に大切です。
叱るときは理由を必ずいう
「なぜ叱られたのか?」を子どもが分かるよう、叱る時には理由を必ず伝えます。
子どもは叱られた理由が分からないことが多いです。叱られた悔しさや驚き、悲しさは覚えていても、叱られた内容や理由まで記憶しないことも多いです。何度も伝えていることでも、理由をつけて言いましょう。
子育てで忙しい中、何度も言っていると「もういい加減分かってるでしょ!」「めんどくさい…」と思うかもしれませんが、繰り返し伝えることで子どもは覚えていきます。
子どもが納得するまで根気よく理由を付けて伝えていきましょう。
例えば、
子どもが石を投げたとします。
叱り方
石は投げると危ないからやめようね。(否定)
石は固いから当たると痛いでしょ。(理由)
タイムアウト法
子どもが繰り返し良くない行動をする場合は、タイムアウト法が効果的です。
タイムアウト法は、子どもの問題行動を減らすために用いられる行動療法です。好ましくない行動をとった子どもを、その場から一時的に引き離し気持ちを落ち着かせる方法です。
たとえば、友だちを叩いてしまう子どもの場合、今度同じことをしたらタイムアウトする事を事前に伝えます。そして問題行動があった時には、タイムアウトを伝え、友だちから子どもを離し、決められた場所で数分間待たせます。この時、話しかけたり叱ったりはしません。
子どもの気持ちが落ちついたら「何が悪かったか」を一緒に振り替えります。タイムアウトを使うことで、子どもはもちろんママもクールダウンができ心を落ち着けて話ができます。
ダブルバインドに注意
子どもへのダブルバインドに注意しましょう。ダブルバインドとは、他人から矛盾するメッセージを受け取る状況のことです(心理学辞典,2013)。例えば、
「怒らないからなんでも話して」と言ったにもかかわらず、話を聞いてから子どもに怒った
「おもちゃを片付けないと捨てちゃうよ」と言って、子供が片付けないのに、おもちゃを捨てない
このような言動は、子どもを混乱させてしまいます。
ダブルバインドを避けるには、言葉と行動を一致させることが大事です。
例えば、
「おもちゃ片付けないと捨てるよ!」
と嘘をつくのではなく
↓
「おもちゃにつまづいたら
痛いし危ないから片付けようね」
と実際に起こりうることを伝えるようにします。
夫婦関係を円満に保つ
子どもが心穏やかに過ごせるよう、円満な夫婦関係を心がけましょう。
菅原ら(2002)の研究では、1360名の母親を対象に、夫婦関係が子どものメンタルヘルスにどのような影響を与えるかを調査をしました。
その結果が以下の図です。
「父親と母親がお互いに愛情を持っている」場合
家族の雰囲気がよくなり、子どもの抑うつ傾向が低くなることが分かりました。
「母親が父親に愛情を持っている」場合
子どもに対しても暖かく接することができ、その暖かさが子どもの抑うつ傾向を下げることも分かりました。
つまり夫婦関係によって、子どもの精神的な健康が左右されるのです。夫婦喧嘩が多い、夫婦が険悪な状態…という場合は、以下のコラムを参考にしてみてください。
親も余裕を持つ
子育ては8割くらいの力でOK!子どもとは余裕をもって関わるようにします。
子どもの癇癪やイヤイヤに100%の力で向き合うと、体調を崩してしまうこともあります。心理的に安定した状態で子育てをするために、8割くらいの力で関わることを心がけて見ましょう。子どもの反抗的な態度も、上手に受け流しやすくなります。
残りの2割で休憩することも大切です。余裕をもって子どもと関わることで、子どもの急な病気やケガなど、緊急時にも強くなれます。
ある程度怠けてOK!くらい、心に余裕をも子どもと向き合ってみましょう。
動画解説もあります。よかったら参考にしてください。
まとめ・お知らせ
まとめ
第一次反抗期の子どもは言葉での表現がまだ未熟なため、癇癪の原因が分からず頭を悩ませてしまうこともあります。子どもと100%の力で向き合っているとへとへとになってしまうので、適度に休息をとって子どもと関わってみてください。
パパやママの心と体の健康、そして夫婦関係が良好だと、子どもも心穏やかに過ごせます。コラムの対策を参考に、第一次反抗期を上手に乗り越えていきましょう。
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科修士
取材執筆活動など
- AERA 「飲み会での会話術」
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
- TOKYOガルリ テレビ東京出演
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*出典・参考文献
・Ujiie, T. (1997). How do Japanese mothers treat children’s negativism? Journal of Applied Developmental Psychology, 18, p467-483
・坂上裕子(2002)母親は子どもの反抗期をどう受け止めているのか,家庭教育研究所,紀要,24, p121-132
・ファンデンボス,G.R.(2013)APA ,576
・菅原ら(2002)夫婦関係と児童期の子どもの抑うつ傾向との関連より一部改変して掲載教育心理学研究,2002,50,129ー140