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第一次反抗期,幼少期の子どもへの対処法

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第一次反抗期,幼少期の子どもへの対処法

反抗期コラムの目次は以下の通りです。

コラム1 反抗期はいつまで? 時期・対応
コラム2 第一次反抗期,接し方
コラム3 第二次反抗期,接し方
コラム4 反抗期がない原因,影響

反抗期コラム①では、反抗期には第一次反抗期と第二次反抗期があることを解説してきました。今回はコラム2として、「第一次反抗期の子どもへの接し方」を紹介します。

このコラムを書いている筆者の川島は3歳児の父親です。私自身もまさに今、反抗期の子供と接しています。私の体験談も適度に含めながら解説していきます。

反抗期,幼児

第一次反抗期とは

第一次反抗期はいつ

第一次反抗期は、一番最初におとずれる反抗期です。一般的に「魔の2歳児」「悪魔の3歳児」「天使の4歳児」という言葉あるように、第一次反抗期は3歳前後にかけて起こります。もちろん4歳になったかピタッと終わるわけではなく、その後も緩やかに続きます。

第一次反抗期の特徴

・自己主張が強くなる
心理学の世界では、2歳前後に自我が芽生え始めることが分かっています。自我の芽生えと共に、自分の感情や価値観への気づきが明確化され、自分はこうしたい、自分はこう考えているという主張が増えていきます。

・何をするにも否定が増える
「イヤイヤ」と言って否定することが多くなります。私の子供のケースですと「パンを食べたくない、ご飯を食べる!」と主張し、ご飯を出すと「ご飯はイヤ!」と否定したりします。その頑固さたるや、尊敬に値するレベルです。

・癇癪を起す
自分の主張が通らないと、感情が爆発し、泣きわめくようになります
。幼少期は周りへの迷惑を考える余裕はありません。自分の主張が第一なので、要求が通らないと周りの目を気にせず感情的になるのです。

 

第一次反抗期と成長

第一次反抗期の子どもは、「甘えたい気持ち」がある一方で、「自己主張したい」という気持ちを持っています。その葛藤を通して、気持ちをコントロールする練習をして、子どもは自立に向け成長していくのです。

また自己主張を通して、親から「できること」「できないこと」を学び、社会で生きて行くための準備をしていきます。

 

第一次反抗期の特徴

 

反抗期とリスク

反抗期は家庭内で様々なリスクが発生します。

虐待のリスク

第一次反抗期は「子どもの成長の証」と頭でわかっていても、子どもの反抗的な態度が顕著な時にはイライラしてしまうものです。イライラする気持ちは、心身共に不安定な状態を招きます。

ストレスが深刻なレベルになると、虐待行動に発展する可能性があります。例えば、育児放棄をしてしまう、怒鳴りつけるなど、取り返しのつかない行動をとってしまうこともあります。

坂上(2002)[1]は、2歳児147名の母親を対象に「子どもの反抗・自己主張に対する母親の考え」を調査しました。自由記述で解答が多かった上位5つが以下グラフです。

反抗期の子どもの接し方

統計を見ると、子どもの反抗を「成長の過程」だと理解している親がいる一方で、45%前後の親が苛立ちを抱えていることがわかります。

中谷ら(2006)[2]は、3~4歳児の母親207名を対象に、被害的認知と虐待の関係について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。

反抗期と被害的認知

こちらは、子供の反抗的な行動について、被害的認知、すなわち「自分が否定されたように感じたり、悪意を持って親を困らせている」と感じた場合に、暴力的になったり、子育てを放棄しやすくなることを意味しています。


人格形成への影響

感情に任せた叱り方を繰返すと、愛着不安が強くなってしまいます。例えば、子どもを無視したり、理不尽な叱り方をすると、信頼関係が築けず愛着不安が生まれてしまいます。

幼少期に愛着不安を抱えると、成人してからも、友人や恋人と不安定な関係になりやすことが分かっています。

子どもの愛着障害の基礎知識

 

適応障害の危険性

子育てによるストレスで、親が適応障害になる可能性があります。適応障害は、ある特定の状況や出来事が非常につらく耐えがたく感じられ、気分や行動面に症状が現れる障害です。

例えば、不眠、体調不良、育児ノイローゼなどの症状がある場合は、注意が必要です。

子育てがストレスの場合は、子どもから離れたり、子育ての負担を軽くすることで症状は次第に改善されます。一方で、症状の改善が見られない場合は症状が慢性化することもあり、専門家によるケアが必要な場合もあります。


反抗期,疲れ

第一次反抗期,8つの対応

ここからは第一次反抗期に心がける8つの方法を解説します。

①成長を気長に待つ
②叱る時は肯定をセットで
③叱るときは理由を加える
④タイムアウト法
⑤ダブルバインドに注意
⑥肯定的な認知を増やす
⑦夫婦関係を円満に保つ
⑧問題を冷静に分析する
⑨親も余裕を持つ

ご家庭で使えそうなものを組み合わせて活用してみてください。

 

①成長を気長に待つ

人間にとって、遠慮なしに感情を爆発させることができる時期は、幼少期だけです。この時期に、感情を無理に抑えるつける癖がつくと、人の顔色を窺う性格になってしまいます。

ある程度、感情を爆発させて自己主張することは、言いたいことを言える、話し合える人格形成のために必要不可欠です。

理由も聞かず頭ごなしに叱る
「泣かないの!」と泣くこと自体を否定する
怒鳴りつけて泣き止ませようとする

このように感情表現を無理に抑えつける育児はのやり方はNGです。

まずは子どもなりの理由を聞き、共感をしめしながら、粘り強く丁寧に諭していけば、ゆっくりとですが、反抗期は収まってきます。数年単位の長期戦となりますが、成長を気長に待つように心がけましょう。

②叱るときは肯定をセットで

親の役割として、「できること」「できないこと」をしっかり教えることは、とても大事です。NGな行動をしたときは、叱ることも大事です。叱り方を効果的にするには、サンドイッチのように「肯定的な言葉」で挟むことです。

例えば、箸の持ち方が間違っていたとします。

お箸うまくなってきたね!(肯定)
でももう少し先の方を持つと食べやすいよ(否定)
そうそう!上手上手(肯定)

このように肯定しながら叱ると子供のモチベーションも上がっていきます。

③叱るときは理由を加える

叱る時には、子どもが納得するまで根気よく理由を伝えていきましょう。例えば、子どもが石を投げたとします。

石は投げると危ないからやめようね(否定)
石は固いから当たると痛いでしょ
大けがさせて悲しい思いをさせちゃうよ(理由)

このようになぜいけないことなのか?わかるようにすると、成長も早くなります。

反抗期と育児ストレスの解消

④タイムアウト法

子どもが繰り返し良くない行動をする場合は、タイムアウト法が効果的です。タイムアウト法は、

好ましくない行動をとった子どもを、その場から一時的に引き離し、気持ちを落ち着かせる方法

を意味します。たとえば、友だちを叩いてしまう子どもの場合、今度同じことをしたらタイムアウトする事を事前に伝えます。

そして問題行動があった時には、タイムアウトを伝え、友だちから子どもを離し、決められた場所で数分間待たせます。この時、話しかけたり叱ったりはしません。

子どもの気持ちが落ちついたら「何が悪かったか」を一緒に振り替えります。タイムアウトを使うことで、子どもはもちろん、親もクールダウンして心を落ち着けて話ができます。

⑤ダブルバインドに注意

子どもへのダブルバインドに注意しましょう。ダブルバインドとは、他人から矛盾するメッセージを受け取る状況のことです(心理学辞典,2013)[3]例えば、

「怒らないからなんでも話して」と言ったにもかかわらず、話を聞いてから子どもを怒った

「おもちゃを片付けないと捨てちゃうよ」と言って、子供が片付けないのに、おもちゃを捨てない

このような言動は、子どもを混乱させてしまいます。ダブルバインドを避けるには、言葉と行動を一致させることが大事です。

例えば、
「おもちゃ片付けないと捨てるよ!」
と嘘をつくのではなく
    ↓
「おもちゃにつまづいたら
 痛いし危ないから片付けようね」

と実際に起こりうることを伝えるようにしましょう。

⑥肯定的な認知を増やす

中谷ら(2006)[2]は、3~4歳児の母親207名を対象に、肯定的認知と虐待の関係について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。

反抗期と肯定的認知

こちらは育児に対して肯定的認知が増える、すなわち子供の成長の証拠、大人になる階段、子供らしい一面だ、と考えると、自尊心を維持しやすく、また育児ストレスをいつも通り保ったり、虐待を促進する考えを予防できると解釈できます。

反抗期は大変な時期ではありますが「私」がきちんと育っている証拠でもあるので、喜ばしい一面があると考える習慣を持つようにしましょう。

 

⑦夫婦関係を円満に保つ

円満な夫婦関係は子供の精神的な安定にもつながります。

菅原ら(2002)[4]の研究では、1360名の母親を対象に、夫婦関係が子どものメンタルヘルスにどのような影響を与えるかを調査をしました。その結果が以下の図です。

反抗期と夫婦喧嘩

「父親と母親がお互いに愛情を持っている」場合、家族の雰囲気がよくなり、子どもの抑うつ傾向が低くなることが分かりました。

さらに「母親が父親に愛情を持っている」場合、子どもに対しても暖かく接することができ、その暖かさが子どもの抑うつ傾向を下げることも分かりました。

つまり夫婦関係によって、子どもの精神的な健康が左右されるのです。夫婦喧嘩が多い、夫婦が険悪な状態…という場合は、以下のコラムを参考にしてみてください。

夫婦喧嘩の仲直り方法・子供への影響

 

⑧問題を冷静に分析する

小林(2007)[5]は3、4か月の乳児の母親242名を対象にストレスの対処法を調査しました。その結果の一部が下図となります。

反抗期と抑うつ

こちらの図は子育てをするときに、起こっている問題の原因を考え対処する傾向がある母親ほど抑うつ感が少なくりやすいことを示しています。これは第一次反抗期の母親にも同じ効果を期待することができます。

子供が反抗期になると親も余裕がなくなり感情的になりがちですが、そんな時こそ、どんな時に反抗しやすいか、原因はなにか、どうすれば解決できるか、と冷静に考える姿勢も大事になります。

 

⑨親も余裕を持つ

子どもの癇癪やイヤイヤに100%の力で向き合うと、親も体調を崩してしまうことがあります。心理的に安定した状態で子育てをするために、8割くらいの力で関わることを心がけましょう。

2割の余裕を持つためのアイデアとしては以下が挙げられます。

おもちゃは1つの箱に雑に片付ければOK
多少の食事の好き嫌いは許す
大人になってから治ると気長に構える
本当に疲れたときは、アンパンマンを見せる
月に1度は実家に子供を預けて夫婦の時間を大事にする

サボる事の大事さについては、動画でも解説しました。よかったら参考にしてください。



まとめ

第一次反抗期の子どもは言葉での表現がまだ未熟なため、癇癪の原因が分からず、頭を悩ませてしまうこともあると思います。

子どもと100%の力で向き合っているとへとへとになってしまうので、適度に休息をとって子どもと関わってみてください。

パパやママの心と体が健康で、そして夫婦関係が良好だと、子どもも心穏やかに過ごせます。コラムの対策を参考に、第一次反抗期を上手に乗り越えていきましょう。

 

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・反抗期の気持ちを理解する,傾聴トレ
・子供が安心する,共感トレ
・家庭を明るく,会話練習
・家庭の健康度を上げる心理学

体験受講に興味がある方は下記のリンクからお待ちしています。筆者も講師をしています(^^) 

第一次反抗期,幼少期の子どもへの対処法,コミュニケーション講座

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1]坂上裕子(2002).母親は子どもの反抗期をどう受け止めているのか,家庭教育研究所,紀要,24, p121-132
 
[2]中谷奈美子,中谷素之(2006).母親の被害的認知が虐待的行為に及ぼす影響 発達心理学研究 第17巻,第 2 弓,148−158
 
[3]VandenBos, G.R. (Ed.). (2007). APA Dictionary of Psychology. Washington, D.C.: American Psychological Association. (ファンデンボス, G.R. (監修)繁枡 算男・四本 裕子(監訳) APA 心理学大辞典 p. 576  培風館)
 
[4]菅原ますみ,八木下暁子,詫摩紀子,小泉智恵,瀬地山葉矢,菅原健介,北村俊則(2002).夫婦関係と児童期の子どもの抑うつ傾向との関連 掲載教育心理学研究,50,129ー140
 
[5]小林佐知子(2021).乳児をもつ母親の育児関連ストレスへの対処行動と抑うつ傾向 名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要. 心理発達科学55