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あがり症を克服する,私的自己意識を高める方法

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あがり症を克服する,私的自己意識を高める方法

前回のあがり症克服コラムでは、あがり症の改善策を概観してきました。今回は「私的自己意識を増やす」について解説していきます。特に周りの評価を気にしすぎてしまうという方におすすめの克服方法となります。

公的自己意識とは何か

公的自己意識とは

公的自己意識とは「自分が周りからどう見られているか気にする意識」を意味します。心理学の研究によると、公的自己意識とあがりやすさは、関連していることがわかっています。

例えば、就職活動での面接、スピーチ、スポーツの試合、演奏の発表会、ではあがりやすくなりますが、共通するのは、周りから評価される、人から見られる場面だということです。

公的自己意識とあがり症

堤(2006)[1]は、大学生131人を対象に、あがり症と公的自己意識との関連について調査を行いました。その結果の一部が下図です。

あがり症 公的自己意識

上記は、公的自己意識が強くなると、あがりやすくなるという意味があります。この点、あがり症を克服するには公的自己意識をゆるめる必要があると推測できます。

 

私的自己意識とは何か

私的自己意識とは?

もう1つの重要な用語として、私的自己意識をおさえておきましょう。私的自己意識は「自分の気持ちに注目する意識」を意味します。

例えば、ご飯を味わっている、自分の価値観を大事する、話したいことを自由に話す、これらの意識を意味します。

私的自己意識があがりを軽減

堤(2006)[1]はあがり症と私的自己意識との関連も調べています。その結果の一部が下図となります。

あがり症 私的自己意識

実験結果として、私的自己意識が高いとあがりにくいことがわかりました。すなわち私的自己意識を高めていけば、あがり症を軽減していけると推測できます。

 

練習してみよう

以下のあがりやすい場面について、公的自己意識が強い人、私的自己意識が強い人について考えてみましょう。

事例①
太郎君は友人代表として結婚式のスピーチをすることになりました。50人を超える出席者の前で話さなくてはなりません。

この時、公的自己意識が強い人、私的自己意識が強い人はそれぞれどのように考えるでしょうか。

・公的自己意識が強い人

 

・私的自己意識が強い人

 

・公的自己意識が強い人

失敗をして恥をかいたらどうしょう
頭が真っ白になって迷惑をかけたくない
緊張がバレてはいけない

・私的自己意識が強い人

友人には感謝をしているこの気持ちを伝えよう
ゆっくりわかりやすく話そう
普段は言えない友人の長所を伝えよう

 

事例②
花子さんは好きな男性と初デートに行くことになりました。お昼ご飯を食べることになり、正面にその男性が座っています。料理が目の前にあり食べる瞬間がきました。

この時、公的自己意識が強い人、私的自己意識が強い人はそれぞれどのように考えるでしょうか。

・公的自己意識が強い人

 

・私的自己意識が強い人

 

・公的自己意識が強い人

はしたない食べ方をして嫌われてはいけない
音を立てて食べるのは恥ずかしいことだ
会話が弾まないと思われてないだろうか?

・私的自己意識が強い人

わ~おいしそうな料理!いただきます~
大好きな彼と食事できるなんて幸せ
面白かった話を聴いてもらおう

 

まとめ

公的自己意識は、相手を思いやる、気遣うことに役立ちますが、過剰になると、緊張しやすくなり人と接することに疲れやすくなります。

あがり症で悩んでいる方は、公的自己意識を緩め、私的自己意識を増やすと楽になることができます。練習問題を参考に、バランスの良い自己意識を目指してみてください。

お知らせ・発展編

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・公的自己意識を減らす練習
・私的自己意識を増やす練習
・緊張をほぐす練習
・スモールステップ行動法

体験受講に興味がある方は下記のリンクからお待ちしています。筆者も講師をしています(^^) 

心理学講座を体験してみる

コミュニケーション講座,初心者

あがり症コラム

コラム①ではあがり症の克服法をたくさん紹介しています。まだ全部読み切っていない方は以下のリンク先に戻って学習を続けてみてください。
あがり症克服コラム

人の目が気になる

もっと練習をしたい!という方は以下のコラムも参考にしてみてください。より深く公的自己意識、私的自己意識について解説をしています。
人の目が気になる悩みを克服

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] 堤雅雄(2006)「あがり」現象と自己意識-対人不安への予備的考察 島根大学教育学部紀要(人文社会科学)第40巻 29頁~33頁