アイデンティティを確立する方法,ライフチャート法
当コラムは、アイデンティティの確立をテーマに解説しています。
①アイデンティティを確立する方法
②ライフチャート法
今回は「②ライフチャート法」をテーマに解説していきます。
過去を受け入れる
皆さんは
・過去の自分を忘れたい
・後悔することが多い
・自分の過去はろくでもなかった
こんな感覚はありませんか?もしそうだとしたらアイデンティティの確立は難しくなります。
なぜならアイデンティティの確立には、過去の人生が「今の自分」を作ってきたという感覚が必要になるからです。これは「自己斉一性」と呼んだりします。
・過去があったからこそ今がある
・後悔せずに生きてきた
・失敗も自分の糧になっている
こういった感覚が自己斉一性です。これまでに起きたいろいろな体験を自分なりに意味を付け、色々失敗もあったけどそれが今の自分の糧になっていると感じらるようになると、安定したアイデンティティを確立することができるのです。
研究を詳しく知りたい方は下記をクリックください。
谷(2001)は390名の大学生を対象に「自己斉一性」と「充実感」「自信」と関わりを調査しましたその結果は以下の図となります。
この図の意味としては、過去の自分を受け入れていくと日々の生活が充実し、また自信を持って取り組んでいけることを意味しています。
人間関係との関連
山本・岡本(2008)は大学生180名を対象に自己斉一性について調査を行いましました。その結果は下図となります。
簡単に解釈すると、過去の自分を受け入れることができない人ほど他者と積極的にかかわることが難しい傾向があることを示しています。過去の自分に自信がないと、人との関わり方にも迷いが生じてしまい、結果的に対人関係を避けてしまうと考えられます。
ライフチャートを使って
それでは実際に過去に意味つけをするワークを行ってみましょう。今回は「ライフチャート」を作成して人生を振り返ってみます。なお、ライフチャート法は心の負担になることがあります。ある程度、余裕があるときに実施してみてください。
ライフチャート
まず下記のような図を書きましょう。
あなたの人生を振り返って
100%(良い時)
-100%(悪い時)
の数値で表していきます。
【記入例】
例えば、33歳の人であればこんな感じで途中までで結構です。ライフチャートが書けたら自分で書いてみたこのライフチャートをよく眺めてみてください。様々な思いが浮かんだかもしれません。
自分との対話
ここから色々質問をしますので、ライフチャートを確認しながら自分の中で対話をしてみてください。今回は解答例はあえて設けません。自由に答えてください。あなたが思い浮かんだことすべてに意味があるのではないかと思います。
①全体を見て感じたことをありのままお話ください。
②これまでの人生で誇りに思うことは何でしょうか?
③人生で幸せに感じた出来事は何でしょうか?
④落ち込んだ時期があるからこそ役に立ったことは?
⑤これからどのような人生を歩みたいですか?
体験を整理して確立を
ナラティブアプローチ
質問を元に振り返ってみていかがでしたか。人生を俯瞰していくとたくさんの物語があったと感じると思います。
自分の人生を1つの物語として語れるようになると、心理的に安定し「自分とは何か?」が定まりやすいことがわかっています。これはナラティブ・アプローチという手法をとっています。
例えば、当コラム監修の公認心理師川島は過去に引きこもりの経験がありました。もう20年前ぐらいになりますが、当初は引きこもっていた自分が大嫌いでした。自己開示もできず人が怖い状況になっていました。
その後、自分と向き合い回復してからは、過去の自分があったからこそ今の仕事と出会うことができたと受け入れられるようになりました。
今は、過去の経験を大事にして生徒さんに当時の話などもしています。過去を受け入れることは簡単なことでは無かったのですが今はとても充実しています。
誰かに話すのも重要
今回は自分の中で対話していただきましたが、聞き手がいるとまた違ってきます。相手に話すと話しながら自分の体験が自然と整理されていきます。
そして、相手に感想などをもらうことで自分自身が新たな気づきを得られることがあります。ぜひ気持ちに余裕が出てきたら、誰かに話しを聞いてもらってみてくださいね♪
お知らせとリンク
公認心理師のアイデンティティ確立に関する講義を受けてみたい!という方は下のお知らせをクリックして頂けると幸いです。筆者も講師をしています。是非お待ちしています(^^)
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 元専修大学人間科学部教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
*出典・参考文献
谷冬彦(1997) 青年期における自我同一性と対人恐怖性心性 教育心理学研究 45号3巻 254-262
岡本祐子(1994)成人期における自我同一性の発達過程とその要因に関する研究 風間書房