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入門②アイデンティティ拡散,クライシスの意味,らせん式発達モデル

アイデンティティ拡散

コラム①ではアイデンティティ確立について解説してきました。コラム②ではアイデンティティ拡散について考えていきます。

  • 全体の目次
  • 入門①アイデンティティ確立
  • 入門②アイデンティティ拡散← 
  • 確立 ライフチャート法
  • 確立 過去を受け入れる
  • 確立 メンタライゼーション
  • 確立 相手への配慮
  • 助け合い掲示板

アイデンティティ拡散

確立と拡散

入門①の復習をすると、アイデンティティ確立とは、「自分とは何か」を確立していくことを意味していました。

しかし、アイデンティティは簡単に確立できるものではなく、拡散する時期があるのです。

これをアイデンティティクラシスと言ったり、拡散と言ったりします。

定義,意味

「クライシス」とは英語の「Crisis」から来ています。そのまま「危機」という意味があり、日本語でアイデンティティ危機と表記されたりもします。

心理学辞典(1999)によると、アイデンティティ拡散(クライシス)は以下のように定義されています

自己探求を続ける青年が、多くは一過性的に経験する自己喪失の状態を指す。

アイデンティティ拡散(クライシス)は古典的に青年期の課題とされています。

これから社会生活を送っていく上で、自分らしさをどのように発揮していけばいいか?分からなくなってしまう状態を指します。

アイデンティティ 研究

拡散しやすい状況は?

起こりやすい場面

アイデンティティクライシスが起こりやすい場面はいくつかあります。

・学校などで進路を考えるとき
・転職など働き方について考えるとき
・環境になじめないとき
・外国などに行き異文化に接したとき
・自分の生き方を見つめ直したとき

アイデンティティクライシスは人生で1回だけではありません。何度も何度も形を変えて起こることがあります。

このことからEriksonも最初はアイデンティティ形成を青年期の課題であると言っていたのですが、のちに考えが変わり、生涯をかけた課題であると言うようになりました。

自分の軸の見つけ方

らせん式発達モデル

岡本(1994)も、自身の研究の中でアイデンティティクライシスは人生を通して何度も訪れ、何度も乗り越えていくことでアイデンティティが確立されていくと述べています。

モデルにすると下記のようになります。

アイデンティティ 拡散この図は、アイデンティティのらせん式発達モデルといいます。上に行くほどアイデンティティが確立できている状態を示しています。

つまり一生のうちでアイデンティティを形成できたかと思いきや、環境の変化や年齢を重ねるなどの要因でクライシスがやってくるのですね。

私たちはぐるぐるとらせんを描きながら絶えず、自分とは何か?を考え、理解していくのです。

メンタルへルスとの関連

アイデンティティクライシスの時期は心理的にマイナスの影響、プラスの影響があります。

対人恐怖心性と関連

谷(1997)は対人恐怖性心性などの関連を研究しています。そこでは、279名の大学生に質問紙を配布し調査を行いました。

その結果、対人恐怖性心性とアイデンティティクライシスとの間に-53.と中程度の負の相関があるという結果が報告されています。アイデンティティ 哲学これは、アイデンティティ危機がある場合、対人恐怖の傾向が出やすいと解釈できます。

Erikson自身もアイデンティティクライシスの時期は、
・他者と深い関係を築くことができない
・対人的距離の失調
・他者との距離感がつかめない
と指摘しています。

人生の意味を再構築

一方で、アイデンティティクライシスという時期は悪いものではありません。それは自分のあり方について見つめ直すことができるからです。

「どのように生きるべきか?」
「どうしたら人生に意味を見出せるか?」

といった様々な葛藤が中心になってきます。その渦中にいると辛いですが、この葛藤するという作業自体はとても大切なことなのです。

例えば、「大きな病気」をしたとき、闘病生活を通して人生の意味を再構築して、やっと自分の生きる目標が決まる方がいます。

大きな会社を作った経営者の方も昔は大きな借金を背負い、自分と深く向き合った・・・そんなことがよくあります。

アイデンティティクライシスは人生をトータルで見れば、危機を迎えてよかったということもたくさんあるのです。

人間関係とアイデンティティ

乗り越えるための方法

さて!アイデンティティクライシスが起こったらどうしたらいいのでしょうか。以下を参考にしてみてください。

①ゆっくり休む

アイデンティティクライシスが起こった時期は、死別、受験の失敗、引退、など心に負担がかかる時期です。心に負担がかかっているときは、急がず休息をとるようにしましょう。

今まで頑張ってきた自分をねぎらったり、気分転換で美術館に行ったり、本を読んだりするのもいいでしょう。

②もやもやと向き合う

心が休息を取れたら、少しずつ自分と向き合い始めます。辛かった出来事を整理して、少しずつ考え方を整理していきます。

心がもやもやしている時期だと思いますが、日記を書いたり、親しい誰かに相談してみるのがおすすめです。

③学び取れるものを探す

もやもが整理できてくると、だんだんと人生において、試練に意味づけができるようになってきます。そのつらい体験、もやもやした状況は、今後の人生にどんな意味をもたらしてくれるか?

じっくり考えてみましょう。

④充実感があるか

さらにもやもが整理できてくると、自分の生きる意味が再構築され、充実感が出てきます。

目的が明確になり、集中して行動できるようになったらアイデンティティクライシス(拡散)を乗り越えた証拠です。

ここまでくれば、人生の危機は、ご自身にとって非常に意味のあるものになっていると思います。

*講師の視点 私たちになじみがある仏教を創ったブッタも、アイデンティティクライシスを活かした人物です。ブッタは王族の生まれでしたが、王宮から出たとたん、あまりにも人間が簡単に死ぬという事実を目の当たりにしいてアイデンティティクライシスを体験します。そうしてその危機をバネに、何千年も続く教えを創ったとされています。

芯のある自分へ

まとめ

アイデンティティクライシスを乗り越える資源は、必ずあなた自身の中にあります。


「自分がどのように生きたいか?」
「どうしたら人生が充実するか?」


という点は自分しか知ることができないのです。

自分と向き合う作業はなかなかしんどいと思います。ただ何をしたいか?が分かると人生は極めて充実したものになります。

是非、試練をバネに、より充実した日々を見つけて、過ごしてほしいなと感じています。

 

助け合い掲示板

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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*出典・参考文献
Erikson.E.H(1950) Childhood and society. New York: Norton.(仁科弥生(訳)1977,1980 幼児期と社会1・2 みすず書房)
谷冬彦(1997) 青年期における自我同一性と対人恐怖性心性 教育心理学研究 45号3巻 254-262
岡本祐子(1994)成人期における自我同一性の発達過程とその要因に関する研究 風間書房
中島 義明 子安 増生 繁桝 算男 箱田 裕司 安藤 清志 (1999)心理学辞典 有斐閣