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アイデンティティの意味も!解決法を分かりやすく解説

アイデンティティの意味、確立するための方法を解説②

コラム①ではアイデンティティの意味やアイデンティティを確立する3つの解決策をご紹介しました。
「①価値観の発見・メンタライゼ―ション」
「②ライフチャート・自分の人生を振り返る」
「③相手の価値観の洞察・メンタライゼーション」
の3つでしたね。

今回は、アイデンティティを確立する方法の1つ目「メンタライゼ―ション」についてご紹介します。「自分のやりたいことが見つからない・・・」「何をしていいかわからない・・・」などアイデンティティが拡散していると感じる方は参考にしてみてください。

メンタライゼ―ションを簡単に解説

メンタライゼーションとは?

もし皆さんが、

・日々の生活に追われている
・自分の心と向き合うことが少ない
・周りの環境に流されてしまう
・相手の意向に沿おうとし過ぎる

このような傾向がある方はアイデンティティを確立しにくいかもしれません。例えば、カウンセリング場面では、「親の言うことばかり聞いてきた」とお話しされる人がいます。「自分がどう考えているか、どう感じているか」という点を今まで意識してこなかった方、あるいはそうした機会が少なかった方が多い印象があります。

このような傾向がある場合はメンタライゼーションが有効です。メンタライゼーションとは、1990年代にイギリスの精神分析家であるフォーナギーが提唱した概念です。

メンタライゼーションとは、

① 身の周りに起こった出来事に対して
②心理的な背景を読み取る能力である

とされています。「自分がやりたいことはなんだろう・・・」「自分に向いている仕事はなんだろう・・・」「どんな時に自分は充実感があるのだろう・・・」と自分の感情や価値観に注意を向けることがメンタライゼーションの基本となります少しわかりにくい概念ですが、アイデンティティを確立する上で非常に重要な概念です。

メンタライゼ―ションの具体例で説明したいと思います。

例1 日常的な気づき
メンタライゼーションの基本は日常生活での気づきです。例えば仕事をした後、何日か疲れがたまっていたとします。それでも仕事をし続けついに倒れてしまったします。この時、「私は仕事について考えるあまり自分自身をないがしろにしているかもしれない」と気が付く。これがメンタライゼーションです。

例2 相手の考えや価値観に気が付く
メンタライゼーションは相手の心理の読み取りも含みます。顔をしかめて仕事をしている相手がいたとします。この時、
「疲れているのかなぁ・・」
と読み取ることがありますよね。これは他者の心理に気が付いています。これもメンライゼーションになります。このように、行動に対して、自分や他人に考えていること・感じていることを見つける作用がメンタライゼーションなのです。

アイデンティティの確立につながる

カウンセリングの場面では、近藤ら(2013)がメンタライゼーションの視点を通してアイデンティティを形成できたという事例報告もなされています。

人間関係で行き詰まった時などに、「自分の価値観は?考えは?どう感じていたのか?明確に言葉で話せる」ようになるとアイデンティティを確立しやすくなります。

アイデンティティと関係

まとめるとこのような感じですね。

自分の気持ちに気づくというメンタライゼーションができる人は、できごとの振り返りをきちんと行い、価値観ややりたいことに気づけたり、見つけることができます。この作業を続けていくと、アイデンティティ確立につながっていくのです。

メンタライゼーションにチャレンジ

メンタライゼーションについてなんとなく理解できましたでしょうか?ここではもう少し踏み込んでメンタライゼーションのやり方を解説します。

具体的には
①できごとを客観的に書きだす
②行動や振る舞い方を書きだす
③価値観・考えを書きだす
という、3つのステップで考えていきます。まずは例を見ていきましょう。

例文
Aさんは職場の同僚Bさんと飲みに行きました。Bさんは、とても積極的な同僚で、おしゃべりです。食事なども「Aさん、次の注文は、これがいいですよね」とどんどん仕切ってくれます。Aさんは必死にその場についていきました。終わってみると、何となく巻き込まれた感じで、帰りの電車の中でどっと疲れが出てきました。

①できごとを客観的に書きだす
⇒おしゃべりなBさんと飲みに行った。Bさんのペースでわーっとしゃべって、Bさんがどんどん注文する。いつも早い。

②行動や振る舞い方を書きだす
⇒何とか必死についていくような感じ。終わった後疲れた。

③価値観・考えを書きだす
⇒本当は食べたいものがあった
 自分も色々Bさんに聞いてほしいこともあった
 私は、もっと主体的に生きたいのかもしれない!

という様にこんな感じで結構です。あくまで自分の価値観、感じたことしっかりと明確にしていくということだけを意識してください。この例では最終的に、「主体的に生きる」という小さなアイデンティティの確立につながっていますね。

ここで大事なことは正解、不正解を追及することではなく、自分の気持ちを発見していくことなのです。結果的に自分自身を理解することにつながり、アイデンティティを確立する下地ができるでしょう。

練習してみよう

今度は皆さんの番です。以下の下書きを元に自分の価値観や思いに気が付いて、それを一度確認したり、考え直してみたりしましょう。

①できごとを客観的に書きだす
②行動や振る舞い方を書きだす
③価値観・考えを書きだす

自分を大切にアイデンティティを確立 

小さな気づきの積み重ね→アイデンティティ確立

ここまで、みなさんにも練習していただきました。「これだけのこと?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。

Aさんの事例には続きがありました。ご紹介します。

<事例の続き>
Aさんは、先ほどのBさんとのやり取りを通して、「よくよく考えると考えたこと・感じたことを我慢して、相手に言わず自分はため込む傾向がある」と気づきました。

それはBさんとのやり取りだけではなく、学生時代の友達や親との関係でさえ、その傾向がありました。これまでの人生でAさんは物腰の柔らかい人として過ごすことができましたが、何か物足りない部分を感じていました。Aさんとカウンセリングで、「何が物足りないのか?」という点について話し合うことになりました。

よくよく聞いていくと物足りなさというのは、自分のやりたいことを我慢しておられるようでした。そして、我慢ばかりを繰り返していると、いつの間にかやりたいことが分からなくなっているように感じました。

そのことをAさんに指摘すると、「確かにそうですね」とお話しされ、「そういえば親と将来について話すときも、親が望むような仕事に就くための進路を歩んできた」とお話しされました。

Aさんは、もう1度「自分がどうなりたいか?」について考えるようになりました。その結果、今は現在のお仕事を続けながら、ご自身の取りたい資格の勉強をされておられるようです。当然お仕事をしながらなので、大変だそうですが、やりがいを感じて生活されている様子でした。

自分を大切にアイデンティティ確立

普段の生活では困ったことに対して意外と目をつぶってしまいがちです。どうしても忙しい現代社会では自分の気持ちと向き合い暇がなく、後回しになってしまいがちですね。

しかし、いつも自分の気持ちに蓋をする癖をつけると、どっと疲れが出てきたり、もっと悪い状況になるとメンタル面での不調、アイデンティティ拡散につながる場合もあります。

必ず私たちそれぞれがしている行動の背景には、私たちの心が存在します。ここでの心とは、あなた自身が持つ考えや感情のことです。その私たちの心の声によく耳を傾けてもらえると、自分についての気づきが得られることがあります。そこで気づいたことアイデンティティを形成していく第1歩となるのです。

アイデンティティを確立するためには自分の気持ちを洞察する
「メンタライゼーション」
から是非はじめてみてください♪

次回は、アイデンティティを確立する方法の2つ目「ライフチャート・人生を振り返る」についてご紹介します。

★ 自分へのメンタライゼ―ションでアイデンティティを見つめ直そう

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*出典・参考文献
J.G.Allen&P.Fonagy(2011)メンタライゼーション・ハンドブック MBTの基礎と臨床 岩崎学術出版社上地雄一郎(2015)メンタライジング・アプローチ入門 愛着理論を生かす心理療法 北大路書房近藤直司・小林真理子・宮沢久江(2013)ひきこもりを伴う自閉症スペクトラム障害とメンタライゼーションに焦点をあてた精神療法 (特集 メンタライゼーション)  精神分析研究 57(1), 22-29, 2013-02



メンタライゼーションと意味