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反抗期がない原因,大人になったときの影響

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反抗期がない原因,大人になったときの影響

反抗期コラムの目次は以下の通りです。

コラム1 反抗期はいつまで?時期・対応
コラム2 第一次反抗期,接し方
コラム3 第二次反抗期,接し方
コラム4 反抗期がない原因,影響

今回はコラム4として「反抗期がない原因と影響,対処法」について解説します。目次は以下の通りです。

①反抗期がない人はどれぐらい
②反抗期がない原因
③大人になってからの影響
④子供への接し方(保護者向け)
⑤大人になってから(当事者向け)

ご自身にあてはまる内容を中心に参考にしてみてください。

①反抗期がない人はどれぐらい

そもそも反抗期を経験しない人が多くいることがわかってきています。

江上ら(2013)[1]は、大学生100名を対象に反抗期についての調査を行いました。その結果の一部が下図となります。

反抗期 男女比較

また別の研究では、二森・石津(2016)[2]が大学生243名を対象に反抗期のありなしについて調査を行いました。その結果の一部が下図となります。

反抗期 比較これらの先行研究から推測すると、統計的には40~50%前後の方が、「反抗期がなかった」と感じているようです。

②反抗期がない原因

反抗期がないケースですが大きく分けて4つのケースが挙げられます。

①反抗が小出しで目立たない

親がしっかりと子供と向き合い話しあう家庭は、反抗期がないことがあります。反抗が小さな段階でしっかり話しあうので、大きな反抗に発展しないのです。このようなケースでは特に問題はなく、子供は健康的な成長を遂げると推測されます。

②過保護

親が子ども対して過保護な場合、反抗期がないことがあります。子どもの要望を親が先回りして叶えてくれると、子どもは大きな反抗を取らなくてすむのです。その結果、子供がわがままになってしまったり、自己主張が苦手となって社会に出てから苦労するケースがあります。

③親が高圧的

親が子どもに対して高圧的で、反抗する余地がないケースもあります。反抗すると、親が怒鳴り散らしたり、虐待をうけるため、子供は自分の気持ちを表現できなくなります。人の目を気にする習慣がつくため、大人になってからも対人関係で不安を覚えやすくなります。

④親を助けるため

親が病気だったり、仕事が忙しくて向き合えなかったりすると、反抗期がないことがあります。子供は反抗期を迎えないことで親を助けているとも言えます。

しかし、甘えるべき時に甘えられないので、大人になってからも、気持ちを素直に表現できないこともあります。兄弟が多い長女や長男にこれらの傾向がみられることがあります。

反抗期がない親子の特徴

③大人になってからの影響

反抗期がない人は、大人になってから影響はあるのでしょうか。この点について心理学の研究は少なく、断定はできないのですが、上記の②~④ケースでは、以下の問題が起こりやすくなります。

人間関係のいざこざに弱い

反抗期は親との議論を通して、主張を通したり、自分が折れたりを繰返していきます。その結果、お互いの価値観のちょうど良い落としどころを見つける力がついてきます。

しかし、反抗期がない方は、主張して譲らないか、我慢するかの両極端になりやすく、人間関係が極端になりやすくなります。

ストレスを抱えやすくなる

反抗期に自己主張をして、成功した体験が不足すると、自分の意思を表すことが苦手になります。ストレスを自分一人で抱え込みがちで、心と体の不調につながることもあります。

アイデンティティの確立に問題

特に第二次反抗期は、根本的な価値観を疑う時期です。発達心理学者の乾(1977)[3]は、「反抗の質をこそ私たちは重視しなければならない 。一生持ち続けるべき建設的な批判精神の基礎である」と述べています。

反抗期に、世の中の矛盾などを考えつくした人は、アイデンティティを確立し、その後の人生で筋を通した生き方ができます。一方で反抗期がない方は、自分で考える習慣がつかず、流されやすくなる方がいると感じています。

反抗期がない大人

④子供への接し方(保護者向け)

もし原因の②~④にあてはまる場合は、親子のコミュニケーションに改善が必要かもしれません。当コラムでは以下の3つを提案させて頂きます。

①子供の気持ちを受け止める
②感情コントロール力をつける
③無条件の肯定を増やす

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

①子供の気持ちを受け止める 

子どもの感情を受け止められない親の多くは、子どもの気持ちを頭ごなしに叱る傾向があります。「また叱られてしまうから…」という気持ちから、子どもは本当の感情を出せなくなるのです。

反抗期の子どもは、さまざまな主張をします。親にとってネガティブな主張や行動だとしても、まずは子どもの気持ちを受け止めましょう。気持ちを受け止めてもらえた経験が安心感につながり、自己主張できるようになるのです。

子供の話の受け止め方がわからない…と感じる方は以下のコラムを参照ください。

共感力トレーニング

②感情コントロール力をつける

自己抑制が強い子どもがいる家庭には、高感情出力(高EE) の親がいることがあります。「高感情表出」とは、感情の振れ幅が強く、怒鳴る、強く悲観する、嘆く、自暴自棄になるなど、喜怒哀楽が過剰になることを意味します。

心理学の研究では、メンタルヘルスが悪い人の家庭には、高感情出力の方がいることがわかっています。もしあなたが、感情的になりやすい…と感じている場合は、子供の反抗期の無さに結びついているかもしれません。

あてはまる方は以下のコラムで、感情のコントロール練習をすることをオススメします。

感情コントロール力をつける方法

③無条件の肯定を増やす

子どもと関わる時には、無条件の肯定が大事です。無条件の肯定とは、一言で言うと

理由なき肯定 

を意味します。どんな時でも、親は愛してくれる!という確信を持てると子供は安心して感情を表現できるようになります。

難しいことはありません。

朝起きたら「おはよう~」と声をかける
目を見て話を聴く
「おかえり♪」と嬉しそうに言う
たまには抱きしめる 

このような理由なき愛情表現を大事にしましょう。無条件の肯定について理解を深めたい方は以下のコラムを参照ください。

無条件の肯定-ストローク法

⑤大人になってから(当事者向け)

最後に、反抗期がなかった大人の方への対策を解説します。

原因を分析する

原因の部分でも解説したように、反抗期がなかったとしても、小出しで親と議論をしたり、腹を割って話し合えた感覚が残っている方はそこまで問題ではないでしょう。

一方で、親が高圧的だったり、関係が薄く、うまくコミュニケーションできていなかったがゆえに、反抗期がなかったと感じる場合は対処が必要になってくるかもしれません。

主張する権利を確認

もし反抗期がなく、主張するのが苦手、自分の意見には価値がないと感じているとしたら、アサーティブコミュニケーションの学習をおすすめします。

アサーティブコミュニケーショでは、「お互い主張する権利がある」「お互いの考えを尊重する権利がある」ということを基本的な指針とする心理療法です。本格的に学習をする場合は、専門家と主張する練習なども行う実践的な心理療法です。

反抗期がなかった方と相性が良いので興味がある方は以下のコラムを参照ください。

アサーティブコミュニケーションの基礎

家族療法を学ぶ

反抗期がない原因は、あなた一人の問題ではなく、家族全体の問題である可能性があります。例えば、あなたが親に主張できなかったのは、親がとても大変で困らせないようにしたあなたの配慮だったのかもしれません。

そうした家族全体としての問題と捉えると、視野が広くなり、問題を大きな視点で受け入れるヒントになることがあります。反抗期がなかった問題を家族全体の視点から考えなおしてみたい方は、以下のコラムを参照ください。

家族療法の基礎

まとめ

反抗期コラムの内容は以上になります。コラムを書いた私も3人の子育て中で、日々七転八倒しています。心理学を勉強してきた私でさえ、反抗し続ける子供に対して「むかっ」とする瞬間があります。

そんな時は、自分の感情を冷静に眺め、一呼吸おいてから、余裕をもって接するようにしています。

感情を表出し、主張することは、子供が自分の権利を主張できている証拠でもあります。騒がしい子供ほど、将来賑やかで、リーダーシップを取れる大人になるかもしれません。長い目で見ながら、子供の成長を見守っていきましょう。

もっと学びたい方へ

当コラムの内容をしっかり身につけたい方は、公認心理師による講座をおすすめします。内容は以下のとおりです。

・(保護者向け)子供の気持ちを理解する,傾聴力トレ
・(保護者向け)子供が安心する,共感トレ
・(当事者向け)主張する権利を確認,アサーション
・(当事者向け)家族のあり方を再確認,家族療法

体験受講に興味がある方は下記のリンクからお待ちしています。筆者も講師をしています(^^) 

反抗期がない原因,大人になったときの影響,コミュニケーション講座

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1]江上園子,田中優子(2013).第二反抗期に対する認識と自我同一性 愛媛大学教育学部紀要 60 17-24, 2013-10-31 愛媛大学教育学部
 
[2]二森優希,石津賢一郎.(2016). 第二反抗期経験の有無と過剰適応が青年期後期の心理的自立と対人態度に与える影響. 教育実践研究: 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要, (11), 21-27.
 
[3]乾孝(1977).児童心理学. 新版新評論,316引用