話し方教室で騙された話|体験からわかる危険なセミナーの見分け方④
みなさんこんにちは。都内でこちらのコミュニケーション教室を開催している公認心理師の川島と申します。私はこれまで20年にわたってこの業界を見てきました。
この記事では、私が自分の教室を開く前に参加した、ある高額セミナーでの体験をお話しします。読み終えるころには、危険なセミナーを見分けるサインと、身を守る方法がわかるはずです。
▼ 目次を開く
1. 危険なセミナー6つのサイン
2. 1日5万円のセミナーへ
3. 魂で話せ!
4. 高額な講座への勧誘
5. 止まらない勧誘メール
6. 勧誘の仕組み
7. 身を守るために
8. よくある質問
危険なセミナー6つのサイン
「体験講座のあと、その場で高額な契約をすすめられた」
「一緒に参加した人から、何度も勧誘のメッセージが届く」
話し方に悩んでいるときほど、「ここで変われるなら」と、強い言葉にひかれてしまうものです。それは決して、あなたの判断力が弱いからではありません。悩みが深い人ほど、つけこまれやすい仕組みがあるのです。
先に、私の体験からわかった危険なサインをまとめておきます。
□「人生が変わる」など、効果を大きくうたう広告
□ 休憩なしで長時間、根拠のない主張を聞かせる
□ 人格を否定したあと、急にほめることを繰り返す
□ 講座の直後に「今日だけの割引」で高額な講座を勧める
□ 参加者を装った人(サクラ)が、お茶会やメールで誘う
□ 上位の講座で「資格が取れる」「開業できる」とうたう
※20年ほど前、私が講座を開く前の業界研究での体験です。特定を避けるため、参加した複数の講座の内容を組み合わせて書いています。
1日5万円のセミナーへ
私はもともと引きこもりで、対人恐怖症になったこともあります。紆余曲折を経てどうにか回復し、その経験を活かして、24歳のころに講座を開こうと決めました。

世の中の講座を調べる
まず取り組んだのが業界研究です。インターネットやタウンページで探すと、関東圏内だけで100か所ほどの講座が見つかりました。

最初に選んだのは、都内で開かれる自己啓発パワー系(やればできる!)の講座でした。広告には、こんな言葉が並んでいました。
心のブレーキを取る5つの方法
人生を180度変える方法
あなたの悩みが驚くほど消える
金額は1日5万円。高いなあと思いつつ、電話で予約を入れました。

参加者5名が集合
会場は新宿の雑居ビルの一室。参加者は私を含めて5名でした。
男性1:30代前半、メガネ、まじめそうなサラリーマン風
男性2:30代後半、日焼けしたスポーツマンタイプ
女性1:30代前半、小柄で少し元気がない
女性2:20代前半、なぜここに?というアイドル級の美人

「コミュニケーション講座を作る」という大義を一瞬で忘れ、私の心はアイドルにくぎ付けでした。講座で仲良くなり、新宿御苑のイチョウの木の下で告白する……。そんな妄想をしていると、講師が入ってきました。
講師は60代後半くらい、背広姿で、見た目にうさん臭さはありません。ボロボロのノートを演台にドカッと置くと、講義が始まりました。

魂で話せ!
魂の連呼
講師の主張をまとめると、話し方には「頭で話すタイプ」と「魂で話すタイプ」があり、皆さんは魂で話すタイプに変わらなければならない、というものでした。
「魂」「魂」「魂」と連呼されます。

私は心理療法の基本である「エビデンス・ベースド(研究による証拠を大切にする)」という考え方を学んでいたので、最初は根拠のない主張だと斜めに聞いていました。
判断力が鈍っていく
ところが、講義は休憩なしで2時間続きます。疲れてくると、だんだん講師の言葉が頭に入ってくるようになりました。判断力が鈍っているのが、自分でもわかります。周りの参加者も、目がうつろになっていました。

魂のスピーチ
次のワークは「魂でスピーチする」というものでした。3分間、好きな話をします。
最初のサラリーマンの方は、心のこもったスピーチに感じられましたが、講師は腕組みをしたまま「まだ魂を感じない」。ほかの参加者も、次々とダメ出しをされていきました。
当時の私は究極のあがり症です。国分寺のすた丼の話をしましたが、頭が真っ白になりました。終わると講師は重々しく言いました。
「川島くんは、頭脳型の話し方をしますね。すた丼への愛や魂を感じません!」

講師が「遠慮は不要です。川島くんのためですから」と促すと、参加者からも「魂がない!」と批判が始まりました。あのアイドルまで「第一印象から暗い!」と加わり、私は半泣きになってしまいました。
否定と肯定のループ
泣きそうな私を見ると、講師は「今、少し魂が出ているよ!」と言います。2巡目のスピーチでは、サラリーマンの方が何度もやり直しをさせられ、ついに半狂乱で絶叫しました。講師は「やったね!魂出たよ!」と彼を抱きしめました。
私の番も、罵倒から始まりました。意地になった私は、
「わたしは!!!すた丼への愛が△××□□であります!!」
と絶叫。すると不思議な高揚感が体を包み、講師に「ついに出たね!おめでとう!」と抱きしめられ、アイドルにも「とても素敵でした!」とほめられました。嬉しくて、涙が出そうになりました。

人格の否定と肯定を繰り返されると、人は冷静な判断ができなくなります。会場は、引退試合を終えた甲子園のような一体感に包まれていました。
高額な講座への勧誘
講師が退出すると、受付の女性が次の講座の説明を始めました。
次回はさらに心のブレーキを外すセミナーです。通常は60万円ですが、本日この場で決めてくださった方は30万円となります。
日焼けした男性、メガネの男性、そしてアイドルが、電光石火で「参加します!」。私も心が揺れましたが、時給800円で皿洗いをしたアルバイト時代を思い出し、なんとか踏みとどまりました。最後に「1週間以内なら40万円で受講できます」と付け加えられました。
魔のお茶会へ
帰り際、日焼けした男性が「みんなでお茶しませんか?」と声をかけてきました。話題は次の講座で持ちきりです。
チャンスは行動した者にだけ訪れる!
変わるのは今しかない!
投資したお金は絶対に戻ってくる!
集団の圧力に押され、迷っていたもう一人の女性も参加を決めました。

150万円の上位講座
日焼けした男性によると、セミナーは3段階で、最後はトレーナーを目指す150万円の講座。修了すれば資格が発行され、開業できるとのことでした。
なぜ彼は、そこまで詳しく知っているのだろう。疑問を感じて生返事になると、今度はアイドルが「一緒に心のブレーキを外しましょう」と私をほめ始めました。

好意を寄せる相手から「一緒に」と誘われると、冷静な判断はとても難しくなります。「参加する!」と言いかけたその瞬間、店員さんの「閉店のお時間です」の声。気がつけば夜9時で、ギリギリのところで回避できました。別れ際には、全員でメールアドレスを交換しました。
止まらない勧誘メール
その夜、アイドルからメールが届きました。
川島さん、今日はお疲れさまでした!スピーチとっても素敵でした。またメールしていいですか?

最初の3日間は「今日はハンバーグを食べたよ」のような何気ないやりとりで、私はすっかり舞い上がっていました。

ところが4日目、「川島さんは、セミナーに参加するのですか?」というメールが届きます。のらりくらりと返事をしていると、私の雑談はスルーされ、届くメールはセミナーを絶賛する内容ばかりになりました。
「〇〇先生は本当にすごい人!」
「次のステップでさらに変われる!」
「私もトレーナーになる!」

やがて1日5件ほどの勧誘メールが届くようになり、私は確信しました。「これは、サクラだ」。思い返せば、アイドルも日焼けした男性も、コミュニケーションに悩んでいる様子はまったくありませんでした。
勧誘の仕組み
冷静になった私は、この講座の仕組みを次のように推測しました。
ステップ1:否定と肯定
人格の否定と肯定を繰り返し、「自分は変わった」と錯覚させる
ステップ2:集団の圧力
高揚感が残るうちにお茶会に誘い、サクラが参加を促す
ステップ3:高額な講座
次の段階で30万〜40万円を支払わせる
ステップ4:資格と開業
150万円の講座へ進ませ、トレーナーとして開催費などを納めさせる
▼ 売上の試算(推測)
セミナー1:月30名×5万円=150万円
セミナー2:月9名×30万円=270万円
セミナー3:月3名×150万円=450万円
合計:920万円
広告費や会場費を払っても、十分に利益が出る仕組みです。

すべては勧誘のためだったと分かり、とてもつらい気持ちになりました。私はアイドルのメールアドレスを消去し、着信拒否に設定しました。

その後も実態を知るために、1か月ほどさまざまなセミナーを受講し、50万円ほどを使いました。この経験が、「無理な勧誘をしない」「根拠のある方法で練習する」という、現在の私の教室の方針につながっています。
身を守るために
その場で契約しない
「今日だけの割引」には応じず、一度持ち帰る
総額を確認する
次の段階、さらにその次まで、最終的にいくらかかるかを聞く
第三者に相談する
家族や友人など、セミナーと関係のない人に意見を聞く
高揚感が冷めるのを待つ
講座の直後やお茶会の場では、大きな決断をしない
強引な勧誘を受けたり、契約に不安があったりする場合は、消費者ホットライン「188(いやや)」に電話すると、お近くの消費生活センターなどの相談窓口につながります。
信頼できる教室の見分け方は話し方教室の選び方(10のポイント)で、資格を売りにする講座については資格商法を見抜く方法で解説しています。
よくある質問
Q.勧誘をどう断る?
セミナーで強く勧誘されたときは、「持ち帰って考えます」と伝えるだけで十分です。理由を詳しく説明する必要はありません。その場で決めることを求められること自体が、注意すべきサインです。
Q.契約してしまったら?
契約の内容や経緯によっては、解約できる場合があります。一人で悩まず、早めに消費者ホットライン「188」に相談してください。
Q.安心な教室の特徴は?
講師の本名や資格を公開している、料金の総額が事前にわかる、体験受講のあとに契約を急がせない、といった点が目安です。悩み別の選び方は話し方教室の種類と選び方をご覧ください。
関連コラム・運営元
話し方教室シリーズ:①悩み別の選び方|②講師の見抜き方|③効果
このコラムを運営するダイコミュ(株式会社ダイレクトコミュニケーション)は、人間関係に苦労してきた人が、安心して話す練習をし、仲間ができるコミュニケーション教室です。
公認心理師などの心理専門職が、心理学をもとに指導。ペアやグループで実際に会話を練習できる仕組みがあります。体験受講に興味がある方は、下記の看板からお待ちしています。筆者も講師をしています(^^)
※運営元も教室を開いているため、このコラムは、できる限り中立に、事実と根拠をもとに書いています。

コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連









上記の図でわかるように、

