共感力を高めるトレーニング方法
皆さんこんにちは。コミュニケーション教室を開催している公認心理師の川島達史です。当コラムは下記にあてはまる方におすすめです。
・好きな人との距離が縮まらない
・職場で「共感力がない」と言われた
・人間関係で誤解されやすい
当コラムを読み進めていくと、共感力を高めるコツをおさえることができると思います。是非最後までご一読ください。
共感力を高める心構え
共感についての第一人者はカールロジャーズです。ロジャーズはカウンセラーの態度を体系化した人物で、最も影響力のある心理療法家の10人に選ばれています。ロジャーズ(1957)[1]は、カウンセラーには3つの心構えが必要であると主張しています。共感の土台になる心構えなので、しっかりおさえましょう。
共感的理解
相手の私的な世界を想像するよう努力する ただし「あたかも」という感覚を失わないようにする
共感の基本は、相手の立場にたって、充分理解しようと努めることです。相手が話す内容の主人公になったような感覚で、しっかりと想像しながら傾聴しましょう。ただし、完全に相手になる必要はありません。あくまで「あたかも」という感覚を持ちながら、自分と相手の境界線は保つように心がけます。
無条件の肯定
自分の価値観で判断するのではなく、相手の話を尊重し、肯定的に聞くこと
共感をする際は、相手に敬意を払い、それぞれの人生を尊重する意識を持ちましょう。価値観や悩みは人間の数だけあります。例え自分の基準では、たいしたことがないと感じても、本人にとっては大問題なのです。相手の立場で、悩みを抱える状況や大変さを受け止めるようにしましょう。
自己一致
素直な自分で傾聴する、演技的にならないようにする、純粋な自分で聴く
自己一致はもっとも難しい概念です。例えば、「共感的理解」「無条件の肯定」をしようと思ったとしても、当然うまく行かないことがあります。その時は、理解しているふり、肯定できないのに無理に肯定することはしません。
理解できるまで話を聴いて、(そうかあ~本当に大変だったんだなあ)と肯定できると感じたときに、「それは大変でしたね…」と声に出すのです。演技的で、場当たり的な態度はNGです。純粋な気持ちで理解するように努めましょう。
その他、トラベルビーの共感的理解について解説しました。以下に折りたたんで記載していますので、福祉関係、医療関係の方はご一読ください。専門的な話なので、一般の方は飛ばしてOKです。

オウム返しの基本技術
ここからは共感の「技術面」を解説します。まずは基本となるオウム返しを解説します。オウム返しは厳密には6種類ほどあるのですが、初学者は、
・事実のオウム返し
・感情のオウム返し
・言い換えのオウム返し
の3つを練習していきましょう。
事実のオウム返し
事実のオウム返しとは、相手が言った事実だけをそのまま返す傾聴スキルです。例えば、
「昨日、京都に行ってきたんだ。
清水寺に初めて行ってきたよ!」
と友人が言ったとします。事実のオウム返しをすると、こんな感じです。
「京都に行ってきたんだねー」
「清水寺かあ~」
「初めての清水寺だったんだ」
このように、事実のオウム返しでは、相手の発話から事実の部分だけを切り取って返します。相手の言葉をそのまま返すだけでOKです。自分の気持ちを入れる必要はありません。簡単ですね。
感情のオウム返し
感情のオウム返しとは、相手が言った言葉の中から感情の部分を中心に返す傾聴スキルです。例えば、
「昨日、幼なじみと偶然会えて嬉しかった。また会う約束もできたんだ!」
と友人が言ったとします。感情のオウム返しをすると、こんな感じです。
「偶然の再会かぁ。うれしいよね~」
このように相手の感情を中心に切り取って返します。事実のオウム返しよりも、相手の心情を受け取った印象になります。
言い換えのオウム返し
言い換えのオウム返しとは、相手が言った言葉を少し変えて返す傾聴スキルです。
「楽しみにしていたコンサートだったのに、台風のせいで中止になってしまったんだよね…。すごく残念だった。」
と友人が言ったとします。言い換えのオウム返しをすると、こんな感じです。
「そっかあ…待ち遠しかったイベントが中止になると、がっかりだね…。」
こちらの事例では
・楽しみ→待ち遠しい
・残念→がっかり
と言い換えて返しています。言い換えのオウム返しは、一度、相手の言葉ではなく、自分の言葉で返すことになるので、「しっかりきいてくれた」という印象になります。
使用頻度
ここまで紹介した、事実と感情のオウム返しは、初学者でも簡単にできる一方で、「わざとらしくなる」というデメリットがります。そのため実はそこまで使用頻度は高くありません。実践的な使用頻度としては、
・事実のオウム返し10%
・感情のオウム返し15%
・言い換えが75%
ぐらいになります。初学者の方は事実と感情をまずはしっかり練習して、慣れてきたら言い換えるようにしましょう。それぞれ300回ぐらいは練習が必要です。ゆっくりマスターしてください。以下練習問題を作成しました。是非ご活用ください。

質問力を高める方法
共感力がある人は質問を使い分けることができます。質問の技術としては
・5Wの質問
・プラスの感情質問
・不安を聴くよ質問
があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
5Wの質問
相手の話をより具体的に掘り下げる質問法です。5Wとは、以下5つの質問の頭文字をとって名付けられています。
・いつ(When)
・誰と(Who)
・どこで(Where)
・きっかけ,なぜ(Why)
・詳しく,何を(What)
これらの質問を使うことで話の状況を理解することができます。カウンセリングなどでは比較的序盤に使うことが多いです。
例えば、「先日、横浜にいきました。楽しかったです!」と言われたとします。これだけでは話が表面的過ぎて、共感するポイントがわかりません。そこで、
「横浜のどの辺ですか?(Where)」
「何をしに行きました?(What)」
「誰と行ったんですか?(Who)」
このように質問をして会話の基本的な情報を集めていきます。すると、楽しさを感じたポイントが具体的になり、深く理解することができます。
②プラスの感情質問
プラスの感情質問とは、相手のポジティブな感情を深く理解するための質問です。ポイントとしては、プラスの感情を入れながら質問するのが原則になります。具体的には、
楽しい、嬉しい、わくわくする、勉強になる、興味が湧く、気持ち良い、美しい、元気が出る、テンションが上がる、リフレッシュできる
上記のような言葉を使いながら質問するように心がけていきましょう。
「行って楽しかったことは?」
「その活動は充実していましたか?」
「○○さんの地元の楽しいところは?」
「何か嬉しいことでもあった?」
「それはすごく面白いんじゃない?」
相手が前向きな会話をしたそうなときは特に有効です。
不安を聴くよ質問
不安を聴くよ質問は、プラスの感情質問とは逆です。相手が辛い状況で悩みを相談してきたときによく使います。具体的には、マイナスの感情を入れながら質問していきます。具体的には、
つらい、悲しい、しんどい、疲れている、元気がない、やる気がでない、めんどくさい、つまらない、興味がない、イライラする
これらの言葉を使いながら質問します。
「つらい状況が長く続いているの?」
「いつから厳しく感じるの?」
「いま落ち込んでるの?」
「結構いましんどいの?」
「孤独な感じが続いているのかな?」
悩みの相談時は無理にポジティブな質問をするよりも、マイナスの言葉を入れながら質問をしたほうが話しやすくなうのです。
使用頻度
実践的な使用頻度としては、
・5Wの質問 60%
・プラスの感情 40%
・マイナスの感情 40%
ぐらいになります。話の序盤は5Wで傾聴し、ある程度理解したら、話題によって、プラスやマイナスをそれぞれ使い分けて傾聴していきます。注意点として、質問は多くても1分に1回ぐらいでOkです。質問攻めにはならないように気をつけましょう。

間とテンポのコツ
次に間とテンポについて解説していきます。
間を十分とる
共感が下手な方は、まくし立てるように話し、しみじみ感じ取る「間」が不足しています。共感はじっくり味わうような間が重要です。すぐに質問をするのではなく、長すぎるかな…と感じてしまうぐらい、充分間を取って、じっくり傾聴していきましょう。
テンポを合わせる
共感をする上では、相手と話すスピードを合わせることが大事です。私自身は、相手の話す速度より20%ぐらいゆったり話すイメージで傾聴することを心がけています。特に早口な方は、せわしない傾聴になりがちなので気をつけましょう。
なお、ロジャーズの生前のカウンセリングの様子はこちらです。ゆったりとしたテンポを参考にしてみてください。13分前後に相談者の方の手を握っています!これはびっくりしました。日本ではちょっと難しいですね。。
感情を明確にする技術
共感を示すためには、相手の感情を明確にすることも大切です。
相手の気持ちを言葉にする
感情の明確化は以下の意味があります。
相手が言語化できない気持ちを代わりに言葉にして、心の整理を手伝う技法
例えば、友達が以下のように話したとします。
「先日、やっと夏に繁忙期が終わって、仕事にひと段落したんだけど、気がついたら休日やることがなくてね・・・」
上級者になると、この・・・の部分に何が隠れているかを察知して、繰り返すことできるようになります。
「少し寂しい気持ちになるよね・・・」
「時間が空くとどうしていいか困っちゃうよね・・・」
このように非言語部分を察知して、それを言葉にして返していきます。
効果
悩みを相談する方の中には、自分の気持ちをうまく言葉にできない方がいます。そのような時に相談者が代わりに明確化をすることで、悩みを整理する手助けをすることができます。
心構え
感情の明確化では、相手の発言から心情を推測して言葉をかけていくのが基本です。もちろん、あくまで推測なので専門家でも間違うことは結構あります。
間違った時は、相手がやんわりと正してくれるものです。間違ったとしても、それはそれで相手が自分の気持ちに気がつくきっかけになるのです。
ある程度「こんな心情なんじゃないかな」と思えたら、伝えてみましょう。ピッタリあったり、少しずれていりたりを繰返すことで、相手とのピントがあってくると思います。

共感疲労への対処法
最後に共感疲労に注意について解説していきます。
共感しすぎて疲れること
Figley(1995)[4]は、共感疲労は以下のように定義しています。
重要な他者の精神的ショックを与える出来事を知ることに起因する自然な結果として起こる行動と感情であり,精神的ショックを受けたり,苦しんでいる人を助ける,または助けたいということに起因するストレス
少し難しい定義ですが、基本的には共感しすぎて疲れること、と考えてよいでしょう。
共感疲労のリスク
共感疲労の主な症状としては、慢性的な疲労感や無気力感、気分の落ち込みやイライラしやすさなどがあります。
寝つきが悪く、睡眠を取っても疲れが取れないこともあります。これにより、仕事に行くのがつらくなったり、趣味を楽しめなくなったりすることもあります。また、悲しみを感じることが増え、日常生活の質が低下することも少なくありません。
共感疲労の対策
共感疲労を防ぐためには、一定の心理的距離を保つことも必要です。他者に対して共感する姿勢を示しつつも、時には自分の生活や感情から切り離して考えるようにすることが大切です。
例えば、利用者の辛い話を聞き、共感した上で優しい言葉をかけることは重要ですが、仕事が終わったらその話を一旦忘れることがポイントです。共感は大切ですが、自分を犠牲にしてまで他者に尽くすことは避けるようにしましょう。

入門編まとめ
共感力トレーニング入門編はここまです。おつかれさまでした。
①共感力を高める心構え
②オウム返しの基本技術
③質問力を高める方法
④間とテンポのコツ
⑤感情を明確にする技術
⑥共感疲労への対処法
この6点を意識するだけで充分共感的な聞き方ができるはずです。日常会話やビジネスまで共通して使うことができるので、是非研鑽してみてください。
共感と心理学研究
ここからは発展編になります!より共感についての理解を深めたいという方は、ぜひ以下を参考にしてみてください。
共感力トレーニングの講座
ここからは共感力をアップさせる「お知らせ」と「発展編」です。
しっかり身につけたい方へ
当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。
・共感力トレーニング
・3つのオウム返し練習
・悩みを抱える人への質問法
・間の取り方,温かい雰囲気を出すコツ
体験受講に興味がある方は下記のリンクからお待ちしています。筆者も講師をしています(^^)

相槌の打ち方
共感が得意な方は、相槌をしっかり打ちながら話を聴いていきます。以下のコラムで相槌力をつけていきましょう。
非言語の読み取りスキル
相手の表情、声の抑揚など、非言語を読み取ることは共感の基本になります。特に注意が必要です。非言語の読み取りのポイントは以下のコラムで解説しています。参考にしてみてください。
励ます力をつける
相手の話を傾聴するだけが共感力ではありません。時に相手を積極的に励ますことも大事です。励ます言葉の引き出しを増やしたい方は以下のコラムを参照ください。
来談者中心法を学ぶ
専門的な共感力を学びたい方はロジャーズの来談者中心法がおすすめです。特に福祉職、医療職の方はご一読ください。

コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
YouTube→
Twitter→
名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発
名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連










上記の図でわかるように、

