問題対応力を高める方法とは?原因分析から再発防止まで
皆さんこんにちは。現役経営者、公認心理師の川島達史です。私は現在こちらのコミュニケーション講座の講師として活動しています。今回のテーマは「問題対応力」です。
仕事では、どれだけ万全の準備をしても、顧客クレームやシステム障害、納期遅延など予期せぬトラブルは避けられません。重要なのは、こうした問題をどう解決し、再発を防ぐかにあります。そのカギとなるのが「問題対応力」です。
本コラムでは、これから管理職になる方や、マネジメントに不安を感じている方向けにマネジメントの基本「問題対応力」をわかりやすく、具体的な例を交えながら解説します。ぜひ最後までお読みください。
問題対応力とは
まずはビジネスにおける問題解決力についてみていきます。
問題解決力の意味
問題対応力とは、トラブルの本質を迅速に見極め、的確に解決し、その過程を未来の改善につなげる力です。
トラブルをチャンスに変えるスキル
ビジネスでのトラブルは、どんなに些細なものでも、放置すれば顧客の信頼を損ない、場合によっては企業の存続に影響することもあります。しかし、適切に対応できれば、業務プロセスの改善や新たなノウハウの獲得につながるチャンスになります。
トラブルに迅速かつ的確に対応する問題対応力は、マネージャーにとって欠かせないスキルといえます。
問題対応力を磨く4つのステップ
ここでは、問題対応力を磨く4つの手順を紹介します。
ステップ1:「異常」に気づく感度を高める
ステップ2:事実に基づいて状況を把握する
ステップ3:原因分析を習慣化する
ステップ4:解決策の実行と効果測定、そして再発防止
具体的なステップも紹介していきますので、日々の業務にぜひ取り入れてみてください。
ステップ1:「異常」に気づく感度を高める
小さな「異常の兆候」にどれだけ早く気づけるかが、マネージャーの問題対応力の第一歩です。これは、コッター博士が提唱する「統制」のプロセス、つまり計画とのズレを監視する能力に直結します。普段と違うことや、少しおかしいと感じることに注意を払い、そのままにしない習慣をつけましょう。
具体的な実践方法
数値の変化を見逃さない
売上や顧客問い合わせ数、生産量、エラー発生率などの数値を定期的にチェックし、過去の傾向や目標値からのズレがないか確認しましょう。
部下の様子を観察する
表情や会話が減った、集中力がないなど、日常の変化を意識しましょう。体調やメンタルの不調は、業務上の問題のサインであることも少なくありません。良好な関係を築けていれば異変に気づきやすくなります。
現場の「声」に耳を傾ける
現場メンバーが一番早く異変に気づくこともあります。日々の会話に隠れた疑問や不満、他部署からの情報を見逃さないようにしましょう。
「なぜだろう?」と問いかける習慣
順調に進んだときも、「なぜ今日はうまくいったのか?」と問いかけてみましょう。良い変化への疑問は、異変に気づく感度を高めます。
コミュニケーションのポイント
オープンな情報共有を促す
部下が問題や懸念を隠さずに報告できる、心理的安全性の高いチーム環境をつくりましょう。問題発生を責めるのではなく、早期報告を評価する文化が大切です。「報連相」をためらわない関係性を築くことで、情報がマネージャーに届きやすくなります。
定期的なヒアリングを行う
日報・週報、朝会や夕会、1on1ミーティングなどを通じて、部下から業務の進捗だけでなく「困っていること」「気になること」を積極的に引き出しましょう。形式的な報告に終わらせず、本音を話せる対話を意識することが重要です。
ステップ2:事実に基づいて状況を把握する
憶測や感情に流されると、問題の本質を見誤り、誤った解決策を導くリスクがあります。問題が発生したら、感情的にならず、まずは「何が起きたか」「いつ起きたか」「誰が関わったか」など、事実を正確に集めましょう。冷静な事実確認こそ、的確な対応の第一歩です。
具体的な実践方法
5W1Hで情報を整理する
問題が発生したら、以下の問いに答えて事実を客観的に整理しましょう。
When(いつ):問題はいつ発生したのか?
Where(どこで):どこで発生したのか?
Who(誰が): 誰が関与しているのか?
What(何を):何が起こったのか?
Why(なぜ):なぜそれが起きたと推測できるか?
How(どのように):どのようにしてそれが明らかになったのか?
客観的な証拠を集める
証拠に基づいた事実は、原因分析や説明責任を果たす上で不可欠です。関係者の証言だけでなく、データログやメール履歴など、客観的な記録も確認しましょう。
多角的な視点から情報を得る
異なる立場から意見を聞くことで、見落としを防げます。問題に関わる複数の関係者から話を聞き、それぞれの視点を突き合わせることで、全体像をより正確に把握できます。
コミュニケーションのポイント
傾聴と質問を徹底する
部下や関係者から話を聞くときは、途中で口を挟まず、最後までしっかり傾聴しましょう。質問は事実確認に限定し、相手を責める言い方は避けます。「具体的に何が起こったのですか?」「その時、どのような状況でしたか?」といったオープンな質問を意識することで、相手は話しやすくなります。
感情をコントロール
問題発生時は、焦りや怒りが生まれやすいものです。しかし、マネージャーが感情的になると、部下は萎縮し、正確な情報が出てこなくなる可能性があります。まずは深呼吸をして落ち着き、客観的な事実収集に集中しましょう。
ステップ3:原因分析を習慣化する
根本原因を突き止めなければ、同じ問題が何度も繰り返され、そのたびに対応に追われることになります。これは、コッター博士がマネジメントにおける「問題解決」の核と位置づけている部分です。表面的な原因にとどまらず、「なぜそれが起きたのか?」を繰り返し問いかけることで、真の原因を探りましょう。
具体的な実践方法
「なぜなぜ分析」を徹底する
現象に対して「なぜ?」と5回繰り返すことで、真の根本原因に迫る手法です。
例えば、ウェブサイトからの問い合わせが減った場合
Q1: なぜ問い合わせが減ったのか?
→ A1: アクセス数が減ったから。
Q2: なぜアクセス数が減ったのか?
→ A2:検索順位が下がったから。
Q3: なぜ検索順位が下がったのか?
→ A3:競合がSEO対策を強化したから。
Q4: なぜ競合は新しいSEO対策を始めたのか?
→ A4:弊社コンテンツが陳腐化したと感じたから。
Q5: なぜ既存コンテンツが陳腐化したのか?
→ A5: 更新プロセスがなく、担当者の専門知識も不足していたから。
このように、行動に直結する原因にたどり着くまで掘り下げることが重要です。
フィッシュボーン図で原因を整理する
フィッシュボーン図は、問題の「結果」に対して影響要因(人、設備、材料、方法、環境など)を枝分かれで整理する図です。視覚的に構造を把握でき、網羅的な検討に役立ちます。
因果関係を検証する
特定した原因が本当に問題を引き起こしているのかを検証しましょう。データ分析や実験、シミュレーションを通じて、仮説を確認します。複数の原因が絡む場合は、それぞれの寄与度も評価します。
コミュニケーションのポイント
非難しない文化をつくる
原因分析は、個人を責めるためではなく、プロセスやシステムの改善が目的であることを明確に伝えましょう。これにより、メンバーは恐れることなく、正直に情報を提供できます。
チームで原因分析を行う
異なる部門や立場のメンバーが参加することで、より包括的な視点が得られます。マネージャー一人で分析するのではなく、問題に関わるメンバー全員で意見を出し合いましょう。多様な視点が、見落としを防ぎ、より正確な原因特定につながります。
ステップ4:解決策の実行と効果測定、そして再発防止
根本原因を特定したら、それを取り除くための解決策を立て、迅速に実行しましょう。重要なのは、同じ問題が二度と起きないように、業務フローやルールを見直し、組織の学びにつなげることです。継続的な改善の要であるPDCAサイクルを回しながら、必要に応じて修正を加えていきましょう。
具体的な実践方法
具体的な解決策の立案
根本原因に対して複数の解決策を検討し、それぞれの効果・コスト・リスクを比較した上で最適なものを選びます。短期的な応急処置と長期的な根本解決策の両面を考慮し、具体的な行動計画に落とし込みましょう。
迅速な実行と進捗管理
できるだけ早く解決策を実行に移し、進捗を定期的に確認します。進捗の「見える化」と定期チェックで状況を把握し、必要に応じてリソースやスケジュールを調整しましょう。
効果測定と評価
解決策が問題解決に結びついているか、客観的指標で効果を測定・評価します。期待通りの効果がなければ、解決策の見直しや原因分析の再検討が必要です。
再発防止策の検討と業務への落とし込み
問題解決で終わらせず、再発防止策を講じましょう。
・業務プロセスを見直し、問題が起こりにくい仕組みをつくる
・新しい手順や注意点を明記したルールを改定する
・発生した問題と解決策、再発防止策を社内で共有し、組織全体の知識として蓄積する
これらを実践することで、組織全体のトラブル対応力が高まり、同じ問題の再発を防ぐことができます。
コミュニケーションのポイント
解決状況の透明化と報告
透明性の高いコミュニケーションは、組織内外からの信頼を築きます。問題が解決に向かっている過程や完了を、関係者全員に迅速かつ適切に報告しましょう。
チームでの振り返り
失敗から学ぶ姿勢をチーム全体で共有することが、真の問題対応力を育てます。問題解決後には、チームで「何がうまくいったか」「何が課題だったか」「次に活かせることは何か」を振り返る場を設けましょう。この学習の場が、チームの対応力を高め、将来の成功につながります。
まとめ
問題対応力は、単なるトラブルシューティングのスキルにとどまりません。それは、チームや組織が予期せぬ困難に直面した際に乗り越え、より強固になるためのレジリエンスを高める力です。コッター博士のマネジメント論が示すように、複雑な現代社会で組織が安定的に機能し続けるためには、問題に迅速かつ体系的に対処する能力が不可欠です。
ご紹介した4つのステップを意識して日々の業務に取り組んでみてください。小さな問題からでも実践を積み重ねることで、問題対応力は確実に向上し、チームをより強靭なものへと導くことができるでしょう。問題は恐れるものではなく、成長の機会として捉え、ぜひ実践してみてください。
もっと学びたい方へ
当コラムの内容をしっかり身につけたい方は、現役の経営者、公認心理師による講座をおすすめします。内容は以下のとおりです。
・コミュニケーションの基礎,傾聴練習
・怒りを和らげる,共感力トレーニング
・限界設定で身を守る,アサーション
・説明上手になるトレーニング
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連