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チームビルディング術入門

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チームビルディング術入門,はじめての管理職向け

皆さんこんにちは。現役経営者、公認心理師の川島達史です。私は現在こちらのコミュニケーション講座の講師として活動しています。今回のテーマは「チームビルディング」です。

現代のビジネスで大きな成果を出すには「チームの力」が欠かせません。複雑な課題や多様な顧客ニーズに対応するためには、個々の専門性だけでなく、メンバー同士が連携し、協力し合う「集合知」が必要です。そのカギを握るのが、マネージャーの「チームビルディング力」です。

本コラムでは、これから管理職になる方や、マネジメントに不安を感じている方向けにマネジメントの基本「チームビルディング力」をわかりやすく、具体的な例を交えながら解説します。ぜひ最後までお読みください。

チームビルディングとは

まずは、チームビルディングとはどのようなものかを見ていきましょう。

チームビルディングの意味

チームビルディングとは、メンバー同士が信頼し、助け合いながら、目標に向かって一丸となる環境をつくる力です。この力は、ジョン・コッター博士が提唱するマネジメントの主要プロセス「組織化と人員配置」や「モチベーションと鼓舞」に深く関係しています。

良好なチームワークを作るカギ

チームビルディングは、単なる懇親会やイベントの開催を意味するものではありません。チームの土台となる「信頼」を築き、メンバーが安心して能力を発揮できる環境を整え、共通の目標に向かって自律的に動ける文化を促す戦略的なプロセスです。良好なチームワークは、生産性の向上や創造性の促進など、多岐にわたるメリットをもたらします。

チームビルディング力を磨く3つの手順

ここでは、チームビルディング力を磨く3つの手順を紹介します。

ステップ1:心理的安全性を確保する
ステップ2:共通の目標を共有する
ステップ3:オープンなコミュニケーションを促す

具体例も交えて紹介していきますので、日々の業務にぜひ取り入れてみてください。

チームビルディング 

ステップ1:心理的安全性を確保する

チームビルディングの土台となるのが「心理的安全性」です。これは、チームの中で自分の考えや気持ちを率直に話しても、対人関係で不利益を被る心配がなく、安心して発言・行動できる状態を指します [1]。

心理的安全性が高いチームでは、メンバーは新しいアイデアを提案し、失敗を認め、助けを求めることをためらいません。逆に、心理的安全性が低いと、意見が出なくなり、学習の機会を失い、時には問題が隠されることもあります。だからこそ、マネージャーは意識的に、心理的安全性の高い環境をつくる必要があります。

具体的な実践方法

積極的に問いかける
定期的な1on1やチーム会議で、マネージャーから率先して声をかけましょう。「最近、業務で気になることはある?」「〇〇のプロジェクトで懸念点は?」といった具体的な質問が効果的です。オープンな質問で、安心して意見を言える雰囲気をつくることが大切です。

失敗を「学習の機会」とする
メンバーが失敗を報告したときは、「よく報告してくれた」「この経験から何を学べる?」と前向きな姿勢で対応しましょう。マネージャー自身が小さな失敗談を共有し「私もこういった失敗から学んだ」と語ることも、心理的安全性を高める上で有効です。

多様な意見を歓迎
会議で意見が出にくいときは、「全員の意見を聞きたい」「違う視点を持っている人は?」と呼びかけましょう。異なる意見には「貴重な視点をありがとう」と伝え、対立を対話に変える姿勢が重要です。

自分の「弱み」を見せる
マネージャーも完璧ではありません。困っていることや助けが必要なことを率直に共有しましょう。メンバーは心理的に安心し、「自分も弱みを見せていい」と思えるようになります。

コミュニケーションのポイント

傾聴と共感
メンバーが話すときは、最後までしっかり耳を傾けましょう。「なるほど、そういう状況だったんだね」「それは大変だったね」といった共感の一言を挟むと、安心感が生まれ、信頼関係が深まります。
フィードバックの質を高める
良い点は、できるだけ具体的に褒めることが大切です。一方で改善点を伝えるときは、行動に焦点を当てるようにしましょう。人格を否定する言い方は避け、前向きな改善につなげることがポイントです。

ステップ2:共通の目標を共有する

個々の能力が高くても、バラバラの方向を向いていてはチームは機能しません。チーム全員が「何を達成したいのか」を理解し、共有することで一体感が生まれ、目標達成につながります。これはコッター博士が指摘する「人員の整合化」の重要な側面であり、組織のエネルギーを一つに集中させることにもなります。

具体的な実践方法

目標設定にメンバーを巻き込む
マネージャーが一方的に目標を決めるのではなく、チームの目標設定の議論にメンバーを積極的に参加させましょう。自分たちで目標を決めることで、「自分ごと」としての意識が高まり、コミットメントが強くなります。

目標の意義を繰り返し伝える
設定した目標がなぜ重要なのか、達成が会社や顧客、そしてメンバー自身にどんな良い影響をもたらすのかを、具体的な言葉で何度も伝えましょう。数字だけでなく、その背景にあるビジョンや価値観の共有がモチベーションアップにつながります。

進捗を「見える化」し共有する
目標達成に向けた進捗状況を定期的にチームで共有しましょう。グラフや数値で「見える化」することで状況が把握しやすくなり、チーム全体の意識も高まります。週次の進捗確認会議などで成功事例を称賛し、課題もオープンに共有する場を設けるのがおすすめです。

成功体験を共有し、祝う
小さな目標でも達成できたら、チーム全体で喜びを分かち合いましょう。貢献したメンバーを具体的に称賛することで、自信と一体感が生まれ、次の目標に向けた意欲が高まります。

コミュニケーションのポイント

ストーリーテリングで共感を生む
目標の背景にあるストーリーや、目標達成によって実現する未来を語ることで、メンバーの感情に響きやすくなります。具体的な顧客の成功事例や、チームのこれまでの成長の軌跡を交えると、より共感が深まります。
双方向の対話を大切にする
目標に関して疑問や意見があれば、遠慮なく話せる雰囲気を作りましょう。対話を通して目標への理解を深めることで、メンバーの納得感が高まります。質問には丁寧に答え、共に目標に向かう一体感を育みましょう。

ステップ3:オープンなコミュニケーションを促す

チームビルディングにおいて、信頼関係を築き、チームとしての一体感を高める上で欠かせないのが、オープンなコミュニケーションです。定期的なミーティングだけでなく、雑談やランチ、社内イベントなど、メンバー同士が自由に交流し、互いを知る機会を増やすことが大切です。

具体的な実践方法

「心理的安全性」を前提とした対話の促進
ステップ1で述べた心理的安全性が確保されていることが前提です。その上で、意見の対立を恐れず、建設的な議論ができる場をつくりましょう。マネージャーは対話のファシリテーターとして、正直でオープンな意見交換を促すことが重要です。

定期ミーティングの「質」を高める
単なる報告会に終わらせず、ブレインストーミングや課題解決のディスカッション、知識共有など多様な形式を取り入れましょう。参加型で対話のあるミーティングは、メンバーの「貢献している感覚」を高めます。

インフォーマルなコミュニケーションを意図的につくる
会議の冒頭に雑談タイムを設けたり、休憩中に積極的に話しかけたりして、業務以外の会話を増やしましょう。リモートワークでは、オンラインでの「コーヒーブレイク」やランチ会を定期的に開くのも効果的です。こうした場は、単なる仕事仲間を超えた人間関係の構築につながり、信頼を深めます。

情報共有の透明性を保つ
マネージャーは、チームや会社に関する情報を積極的に、かつ透明性を持って共有しましょう。良いニュースだけでなく、課題や困難な状況も率直に伝えることで、メンバーは信頼されていると感じ、より当事者意識を持って行動するようになります。

コミュニケーションのポイント

マネージャー自身の積極的な関与
マネージャー自身が率先してオープンなコミュニケーションを実践し、メンバー一人ひとりに興味を持ち、積極的に話しかけましょう。マネージャーの姿勢は、チーム全体のコミュニケーション文化に大きな影響を与えます。
「聴く」に注力する
話すよりも、まずはしっかり聴くことが大切です。メンバーの言葉に耳を傾け、背景や感情を理解しようとすることで、信頼関係は一気に深まります。「受け止める姿勢」が安心感を生みます。
フィードバックの循環をつくる
マネージャーからの一方通行なフィードバックだけでなく、メンバー同士、さらにはメンバーからマネージャーへのフィードバックも奨励しましょう。双方向のフィードバックが回ることで、学びと成長のスピードが高まります。

チームビルディング スキル 伸ばし方

まとめ

コッター博士が提唱する「組織化と人員配置」による安定性と、「モチベーションと鼓舞」による推進力を組み合わせることで、チームビルディングは組織の成長を支えるエンジンとなります。

今回ご紹介した3つのステップを実践しながら、チームビルディング力を身につけ、より強く、一体感のあるチーム文化を築いていきましょう。

もっと学びたい方へ

当コラムの内容をしっかり身につけたい方は、現役の経営者、公認心理師による講座をおすすめします。内容は以下のとおりです。

・コミュニケーションの基礎,傾聴練習
・怒りを和らげる,共感力トレーニング
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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

*参考文献
[1] Edmondson, A. C. (1999). Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams. *Administrative Science Quarterly*, 44(2), 350-383.