意見をまとめる・整理する方法とは?会議を円滑に進める方法
皆さんこんにちは。こちらのコミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。
今回のテーマは「意見をまとめる・整理する方法」です。会議で意見がバラバラに出て、「結局何も決まらなかった」という経験はありませんか?
本記事では、意見をまとめる・整理する方法について詳しく解説していきます。目次は以下の通りです。
①なぜ意見がまとまらないのか
②意見を整理する基本のやり方
③実践で使える具体的手法
④会議を成功させるコツ
ぜひ意見整理のスキルを高めて、建設的な議論ができるようになるきっかけを掴んでください。
なぜ意見がまとまらないのか
意見がまとまらない理由を知ることで、解決策が見えてきます。多くの組織や会議で起こる問題を理解し、適切な対策を学んでいきましょう。
よくある3つの問題
会議や議論でよく起こる問題があります。これらの問題は、社会心理学の研究によって「集団思考」(グループシンク)という現象として説明されています[1]。集団思考とは、集団で意思決定をする際に、個人で考えるよりも質の低い結論に至ってしまう現象のことです。
よくある問題は以下になります。
話がバラバラになる
声の大きい人だけが話す
結論が出ないまま終わる
これらの問題が起こると、参加者は会議に対して「時間の無駄だった」「何のために集まったのかわからない」という不満を抱きます。心理学的には、このような状況は参加者のモチベーションを下げ、今後の協力関係にも悪影響を与えることが知られています。
整理しないとどうなる
意見を整理せずに議論を続けると、様々な問題が発生します。まず、同じ話題を何度も繰り返すことになり、貴重な時間が無駄になります。また、参加者は自分の意見が理解されていないと感じ、フラストレーションが溜まっていきます。
整理しない場合の問題は以下になります。
時間の無駄になる
みんなが不満を持つ
同じ議論を繰り返す
さらに、決定した内容があいまいになることで、実行段階で「あの時の決定は何だったのか」という混乱が生じることもあります。これは組織全体の効率性を大きく損なう要因となります。
上手にまとめるメリット
一方で、意見を上手にまとめることができれば、多くのメリットが得られます。チームワークに関する研究では、効果的な意思決定プロセスがチーム全体のパフォーマンス向上につながることが示されています。
上手にまとめるメリットは以下になります。
短時間で結論が出る
みんなが納得する
チームワークが良くなる
特に重要なのは、参加者全員が納得できる結論に達することです。これにより、その後の実行段階で協力的な関係が築けるようになります。また、意見整理のスキルが身につけば、将来的にも様々な場面で活用できる貴重な能力となります。
意見を整理する基本のやり方
意見を整理するには順番とコツがあります。段階を追って説明しますので、一つずつ確実に習得していきましょう。
まず全ての意見を聞く
意見整理の第一歩は、すべての参加者から意見を聞き出すことです。この段階では批判や評価をせず、どんな意見でも受け入れる姿勢が重要です。付箋に一つずつ意見を書き出すことで、後の整理作業がスムーズになります。
意見を聞く際のポイントは以下になります。
批判せずに聞く姿勢
付箋に書き出す方法
少数意見も大切にする
特に注意したいのは、声の小さい人や控えめな人の意見も確実に拾い上げることです。これらの意見には、しばしば重要なヒントが含まれています。司会者は積極的に発言を促し、全員が参加できる雰囲気作りを心がけましょう。
似た意見をグループにする
全ての意見が出揃ったら、次は似た内容の意見をグループに分けます。これは「KJ法」という手法の基本的な考え方です。KJ法は文化人類学者の川喜田二郎氏が開発した方法で、バラバラな情報を整理するのに非常に効果的です。
グループ分けのコツは以下になります。
KJ法の簡単なやり方
カテゴリ分けのコツ
見やすくまとめる工夫
グループ分けをするときは、完璧を求めすぎないことが大切です。おおよその分類ができれば十分で、後から調整することも可能です。
また、一つの意見が複数のグループに関連する場合は、最も関連の深いグループに入れるか、コピーして複数のグループに配置することも検討しましょう。
優先順位を決める
意見をグループ分けできたら、次は優先順位を決めます。すべての意見を同じレベルで扱うのではなく、重要性や実現可能性を考慮して順位をつけることが必要です。
この作業により、限られた時間やリソースの中で何に注力すべきかが明確になります。
優先順位を決める基準は以下になります。
重要度で分ける方法
実現可能性を考える
みんなで決める進め方
優先順位を決める際は、「緊急度」と「重要度」の2つの軸で考えると整理しやすくなります。緊急で重要なものから順番に取り組み、重要だが緊急でないものは計画的に進めるという考え方です。
参加者全員で話し合いながら決めることで、後々の納得感も高まります。
結論を導き出す
最終段階では、整理された意見と優先順位を基に、具体的な結論を導き出します。参加者全員が納得できる結論に達するためには、異なる意見を対立として捉えるのではなく、より良い解決策を見つけるための材料として活用することが重要です。
結論を導く方法は以下になります。
合意形成の技術
対立する意見の調整法
次のステップを明確にする
結論を出すときは、「誰が」「いつまでに」「何を」するかを具体的に決めることが大切です。あいまいな決定は後から混乱を招くため、できるだけ具体的で測定可能な内容にしましょう。また、決定事項は文書として残し、関係者全員が確認できるようにすることも重要です。
実践で使える具体的手法
すぐに使える具体的な方法を紹介します。場面に応じて使い分けることで、より効果的な意見整理ができるようになります。
ブレストとKJ法
ブレインストーミング(ブレスト)とKJ法を組み合わせることで、効果的な意見整理が可能になります。ブレストは1950年代にアメリカで開発された発想法で、自由にアイデアを出し合うことを目的としています。
その後でKJ法を使って整理することで、創造性と論理性の両方を活用できます。
ブレストの基本ルールは以下になります。
アイデア出しの基本ルール
情報整理の実践手順
効果的な組み合わせ方
ブレストでは「批判禁止」「質より量」「自由奔放」「便乗歓迎」の4つのルールを守ることが重要です。
参加者が自由に発言できる雰囲気を作ることで、普段は出てこないような斬新なアイデアが生まれる可能性が高まります。その後のKJ法による整理で、実用的なアイデアを選び出すことができます。
マインドマップ活用法
マインドマップは、中心にテーマを置き、そこから枝分かれさせて関連する情報を整理する手法です。視覚的に情報を整理できるため、複雑な関係性も理解しやすくなります。
特に、問題の原因分析や解決策の検討に効果的です。具体的には以下のような図になります。
上記のようにマインドマップを作成する方法は、主に手書きとデジタルツールに分かれます。
手書きでマインドマップを作成する場合は、色分けや図形を使って情報を整理しましょう。デジタルツールを使用する場合は、リンク機能や検索機能を活用することで、より効率的な情報管理が可能になります。
チームで共同編集できるツールを選べば、リアルタイムでの意見交換も可能です。
2軸マトリックス
2軸マトリックスは、縦軸と横軸の2つの基準で情報を整理する方法です。例えば、縦軸を「重要度」、横軸を「緊急度」として、意見や課題を4つの領域に分類します。この方法により、優先順位を視覚的に把握しやすくなります。
マトリックスの作成手順は以下になります。
縦軸と横軸の決め方
意見の配置方法
判断基準の作り方
軸の設定は、議論のテーマに応じて柔軟に変更できます。「コスト対効果」「短期対長期」「リスク対リターン」など、様々な組み合わせが可能です。
重要なのは、参加者全員が軸の意味を理解し、同じ基準で判断することです。完成したマトリックスは、意思決定の根拠として活用できます。
会議を成功させるコツ
意見整理を活かして、実りある会議にするためのポイントを学びましょう。事前準備から会議後のフォローまで、全体的な流れを理解することが重要です。
事前準備の重要性
成功する会議の8割は事前準備で決まると言われています。参加者が何を期待されているのか、どのような準備をすべきかを明確に伝えることで、会議の質が大幅に向上します。また、会議の目的や議題を事前に共有することで、参加者は心の準備ができ、より建設的な議論が可能になります。
事前準備のポイントは以下になります。
目的を明確にする
資料の用意
参加者への事前連絡
資料については、必要最小限に絞り込むことが大切です。情報過多は逆に議論を混乱させる原因になります。また、参加者には会議の1〜2日前までに資料を送付し、十分な検討時間を確保しましょう。可能であれば、事前に個別に相談を受けることで、会議当日の円滑な進行につながります。
進行中の注意点
会議の進行中は、時間管理と参加者の発言促進の両方に注意を払う必要があります。ファシリテーター(進行役)は中立的な立場を保ちながら、全員が発言できる機会を作ることが重要です。また、議論が脱線した場合は、適切なタイミングで軌道修正を行いましょう。
進行中の注意点は以下になります。
時間管理の方法
発言を促す技術
軌道修正のタイミング
発言を促す技術として、「他に意見はありませんか?」ではなく、「○○さんはどのようにお考えですか?」と具体的に声をかける方法が効果的です。また、沈黙を恐れずに少し待つことで、考えをまとめる時間を与えることも大切です。議論が白熱した場合は、一度休憩を挟むことで冷静さを取り戻すことができます。
会議後のフォロー
会議が終わった後のフォローは、決定事項を確実に実行に移すために不可欠です。議事録は24時間以内に作成し、参加者全員に配布することが理想的です。また、次回の会議や進捗確認の方法についても、会議中に決めておくことが重要です。
会議後のフォロー項目は以下になります。
議事録の作り方
決定事項の共有
次回への改善点
議事録には、決定事項だけでなく、検討中の課題や次回への持ち越し事項も明記しましょう。また、参加者からのフィードバックを積極的に求めることで、次回の会議をより良いものにすることができます。定期的に会議の進め方を見直し、改善を重ねることが、組織全体の会議文化向上につながります。
まとめ
意見をまとめる技術は、練習すれば誰でも身につけられるスキルです。最初は上手くいかないことがあっても、今回紹介した方法を継続的に実践することで、確実に上達していきます。
特に重要なのは、「すべての意見を聞く」「似た意見をグループにする」「優先順位を決める」「結論を導き出す」という4つのステップを順番に実行することです。また、ブレインストーミングやKJ法、マインドマップなどの具体的手法を使い分けることで、より効果的な整理が可能になります。
会議の成功は事前準備で8割が決まることを忘れずに、目的の明確化と適切な進行を心がけましょう。そして何より大切なのは、参加者全員が納得できる結論を目指すことです。
もっと学びたい方へ
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連