コンセンサスを取る方法とは?会議で合意を得る方法
皆さんこんにちは。こちらのコミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。
今回のテーマは「コンセンサスを取る方法」です。会議で自分の意見を伝えても、反対されてうまくまとまらない…そんな悩みを持つ方は多いのではないでしょうか。
本記事では、会議やプロジェクトでみんなの納得を得るための実践的な方法について詳しく解説していきます。目次は以下の通りです。
①コンセンサスって何?
②なぜ必要なのか
③会議前の準備
④会議の進め方
⑤反対意見への対応
⑥会議後のフォロー
ぜひコンセンサスを取るスキルを高めて、チームをまとめる力を身につけてください。
コンセンサスって何?
まずは「コンセンサス」という言葉の意味をしっかり理解しましょう。この言葉を正しく知ることで、会議での目標が明確になります。
合意や同意のこと
コンセンサスとは、会議や打ち合わせで関係者の意見が一致することです。英語の「consensus」から来ている言葉で、「みんなが納得している状態」を指します。ビジネスでは、プロジェクトを進めるときや新しいルールを作るときなど、様々な場面で使われています。
ここで大切なのは、全員が100%賛成という意味ではないということです。多少の妥協があっても、「まあ、これならいいだろう」と関係者が納得していれば、それもコンセンサスと言えます。重要なのは、後から聞いてない、納得してないという人が出ないようにすることです。
根回しも含まれる
日本のビジネスでは、コンセンサスという言葉に「事前の根回し」という意味も含まれています。根回しとは、会議の前に関係者と一対一で話をして、意見を聞いたり説明したりすることです。
「根回し」と聞くと悪いイメージを持つ人もいますが、実は大切な準備作業です。いきなり会議で話を進めるよりも、事前に相談しておく方が、スムーズに物事が決まります。時間はかかりますが、後でトラブルになるリスクを大きく減らせます。
多数決との違い
多数決は、賛成が多い方に決めるやり方です。51%が賛成なら、49%が反対でも決定します。一方、コンセンサスは、反対している人にも理解してもらうことを目指します。
多数決は早く決まりますが、反対派が不満を持ったまま進めることになります。コンセンサスは時間がかかりますが、みんなが納得してから進むので、実行するときの協力が得やすくなります。
組織心理学の研究では、意思決定への参加が高いほど、その決定への支持が高まることが示されています[1]。
コンセンサスはなぜ必要?
コンセンサスを取ることで得られるメリットを理解すれば、面倒な準備も前向きに取り組めるようになります。
チームの団結が強まる
みんなで話し合って決めたことは、「自分も関わった」という気持ちが生まれます。トップダウンで一方的に決められたことよりも、自分の意見を聞いてもらえた方が、やる気が出ます。
意見が違っても、しっかり話し合うことで、お互いの立場や考え方を理解できます。この過程が、チームの絆を強くします。結果として、プロジェクトを進めるときの協力体制が整います。
後からトラブルにならない
事前にコンセンサスを取らずに進めると、後から「そんな話は聞いていない」「納得していない」という声が上がります。プロジェクトの途中で反対意見が出ると、計画を変更したり、やり直したりする必要が出てきます。
特に関係者が多いプロジェクトでは、一人でも納得していない人がいると、その人が協力してくれず、全体の進行が止まってしまうことがあります。最初は面倒でも、しっかりコンセンサスを取っておけば、こうした手戻りを防げます。
色々な意見が集まる
コンセンサスを取る過程では、様々な立場の人から意見を聞きます。自分では気づかなかった問題点や、より良いアイデアが出てくることがあります。
少数意見の中にも、重要なヒントが隠れていることがあります。全員の意見を聞くことで、計画の質が高まり、リスクを事前に見つけられます。結果として、成功する確率が上がります。
会議前の準備
コンセンサスを取るには、会議前の準備が最も重要です。ここでの準備が、当日の成功を左右します。
目的をはっきりさせる
まず、「何を決めたいのか」「どんな合意を取りたいのか」を明確にします。目的があいまいだと、話し合いがあちこちに飛んで、結論が出ません。
例えば、「新商品について話し合う」では広すぎます。
新商品のターゲット層を20代女性にするか30代女性にするか決める
など、具体的にします。ゴールが明確だと、参加者も何について考えればいいか分かります。目的は、会議の案内を送るときに、必ず書いておきましょう。
必要な人を選ぶ
その決定に関係する人を洗い出します。直接関わる人はもちろん、影響を受ける部署の人も含めます。キーパーソンを見落とすと、後から「自分は聞いていない」と言われてしまいます。
ただし、人数が多すぎると意見がまとまりません。10人を超える場合は、各部署の代表者に絞るなど、工夫が必要です。重要な決定ほど、誰を呼ぶかが大切になります。
事前に根回しする
会議の前に、キーパーソンと一対一で話をします。これが「根回し」です。特に反対しそうな人や、影響力のある人には、必ず事前に相談しておきます。
根回しでは、相手の意見を聞き、心配なことを理解します。可能であれば、その場で不安を解消したり、計画に反映したりします。「あなたの意見を大切にしている」という姿勢を示すことが重要です。会議の場でいきなり提案すると、驚いて反対されることがあります。
資料を準備する
会議で使う資料を、事前に関係者に配ります。数字やデータがあれば、それも含めます。情報が足りないと、人によって理解が違ってしまいます。
資料は、専門用語を避けて、誰でも分かる言葉で書きます。グラフや図を使うと、より理解しやすくなります。質問がありそうな部分は、補足説明も準備しておきましょう。
会議の進め方
当日の会議では、全員が納得できる進め方を心がけます。ここでの対応が、コンセンサスの成否を決めます。
目的を再確認する
会議の最初に、「今日は何を決めるのか」をもう一度確認します。参加者全員が同じゴールを見ていることを確かめます。
この会議の目的は、新商品のターゲット層を決めることです。今日の終わりまでに、どの年代を狙うか合意を取りたいと思います
のように、具体的に伝えます。これにより、参加者の意識が統一されます。
全員に話す機会を作る
コンセンサスを取るには、全員の意見を聞くことが大切です。声の大きい人だけが話す会議では、不満が残ります。
「○○さんは、どう思いますか?」と、まだ発言していない人に意見を求めます。オンライン会議では、チャット機能を使って意見を募るのも効果的です。「反対意見はありませんか?」と積極的に聞くことで、後から問題になることを防げます。
意見を整理する
色々な意見が出たら、ホワイトボードや画面で整理します。似ている意見をまとめたり、論点を分類したりします。
今出た意見は、大きく分けて3つですね。コスト面、スケジュール面、品質面です
のように整理すると、何について話しているのか分かりやすくなります。意見の関係性を示すことで、対立が和らぎます。
共通点を探す
意見が分かれたときは、対立点ばかりに注目せず、共通している部分を探します。
みんな、お客様に喜んでもらいたいという思いは同じですね
のように、共通の価値観を確認します。
共通のゴールを再確認すると、「手段は違っても、目指すものは同じ」という認識が生まれます。すると、お互いの意見を受け入れやすくなります。
妥協点を見つける
完全に意見が一致することは稀です。お互いが少しずつ歩み寄る必要があります。
A案を基本として、B案の心配点を解消する対策を加える
のように、両方の良いところを組み合わせます。
どうしても一致しない場合は、
A案を基本として、B案の心配点を解消する対策を加える
のように、段階的に進める方法もあります。
決まったことを確認する
会議の最後に、
今日決まったことは、○○です。よろしいですか?
と全員に確認します。黙っている人がいたら、「○○さん、大丈夫ですか?」と個別に聞きます。
誰が、いつまでに、何をするのかも明確にします。
では、○○さんは来週までに資料を作成、△△さんは関係部署に連絡、ということでお願いします
のように、具体的に決めておくことが大切です。
反対意見への対応
反対意見が出たときの対応が、コンセンサスを取る鍵となります。ここでの対応次第で、結果が大きく変わります。
まず受け止める
反対意見が出たら、すぐに否定せず、まず受け止めます。
○○さんは、××という点が心配なんですね
と、相手の意見を復唱します。
話を聞いてもらえたと感じると、相手も落ち着いて話ができます。逆に、すぐに否定すると、感情的になって、建設的な議論ができなくなります。
理由を聞く
なぜ反対なのか、理由を丁寧に聞きます。
どの部分が心配ですか?
具体的にどんな問題が起こりそうですか?
と質問します。
理由を聞いていくと、実は小さな心配事だったり、誤解だったりすることがあります。また、聞いていくうちに、本当の心配事が見えてくることもあります。
共感を示す
確かに、その点は心配ですね
その視点は大切ですね
と、相手の心配を認めます。敵ではなく、より良い結論を出すための仲間だという姿勢を示します。
共感した上で、
その心配を解消するために、こんな対策はどうでしょうか
と提案します。頭ごなしに否定するのではなく、一緒に解決策を考える姿勢が大切です。
代わりの案を提示する
ただ反対するだけでなく、「では、こうしたらどうでしょうか」と代わりの案を出すように促します。または、自分から代替案を提案します。
A案が心配なら、
B案ではどうでしょうか
・
A案の心配な部分だけ、
こう修正するのはどうですか
のように、柔軟に対応します。完璧な案はないので、お互いに歩み寄る姿勢が重要です。
上司への反対の仕方
上司に反対するときは、特に慎重に言葉を選びます。効果的な伝え方のポイントは以下になります。
・前置きの言葉を使う
・相手を立てる
・部分的な懸念を伝える
具体的には、
部長のおっしゃることは理解できます。一方で、現場では××という状況がありまして、△△という心配があります。もしよろしければ、私の考えも聞いていただけませんか?
のように、相手を立てながら意見を言います。全否定は避けて、「基本的には賛成です。ただ、この部分だけ心配で」のように伝える方法が効果的です。
会議後のフォロー
会議が終わってからも、コンセンサスを維持する作業があります。ここを怠ると、せっかくの合意が崩れてしまいます。
議事録を共有する
会議で決まったことを、議事録にまとめます。誰が見ても分かるように、箇条書きで簡潔に書きます。
特に重要なのは、「誰が、いつまでに、何をするか」を明記することです。
これがないと、誰も動かず、プロジェクトが進みません。議事録は、参加者全員に送り、欠席した関係者にも共有します。
心配そうな人にフォローする
会議中、あまり納得していないように見えた人には、個別に声をかけます。「先ほどの件、大丈夫ですか?何か心配なことはありませんか?」と確認します。
小さな不満や心配事が、後で大きなトラブルになることがあります。早めにフォローしておけば、問題を防げます。
進捗を報告する
決まったことを実行に移したら、定期的に進捗を報告します。「先日決まった件、順調に進んでいます」と伝えることで、みんなの協力を維持できます。問題が起きたら、早めに報告して、再度相談します。
黙って進めて失敗するよりも、途中で相談する方が、信頼を保てます。
まとめ
会議で意見がまとまらない、反対されて話が進まない…そんな悩みを抱えているあなたも、今日からコンセンサスを取る技術を実践してみてください。事前の準備、当日の進め方、反対意見への対応、会議後のフォロー。この4つのステップを意識するだけで、会議の質が大きく変わります。
完璧な全員一致は難しくても、「まあ、これならいいか」とみんなが納得できる結論を目指しましょう。最初は時間がかかるかもしれませんが、チームの団結が強まり、プロジェクトの成功率が高まります。明日の会議から、ぜひ実践してみてください。
もっと学びたい方へ
コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連
[1] Locke, E. A., & Schweiger, D. M. (1979). Participation in decision-making: One more look. Research in organizational behavior, 1(10), 265-339.