マネージャーのための計画力,目標達成の秘訣
皆さんこんにちは。現役経営者、公認心理師の川島達史です。私は現在こちらのコミュニケーション講座の講師として活動しています。今回のテーマは「マネージャーのための計画力」です。
計画力は、ビジネス目標を達成するうえで欠かせないスキルのひとつです。しかし、「目標達成のために何をすべきか分からない」「どこから手をつけていいか迷う」、そんな悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。
そこで本コラムでは、これから管理職になる方や、マネジメントに不安を感じている方に向けて、マネジメントの基本「計画力」についてわかりやすく解説していきます。具体的な例を交えながら、実践で役立つヒントをお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
計画力とは
まずはマネジメントにおける計画力についてみていきましょう。
マネージャに欠かせない能力
マネジメントにおける計画力とは、ビジネス目標を具体的な行動に落とし込み、効率的に達成するためのロードマップを描く力です。
リーダーシップ論の第一人者であるジョン・コッター博士が提唱した、マネジメントの主要プロセスのひとつ「計画と予算策定」にも通じる、マネージャーに欠かせないスキルです。
チームを成功に導く羅針盤
明確な計画は、チーム全員が同じ方向を向き、効率よく行動するための指針となります。加えてメンバーは安心して業務に取り組むことができ、達成感も積み重ねやすくなります。
計画は単なる作業の指示書ではなく、チームを成功に導く羅針盤であり、メンバーのやる気を引き出す大切なツールなのです。
計画力を磨く4つのステップ
ここでは、計画力を磨く4つの手順を紹介します。
ステップ1:目標の具体化と明確化
ステップ2:タスクの洗い出しと分解
ステップ3:優先順位の設定とリソース配分
ステップ4:「見える化」の徹底と共有
具体例を交えながら紹介していきますので、日々の業務にぜひ取り入れてみてください。
ステップ1:目標の具体化と明確化
目標をより具体的にすることで、チーム全体が行動に移しやすくなり、進捗の把握もしやすくなります。本コラムでは、目標設定に役立つ「SMARTの法則」をご紹介しましょう。SMARTとは、目標設定で意識すべき5つの要素の頭文字をとったもので、1981年にジョージ・T・ドラン氏が提唱したフレームワークです。
SMARTの法則
S (Specific:具体的に)
何を、どこまで達成したいのかを具体的に示します。曖昧さを排除することで、チーム全体の認識のズレを防ぎ、各メンバーが自分の役割と貢献を明確に理解できます。たとえば「売上を上げる」ではなく、「新製品Aの売上を〇月までに〇〇円にする」のように、誰が聞いてもわかるように具体的にしましょう。
M (Measurable:測定可能に)
達成度が測れるように、数字を入れます。たとえば「顧客満足度を〇%向上させる」といった客観的に判断できる指標を設定することで、進捗状況を正確に把握し、必要に応じて軌道修正もできます。
A (Achievable:達成可能に)
今のチームが少し頑張れば届く、挑戦的でありながらも達成可能な目標を設定します。高すぎる目標は、チームに疲弊と諦めをもたらし、簡単すぎる目標は成長を促しません。チームの能力やリソース、そして外部環境を現実的に考慮することが大切です。
R (Relevant:関連性があるか)
目標が、チームや会社の大きなビジョンや戦略と関連しているか、貢献できるかを考えましょう。個人の目標がチームや部署の目標、会社全体の目標に繋がっていることを明確に示すことで、メンバーは自分の仕事の意義を感じやすくなり、「なぜこの仕事をするのか」という目的意識を持って取り組めます。
T (Time-bound:期限があるか)
いつまでに達成するのか、明確な期限を設けましょう。明確な締め切りは、行動を促し、計画の進捗を管理する上で不可欠です。短期的な目標、中期的な目標、長期的な目標を区別し、それぞれの期限を設けることで、計画全体がより具体的になります。
「売上アップ」という目標をSMARTの法則に当てはめると「次年度第一四半期までに、法人顧客向けの新サービスBの契約数を前年同期比で20%増加させる」といった形になります。
ステップ2:タスクの洗い出しと分解
目標が明確になったら、目標達成に必要なタスクをすべて洗い出し、実行可能な「小さなステップ」まで分解していきます。このタスクの洗い出しと分解には、プロジェクト全体を階層的に細分化し、最終的に管理可能な最小単位の作業パッケージにまで分解する「WBS (Work Breakdown Structure:作業分解構造図)の考え方」が活用できます。
WBSの特徴
全体像の把握と作業漏れの防止
プロジェクトの全範囲を視覚的に把握でき、必要な作業が抜け落ちることを防ぎます。
タスクの明確化
各タスクが具体的になり、担当者が「何をすべきか」を迷わずに済みます。
工数と期間の見積もり
細分化されたタスクごとに必要な時間やリソースを見積もりやすくなります。
進捗管理の容易化
小さなタスクごとに進捗を追うことができるため、問題の早期発見に繋がります。
先ほどの「新サービスBの契約数を20%増加させる」という目標であれば、以下のように分解できます。
ステップ3:優先順位の設定とリソース配分
最初にタスクの「重要度」「緊急度」を見極め、適切な優先順位付けを行います。この時役立つのが、アメリカの元大統領ドワイト・D・アイゼンハワーが考案したとされる「アイゼンハワー・マトリックス」です。このフレームワークでは、タスクを「緊急度」と「重要度」の2軸で分類し、4つの象限に分けて整理します。
アイゼンハワー・マトリックス
第1象限:「重要度が高く、緊急度も高い」
放置できない「危機」であり、最優先で即座に対応すべきタスクです。
第2象限:「重要度は高いが、緊急度は低い」
緊急ではないものの、組織の成長や将来の成功に不可欠なため計画的に実行します。
第3象限:「重要度は低いが、緊急度は高い」
一見緊急に見えるが、本質的な重要性は低いものです。可能なら委任して実行しましょう。
第4象限:「重要度も緊急度も低い」
重要性・緊急度ともに低いので、思い切って「やらない」という選択も計画を効率的に進める上で重要な決断です。
図にまとめると以下の様になります。
優先順位をつける
次に、それぞれのタスクに適切なリソース(人材、時間、予算など)を割り当てていきます。誰がそのタスクを担当するのか、どれくらいの時間をかけるのか、どのくらいの予算を使うのかを明確にしましょう。
この時、特定の人に負荷が集中しないよう、チーム全体のスキルや経験、現在の業務量を考慮し、最適なリソース配分を行うことが重要です。また、メンバーの成長を促すために、少し挑戦的なタスクを任せることは、人材育成を両立させる上で有効です。
ステップ4:「見える化」の徹底と共有
計画の「見える化」を徹底し、全員がいつでも進捗を確認できる状態にします。この「見える化」を支えるのが、コミュニケーション力です。コッター博士も、変革を成功させるためには、単に計画を提示するだけでなく、人々にその必要性を「納得」させ、「感情に訴えかける」ことの重要性を指摘しています。
見える化の方法
物理的な「見える化」
ホワイトボードや大きな紙に計画を買いだします。
チームの共有スペースに計画の全体像や主要なタスクを掲示することで、常にメンバーの目に触れるようにします。視覚的な情報は、記憶に残りやすく、意識付けに役立ちます。進捗を色分けしたり、完了したらチェックを入れたりするなど、視覚的な工夫を凝らすと、さらに効果的です。
デジタルツールによる「見える化」
Google スプレッドシート、Trello、Asana、Jira、Backlogなどのプロジェクト管理ツールを使えば、タスクの担当者、期限、進捗状況などをリアルタイムで共有し、更新できます。これらのツールは、特に分散したチームやリモートワーク環境において、計画の透明性を高め、スムーズな連携を可能にします。コメント機能やファイル添付機能を使えば、タスクに関する情報や議論も一元管理でき、コミュニケーションの効率化にも繋がります。
コミュニケ―ションのポイント
定期的な進捗確認と対話の場
週次ミーティングや朝会・夕会で、チーム全員で対話をしましょう。朝会・夕会では、毎日5分〜10分程度の短い時間で、前日の成果や今日の予定、困りごとを共有します。週に一度のミーティングでは、より詳細な進捗確認や課題解決の議論を行います。マネージャーは、メンバーが安心して発言できるよう、積極的に質問し、傾聴する姿勢を見せましょう。
1on1ミーティング
個々のメンバーと定期的に1対1で話す機会を設け、個人のタスクの進捗や計画に対する理解度、モチベーション、不安などをヒアリングしましょう。収集した情報は、計画の微調整や個別のサポートに役立つとともに、個別の対話を通じて、メンバーのキャリア志向やスキルアップの意向を把握することもできます。
目標達成への意識統一と共感の醸成
計画を共有するだけでなく、「なぜこの計画で進めるのか」「この計画が達成できたら、チームや自分たちにどんな良いことがあるのか」を繰り返し伝え、メンバーのモチベーションを高めましょう。コッター博士も、変革を成功させるためには、単に計画を提示するだけでなく、人々にその必要性を「納得」させ、「感情に訴えかける」ことの重要性を指摘しています。
まとめ
今回のコラムでは、ジョン・コッター博士の理論をベースに、マネージャーのための計画力について解説しました。計画は一度作ったら終わりではありません。状況の変化に応じて柔軟に見直し、修正していく姿勢も不可欠です。計画は、継続的な対話を通じて、より良いものへと進化させていく意識が求められますので、このコラムで挙げた具体的な行動の中から、実践してみることから始めてみましょう。
今回の診断とこのコラムが、あなたのマネジメントスキル向上への最初の一歩となることを心から願っています。もし、コミュニケーションやマネジメントについてもっと深く学びたいと感じたら、いつでも私たちのコミュニケーション講座をご活用ください。
もっと学びたい方へ
当コラムの内容をしっかり身につけたい方は、現役の経営者、公認心理師による講座をおすすめします。内容は以下のとおりです。
・コミュニケーションの基礎,傾聴練習
・怒りを和らげる,共感力トレーニング
・限界設定で身を守る,アサーション
・説明上手になるトレーニング
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コラム監修
名前
川島達史
経歴
- 公認心理師
- 精神保健福祉士
- 目白大学大学院心理学研究科 修了
取材執筆活動など
- NHKあさイチ出演
- NHK天才テレビ君出演
- マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
- サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
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名前
長田洋和
経歴
- 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
- 東京大学 博士 (保健学) 取得
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 精神保健福祉士
取材執筆活動など
- 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
- うつ病と予防学的介入プログラム
- 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

名前
亀井幹子
経歴
- 臨床心理士
- 公認心理師
- 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
- 精神科クリニック勤務
取材執筆活動など
- メディア・研究活動
- NHK偉人達の健康診断出演
- マインドフルネスと不眠症状の関連