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エンパワーメントとは?使い方や意味を分かりやすく解説

エンパワーメントとは?使い方や意味を分かりやすく解説①

みなさん、こんにちは!精神保健福祉士の杜岡,監修の公認心理師の川島です。私たちは、医療機関で精神科ケースワーカーとして勤務し、その後、児童福祉分野で相談業務や虐待対応を行ってきました。

本コラムでは「援助者向けエンパワーメント入門」について詳しく解説をしていきます。


コラムの目標
・エンパワーメントの意味を理解
・援助者としての基本を押さえる
・具体的なスキルUPを目指す

  • 全体の目次
  • 入門①エンパワーメントの理解
  • 入門②アメリカと日本の歴史
  • 入門③援助者に必要なスキル
  • 発展 福祉研究,経営学研究
  • 発展 簡易診断とチェック 
  • 発展 事例
  • 助け合い掲示板

入門①~③を読み進めていくと、基本的な知識と必要なスキルを抑えることができると思います。是非入門編は最後までご一読ください。

入門①エンパワーメントの定義

定義

現在、エンパワーメントの多くの分野で共通した意味は

「社会的に差別や搾取を受けたり、組織の中でコントロールしてゆく力を失われた人々が、そのコントロールを取り戻すプロセス」

とされています(久木田,1998)。

簡単に言うと、人がその人らしく生きる、つまり自分の持っている能力やスキルを自覚し、社会との関わりの中で継続的に発達・向上させてゆくということです。

本来持っている能力を開花

エンパワーメントの根底には、
『能力や権限は、訓練や指導によって得られてゆくものではなく、本人が本来もっているものである』
という考え方があります。

しかし、それが様々な社会的制約によって発揮されてこなかったため、あらゆる社会資源を活用し、発揮できるよう条件整備を行なっていく必要があるということです。

すべての人々はみな、生まれながら様々な個性、能力、可能性を持っています。個人の能力を尊重した肯定的な働きかけにより、その潜在能力を取り戻し、力をつけてゆくことがエンパワーメントの哲学なのです。

エンパワーメント

入門②エンパワーメントの歴史

エンパワーメント概念は、米国でのアフリカ系アメリカ人による差別撤廃運動に関わったソーシャルワーク実践にその起源があると言われています(西梅,2004)。

アメリカでの発展

・1950年代以前
エンパワーメント(empowerment)という単語は、もともとは「権限をゆだねること」「能力を与えること」という意味で、アメリカにおいて様々な領域で用いられるようになりました。

・1950年代~1960年代
第2次世界大戦以降、アメリカにおける公民権運動やカウンセリングで使われるようになりました。

・1970年代~1980年代
フェミニズム運動において、社会変革を目指す動きと連動してきました(久木田,1998)1980年代では、アメリカの公衆衛生や福祉、看護、精神保健などの領域でも用いられるようになりました。

日本での発展

・1990年代以降
日本で、この用語が多く用いられるようになったのは、1990年代以降になります(森田,1998;小田,1999)。現在エンパワーメントという用語が使われている分野は、

・ジェンダー
・経営学
・保健医療
・社会福祉

などなど、多岐にわたっています。

例えば、ジェンダーであれば男尊女卑などの性差別がなくなりつつあり、女性にも様々な選択ができる社会になっています。経営学の分野では、部下のモチベーションの調節などに活用されています。

そのほか、看護や介護などの社会福祉では、障害や病を抱えた人が自分の生活をコントロールすることという意味で用いられています。

*講師の雑感  エンパワーメントは精神保健福祉の現場で頻繁に使われる言葉です。1日1回は使うと言っても良いぐらいです。クライアントの潜在的な能力を引き出す力が、援助者には強く求められます。

入門③援助者に必要なスキル

入門③ではエンパワーメント力に必要な具体的なスキルを紹介させて頂きます。エンパワーメント力は、多岐に渡ります。そのためあらゆるものが挙げられますが、入門編としては最低限押さえておきたい3つをお伝えします。

ラポールを築く力

援助者は、クライアントと信頼関係を築く必要があります。この時大事なのが、ラポールを築く力です。信頼関係なくしてエンパワーメント力は向上しません。ラポールを築くコラムも参照ください。

傾聴力

エンパワーメントの基本は傾聴力です。援助職はエンパワーメント力がないと言っても過言ではありません。傾聴力も奥が深く、様々なやり方がありますが、初学者としてはまずはオウム返しや、質問を創るスキル学習から始めるといいでしょう。

スキル学習は退屈な面もありますが、やはり基本は押さえておくべきです。まずは傾聴力コラムで練習をして、中級者の方は共感力コラムを参照ください。

リソースの発見力

エンパワーメントをするには、相手のリソースとを発見する力が必須です。リソースとは、目的達成のために利用可能なあらゆる資源を意味します。

ラポールを築き、傾聴していくと、だんだんと相手の本質が見えて、長所が見えてくるようになります。リソースの発見には、リフレーミング力過程褒め力,*昇華などが大事になります。

*昇華(動画
自分の中で受け入れがたい欲求や衝動を学問や芸術活動など社会的に望ましい方向に変化させ発散させていく心の働き。

入門まとめ

ここまでエンパワーメントについて入門編を解説してきました。ここまでをまとめると以下のようになります。

・人はそもそも能力を持っている
・援助者は主体性を引き出す
・ラポール,傾聴,リソース発見を発見しよう

*講師の雑感  エンパワーメントは粘り強さが大事です。クライアントに必要なのは「自分の力で乗り越えた」という実感です。援助者は補助輪にすぎないのです。あくまで自転車をこぐのはクライアントであることを忘れないようにしましょう。

自己診断,チェック

以下に、自己診断にも使える「エンパワーメント簡易診断」のリンクをご用意しました。客観的な状況を知りたい方はご活用ください。定期的に自己チェックしておくことをお勧めしています。

発展編,エンパワ‐メント研究

ここから先はより深くエンパワーメントを理解したい方向けの内容となります。気になるコンテンツがある場合は、ぜひ一読して理解を深めてくださいね。

まずは福祉、経営学の分野からエンパワーメントの研究事例をご紹介していきます。

福祉分野の研究

大沼ら(2007)の研究では、陸陽中学校の全校生徒455名を対象に、質問紙調査を用いてエンパワーメントの増減を調査しました。

調査は2回にわたって行われ、1回目と2回目の間に、地域活動が開催されました。この活動への参加がエンパワーメントにどのような影響を及ぼすかを調べたのです。その結果が以下の図です。

エンパワーメント 高める

このように、地域活動へ「参加」した学生の方が「不参加」の学生よりも、エンパワーメントが高まっていることが分かります。自主的に行事へ参加することで、自己決定が促進されるのですね。

*講師の雑感  エンパワーメントは与えられるものではなく、積極的な活動を通して得られるものです。援助者には、与えるという姿勢ではなく、積極性を引き出す気持ちが求められます。

経営学分野の研究

青木(1998)では、東証一部・二部、その他証券取引所に上場されているメーカーを調査対象として、従業員のエンパワーメントと企業業績の関連を調べました。調査表は255社より集められました。

・総合業績と意思決定への参加
この研究では、企業の業績は「成長性」「収益性」「従業員のモラール」の3つで評価されました。また、エンパワーメントを2つの要素の分けて考えています。

まずは1つ目、「意思決定への参加」から見ていきましょう。以下の図をご覧ください。

上司が部下に情報や意見を求める機会が「ふつう」である方が、もっとも総合業績が伸びていることが分かります。多すぎず少なすぎず適度に部下に意見を求めることが、部下のエンパワーメントを促進し、業績につながるのかもしれません。

・モラール(行動意欲)は多い方が吉

ただ、モラールに関しては、多く部下に意見を求める企業の方が高い数字を出しています。モラールとは組織の士気のことを表し、平たく言えば、モチベーションのことです。やはり、部下自身で考えることが行動意欲を高めるのですね。

・権限委譲とエンパワーメント
そして、エンパワーメントの2つ目の要素は、「権限委譲(けんげんいじょう)」です。これは、部下が上司の決定に影響を与えることができることという意味で用いられています。それでは、業績との関連を見ていきましょう。

上図のように、部下が上司の決定に影響を与えることができる度合が「多い」ほど業績が高いことが分かります。特に「収益性」と「モラール」の面でよりプラスの影響があります。

部下のアイデアが上司の決定を揺るがす瞬間が多い方が、収益も上がりやすく、行動意欲も高まっていくのですね。このように、エンパワーメントを上手く調節していくことが業績UPにつながると推測できそうです。

*講師の雑感  監修の川島は経営者として15年活動しています。ついつい口を出しすぎてしまうところもあるので、意見を求める社風を創らなくては!と強く感じる研究です。皆さんの組織もぜひ、お互い屈託のない意見交換ができる職場を作っていきましょう。

発展‐事例で理解を深めよう

エンパワーメントへの理解を深めるために事例を2つ用意しました。1つは、不登校のまま卒業したハルマくんの事例を紹介します。

ハルマくんは卒業後に就職を決意するのですが、なかなか内定がもらえませんでいた。そこで、あるエンパワーメントを高める方法を活用したことにより、ついに就職を決めることができたのです。

そのほか、学校でいじめに遭っているハナコさんの事例をご紹介します。

エンパワーメントの高め方がわからない…という方は事例で理解を深めることで、自分らしく振る舞うことができるようになります。より深く知りたい方は下記をご覧ください。
エンパワーメントとは-事例でわかりやすく説明③

終わりに

次回は、「エンパワーメント診断」をご紹介します。お楽しみに!

講座のお知らせ

もし公認心理師,精神保健福祉士など専門家の元でしっかりスキルUPしたい方場合は、私たちが開催しているコミュニケーション講座をオススメしています。講座では

・心理療法の基礎
・リソースの発見
・傾聴スキル
・関係性を築く雑談力UPコツ

など練習していきます。興味がある方はお知らせをクリックして頂けると幸いです。お知らせ失礼いたしました。それでは入門②に進みましょう!

 

助け合い掲示板

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士
  • 社会心理学会会員

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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出典・参考文献
・ソーシャルワークにおけるエンパワーメント実践展開研究の意義 西梅 幸治 福祉社会研究 第4・5号 53―67 2004
・従業員のエンパワーメントとその効果~日本企業を対象にした実証研究~ 青木 幹喜 東京情報大学研究論集 Vol. No.2 71 1998
・地域活動への参加がエンパワーメントへ及ぼす効果 大沼 進 須藤 泰史 日心第大会71回(2007)
・久木田純,渡辺文夫 エンパワーメントとは何か.現代のエスプリ No.376エンパワーメント:人間尊重社会の新しいパラダイム.至文堂,1998,p.10-34
・森田ゆり(1998)エンパワメントと人権-こころのみなもとへ-解放出版社
・小田兼三(1999)エンパワメントとは何か 小田兼三・杉本敏夫・久田則夫(編)エンパワメントー実践の理論と技法ー第1章 中央法規 Pp.2-17