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現代の愛着研究‐内的作業モデル

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現代の愛着研究‐内的作業モデルとは?

内的作業モデルとは

近年、愛着は内的作業モデルの観点から多くの研究がなされています。内的作業モデルとは、他者との関係の取り方として機能するモデルのことです。他人に対して抱いている根本的な考え方ともされています。

安定型
・私たちは根本的な部分では愛情がある
・困ったときに他人は助けてくれる
・建設的に問題を乗り越えていける
・多くの人達と親しくなれる

このように考える方は、安定した愛着形成が可能です。私達は、内的作業モデルを通じて多くの人間関係を形成しています。内的作業モデルが安定していると、周囲の人達と適切な関係を築ける可能性が高くなります。また、円滑な社会適応が進みます。

不安定型

一方、不安定な内的作業モデルを有している人達は、対人関係が不安定になって社会不適応に陥る傾向があります。

・私は根本的な部分で愛されていない
・困ったときに他人は助けてくれない
・問題を乗り越えていけない
・多くの人達と疎遠になる

「疑り深い」「見捨てられ不安」といった幾つかの性格の形成には、不安定な内的作業モデルが関わっています。内的作業がにゆがみがあると、社会不適応へ影響する一因にもなり得るのです。

愛着障害

内的作業モデルの具体例

以下に、それぞれの具体的な内容を示します。

・内的作業モデルが安定しているAさん
Aさんは、友達が多くて周囲の人達から「明るい人」と思われています。他人と喧嘩をすることもありますが、自分の悪いところを見つめ直して2~3日で仲直りします。人の好き嫌いが少なくて、色んなタイプの人達と話すことができます。

・内的作業モデルが不安定であるBさん
Bさんは、威圧的な態度で周囲の人達に接しています。友達はいますが、喧嘩になってしまうと相手を責めることが多いので、関係が長続きしません。疑り深い性格で人を信用していないところがあります。

養育環境の重要性

内的作業の安定の基礎は乳児期の両親との愛着関係にあります。しかし、内的作業モデルを形成する要素は、親・養育者との関係以外にも多岐に渡ります。両親との関係が悪くても、内的作業が安定している人はたくさんいます。

例えば、
・祖父母との関係
・保育場面における保育士などとの関係
・小学校低学年から中学年における教師との関係
・友人との屈託のない友情関係

なども重要です。自己肯定感研究の1つには、両親の関係と匹敵するぐらい教師や友人関係が重要とする研究もあります。教育現場などでは、1人の子どもを複数の担任が見るというチーム保育やチーム学校という概念が徐々に取り入れられています。

これからの社会のあり方

養育環境の充実は内的作業の安定化に重要であると監修の川島は考えています。夫婦だけで子育てをするのではなく、何重もの暖かい人間関係で支え合うことで、私たちは暖かい愛着形成を得ることができるのです。

現在は核家族化、高度にIT化された社会、少子高齢化が進み、横と縦の生のコミュニケーションが希薄化しています。今後も愛着形成の問題は続くと思われます。これからの社会の在り方として考えていかなくてはなりません。

 

 

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連