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冷静沈着になる方法

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冷静沈着になる方法

皆さんこんにちは。コミュニケーション講座を開催している公認心理師の川島達史です。今回のお悩み相談は「冷静沈着になる方法」です。

冷静沈着になれない

相談者
35歳 男性

お悩みの内容
私は性格的に混乱しやすく、時間がない時や、プレシャーがかかる仕事でいつもミスしてしまいます。上司からいつも冷静になりなさいと言われます。冷静になるやり方があったら知りたいです。よろしくお願いします。

負担がかかる場面でミスが多くなってしまうのですね。当コラムでは専門家の視点から冷静沈着になる方法を7つ解説していきます。

①深呼吸をする
②マインドフルネス
③ゆとりのある計画を立てる
④全部やろうとしない
⑤失敗イメージを和らげる
⑥全体を分析する
⑦2割サボる意識を持つ

ご自身でも使えそうなものを組み合わせてご活用ください。

冷静沈着になる7つの方法

①深呼吸をする

混乱した時におすすめなのが深呼吸です。手順は以下の通りです。

1.鼻から息を5秒吸う 
綺麗でリラックスできる空気が入ってくるイメージをします おなかで息を吸う意識を持ちましょう

2.息を3秒止めます
3秒息を止めます リラックスした空気で体がみたされたイメージをします

3.8秒かけて口から息をはく
8秒かけてゆっくり息をはいていきます 乱れた心が外に出ていくイメージをします

いかがでしょうか。混乱した時、感情的になっている時は、上記のようなシンプルな深呼吸でも十分に冷静沈着になることができます。以下のコラムではより詳しく深呼吸のやり方を解説しています。より深く知りたい方は下記をご覧ください。

深呼吸の効果・やり方

深呼吸,冷静沈着になる

②マインドフルネス

マインドフルネス力がある方は、感情の浮き沈みが少なく、落ち着きやすくなります。マインドフルネスとは、今この瞬間の感情や考えを観察する力のことです。

マインドフルネスには複数のエクササイズがあるのですが、今回は「〇〇になっている自分がいるな法」を紹介します。具体的には以下のように観察していきます。

時間に追われて焦っている   自分がいるな…
上司にせかされて混乱している 自分がいるな…
カッカきている        自分がいるな…

このように、自分を観察していくと、冷静になることができます。感情が高ぶりすぎている時は、「〇〇になっている自分がいるな」とつぶやいて、是非冷静さを取り戻してください。

マインドフルネスの手法については以下のコラムでより詳しく解説しています。是非練習してみてください。

マインドフルネス認知療法入門

感情の観察が冷静な行動につながる

③ゆとりある計画

心理学の研究では、「時間がない時」ほど私たちは顕著に混乱しやすいことがわかっています。例えば以下のような状況では誰しも冷静沈着さを失い、ミスをしやすくなります。

3分で仕上げないと怒られる!
約束の時間まであと5分、急いで運転しないと!
納期は今日だ!徹夜で仕上げないと!

そこで、冷静沈着になるためには、ゆとりある計画を立てることが重要です。具体的には、計画を立てる時に以下のような意識を持つと良いでしょう。

納期の設定を緩くする
15分前行動を心がける
時には誰かに任せる

仕事をする上では、初期設定はゆとりを持つように心がけてください。そのゆとりが焦りや混乱を和らげる効果を生み出すのです。

生和(1993)[1]は、164名の実験参加者を2つのグループにわけ、ある作業を行ってもらいました。

グループ1:不快な音を鳴らす
グループ2:30秒に時間短縮

その結果が下図となります。少しだけ意味を考えてみましょう。

こちらの図は、30秒に短縮する群の方が、不快な音を鳴らす群よりも場合の誤答率が高くなっていることが分かります。人は制限時間を設定されると、冷静沈着さを失ってしまうようです。

生和(1993)[1]の研究では、「不安度の増分」も比較されました。その結果が下図となります。

冷静沈着の研究

上記のように、30秒に短縮する群の方が、不快な音を鳴らす群よりも、不安が大きくなっていることが分かります。私たちは「時間がない!」状況だと冷静沈着さを失いやすいことがわかります。


④全部やろうとしない

冷静沈着になれない方は、仕事に片っ端から手をつけてしまい、情報処理能力を超えてしまっている傾向があります。コンピュターと違い、私たちの脳は1つしかなく、結局できることは目の前の1つ1つの作業でしかありません。

混乱した時ほど、基本に忠実に、優先順位をつけて、1つ1つの作業を丁寧に進めていく意識を持つことが大事です。全部をやろうとせず、思い切ってやらないことを決めてしまうのも1つの手です。

自分の処理の限界を見極めて、作業量が溢れないように気をつけましょう。作業をたくさん抱えてしまう…と感じる方は以下のコラムを参照ください。

心の整理,優先順位をつける方法​

⑤失敗イメージを和らげる

私たちは、失敗してはならない!と考えるほど冷静沈着さを失っていきます。

上司の前でミスは許されない!
プレゼンで失敗してはいけない!
同僚の前で恥をかいてはいけない

このように失敗することを避けようとすると、混乱してしまうのです。そこで大事なことは、失敗するイメージより、うまくイメージを大事にすることです。

自分らしくリラックスして説明しよう
大事なことが伝われば合格だ
多少恥をかいたぐらいが慕われる

このように失敗へのハードルを下げて、ポジティブなイメージを大事にしましょう。いつも失敗するイメージが先行する…と感じる方は以下のコラムを参照ください。

失敗が怖い,成功イメージを大事にする方法

失敗イメージから成功イメージ

⑤全体を分析する

失敗するイメージから距離を置くことができたら、全体を冷静に分析する意識を持つようにしましょう。心理学ではこの全体をよくみて因果関係や対策を十分検討することを「省察」と呼んだりします。

高野(2010)[2]らは大学生150名を対象に、肯定的信念と省察について調査を行いました。その結果の一部が下図となります。

冷静沈着と抑うつ

こちらの図は肯定的信念を土台として、省察をすると、抑うつ感が減ることを意味しています。わかりやすくすると、きっとうまくいくと考えながら、冷静に現状を分析すると、落ち込むことなく冷静に対処することができると言えます。

混乱するとき、不安に駆られたときは、全体を俯瞰するようなイメージで、分析する意識を持つと良いでしょう。

⑦サボることも重要

冷静沈着になれない方は、いつも気を張っていてすごく精神的につかれやすい状態になっています。ここで大事なことは、いつも2割程度の余裕を持つように心がける事です。ここで1つ私が好きな話をさせて頂きます。

生物学者の長谷川英祐先生は著書「働かないアリに意義がある」の中で、アリの働き度合いと実際のパフォーマンスの関係について実験結果を紹介しています。

実験は内容はとして、以下の2つ群をコンピューター上でシミュレーションを行い、どちらの方がパフォーマンスが良いかを調査しました。

①適度にサボるアリがいる群
②アリ全員がガンガン働く群

その結果、「適度にサボるアリがいる群」の方が成績が良かったのです。働く群は短期的には成績が良いのですが、長期的には疲れてしまい、トラブルが起きた時に対応できなくなることが分かりました。

一方で、適度にサボる群は困った時にサボっていたアリが働くことで、長期的にもパフォーマンスを損うことがありませんでした。結果として、問題が発生しても冷静に物事をこなすことができたのです。

このように余裕を持つことは結果的に、あなたのパフォーマンスを向上させる効果が期待できるのです。良かったら下記の動画も参照ください。



まとめ

焦って混乱すると、失敗が増える、暴言を吐いてしまう、事故を起こしてしまうなど、様々なリスクを抱えることになります。冷静沈着さを身につけるため、当コラムで紹介した手法を試してみてください。皆さんが落ち着いた心で丁寧に仕事をすすめて行かれることを願っています♪

しっかり身につけたい方へ

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・冷静になる,トレーニング
・自分を客観視,マインドフルネス練習
・緊張を和らげる,リラックス法
・ビジネスコミュ力,トレーニング

🔰体験受講🔰に興味がある方は下記の看板をクリックください。筆者も講師をしています(^^) 

冷静沈着になる方法,心理学講座

 

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


YouTube→
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元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

出典・参考文献

[1]生和秀敏(1993).時間不安の実験臨床心理学的研究(1)-課題解決場面における検討-. 健康心理学研究, 6 (2), 21-28.
 
[2]高野 慶輔, 丹野 義彦(2010).反芻に対する肯定的信念と反芻・省察 パーソナリティ研究19巻1号