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薬物依存と乱用問題-芸能人がはまり続ける原因

薬物依存と乱用問題-芸能人がはまり続ける原因

はじめまして!公認心理師の川島です。私は現在、こちらの初学者向けコミュニケーション講座の講師をしています。コラムを読んで興味を持っていただいたら、是非お待ちしています。

今回は「薬物依存」をテーマに、薬物乱用、依存の危険性の基礎と対策について解説をします。

  • 全体の目次
  • 薬物「乱用」
  • 薬物「依存」
  • 種類と依存の危険性
  • 依存の強さ・問題
  • 心の問題と薬物依存
  • 回復までのプロセス

はじめに

近年、毎月のように芸能人が薬物依存、乱用で逮捕されています。これは薬物の危険性への無理解が引き起こしている側面もあると思います。薬物乱用は人生が崩壊します。絶対に手を出さないでください。

*動画解説もあります。
コラムの前に見ておくと理解しやすいと思います

薬物「乱用」-2種類

薬物乱用には、大きくわけて2種類あります。

医薬品を医療目的以外で使う

医薬品を医療目的以外で使うことを薬物乱用といいます。

2015年にあった事件が話題になりました。事件の概要は、精神科で処方された医薬品をネットで転売したという内容です。

犯人は、薬剤師でした。患者としてクリニックに行き、虚偽の証言をし必要以上に薬を手に入れて行われました。薬剤師という専門的な立場を利用した悪質な事件でした。

医療目的外の薬物を不正に使う

麻薬や覚せい剤など、医療目的にない薬物を自分の快楽のために使う薬物乱用です。

薬物乱用の深刻さが浮き彫りになっているのが芸能界です。たとえば、大麻やMDMAを10年以上使用していた人気女優、覚せい剤所持で再逮捕された大物ミュージシャンなど、有名人の違法薬物逮捕は後を絶ちません。加えて、さまざまな芸能人に薬物使用疑惑が出ています。薬物依存の恐ろしさ

薬物「依存」-2種類

薬物依存には大きくわけて2種類あります。

①精神依存

薬物欲求や薬物探索行動が出てきます。人生のあらゆる楽しみが、薬物に依存してしまい、薬がほしくて仕方ない状態です。薬がない時には、強い虚無感に襲われるといわれています。

②身体依存

退薬症状や手の震え、発汗や幻覚などさまざまな症状が身体に現れます。薬をやめると汗がでたり手が震えり、また脳が委縮してしまうため見えない虫が見えるなどの幻覚症状に襲われます。

以下の図は、正常な人の脳とシンナー乱用者の脳を比較しています。正常な人は脳は、しっかりと詰まっていて渦巻きを描くこともできています。。一方で、シンナー乱用者は、脳に空洞が多く渦巻きもしっかり描くことができませんでした。正常な人の脳とシンナーを使った人の脳

薬物の種類・依存の危険性

薬物依存が強い薬物を種類別に見ていきましょう。

麻薬

鎮静・麻酔に使われる薬品で、けしの実から抽出された果実が原料です。あえんの呼び名もあります。

麻薬には、いろいろな種類がありますが、ヘロイン、モルヒネは特に危険です。いずれも精神依存と身体依存が高いため、手を出したら終わりと考えた方がいいでしょう。過去には戦争につながった例もあります。コカインは精神依存が高いとされています。

麻薬の危険性

覚せい剤

アンフェタミン類の精神刺激薬です。脳神経系に作用して心身の働きを一時的に活性化させる効果があります。シャブ・ヒロポンの呼び名もあります。

アンフェタミン・MDMAなど芸能人も乱用していたニュースが問題となりました。覚せい剤は、精神依存が高いとされています。

薬物依存 覚せい剤

向精神薬

中枢神経系に作用して、精神に何らかの影響を与える効果があります。薬物覚せい剤と作り方は似ていますが、医療目的で作られています。

抗精神薬は、医療目的の薬ですが、使い方を間違えると、精神依存と身体依存をしてしまいます。

向精神薬の精神依存・身体依存

大麻

アサの花冠、葉を乾燥または樹脂化、液体化させたもので薬理作用があります。大麻は歴史が古く、日本でも神事でも使われていたとされています。ガンジャ・チャラス・ハシシといった呼び名もあります。

大麻は精神依存が高いとされています。

薬物依存 大麻

アルコール、ニコチン

そして注意したいのが、アルコールやニコチンです。

アルコールやニコチンは、即効性はありませんが、継続すると依存してしまいます。お酒やたばこはどこでも購入できるため、より一層注意が必要かもしれません。

アルコール,ニコチンの精神依存・身体依存

薬物依存の強さの問題

薬物依存の強さに研究は、動物実験で行われていました。柳田(1992)は、サルにおける静脈内薬物自己投与実験を行いました。概要は、猿に薬液を注入してランプが光る時にレバーを押すと薬物が注入されるという実験です。

薬物自己投与実験サルにおける

出典:柳田(1992)薬物自己投与実験による強化効果および 中枢作用の検索 P100

実験の結果、モルヒネ、コカイン、アルコール、ニコチンは依存度が高いことが分かりました。中でも麻薬のモルヒネ、コカインは精神依存が強いことが推測できます。

薬物自己投与実験の結果

薬物依存と心の問題

ここで、薬物依存・薬物乱用による心の問題について、心理学の研究から見ていきましょう。

工藤(1983)は、学生, 一般社会人, 入院治療中のアルコール依存症患者, 合計975名を対象に、孤独感についての調査を行いました。調査では、年齢性別などいくつかの群に分けて孤独感の強さを図っています。

その結果、孤独感はアルコール依存症患者が最も強いことが分かりました。

孤独感と薬物依存

薬物に手を出してしまう人の背景には、

・家庭不和
・孤独感
・会話力不足
・対人不安
・サポート不足
・自己不全感

などメンタルヘルスにマイナス傾向があると思われます。社会的なつながりが希薄になったり、社会的に健康度が低い人とつながったりすることが薬物依存につながる可能性が高いといえそうです。

薬物依存は社会全体の問題

薬物依存は、自分だけに限らず様々な問題を生み出してしまいます。

薬物依存が生み出す様々な問題

出典:厚生労働省HP

薬物乱用は、自分の健康状態に問題が出るばかりでなく、家庭崩壊や対人関係でも問題を引き起こします。症状が重くなれば、社会生活が行えなくなり、犯罪や事故など巻き込まれることもあります。

このように薬物乱用は、社会全体の問題につながるのです。

復帰の流れ

万が一薬物依存・薬物乱用をしてしまったら、4段階で回復を目指します。

①身体の回復
まずは身体の機能の回復を目指します。
②脳機能の回復
脳機能が低下している人には脳機能の回復を図ります。
③心の回復
孤独になりやすい人には、会話の練習をしたり人関わり方を練習します。
④人間関係の回復
社会との繋がりをしっかり作っていきます。

薬物依存心の回復

出典:厚生労働省HP

身体の回復

まずは、薬物によって疲弊し衰弱した体を正常化させます。薬が無くても、普通に眠れて元気に過ごせる状態を目指します。

薬物の乱用が進むと、精神と身体が依存状態になり、薬物がやめられなくなります。専門の医療機関や薬物依存の自助グループに参加しながら、薬物を使わない生活を毎日積み重ねていく事で身体を回復させていきます。

脳の回復

薬物による幻覚や妄想がなくなり、思考力や記憶力が正常になる状態を目指します。

薬物依存者の脳はかなりの損傷を受け、本来の機能を失ってしまいます。このため長年薬物を使用してきた依存者は、記憶障害などの症状がみられます。この場合、認知行動療法などを使いながら、行動を変えることで損傷した脳の回復させていきます。

心の回復

薬物依存症でゆがんでしまった物の考え方、感じ方を変えていきます。

薬物依存者の中には、薬物依存症以外に、うつ病、双極性障害、統合失調症など精神疾患を合併しているケースが多くあります。この場合は、精神医療機関で集中的に治療を行います。

また、自助グループなどに所属して、自分のことを安心して話せる場を持ち孤独にさせないようにすることも心の回復にとても大切です。

人間関係の回復

薬物依存症によって壊れてしまった人間関係を修復させ、周囲からの信頼を取り戻していきます。

時間はかかりますが、薬物を使う前の自分らしさを回復することで、これまでの人間関係や社会との繋がりをしっかり作っていきます。

復活のカギは暖かい支援

赤澤ら(2010)は、薬物依存者向けの例会(断酒会)に参加した方向けのアンケート4616部をもとに分析が行われています。

この調査では、例会に参加された方を「低精神的健康群」と「精神的健康群(比較的精神が健康)」の2群に分け、比較をしています。

まずは「家族・親戚との良好な関係」についての結果です。

家族・親族との良好な関係

低精神的健康群が68.6%に対して、精神的健康群は9割以上が良好な関係だと感じています。つまり薬物乱用による復活には、家族内の温かいサポートが必要と言えそうです。

続いてこちらは「例会への継続的出席」です。

薬物依存者,例会への継続的出席

低精神的健康群が68.5%に対して、精神的健康群は8割が定期参加していることが分かります。つまり薬物乱用からの復活には、治療を継続することが必要です。例会などで悩みを打ち明けるなど続けていく事で回復が目指せると言えそうです。

 

楽物依存と乱用問題

薬物乱用は、人生を崩壊させる危険な状態です。薬物は、進められても絶対に手を出してはいけません。また、医薬品でも使い方を間違ると依存症状を招いてしまうため、処方以上に使うことはやめましょう。

薬物は、家庭不和、孤独感、会話力不足などメンタルヘルスにマイナス傾向があると、依存につながりやすくなります。十分に注意しましょう。

私たち公認心理師・精神保健福祉士は、暖かい人間関係のある社会を創ることを目的として、メンタルヘルスや人間関係をよくする講座を開いています。

コラムだけでは伝えきれない知識や実践的なワークを進めています。みなさんのコミュニケーション能力が向上するよう、講師も一緒に頑張ります!よかったらいらっしゃってくださいね(^^)

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コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科修士

取材執筆活動など

  • AERA 「飲み会での会話術」
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」
  • TOKYOガルリ テレビ東京出演


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※出典・参考文献
・薬物自己投与実験による強化効果および 中枢作用の検索 柳田知司.日薬理誌.1992;100:97-107.
・The Japanese Journal of Experimental Social Psychology. 1983, Vol. 22, No. 2, 99-108〔原 著〕 孤 独 感 に 関 す る 研 究(I)1)2) ―孤 独感尺 度 の信 頼性 ・妥 当性 の検 討―大 阪 教 育 大 学 工 藤 力 西 川 正 之
・厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000511055 
・赤澤正人, 松本俊彦, 立森久照, 竹島正(2010)アルコール関連問題を抱えた人の自殺関連事象の実態と精神的健康への関連要因  精神神経学雑誌,  表3