ホーム >
コミュニケーション知恵袋 >
心理学コラム >
インナーチャイルドとは?

日付:

アダルトチルドレン,機能不全家族を克服する方法

当コラムでは、アダルトチルドレンの克服をテーマに解説しています。

①アダルトチルドレンを克服する方法
②インナーチャイルドワーク

皆さんこんにちは。コミュニケーション教室を開催している公認心理師の川島達史です。当コラムは下記にあてはまる方におすすめです。

・子どもの頃の感情に今も振り回される
・つい自分を責めてしまう
・ACの回復をもう一歩進めたい

インナーチャイルドワークとは、心の中に残る子ども時代の自分(インナーチャイルド)に気づき、当時の感情を受け止め直していく心理的なワークのことです。

今回は、インナーチャイルドの意味や歴史、アダルトチルドレンとの関係、自分でできる具体的なワークを解説していきます。是非最後までご一読ください。

◆全体の目次
①インナーチャイルドとは
②ユングから広まった歴史
③アダルトチルドレンとの関係
④嘆きの仕事とのつながり
⑤具体的な4つのワーク
⑥事例で見るワークの流れ
⑦まとめ
⑧最後に確認しよう
⑨教室で一緒に深めよう
⑩シリーズの続きを読む

インナーチャイルドとは

まずは、インナーチャイルドの基本的な意味をおさえていきましょう。

内なる子どもの意味

インナーチャイルドとは、幼少期の経験や感情が、大人になった後も心の内側に残り続けているという考え方です。日本語では「内なる子ども」と訳されることがあります。

例えば、大人になっても叱られると必要以上に身がすくむ、褒められると居心地が悪くなる、といった反応があります。こうした反応の背景に、子どもの頃の自分が今も感じている気持ちがあると捉えるのが、この考え方です。

なお、インナーチャイルドは医学的な診断名ではありません。心の状態を理解するための「見立て」の一つとして考えてみてください。

誰の心にもある存在

インナーチャイルドは特別な人だけにあるものではなく、誰の心にもある概念とされています。

子どもの頃の好奇心や、無邪気に楽しむ気持ちもインナーチャイルドの一部です。後述するブラッドショーは、本来の生き生きとした子どもの側面を「ワンダーチャイルド」と呼んでいます[2]。

つまりインナーチャイルドには、傷ついた面だけでなく、生きる活力の源となる面もあるのです。

ユングから広まった歴史

インナーチャイルドという考え方が、どのように広まってきたのかを見ていきましょう。

ユングの幼児元型

起源とされるのが、スイスの精神科医カール・グスタフ・ユングの考えです。ユングは、人類に共通する心のイメージの型を「元型(アーキタイプ)」と呼びました。

その一つが「幼児元型(子ども元型)」です。ユングは1940年の論文で、神話や夢に現れる子どもの姿がもつ心理的な意味について論じています[1]。

ただし、ユングの幼児元型は人類に共通するイメージを指す概念です。個人の幼少期の心の傷に焦点を当てる現在のインナーチャイルドとは、意味合いが異なる点に注意が必要です。

ブラッドショーの著書

一般に広く知られるきっかけになったのは、アメリカのカウンセラー、ジョン・ブラッドショーの著書『Homecoming』(1990)です[2]。

ブラッドショーは、子ども時代の発達段階ごとにやり残した課題を見つめ直し、傷ついたインナーチャイルドを癒していく方法を紹介しました。同書には質問票や誘導瞑想、インナーチャイルドへの手紙など、多くのワークが収められています。

日本でも1993年に邦訳『インナーチャイルド』が出版され、2001年には改訂版が刊行されています[2]。

ACとの関係

インナーチャイルドは、アダルトチルドレン(AC)の回復と深く関わっています。

傷ついた内なる子ども

機能不全家族で育つと、子どもは家族の緊張の中で、自分の感情を抑えて過ごすことになります。怒りや悲しみを表に出せないまま大人になると、心の中に「傷ついたインナーチャイルド」が残りやすいと考えられています。

ブラッドショーも、子どもの頃に感情が抑え込まれると、傷ついた子どもを内側に抱えたまま大人になると述べています[2]。

ACの方の回復には、この傷ついたインナーチャイルドと向き合うことが大事になるのです。

大人の行動への影響

傷ついたインナーチャイルドは、大人になってからの行動にも表れることがあります。例えば以下のような反応です。

・相手の顔色を過剰に伺ってしまう
・些細なことで見捨てられる不安を感じる
・感情が急に爆発してしまう
・楽しむことに罪悪感を覚える

いずれも、子どもの頃に身につけた「生き延びるための反応」が、今も続いていると捉えることができます。

反応そのものを責める必要はありません。「そうせざるを得なかった自分がいた」と理解することが、回復の出発点になります。

嘆きの仕事とのつながり

①のコラムでは、ACの回復の3段階を紹介しました[3]。インナーチャイルドワークは、そのうちの「②嘆きの仕事」と特に深くつながっています。

日記からの発展

嘆きの仕事とは、悲しい過去を認め、受け入れていく作業です。①のコラムでは、その具体的な手法の一つとして日記を書くことを紹介しました。

インナーチャイルドワークは、この日記をもう一歩進めたものと考えると分かりやすいでしょう。日記が「今日の自分」を書くのに対し、インナーチャイルドワークでは「子どもの頃の自分」に焦点を当てます。

実際、ブラッドショーの著書でも、手紙を書くワークとあわせて「グリーフワーク(嘆きの仕事)」が紹介されています[2]。日記を書くことに慣れてきたら、少しずつ過去の自分へと目を向けてみましょう。

始める前の注意点

過去の感情と向き合う作業は、心に大きな負担がかかることがあります。取り組む際は、以下の点に注意してください。

・心に余裕があるときに行う
・つらくなったら途中でやめてよい
・一度に深く掘り下げすぎない
・不安な方は専門家と一緒に進める

特に、強いつらさを伴う記憶が繰り返しよみがえる方は、一人で行わないようにしましょう。カウンセラーや医療機関のサポートを受けながら進めることをおすすめします。

具体的な4つのワーク

ここからは、自分でも取り組みやすいワークを4つ紹介します。できそうなものから、1つずつ試してみてください。

なお、インナーチャイルドワークの効果については、研究による裏付けがまだ十分とはいえない面もあります。回復を支える方法の一つとして、無理のない範囲で活用してください。

感情を書き出す

まずは、子どもの頃に感じていた気持ちを、ノートに自由に書き出してみましょう。「寂しかった」「怖かった」「本当は甘えたかった」など、思い浮かんだ言葉をそのまま書きます。

ポイントは、書いた内容を批判しないことです。「こんなことを思うのは親に悪い」「大げさだ」といった評価は脇に置き、感じたことを感じたままに認めていきましょう。

当時の自分に語る

次に、子どもの頃の自分を思い浮かべ、大人になった今の自分から語りかけてみます。例えば以下のような言葉です。

・「あのとき、よく頑張っていたね」
・「本当は泣きたかったよね」
・「あなたは悪くなかったよ」

声に出しても、心の中でつぶやいても構いません。当時は誰にもかけてもらえなかった言葉を、今の自分がかけてあげるイメージです。

一番古い記憶を辿る

静かな場所で目を閉じ、思い出せる中で一番古い記憶を辿ってみます。どこにいて、誰がいて、何をしていたのかを、ゆっくり思い出してみましょう。

場面が浮かんだら、そのとき自分がどんな気持ちだったのかを味わってみます。嬉しい記憶でも、悲しい記憶でも構いません。

気持ちが大きく揺れたときは、深呼吸をして、いったん「今ここ」に意識を戻しましょう。

自分へ手紙を書く

最後に、子どもの頃の自分へ宛てて手紙を書いてみます。ブラッドショーも、インナーチャイルドへの手紙を書くワークを紹介しています[2]。

さらに、その手紙への「返事」を、子どもの頃の自分になったつもりで書いてみるのもよいでしょう。ブラッドショーは、利き手ではない方の手で書く方法も紹介しています[2]。

書き終えた手紙は、誰かに見せる必要はありません。書く過程そのものが、自分と向き合う大切な時間になります。

事例で見るワークの流れ

ここで、ワークに取り組んだ架空の事例を紹介します。

花子さんは30代の会社員です。子どもの頃は両親の不仲が続く家庭で育ち、いつも母親の機嫌を伺いながら過ごしてきました。

大人になった今も、職場で上司が不機嫌そうだと「自分のせいかもしれない」と不安になります。そのたびに仕事に集中できなくなることに、長く悩んでいました。

感情を書き出す

花子さんは、まずは子どもの頃の感情を書き出すワークを試しました。ノートには「怖かった」「ずっと我慢していた」という言葉が並び、書きながら涙が出たそうです。

最初は「こんなことを書くのは母に悪い」という気持ちも湧いてきました。それでも評価は脇に置き、感じたことをそのまま書き続けたそうです。

当時の自分に語る

次に、当時の自分に語るワークに取り組みました。母親の顔色を伺っていた小学生の自分を思い浮かべ、心の中で「毎日よく頑張っていたね」と声をかけました。

口に出すまでは照れくささがありました。ところが実際に言葉にしてみると、自然と涙がこぼれたといいます。

一番古い記憶を辿る

少し慣れてきた頃、「一番古い記憶を辿る」ワークも試しました。浮かんできたのは、4歳ぐらいの頃に両親の言い争う声を聞きながら、台所の隅でじっと座っていた場面でした。

そのときの気持ちを味わってみると、「怖くて、でも泣いたらいけないと思っていた」ことに気づきました。気持ちが大きく揺れたため、深呼吸をして、いったん今ここに意識を戻してから終えました。

自分へ手紙を書く

数週間後、花子さんは小学生の頃の自分に宛てて手紙を書きました。「お母さんを笑わせようと頑張っていたね。でも、あなたのせいじゃなかったよ」と書いたとき、胸の奥が少し軽くなるのを感じたといいます。

その後も、上司の不機嫌に不安を感じることはあります。それでも「子どもの頃の不安が反応しているんだな」と一歩引いて見られるようになり、以前より落ち着いて仕事に取り組めるようになりました。

このように、インナーチャイルドワークは劇的な変化をすぐにもたらすものではありません。自分の反応の背景を少しずつ理解し、受け止めていくことが大切です。

まとめ

ここまで、インナーチャイルドの意味や歴史、アダルトチルドレンとの関係、具体的なワークを解説してきました。

インナーチャイルドとは、幼少期の経験や感情が今も心の内側に残り続けているという考え方です。ユングの幼児元型が起源とされ、ブラッドショーの著書によって広く知られるようになりました。

機能不全家族で育つと、傷ついたインナーチャイルドを抱えやすく、その回復は「嘆きの仕事」と深く関わります。日記を書くことから始め、感情の書き出しや当時の自分への語りかけ、手紙のワークへと少しずつ発展させていきましょう。

無理をせず、つらいときは専門家の力を借りながら進めることが大切です。

最後に確認しよう

Q&A形式で確認しよう。気になる質問をクリックして確認してみてください。

Q. インナーチャイルドとは何ですか?

A. 幼少期の経験や感情が、大人になった後も心の内側に残り続けているという考え方です。誰の心にもある概念とされ、医学的な診断名ではありません。

Q. インナーチャイルドはどのように広まりましたか?

A. ユングの幼児元型が起源とされ、ジョン・ブラッドショーの著書『Homecoming』(1990)によって広く知られるようになりました。

Q. アダルトチルドレンとどのような関係がありますか?

A. 機能不全家族で育つと感情を抑えて過ごすことが多く、傷ついたインナーチャイルドが残りやすいと考えられています。そのため、ACの回復に深く関わります。

Q. 何から始めればよいですか?

A. まずは日記を書くことから始め、慣れてきたら子どもの頃の感情を批判せずに書き出してみましょう。つらくなったら無理をせず、専門家のサポートも活用してください。

教室で一緒に深めよう

過去の自分と向き合う作業は、一人で行うと感情が大きく揺れ、整理しきれなくなることもあります。「やってみたいけれど、一人では不安」と感じた方もいるのではないでしょうか。

当コラムで紹介した方法は、公認心理師による講座で、たくさん練習することができます。内容は以下のとおりです。

・自己理解を深める,メタ認知練習
・自分を大事にする練習
・健康的な人間関係を築く練習

🔰体験受講🔰もご用意しています。まずはコミュニケーション教室のページから、お気軽にご覧ください。筆者も講師をしています(^^)

コミュニケーション教室,講座,ダイコミュ

シリーズの続きを読む

まだ①をお読みでない方は、アダルトチルドレンの特徴や6つのタイプ、回復の3段階の全体像から確認してみてください。今回のインナーチャイルドワークは、その中の「②嘆きの仕事」を深掘りした内容になっています。

①アダルトチルドレンを克服する方法

助け合い掲示板

コメントを残す

コラム監修

名前

川島達史


経歴

  • 公認心理師
  • 精神保健福祉士
  • 目白大学大学院心理学研究科 修了

取材執筆活動など

  • NHKあさイチ出演
  • NHK天才テレビ君出演
  • マイナビ出版 「嫌われる覚悟」岡山理科大 入試問題採用
  • サンマーク出版「結局どうすればいい感じに雑談できる?」


YouTube→
Twitter→
元専修大学教授 長田洋和

名前

長田洋和


経歴

  • 帝京平成大学大学院臨床心理学研究科 教授
  • 東京大学 博士 (保健学) 取得
  • 公認心理師
  • 臨床心理士
  • 精神保健福祉士

取材執筆活動など

  • 知的能力障害. 精神科臨床評価マニュアル
  • うつ病と予防学的介入プログラム
  • 日本版CU特性スクリーニング尺度開発

臨床心理士 亀井幹子

名前

亀井幹子


経歴

  • 臨床心理士
  • 公認心理師
  • 早稲田大学大学院人間科学研究科 修了
  • 精神科クリニック勤務

取材執筆活動など

  • メディア・研究活動
  • NHK偉人達の健康診断出演
  • マインドフルネスと不眠症状の関連

・出典
[1] Jung, C. G. (1940/1969). The Psychology of the Child Archetype. In The Collected Works of C. G. Jung, Vol. 9, Part 1: The Archetypes and the Collective Unconscious (R. F. C. Hull, Trans.). Princeton University Press.(邦訳:ケレーニイ, K.・ユング, C. G. 杉浦忠夫訳(1975).『神話学入門』晶文社)
[2] Bradshaw, J. (1990). Homecoming: Reclaiming and Championing Your Inner Child. Bantam Books.(邦訳:ジョン・ブラッドショー著, 新里里春監訳(2001).『インナーチャイルド―本当のあなたを取り戻す方法〔改訂版〕』NHK出版)
[3] 斎藤学(1996). アダルト・チルドレンと家族. 学陽書房.