アイデンティティを確立する,メンタライゼーション法
今回は、アイデンティティを確立する2つ目の方法として
「メンタライゼ―ション」
を紹介します。アイデンティティが拡散していると感じる方は参考にしてみてください。
メンタライゼーション
拡散しやすい方の傾向
もし皆さんが、
・日々の生活に追われている
・自分の心と向き合うことが少ない
・周りの環境に流されてしまう
・相手の意向に沿おうとし過ぎる
このような傾向がある方はアイデンティティを確立しにくいかもしれません。例えば、カウンセリング場面では
「親の言うことばかり聞いてきた」
とお話しされる人がいます。親の言うことを聞くだけで生きてきたので、自分がどう考えているか、どう感じているかという点を意識してこなかったのです。
メンタライゼーションとは
このような傾向がある場合はメンタライゼーションが有効です。メンタライゼーションとは、1990年代にイギリスの精神分析家であるフォーナギーが提唱した概念で、
① 身の周りに起こった出来事に対して
②心理的な背景を読み取る能力である
とされています。
「自分がやりたいことはなんだろう…」
「自分に向いている仕事はなんだろう…」
「どんな時に自分は充実感があるのだろう…」
と自分の感情や価値観に注意を向けることがメンタライゼーションの基本となります。
具体例
メンタライゼ―ションの具体例で説明したいと思います。
例1 日常的な気づき
メンタライゼーションの基本は日常生活での気づきです。
例えば仕事をした後、何日か疲れがたまっていたとします。それでも仕事をし続けついに倒れてしまったします。
この時
「仕事について考えるあまり、自分自身をないがしろにしているかも」
と気が付く。これがメンタライゼーションです。
例2 相手の考えや価値観に気が付く
メンタライゼーションは相手の心理の読み取りも含みます。顔をしかめて仕事をしている相手がいたとします。この時、
「疲れているのかなぁ・・」
と読み取ることがありますよね。これは他者の心理に気が付いています。これもメンライゼーションになります。
アイデンティティ確立へ
カウンセリングの場面では、近藤ら(2013)がメンタライゼーションの視点を通してアイデンティティを形成できたという事例報告もなされています。
人間関係で行き詰まった時などに、「自分の価値観は?考えは?どう感じていたのか?明確に言葉で話せる」ようになるとアイデンティティを確立しやすくなります。
まとめるとこのような感じですね。
自分の気持ちに気づくというメンタライゼーションができる人は、できごとの振り返りをきちんと行い、価値観ややりたいことに気づけたり、見つけることができます。
メンタライゼーション挑戦
3つのステップ
メンタライゼーションについてなんとなく理解できましたでしょうか?ここではもう少し踏み込んでメンタライゼーションのやり方を解説します。
具体的には
①できごとを客観的に書きだす
②行動や振る舞い方を書きだす
③価値観・考えを書きだす
という、3つのステップで考えていきます。まずは例を見ていきましょう。
例文
登場人物 太郎さん おとなしい性格
花子さん 活発な性格
関係性 職場の同僚
太郎さんと花子さんは飲みに行きました。花子さんは、とても積極的な同僚で、おしゃべりです。
「太郎さん、次の注文は、これがいいですよね」
「最近〇〇があってね」
「今度は〇〇の店に行こう」
と、どんどん仕切ってくれます。太郎さんは必死にその場についていきました。終わってみると、なぜかどっと疲れが出てきました。
①できごとを客観的に書きだす
⇒おしゃべりなBさんと飲みに行った。Bさんのペースでわーっとしゃべって、Bさんがどんどん注文する。いつも早い。
②行動や振る舞い方を書きだす
⇒何とか必死についていくような感じ。終わった後疲れた。
③価値観・考えを書きだす
⇒本当は食べたいものがあった
自分も色々Bさんに聞いてほしいこともあった
私は、もっと主体的に生きたいのかもしれない!
裏側にある価値観が大事
という様にこんな感じで結構です。まずは、「疲れた」「幸せ」など自分の感情に焦点を当て、その裏側にある自分の価値観を探していくようにするといいかもしれません。
この例では最終的に、「主体的に生きる」という小さなアイデンティティの確立につながっていますね。
ここで大事なことは正解、不正解を追及することではなく、自分の気持ちを発見していくことなのです。
練習してみよう
今度は皆さんの番です。以下の下書きを元に自分の価値観や思いに気が付いて、それを一度確認したり、考え直してみたりしましょう。
①できごとを客観的に書きだす
②行動や振る舞い方を書きだす
③価値観・考えを書きだす
自分の気持ちに気が付こう
自分の気持ちに気が付く
普段の生活では困ったことに対して意外と目をつぶってしまいがちです。
忙しい現代社会ではどうしても自分の気持ちと向き合う暇がなく、後回しになってしまいがちですね。
しかし、いつも自分の気持ちに蓋をする癖をつけると、どっと疲れが出てきたり、もっと悪い状況になるとメンタル面での不調、アイデンティティ拡散につながる場合もあります。
裏側にある価値観が大事
必ず私たちそれぞれがしている行動の背景には、私たちの心が存在します。
ここでの心とは、あなた自身が持つ考えや感情のことです。その私たちの心の声によく耳を傾けてもらえると、自分についての気づきが得られることがあります。
そこで気づいたことがアイデンティティを形成していく第1歩となるのです。
理解を深めたい方
より深くメンタライゼーションについて理解を深めたい方は下記のコラムを参照ください。より詳細な手法を紹介しています。
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